ドーハムのペスト・プレイの一つ
ケニー・ドーハムは、1924年8月生まれ、1972年9月に48歳で逝去。リリースしたリーダー作は20枚。最後のリーダー作は1965年だから、その後7年間は引退状態。初リーダー作が1953年なので、ドーハムの活動期間は12年と短いものだった。
ドーハムはちょっと不思議なトランペッターで、ジャズマン同士の中で、米国評論家の間では何故か評価が高い。しかし、人気はイマイチで、アルバムの売り上げも芳しいものではなかったらしい。
一方、我が国では、昨日ご紹介した『Quiet Kenny(静かなるケニー)』(1960年)の存在だけが突出していて、ドーハムに「哀愁のトランペッター」というキャッチフレーズを付けて、評論家はその哀愁感溢れるトランペットを褒めそさえ、聴き手はその哀愁感溢れるトランペットに聴き惚れる、という偏った状況が続いている。
『Kenny Dorham and The Jazz Prophets, Vol.1』(写真左)。1956年4月4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), J.R. Monterose (ts), Dick Katz (p), Sam Jones (b), Arthur Edgehill (ds)。ケニー・ドーハムがリーダーの超短命のグループ「The Jazz Prophets」の唯一のスタジオ録音盤。ちなみに超短命なバンドだったので「Vol.2」はありません。
グループ名の「The Jazz Prophets」=「ジャズの預言者たち」となるのだが、この盤の内容は、こってこてのハードバップ。しかも、ドーハムの好調なトランペットと、マイナーな存在のテナー奏者、モンテローズの希少なパフォーマンス、白人ピアニスト、ディック・カッツの個性的なピアノが売りの盤で、グループ全体のパフォーマンスやインタープレイについては、当時のハードバップとして水準レベルかな。
全編に渡って、リーダーのドーハムのトランペットが元気溌剌。もともと、ドーハムのトランペットは、ビ・バップにバリバリ吹きまくるトランペット。この盤に詰まっているドーハムのパフォーマンスが「ドーハムのトランペットの本質」である。
冒頭の「The Prophets」では、ドーハムとモンテローズが順に素晴らしくファンキーなソロを聴かせてくれる。ピアノのカッツが白人らしい小粋で流麗なフレーズで、フロント2管をサポートする。とにかくドーハムが元気。
2曲目の「Blues Elegante'」は、ドーハムのミュート・プレイもが秀逸。ミッドテンポな演奏の中でのモンテローズのテナーが良い。このテナーマンは、ミッドテンポの演奏に強い。イマージネーション溢れる上質なソロを聴かせてくれる。
3曲目の「DX」はアップテンポなファンキー・ジャズな演奏。ドーハムもモンテローズもバリバリ吹きまくっている。カッツの美しい響きのピアノが個性的で目立つ。
続く「Don't Explain」は、有名スタンダードなバラード曲。ドーハムの泣きのミュート・プレイが見事。このバラード曲でのドーハムのトランペットは端正で柔和で芯がしっかり入ったトランペット。どうも、ドーハムもバラード曲の様に、ミッドテンポ〜ややスローな演奏に強いみたい。とにかくドーハムが元気である。
ラストの「Tahitian Suite(タヒチ組曲)」は、どの辺が「組曲」なのかは判らないが、ドーハムが力感溢れるビ・バップなトランペットをバリバリ吹きまくる。とにかく、この曲でもドーハムは元気である。
「フレーズがちょっと危うい」ところ、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところが、ドーハムの個性のひとつとしてあるのだが、この盤ではその頻度が少ない。意外とこの盤は、ドーハムのトランペットの本質を明確に突いた、ドーハムの「ビ・バップなバリバリ吹きまくる」トランペットのベスト・プレイを記録した好盤の一枚として評価できるのではないか。
どうしても好意的に評価できないアルバみが1枚、入手できなかったリーダー作が1枚、計2枚の欠盤はあるのですが、この盤のレビューにて、当ブログにおける「ドーハムのリーダー作のレビュー」は完了。当ブログの右下の「カテゴリー」欄の中で「ケニー・ドーハム」をクリックしていただければ、当ブログでドーハムのリーダー作のレビューを読むことが出来ます。よろしかったら、ご一読を。さて、お後がよろしいようで...(笑)。
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