2025年4月25日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・282

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。

これまでのジャズ盤紹介本では、ボーカリストとしてのチェットをクローズアップしているものが大多数なので、チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々は多いと思われる。

しかも、1980年代まで、我が国のジャズ・シーンは、米国西海岸(ウエストコースト)ジャズをほとんど横に置いて、東海岸ジャズばかりを褒めそやし、東海岸ジャズばかりを愛でてきた。そのおかげで、米国ウエストコースト・ジャズの情報が圧倒的に不足していたので、チェットのトランペットのパフォーマンスを評価しようにも評価できなかった。

Chet Baker & Stan Getz『West Coast Live』(写真左)。1953年6月12日(The Haig, Hollywood)と1954年8月17日(Tiffany Club, Los Angeles)でのライヴ録音。パシフィック・レーベルから、1997年のリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

【1953/06/12 Disc One and 1954/08/17, Disk Two tracks 1-4】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Carson Smith (b), Larry Bunker (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管のピアノレスのカルテット編成。

【1954/08/17, Disc Two tracks 5-7】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Russ Freeman (p), Carson Smith (b), Shelly Manne (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管の、フリーマンのピアノ入り、オーソドックスなクインテット編成。

全20曲中、17曲がピアノレスのカルテット編成。3曲のみ、ピアノ入りのオーソドックスなクインテット編成。ほとんどがピアノレスのカルテット編成なので、ピアノのコード弾きによる規制が無い分、17曲のピアノレスのカルテット編成の演奏の方が、フロント管の自由度が圧倒的に高い。
 

Chet-bakerstan-getzwest-coast-live

 
このライヴ盤は、チェットのトランペットが聴きもの。チェットのトランペッターとしての優秀性がとてもよく判る。ゲッツはジェリー・マリガンの代役で急きょ参加したそうだが、そのせいか、ちょっと大人しめで、チェットを常に立てるような吹奏は、彼の特質である「クールなテナー」がちょっと裏目に出ている様にも感じる。

CD2枚組、全編2時間のライヴ演奏。全編に渡って、チェットのトランペットが素晴らしい。破綻なく流麗な吹き回し、ウォームでクールな芯のある音色、アドリブ・フレーズにしっかり宿る歌心。

中音域を中心に吹きまくるチェットのトランペットは魅力満載。力強くバイタルな吹きっぷりのチェットは格好良い。

どの曲でも、チェットはイマージネーション溢れるアドリブ・フレーズを叩き出す。このライヴの録音は1953〜54年。ウエストコースト・ジャズの最大の特徴、聴き手を意識した、小粋で秀逸なアレンジについては、まだ発展途上。

このライヴでは、パーソネルに名を連ねる有望ジャズマンが、自らのイメージで、自らのパフォーマンスをアレンジしている。これが素晴らしい。

このライヴ盤を聴いていると、チェットは、米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターだったことが良く判る。ウエストコースト・ジャズが発展途上の時期、西海岸のジャズマン達の資質に才能による、優れたインタープレイとソロ・パフォーマンスがこのライヴ盤に記録されている。

しかし、この優れたライヴ音源が、録音後、44年もお蔵入りになっていたとは信じ難い。それでも、1997年によくリリースされたと思う。

1954年時点で、ウエストコースト・ジャズは、これだけ優秀なパフォーマンスを展開していた、ということが良く判る。
 
 

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2025年4月20日 (日曜日)

これもチェットのボーカル名盤

チェット・ベイカーを一躍、ジャズ・ボーカリストのスターにした名盤『Chet Baker Sings』(2025年4月17日のブログ参照)から、およそ30年後の1985年に録音された「アゲイン」盤。名盤『Chet Baker Sings』にかけて『Chet Baker Sings Again』。

Chet Baker『Chet Baker Sings Again』(写真左)。1985年10月2, 8日、オランダでの録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp, vo), Michel Graillier (p), Ricardo del Fra (b), John Engels (ds)。オランダのTimelessからリリースされた、孤高の無頼漢な男性ボーカリスト&トランペッター、チェット・ベイカーのボーカル盤である。

