敏子=タバキンBB『インサイツ』
今日も、秋吉敏子=ルー・タバキン ビッグバンド(Toshiko Akiyoshi-Lew Tabackin Big Band、1973年-1982年)の話題を。
デビュー盤『孤軍』については、よく聴いた。ジャズについては、まだ本格的に聴いていない時期だったが(プログレ小僧でした・笑)、何故かNHK-FMでよくかかっていて、これ幸いとエアチェックして繰り返し聴いていた。恐らく、これが僕の「ビッグバンドをしっかり聴いた」初めての機会だと思う。完璧に統制のとれた、一糸乱れぬアンサンブルが凄く印象に残った。
そして、そのビッグバンドの存在を全く忘れた頃に「第5弾」が届く。これも、NHK-FMでかかっていたのを偶然聴いたのが切っ掛け。
Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band『Insights(インサイツ)』(写真)。1976年6月22-24日 ハリウッド、RCAスタジオ"A"での録音。敏子=タバキンBBの5th.盤になる。この盤も何故か、NHK-FMでよくかかったので、エアチェックして結構聴いた思い出がある。
この盤については、前作よりもソロイストの演奏パートが拡大されて、ソロイストのパフォーマンスがフィーチャーされている。デビュー盤『孤軍』は「アンサンブル」が印象に残ったが、今回は「ソロ・パフォーマンス」が印象に残る。そういう意味では、従来のビッグバンドらしさが備わって、よりスタンダードとなり得るビッグバンドに進化したと見て良いかと思う。
さて、この盤でも、賛否両論だった「日本人のアイデンティティ」がしっかり反映されている。LP時代、B面全てを費やした、21分を超える大作「Minamata(ミナマタ・水俣)」がそれに当たる。「公害」という社会問題を題材にした曲。その中で、日本的な童謡が差し込まれ、「能」の調べ、日本の舞踏民謡に似たフレーズが引用される。
これを是とするか否とするか。この盤の「日本人のアイデンティティ」については、この盤を問題作と捉え、議論の的になっていた。俗っぽく、明らかに米国での「ウケ狙い」と聴くか、純粋に「融合」が個性のジャズの一フレーズと聴くか。ジャズに、日本の童謡、能の調べ、舞踏民謡のフレーズを織り込むことに意味があるのか、無いのか。永遠の課題だろう。
ルー・タバキンのテナー・サックスとフルートが大活躍。先鋭的でバイタルなテナー・サックスは、2曲目の「Transience」でふんだんに聴くことが出来る。エモーショナルで伝統的、重心が低くダイナミックなテナー・サックスは素敵だ。
フルートは、次の3曲目「Sumie(墨絵)」で聴ける。ちょっとだけ「尺八」に似た音色のフルートが実に印象的。フレーズの「拡がり」と「間」で、タイトルの「墨絵」を表現しているイメージ。
賛否両論だった「日本人のアイデンティティ」を差し引いても、この盤もビッグバンドのアルバムとしては上質なもの。敏子=タバキンBBの個性が明確に反映された盤として、大いに評価されて然るべき好盤である。
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