2020年10月31日 (土曜日)

マーカス・ミラーの傑作盤です

最近、マーカス・ミラー(Marcus Miller)が気になっている。もともとベーシストのリーダー作には興味があって良く選盤するのだが、最近、何故か、マーカス・ミラーが気になっている。マーカス・ミラーは、現代最高峰のベーシストの1人。相当に卓越したテクニックと疾走感と切れ味抜群の「独特のグルーヴ感」が個性。とくにスラップにおけるグルーヴは秀逸。

1970年代後半、ジャコ・パストリアス(愛称「ジャコ」)の登場で、ジャズにおけるエレクトリック・ベース(略して「エレベ」)の可能性は飛躍的に拡大したが、そのエレベの可能性をもう一段階上のレベルに引き上げたのがスタンリー・クラーク(愛称「スタン」)、そして、このマーカス・ミラーだと僕は認識している。そんなマーカスのリーダー作をじっくりと、年代順に聴いたことが無い。ということで、マーカスのリーダー作に注目である。

Marcus Miller『The Sun Don't Lie』(写真左)。1993年のリリース。パーソネルは挙げれば切りが無い。当時のフュージョン・ジャズ畑、コンテンポラリー・ジャズ畑の一流どころがズラリ。曲によって、演奏の内容によって、演奏するメンバーを厳選しており、こういうところは、マーカスのプロデュース能力の高さを感じさせる。さすが、マイルス・バンド、最後の音楽監督である。
 
 
The-sun-dont-lie-marcus-miller
 
 
邦題『ザ・キング・イズ・ゴーン』。1991年に亡くなったマイルス・デイヴィスに捧げた「追悼盤」。邦題の「キング」はもちろんマイルス・デイヴィスのこと。ジャコに題材をとった作品も含めて、1980年代はR&B志向のマーカスが、ジャズ・ベーシストとしての自分を前面に押し出した「コンテンポラリー・ジャズ」志向のリーダー作である。

この盤でのマーカスのエレベは凄まじい。ロック、ファンク、ソウル、ジャズ、様々な音楽要素を融合した、コンテンポラリーなフュージョン・ジャズがこの盤に詰まっている。特にファンクネスは濃厚で、ジャズ・ファンクな要素が一番強く感じる。しかし、ジャズ・ファンクとはいえ、ポップでは無い。しっかりとジャズを踏まえた、当時の先端を行く「ジャズ・ファンク」がこの盤にある。

ジャコより端正で真面目、スタンよりファンクネス控えめで流麗。タイトで整った躍動感+グルーヴ感溢れるスラップは唯一無二。エレベをエレギの如く弾く様は圧巻であり、胸がスカッとする。それぞれの曲のアレンジ、メンバーの選定、音の雰囲気、どれをとっても非の打ち所が無い。この盤、マーカスのプロデュースの才を確認するにも最適なアルバムになる。なにはともあれ「好盤」である。
 
 
 

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2018年8月 1日 (水曜日)

マーカスの考える「融合音楽」

マイルスの最後の相棒、ベーシストのマーカス・ミラー。僕はミラーのエレベが結構、お気に入り。マーカスのマイルス追悼盤だった『The Sun Don't Lie』(1993年)を聴いて以来、ずっとマーカスのリーダー作を追いかけている。ベーシストの腕前は超一級品。しかも、マイルスが重用した様に、アレンジとプロデュース力も超一級品。そんな彼のリーダー作はどれもが聴き応え十分。

そんなマーカス・ミラーの最新盤がリリースされた。Marcus Miller『Laid Black』。今年6月の最新作。前作『Afrodeezia』以来、約3年ぶりとなる最新作。ゲストに、セラ・スー (vo) / トロンボーン・ショーティ (tb) / ジョナサン・バトラー (g, vo) / TAKE6 (vo) / カーク・ウェイラム (fl, ts) を迎えて、最新のアーバン・ミュージック、ヒップホップ、トラップ、ソウル、ファンク、R&B、ジャズを取り入れた内容。

アルバムを聴くと良く判るが、コンテンポラリー・ジャズの最新形の音が満載。マーカスの卓越したベース・プレイが唸りを上げる。自由奔放に唄うが如く、囁くが如く、魅力的なベースラインを刻み続けていく。まず、このマーカスのベース・プレイが、この盤の聴きどころ。現代のジャズ・エレベの最高峰のプレイがこの盤に詰まっている。
 