ジャズでもロックでも「アゲイン」盤は、本家本元盤に比べると内容が落ちる、のが定説だが、この「アゲイン」盤は違う。内容も「My funny Valentine」の再演も含め、名盤『Chet Baker Sings』の内容に比べて全く遜色ない、『Sings Again』のタイトルに恥じない名盤だと思う。

まず、元々本業のトランペットが溌剌としている。チェットは、1929年生まれなので、この「アゲイン」盤の録音当時は56歳。若い頃、麻薬をガンガンにやっていたので、かなり体にはガタがきていたと思われるが(実際、この盤の録音の2年半後、謎の転落死を遂げている)、溌剌と流麗に「安心・安定」のトランペットを吹いている。まず、これが良い。
 

Chet-bakerchet-baker-sings-again

 
そして、チェットの看板「唯一無二の中性的な男性ボーカル」が健在。アンニュイ感が漂うところが良いのだが、意外と溌剌として、気持ちが高揚している様な、意外と芯の入ったしっかりしたボーカルで、「ポジティヴなアンニュイ感」がユニーク。それでも、チェットのボーカルの個性はしっかり「ある」ので、これも良い。

収録された8曲は、どれもが、チェットのフェイバリット・ソングばかりで、それまでに幾度も他のアルバムで録音されている。が、「アゲイン」盤の本家本元『Chet Baker Sings』の収録曲とは2曲しかダブっていないのだが、この「アゲイン」盤にのみ収録された、本家本元盤とダブっていない曲についても、これはこれで聴き応えがある。

冒頭の「All of You」から、「Pacific Jazz」時代に戻ったような、それでいて味わい深い、溌剌としたトランペットと、溌剌アンニュイ中性ボーカルがグッと迫ってくる。2曲目「Body and Soul」は、ミディアムテンポで演奏される、ポジティヴなアンニュイ感が楽しめるボーカルがとても良い。

軽めのアニメっぽいイラストのジャケットが、どうにもジャズらしくなくて、リリース当時は敬遠していたが、21世紀に入って、ダウンロード音源で初聴きして、その内容の良さにビックリしたのを覚えている。この「アゲイン」盤、チェット・ベイカーの名盤として良いと思う。
 
 

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2025年4月17日 (木曜日)

チェットのボーカル名盤の一枚

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。但し、ジャズ盤紹介本ではボーカリストとしてのチェットをクローズアップしているものが大多数。チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々も多いのではないだろうか。

『Chet Baker Sings』(写真)。1954年2月15日の録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (vo, tp), Russ Freeman (p, celesta), Carson Smith, Joe Mondragon (b), Bob Neel (ds)。ラス・フリーマン率いるリズム・セクションをバックに、チェットがボーカルをメインに唄いまくる。チェット初のボーカル盤。

このアルバムが発売されるまで、チェットはほぼ楽器演奏のみを行っていた。母親は彼の歌声を気に入り、長年もっと歌ってほしいと頼んでいた (Wikipediaより)。ということで、チェットは、母親の要請を受けて、初のボーカル盤を録音している。なるほど、母親はチェットのボーカルの優秀性と個性を見抜いていた訳である。ただし、プロデューサーのディック・ボックは懐疑的だったそうだ(恐らく「中性的なボーカル」が好きではなかったのだろう...)。
 

Chet-baker-sings

 
チェットのボーカルは、男性ボーカルらしからぬもの。ヘタな女性ヴォーカルより、ずっと繊細で何処か退廃的な臭いが感じられる「中性的なボーカル」はチェットのボーカルの独特の個性。ジャズ・ヴォーカルにつきものの大胆なフェイクは使わず、メロディーをストレートに歌い上げるシンプルなスタイル。そして、まろやかな声で、耳元で囁くように、それでいて芯のあるボーカル。これが「癖になる」。

そんなチェットのボーカルが映えに映えるのが、チェットの代表的歌唱で有名な「My Funny Valentine」。この曲、チェットの歌唱ばかりが評価されるが、バックのラス・フリーマンのピアノ伴奏も見事。この見事なフリーマンの見事な歌伴に乗ってこそ、チェットの個性的なボーカルが映えに映える。チェットのボーカルとフリーマンの歌伴との「化学反応」が、チェットの「My Funny Valentine」の歌唱を最高のものにしている。

