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2026年7月20日 (月曜日)

AEOCの”Great Black Music”

ECMレコード・カタログの1100〜1200番台のカタログを見ていて、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのアルバムが、ECMレコードのもとで4枚もリリースしていることに気がついた。

今から語るアルバムは、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEOC)が、5年間のレコーディング活動休止を経てリリースした最初のアルバムであり、ECMレーベルからのグループ初のアルバムである。

Art Ensemble of Chicago『Nice Guys』(写真左)。1978年5月、独の「Tonstudio」での録音。ECMの1126番。ちなみにパーソネルは、Lester Bowie (tp, celeste, b-ds), Joseph Jarman (sax, cl, perc, vo), Roscoe Mitchell (sax, cl, fl, perc), Malachi Favors Maghostut (b, perc, melodica), Famoudou Don Moye (ds, perc, vo)。

シカゴ派フリージャズの伝説的グループであるアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(Art Ensemble of Chicago=AEOC)の、ECMレーベルでの初のアルバム。活動休止以降、5年振りのアルバムであり、グループにとって大きな転換点となったアルバムでもある。

1960年代後半から、アフリカの民族音楽や演劇的な要素を取り入れたアヴァンギャルドな即興演奏で知られていた彼らが、プロデューサーのマンフレート・アイヒャー率いるECMとタッグを組んだ作品。

ECMレコードのアルバム制作方針と録音手法により、従来の荒々しいフリー・ジャズとは一線を画す、整理されたエレガントな空間構成と緻密なアンサンブルがメインのフリー・ジャズに変身しているのが判る。
 

Art-ensemble-of-chicagonice-guys

 
5人のメンバーそれぞれが作曲を手掛け、ユーモア、アブストラクト、叙情性など多彩な世界観が1枚に凝縮されている。彼らの特徴は、サックスやベースといった通常のジャズ楽器に加え、「リトル・インストゥルメンツ(おもちゃの楽器)」と呼ばれる無数の小楽器を使用することです。これが、他のフリー・ジャズな演奏との大きな差異化要素のひとつになっている。

この盤でのAEOCのフリー・ジャズの特徴は、従来の一般的なフリー・ジャズの、エモーショナルなエネルギーの爆発や、高密度で激しい即興演奏では無く、音と音の間のスペースを重視した、静寂と空間を聴かせるフリー・ジャズであるということ。この「音の引き算の美学」は、従来のフリー・ジャズの熱量とは対極にある、現代音楽に近い緻密な空間構成を持っている。これが、AEOCならではの、唯一無二のフリー・ジャズになっている。

加えて、多くのフリー・ジャズが政治的メッセージや精神性を帯び、シリアスで難解な方向へ進む中、AEOCは演劇的なユーモアを前面に出している。

1曲目の「Ja」が象徴的で、フリー・ジャズの不穏な空気から突如として、当時最先端のポップスであった「レゲエ」のリズムへとジャンプする。リトル・インストゥルメンツを鳴らし、コミカルな歌声を即興の中に融合するスタイルは、シリアス一辺倒だったフリー・ジャズにおいて極めて異質であり、ポップかつ批評的な新しさを持っている。

そういうAEOCのフリー・ジャズは、自らの音楽をフリージャズという枠に留めず、「古代から未来へ(Ancient to the Future)」を掲げた「Great Black Music」と呼んでいる。R&B、レゲエ、ゴスペル、ファンクなど、黒人音楽の歴史すべてを内包したアプローチが、本作でより洗練された形で提示されている。欧州系フリー・ジャズの名盤です。
 
 

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2020年7月 8日 (水曜日)

ジャズ者として避けて通れない

ジャズの演奏スタイルの1つに「フリー・ジャズ」がある。従来のジャズの奏法を踏まえることなく、自由に演奏するスタイル、いわゆる「音階(キー)」「コードあるいはコード進行」「リズム(律動)」、以上3要素から自由になって演奏するのが「フリー・ジャズ」。しかし、これら3要素を全て自由にすると「音楽」として成立しないので、「必要最低限の取り決め」のもと、フリーに演奏するということになる。

乱暴な例えだが、絵画で言うと「現代絵画」に当たるのがフリー・ジャズ。20世紀に入ってからのフォーヴィスム以降、現代に至るまでの「伝統的でなく、古典的でない」絵画。それをジャズに置き換えると「フリー・ジャズ」になる。前衛的でアバンギャルド、激しいフレーズと無調のアドリブ。通常の鑑賞音楽と比較すると著しく難解。しかし、高度なテクニックと音楽性を有しないと「フリー・ジャズ」としての音楽を表現出来ないので、これはこれでジャズ者としては無視出来ない。

Art Ensemble Of Chicago『Fanfare for the Warriors』(写真)。邦題『戦士への讃歌』。1973年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Lester Bowie (tp, perc), Malachi Favors Maghostut (b, perc, vo), Joseph Jarman (sax, cl, perc), Roscoe Mitchell (sax, cl, fl, perc), Don Moye (ds, perc), Muhal Richard Abrams (p)。アート・アンサンブル・オブ・シカゴは、アメリカ合衆国シカゴ出身のフリー・ジャズ・バンド(略称 : AEOC) 。
 
 
Fanfare-for-the-warriors  
 
 
当ブログの主たる目的は「ジャズ者初心者向けのジャズ盤紹介」。フリー・ジャズを扱うのは、ブログの運営目的にそぐわないのでは無いか、という声もあるが、僕はそうは思わない。フリー・ジャズは「ジャズの奏法のトレンド」の1つとして確立〜認定されており、ジャズを理解するには避けては通れない。一度は聴いてみて、自らが体験して自らが評価するのは必要だろう。ということで、まずはこの「AEOC」である。

聴けば判るのだが、AEOCのフリー・ジャズは、先に書いた「必要最低限の取り決め」が充分に機能した、計算された「調性と無調」が混在した演奏。それぞれの楽器はフリーな演奏はするが、音の調性は取れている。しかしながら「音階」「コード」「リズム」以上3要素からフリーに演奏する部分がメインで、そういう意味では「フリー・ジャズ」と評価して良いだろう。この『戦士への讃歌』についても、音楽としての必要最低限の調性は取れていて、非常に聴き易い「フリー・ジャズ」に仕上がっている。

即興演奏というジャズの最大の個性を最大限に活かして、様々なものを表現する。アバンギャルドでもありスピリチュアルでもある、この即興の「音」による、自由度・創造性の高いパフォーマンスは他のジャンルの音楽には無い。そういう意味で避けては通れない「フリー・ジャズ」である。優れたフリー・ジャズにおいては、明らかにその即興表現は群を抜く。意外と聴いてみたら面白いジャズでもある。但し、聴き手を選ぶことは間違い無い。
 
 
 

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