Laid_black

 
もう一つも魅力は「現代のジャズ」を見事に現出した音作りである、ということ。ジャズはもともと違うジャンルの音楽との融合が得意な音楽ジャンルで、今まで「異種格闘技」的な名盤は数々あるが、この盤は従来の融合要素である「ソウル・ファンク・R&B・ブルース」そして「ロック」をベースとして、最新の音楽要素、ヒップホップ、トラップ、ネオ・スピリチュアルを取り込んだ、最新のフュージョン・ミュージックとなっている。

これだけの「異種格闘技」的要素を取り込むと、楽曲としてバラバラなイメージになりがちなのだが、マーカスの場合、そうはならない。卓越したアレンジとプロデュース力を駆使して、様々な「異種格闘技」的要素を融合した、見事な「総合音楽」として、僕達の耳に届けてくれる。まさに「マーカス・ミラーの考える融合音楽」である。

当然、音の底は「ジャズ」。この盤を聴くと、ジャズという音楽ジャンルは、他の音楽ジャンルの音要素に対して、懐が深く裾野が広いことを再認識させてくれる。マーカス・ミラーは、1959年6月生まれで、今年59歳。来年は還暦で、ジャズ・ミュージシャンとしても成熟の域に到達した、若きレジェンドとなりつつある。そんな実感をしっかりと持たせてくれる、この最新作の内容である。

 
 

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2012年7月13日 (金曜日)

マーカス・ミラーの傑作ライブ盤

昨日は野暮用でブログをお休みした。さてさて、今日は再開。ジャズ・ベーシストのリーダー作のお話しを続けたい。

ジャズ・ベーシストの世界では、どちらかと言えば、エレクトリック・ベース(略してエレベ)の使い手の方が元気が良いように感じる。そんなエレベの使い手の代表格が、Marcus Miller(マーカス・ミラー)。

マーカス・ミラーと言えば、1970年代後半、フュージョン・ジャズ全盛時代より頭角を現し、1980年に入ると、当時、奇跡のカムバックを果たした、マイルス・デイヴィスのエレクトリック・バンドのベーシストに抜擢された。

それ以来、マイルスのエレクトリック・バンドに1982年まで参加。そして、1986年、あの晩年の傑作『Tutu』にて再加入。以降、マイルスの最後のプロデューサーとして、マイルスに付き添った。

そんなマーカス・ミラーが、2011年、マイルス・トリビュートなライブ盤をリリースした。その名も『Tutu Revisited』(写真)。2009年12月22日、フランスはリヨンの「Lyon Auditorium」でのライブ録音。

ちなみにパーソネルは、Marcus Miller (b), Christian Scott (tp), Alex Han (as, ss), Federico Ganzalez Pena (key), Ronald Bruner,Jr. (ds)。
 

Tutu_revisited

 
メンバーを見渡すと、マーカス・ミラー以外、知らん顔ばかりだ(笑)。それでも、このライブ盤の内容は抜群。マーカスの究極の超絶技巧なエレベと演奏全体のアレンジメント&プロデュース、どちらも超一流の出来映えだ。

つまりは、ベーシストのリーダー作として、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースと、ベーシストとしてその超絶技巧なテクニックを全面的に押し出すケース、その両方が両立した、素晴らしい成果が結集したライブ盤である。

バンド全体としても、相当凄い、相当ハイレベルな演奏である。クリスチャン・スコットのトランペットはマイルスばりで良い雰囲気。ブルーナーJrのドラムは冒頭からパワー全開、これまた超絶技巧なドラミングで圧倒する。アレックスのアルトもシャープでブリリアント。

そして、なによりマーカス・ミラーのベースは超弩級な重低音の迫力とチョッパーなどのハイテクニックで、バンド演奏の底をガッチリと支え、自らのエレベを前面に押し出して、リーダー&プロデューサーとして目立ちまくり。エレギのソロの様に、エレベで目眩く旋律をいともたやすく、楽しそうに唄うように弾き上げていく。今は亡きジャコ・パストリアスの向こうを張った、充実したマーカルのエレベ。

このライブ盤、マーカス・ミラーのベーシストとしての実力とアレンジ&プロデュースの能力の二つの才能の高さを見せつける様な、素晴らしい内容のライブ盤だと思います。さすがは、マーカス・ミラー。最近のマーカスは充実しています。
 
 
 
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