チェットの「中性的なボーカル」は、男性ボーカルではない、とする向きもあるが、それは「声色」についての好みの問題だろう。ただし、チェットのボーカルについては、テクニック・音程・歌心など、ボーカリストとして必要な資質・能力は高いものを保持していて、それを踏まえての「中性的なボーカル」なので、ボーカリストとしての力量は「一流」だと評価できる。まず、この盤では、チェットのボーカリストとしての優秀性をしっかりと確認したい。
 
 

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2022年7月13日 (水曜日)

チェットにとって超異色な作品

男性ジャズ・ボーカルについては、一に「フランク・シナトラ」、二に「チェット・ベイカー」、そして、三に「メル・トーメ」。この3人がずっとお気に入りである。シナトラは小学校の時代からラジオで聴き親しんでいたので「別格」なのだが、チェット・ベーカーは、ジャズを聴き初めてから、最初に好きになった男性ボーカリストである。

チェットの人生は「破天荒」そのもので、若かりし頃は天才プレイヤーで、ルックスも良く、女にモテモテだったチェット。しかし、麻薬と縁が切れなかった為、その麻薬癖がどんどん深刻になってゆき、1960年代から徐々に、チェットは第一線から消えていった。そして、1970年、マフィアから、トランペッターの命でもある「前歯」を抜かれるという仕置きをされるに至り、休業に至る。

しかし、 1974年に、ミュージシャン仲間や関係者の尽力により復活を果たし、シワシワのおじいちゃんとなってしまったチェットではあるが、そのシワと引き替えに、チェットは、演奏家としての「円熟味」を手に入れた。そして、フュージョン・ジャズにも進出し、CTIレーベルから、名盤『She Was Too Good To Me(邦題:枯葉)』をものにしている。

Chet Baker『You Can't Go Home Again』(写真左)。1977年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Hubert Laws (fl, piccolo), Paul Desmond (as), Michael Brecker (ts), John Campo (bassoon), Don Sebesky (arr, el-p), Kenny Barron (el-p), Richie Beirach (el-p, clavinet), John Scofield (g), Gene Bertoncini (ac-g), Ron Carter (b), Alphonso Johnson (el-b), Tony Williams (ds), Ralph MacDonald (perc), ここにストリングスが加わる。
 

Chet-bakeryou-cant-go-home-again

 
何だか、錚々たるメンバーである。パーソネルを見渡すと、この盤、フュージョン・ジャズ志向の盤ということが推察される。そして、冒頭の「Love for Sale」と、2曲目の「Un Poco Loco」(LP時代のA面)を聴くと、思わず「仰け反る」(笑)。「ど」が付くほどのジャズ・ファンクのビートにのって、スタンダードの名曲が演奏されるのだ。実にシュールな響きだが、意外とまとまっているのだからジャズは面白い。

こういうジャズ・ファンクが基調の演奏の中で、トニー・ウィリアムスのドラムは大暴れ。マイケルBもジョンスコの「イケイケ」のブロウ。そんな中、当のリーダーのチェットのトランペットは、悠然とした、リリカルで流麗な「チェット節」溢れるブロウを吹きまくるのだから、何が何だか判らない(笑)。それでも、チェットのリリカルなトランペットだけが前面に浮き出てくるのだからジャズは面白い。

しかし、後半(LP時代のB面)の「You Can't Go Home Again」〜「El Morro」はジャズ・ファンクはどこかへ雲散霧消、リリカルそのもの、コンテンポラリーな純ジャズ志向のフュージョンで迫ってくる。この後半の2曲は聴き応えがある。「El Morro」は、スパニッシュ志向の「哀愁旋律」路線であるが、チェットのリリカルなトランペットが実に良く映える。マイケル・ブレッカーのテナーも良好。

CDリイシュー時、なんと16曲が追加されて全20曲の重厚な内容になっているが、LP時代は前半の4曲のみ。この4曲のみが良くて、A面は良い意味で「ハチャメチャな」ジャズ・ファンク、B面は「リリカルな」純ジャズ志向のフュージョン・ジャズ。この対比が面白くて、LP時代は何度かジャズ喫茶で耳にした。とにかく,この盤は、チェットにとって超異色な作品。でも、フュージョン者の方々なら、意外と楽しく聴ける「小粋な好盤」だと思います。
 
 

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2020年12月 6日 (日曜日)

聴き心地満点「ベーカーの休日」

ウエストコースト(米国西海岸)ジャズは「聴かせる」ことに重きを置いているように思える。優秀なアレンジ然り。テーマ部の魅力的なユニゾン&ハーモニー然り。流麗なアドリブ・フレーズ然り。東海岸ジャズの「飛び散る汗と煙」のイメージ、手に汗握る、テンションの高いアドリブとは全く正反対の演奏アプローチ。

Chet Baker『Baker's Holiday』(写真左)。1965年5月、なんとNYでの録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (flh, vo), Leon Cohen, Henry Freeman, Wilford Holcombe, Seldon Powell, Alan Ross (reeds), Hank Jones (p), Everett Barksdale (g), Richard Davis (b), Connie Kay (ds), Jimmy Mundy (arr)。リーダーのチェット・ベイカーはここではフリューゲルホーンを吹いている。

ソニー・クリス盤の時にもコメントしたが、1965年の録音なので、ジャズの世界では西海岸ジャズ、東海岸ジャズの区別が無くなって、西海岸ジャズ出身のチェット・ベイカーが、東海岸のNYに出向いての録音になったのだろう。但し、演奏のテイストは「西海岸ジャズ」。優れたアレンジで「楽しく聴かせる」ジャズを表現しているところは見事だ。
 
 
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まず、フロントのリード楽器5人でビッグバンドをイメージした、分厚い重厚なアンサンブルを実現している。一聴すると「ビッグバンドがバックかな」と思うのだが、切れ味良くブリリアントな金管楽器の音が薄い。逆に金管楽器の音が薄いので、バックの演奏が柔らく響いて、チェットのボーカルがしっかりと浮かび上がる。アレンジの勝利だろう。

金管楽器はチェットのフリューゲルホーン1本。このチェットのフリューゲルホーンが上手い。ボーカルの上手さは以前から定評があるのだが、チェットはトランペット&フリューゲルホーンを吹かせても上手い。音がしっかりと太く流麗で、切れ味良くブリリアント。速いテクニカルなフレーズは滅多に吹かないが、しっかりと1音1音を丁寧に押さえた、暖かで柔軟なフレーズが実に心地良く耳に響く。

ギターを加えたピアノ・トリオの「リズム隊」も良い伴奏を提供していて、とりわけチェットのボーカルを引き立てていて立派。さすが伴奏上手のハンク・ジョーンズのピアノである。聴かせる「西海岸ジャズ」の雰囲気全開のスタンダード集。リラックスして聴けるジャズ。要所要所でチェットのボーカルがキラリと輝き、要所要所でチェットのフリューゲルホーンがブリリアントに響く。味のある小粋なジャズ盤です。
 
 
 

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2020年10月12日 (月曜日)

掘り出し物のビッグバンド盤 『Chet Baker Big Band』

最近のジャズ盤リサーチはネット・サーフィン中心。特に音楽のサブスク・サイトを定期的に巡回している。意外と最近、リイシュー盤が結構アップされていて、LPやCDの時代にはお目にかかったことの無い「隠れ好盤」が、ヒョコッとアップされていたりする。改めて、ジャズ盤の「裾野」は広いなあ、と感心する。

『Chet Baker Big Band』(写真左)。1956年10月18, 19, 26日の3回に分かれて録音されている。ちなみにパーソネルは以下の通り。

【1956年10月18, 19日の録音】
Chet Baker (tp), Bob Burgess (tb), Fred Waters (as), Phil Urso (as, ts, bs), Bob Graf (ts), Bill Hood (bs), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds, 10/18 only), James McKean (ds, 10/19 only)。

【1956年10月26日の録音】
Chet Baker, Conte Candoli, Norman Faye (tp), Frank Rosolino (tb), Art Pepper, Bud Shank (as), Bill Perkins, Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Lawrence Marable (ds)。

この盤、実はあまり期待せずに「チェット・ベイカーがビッグバンドを主宰することあったんや」という興味だけでこの盤を聴き始めた。冒頭の「Tenderly」を聴き始めて「あれっ」と思った。
 
 
Chet-baker-big-band  
 
 
一通り聴き終えて、もう一度、頭から聴き直す。リーダーのチェットのトランペットも良い音出してるのだが、ビッグバンドを構成するメンバーそれぞれが実に良い音出している。3度聴き直して、パーソネルを調査する。それが上記のパーソネル。米国西海岸ジャズの一流どころがズラリ。

続く「Mythe」。ビッグバンドの音が少し変わる。良い演奏なんだが、冒頭の「Tenderly」に比べると、ちょっとレベルが落ちるというか、何かが足らない感じがする。でも、水準以上の良い演奏なんですよ。そして、聴き進めて、7曲目「Darn That Dream」で、また、覇気溢れる、良い音するビッグバンド演奏が戻ってくる。

全10曲聴き終えて、パーソネルを確認して、1曲目「A Foggy Day」、7曲目「Darn That Dream」、そして、10曲目の「Tenderly」の3曲が、米国西海岸ジャズの一流どころがズラリ集まったスペシャルなビッグバンド。チェット・ベイカーのトランペットが素晴らしく良い音で響きます。

残りの7曲も悪く無いですよ。水準以上のビッグバンド・サウンドで、その中でチェット・ベイカーのトランペットが映えに映えます。こんな盤があったなんて。このビッグバンドを録音した経緯なんかも判ったら楽しいでしょうね。掘り出し物の好盤です。
 
 
 

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2020年3月 5日 (木曜日)

チェットのトランペットが映える

3月である。今日は朝から北風がかなり強くて、日中、気温が上がれど体感気温は下がりっぱなしで、冬に逆戻りの感があるが、今年は暖冬傾向で暖かい日が多い。一昨日などは、4月上旬の陽気だったのだから、ちょっと早いけど春である。関西では、東大寺二月堂の「お水取り」が終わったら春、と言われるが、確か、お水取りは12日だったから、如何に今年は暖かいか、が判る。

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「春は米国西海岸ジャズ」である。暖かくホンワカした気候にピッタリやなあ、と昔から思っていて、春やなあ、と思ったら、選盤は暫く米国西海岸ジャズに偏る。お洒落なアレンジ、響きが心地良いユニゾン&ハーモニー、流麗でキャッチャーなアドリブ展開。耳に優しく、心に穏やかに響く、それでいて、やっていることはかなり高度。僕にとっては「春のジャズ」って感じなんですよね。

『Chet Baker & Crew』(写真左)。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、 Chet Baker (tp), Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds), Bill Loughborough (chromatic timpani)。フロント2管(トランペット&テナーサックス)のクインテット編成に、一部、ティンパニが入る。リーダーのチェット・ベイカーについては、トランペットに専念している(CDのボートラにはボーカル入りがあるが、正式なアルバムとしては割愛)。
 

Chet-baker-crew  

 
この盤でのチェットのトランペットは溌剌としている。流麗にストレートに吹きまくっている。チェットのトランペッターとしての才能を遺憾なく発揮している。とても、当時、重度の「ジャンキー」だったとは思えない。しかし、良く聴くと、溌剌としたトランペットの響きの裏に「愁い」というか「翳り」がそこはかとなく漂っている。しかし、これが良いのだ。健康優良児のチェットなんてありえない。アンニュイで翳りがないと物足りない。

演奏の印象は明確に「米国西海岸ジャズ」。冒頭の「To Mickey's Memory」を聴くだけで直ぐに判る。整った演奏、爽快なスイング感、適度な演奏の熱量、適度にアレンジされ、熱くも無くクール過ぎることも無い。爽快感溢れる演奏がズラリと並ぶ。バックの演奏も良い感じなのだがあ、やはり、この盤はチェットのトランペットを聴く盤だろう。この盤のチェットのトラペットを聴くと、当時、トランペッターとして人気絶大だったことが良く判る。

タイトルを訳すと「チェット・ベイカーと乗組員たち」。ジャケ写がヨットなので、チェットが船長(リーダー)、バックが乗組員(サイドメン)とかけた、ちょっとお洒落なタイトル。そんな和気藹々とした雰囲気が伝わる「心地良い演奏」がギッシリと詰まっている。歴史に残る名盤とは思わないが、米国西海岸ジャズの「レベルの高さ」と「楽しい雰囲気」をよく伝えてくれる好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
  まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.01
  青春のかけら達 ・・・・ 荒井由実『MISSLIM (ミスリム)』 

 

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2019年11月 3日 (日曜日)

秋は「米国西海岸ジャズ」が良い

秋には「米国西海岸ジャズ」が映える。アレンジ良好、テクニック良好、クールで「聴かれる」ことに重きを置いた「ポップなジャズ」。それが「米国西海岸ジャズ」。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ジャズを聴くのに最適なシーズンである秋に、毎年「米国西海岸ジャズ」祭がいきなり始まる。今年も先日から「米国西海岸ジャズ」祭が始まっている。

1980年代まで、我が国は、どちらかと言えば「米国東海岸ジャズ」偏重だったので、「米国西海岸ジャズ」は見向きもされない時期が続いた。が、「スイング・ジャーナル・プレゼンツ/ザ・ウエスト・コースト・ジャズ」が1991年にリリースされ、スイング・ジャーナルで特集記事が組まれたことを切っ掛けに、再び市民権を得て現代に至っている。

米国西海岸ジャズを語る上で、このジェリー・マリガンの名前は外せない。ファンクネス控えめ、ほど良くアレンジされた端正でクールな響きのジャズ。白人メインのジャズの音の基本。そして、味のある、クールなバリサク。マリガンのリーダー作はどこから聴いても「米国西海岸ジャズ」。確かに、ジャズ盤紹介本でもジャズ雑誌でも、「米国西海岸ジャズ」の紹介の中で、マリガンのこの盤は絶対といって良いほど顔を出す。
 

Gerry-mulligan-quartet-volume-1  

 
『Gerry Mulligan Quartet Vol.1』(写真左)。1952年8月と10月の録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Chet Baker (tp), Jimmy Rowles (p), Joe Mondragon, Carson Smith, Bob Whitlock (b), Larry Bunker, Chico Hamilton (ds)。メンバーを見渡すと、米国西海岸ジャズを代表するジャズマンばかりがズラッと並ぶ。基本はピアノレスのカルテット編成。

この盤に詰まっている音は「アレンジ良好、テクニック良好、クールで「聴かれる」ことに重きを置いたポップなジャズ」。米国西海岸ジャズの特徴そのものである。録音時期は1952年。この盤以前に「米国西海岸ジャズ」の特徴を色濃く反映したアルバムは基本的に無いので、この盤が米国西海岸ジャズの萌芽、米国西海岸ジャズの発祥とされる。確かに、この盤の内容は米国西海岸ジャズの特徴そのものをしっかりと音にしている。

マリガンのバリサクとチェットのトランペットの音が実にクールに響く。決して熱くならない。熱くなっても「クールに熱く」。演奏テクニックが優秀なので、演奏展開に破綻は無い。聴く者にとって決して耳触りにならない、整然とした破綻の無い演奏。アレンジが優秀で、その優秀なアレンジが故に、演奏全体が良い意味で「抑制」されている。確かに当時の「米国東海岸ジャズ」とは対照的なジャズ。しかし、これも立派なジャズである。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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2019年1月18日 (金曜日)

西海岸のビッグバンドな好盤

米国西海岸ジャズの特徴のひとつは「優れたアレンジ」。ジャズを鑑賞音楽として捉えて、勢い任せの一過性の即興演奏では無く、しっかりとアレンジを施して、良質の鑑賞音楽としてのジャズを世に供給する。これが、1950年代、米国西海岸ジャズの大きな特徴である。事実、優れたアレンジが施された好盤が米国西海岸ジャズには沢山ある。

『Theme Music from "The James Dean Story"』(写真)。「Featuring Chet Baker & Bud Shank」がサブ・タイトルに付く。1956年11月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Bud Shank (as, fl), Don Fagerquist, Ray Linn (tp), Milt Bernhart (tb), Charlie Mariano, Richie Steward (as), Bill Holman, Richie Kamuca (ts), Pepper Adams (bs), Claude Williamson (p), Monty Budwig (b), Mel Lewis (ds), Mike Pacheco (bongos)。

チェットのトランペットとシャンクのアルトの2管をメインに、トランペットとテナーとアルトが2本ずつ、トロンボーン、バリサクが1本ずつ。バックにピアノ・トリオがリズムセクションに就く。総勢13名の小ぶりなビッグ・バンド構成。この13名が、米国西海岸ジャズの最大の特徴の1つである優れたアレンジを施して、ディーンの伝記映画に使用された音楽をお洒落なジャズに仕立て上げたもの。
 

Theme_music_from_the_james_dean_sto

 
まず、フィーチャリングされている、チェットのトランペットとシャンクのアルト・サックスがさすがに素晴らしい。優れたアレンジに乗って、流麗かつ力感溢れるクリアな音で即興演奏を繰り広げている。とにかく上手い。結構、難しいアドリブ展開をしているんだが、事も無げに流麗に吹き上げていくので聴き易いことこの上無い。良い意味で、耳に優しい、耳当たりの良いジャズである。

バックに耳を向けると、クロード・ウィリアムソンの哀愁感漂うピアノが印象的。ジェームス・ディーンは1955年9月30日に亡くなっているので、この盤の録音時には、まだまだディーンに対する追悼の意が強くあったと思うが、この盤でのウィリアムソンのピアノには哀愁が強く漂う。これが意外とジャジーで良い雰囲気なのだ。

そして、バックの管のアンサンブルの中で、突出した音を奏でるペッパー・アダムスのバリサク。このブリッゴリッとしたバリサクの音は、流麗なチェットのトランペットとシャンクのアルトとは全く正反対の音で、この音の対比が優れたアレンジと合わせて相乗効果を生んで、演奏全体のジャズ感を増幅している。優れたアレンジと合わせて、米国西海岸ジャズでのビッグバンドの好盤としてお勧めの一枚です。
 
 
 
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2019年1月 8日 (火曜日)

これは良いよ「ウラ名盤」・3

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。但し、ジャズ盤紹介本ではボーカリスト(アンニュイで中性的な唄声が個性)としてのチェットをクローズアップしているものが大多数で、チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々も多いのではなかろうか。

加えて、麻薬漬けでジャズメン人生の半分以上を棒に振った破滅型のミュージシャンの最右翼の一人でもあるので、真面目なジャズ者の方々からはあまりウケは良く無い。でも、ですね。チェット・ベイカーのトランペットって、とっても魅力的なんですよ。若かりし頃はテクニックは優秀、角の取れた程良く丸い芯の入った音色、ストレートな吹きっぷりで、アドリブ・フレーズは流麗。

『Chet Baker & Crew』(写真左)。1956年7月、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds), Bill Loughborough (timpani)。トランペットとテナーがフロントのクインテットに、ティンパニーが客演するというメンバー構成。
 

Chet_baker_crew

 
この盤では、チェットはトランペットのみに専念している。CDのボートラにはラストの1曲だけボーカルが入っているが、オリジナル盤には入っていない。純粋にチェットのトランペットを心ゆくまで愛でることの出来る好盤である。特にこの盤については、チェットがトランペットをバリバリに吹きまくっているのが特徴。

バップ・スタイルの曲をバリバリに吹きまくっている。テクニックは優秀で流麗なアドリブ・フレーズ、芯の入った程良く丸いブリリアントな音色、中音域を中心に吹きまくるチェットのトランペットは魅力満載。力強くバイタルな吹きっぷりのチェットは珍しいといえば珍しい。思わず、上手いな〜と感心し、思わず聴き入ってしまう。

ジャケットも良い雰囲気。タイトル通り、ヨットの上にチェットと乗組員たち。進むべき方向を指し示すように身を反らして、片手でトランペットを吹くチェット。陽射しはうららか、明らかに米国西海岸の雰囲気。当時、チェットは27歳。若かりし日のチェットのトランペットはどれだけ素晴らしかったのか。この盤を聴けば、それが追体験出来る。

 
 

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