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2026年2月16日 (月曜日)

硬派クロスオーバーなベンソン

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの代表的レーベルである。クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、聴き手の「聴き心地、聴き易さ」を優先した、イージーリスニング志向のアルバムが多く見られるが、中には、純ジャズ志向の、なかなか硬派でメインストリームな盤もあって、これが意外と楽しめる。

George Benson 『Body Talk』(写真左)。1973年7月17–18日の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Earl Klugh (rhythm-g), Harold Mabern (el-p), Ron Carter (ac-b), Gary King (el-b), Jack DeJohnette (ds), Mobutu (perc, congas), Frank Foster (ts), Gerald Chamberlain Dick Griffin (tb), Jon Faddis, John Gatchell, Waymon Reed (tp, flh), Pee Wee Ellis (arr, cond)。

ブルース・フィーリング、ソウル・フィーリングに溢れる、純ジャズ志向のクロスオーバー・ジャズ盤である。演奏全体の構成は、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・ジャズだが、演奏されるジャズの雰囲気は「純ジャズ」。1960年代後半から、エレクトリック楽器の導入が進んだジャズ界の中で、エレクトリック楽器を活用しながらも、演奏内容は硬派な純ジャズという、なかなかの内容のベンソン盤である。
 

George-benson-body-talk

 
とにかく、ベンソンが弾きまくる、弾きまくる。バックには、ハードバップ期から、そして、当時の新進気鋭のジャズマン達が大集合して、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・グルーヴなバッキングを展開するが、そんな充実のバックが霞むほどのベンソンのエレギの弾きっぷり。何かに取り憑かれたように、鬼気迫る、それでいて、どこか余裕のある素晴らしい弾き回しに惚れ惚れする。

ソウル・フィーリング溢れる、R&B志向のクロスオーバーな演奏も良い味を出している。ベンソンのソウル・クロスオーバーな演奏は、ファンクネスを過度に出さず、スマートでライトなファンクネスを撒き散らしながら、ブラス・セクションを絡めながら、R&Bなグルーヴ、モータウン名グルーヴを醸し出しながら、やっぱり「弾きまくる」。このブラス・セクションが「キモ」。R&B、そしてモーダウンには、ブラス・セクションが良く似合う。

全5曲中、4曲がベンソンの作(1曲目「Dance」だけ、エリスとの共作)気合いが入っている。ウエス・モンゴメリーの後継者と目されて脚光を浴びたベンソンではあるが、この盤では、ウエス・モンゴメリーの影響下から抜け出て、ウエスの弾きっぷりを下敷きにしつつ、ベンソンならではのギターの個性を確立させているのが、この盤のパフォーマンスを聴いていて、それが良く判る。純ジャズ志向の良質なエレギである。
 
 

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2026年2月 9日 (月曜日)

フュージョン・ジャズ前夜の音

CTIレーベルのアルバムには、プロデュースの方向性として、純ジャス、メインストリーム・ジャズの要素をしっかり弾き継ぐ方向性と、クラシックの要素を取り入れて、イージーリスニング志向とする方向性と、大きく分けてこの2つの方向性があったと理解している。そして、ジョージ・ベンソンは「前者」の範疇に入る。

『Benson & Farrell』(写真左)。1976年1月と3月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Joe Farrell (fl,ss), Don Grolnick (el-p), Sonny Bravo (ac-p), Eric Gale, Steve Khan (g), Will Lee, Gary King (b), Andy Newmark (ds), Nicky Marrero (perc), Jose Madera (congas), David Matthews (arr, cond)。

フュージョン・ジャズ名盤『Breezin'』前夜、ジョージ・ベンソンのフュージョン・ジャズへの移行を捉えた好盤である。前作の『Good King Bad』で、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したベンソンが、「ベンソンが考えるフュージョン・ジャズ」への移行を図っていることが良く判る内容になっていて、フュージョン・ジャズ者には、実に興味深い内容になっている。
 

Benson-farrell
 

フロントのベンソンのギターとファレルのソプラノ・サックスは、そのソロ・パフォーマンスは「純ジャズ」の香りがプンプンする。そして、バックの伴奏が、どこかソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先のフュージョン・ジャズの演奏スタイルが確立している。

この「純ジャズ」志向のフロントと、「フュージョン・ジャズ」志向のバックとの融合がこの盤の聴きどころ。フュージョン・ジャズは「甘い、緩い、安易」なんて揶揄されていたが、この盤を聴くと判るが、そんな評価はとんでもない。テクニックも優秀、フロント・ソロは硬派でシビア、バックの演奏も高度で聴き心地が良い。これが、フュージョン・ジャズのひとつの「プロトタイプ」であると思っている。

ただ、リリース当時は、賛否両論だったと聞く。確かに、それまでのジャズ盤とは雰囲気が異なる。つまり、「ソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先の音志向」が、それまでない音世界だったので、旧来のジャズを良しとする向きには「違和感満載」だったのだろう。しかし、今の耳には違和感は無い。フュージョン志向コンテンポラリーなジャズと評価しても良い、硬派でジャズに真摯な内容の「隠れ好盤」だと思う。
 
 

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2026年2月 8日 (日曜日)

R&B志向のジャズ・ファンク

当バーチャル音楽喫茶「松和」では、純ジャズのみならず、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもしっかり押さえていて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤、好盤もこのブログで、いろいろご紹介してきた。

で、である。このところは「CTIレーベル盤」祭り。『ALLTIME COLLECTION』と題した再発シリーズが始まり、やっとCTIレーベルのカタログをほぼ網羅したCD復刻がなされた。それに合わせてレコード・コレクターズ誌でも特集が組まれ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもお気に入りの当ブログでは、絶対に無視出来ない。

George Benson『Good King Bad』(写真左)。1975年7, 10, 12月の録音。1976年、CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。クロスオーバー&フュージョン畑の強者が勢揃い。アレンジは、デヴィッド・マシューズ、指揮はボブ・ジェームス。

George Benson (g, vo), Eric Gale (g), Don Grolnick (clavinet), Bobby Lyle, Roland Hanna, Ronnie Foster (key), Gary King (b), Andy Newmark, teve Gadd, Dennis Davis (ds), Sue Evans (perc), David Friedman (vib), Joe Farrell, Romeo Penque, David Tofani (fl), David Sanborn (as), Michael Brecker, Frank Vicari (ts), Ronnie Cuber (bs), Fred Wesley (tb), Randy Brecker (tp)。
 

George-bensongood-king-bad

 
ソウル・ジャズを越えて、アーバンで洒落たR&B志向のジャズ・ファンクにシフトした、黒いジョージ・ベンソンである。ダンスフロアにさらに合致した、踊れるクロスオーバー・ジャズ。モータウンからのR&Bのグルーヴを見事にジャズに取り込んで、モータウン・クロスオーバー・ジャズとでも名付けても良い様な、上質なR&B志向のジャズ・ファンクがこの盤に溢れている。

ソウルフル&ファンクネスを前面に押し出した音作りになっているので、ベンソンはこれまでの様に、テクニックを前面に押し出した「弾きまくり」のベンソンではなく、R&B志向のグルーヴに心地良く乗った、余裕のあるファンネス溢れる「弾きまくり」のベンソンがこの盤にいる。

ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにシフトする直前の、唄って弾きまくるギタリストにシフトする直前の、上質なR&B志向のジャズ・ファンクを確立した感のあるジョージ・ベンソン。ソウル・ジャズを推し進めて、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したジョージ・ベンソン。魅力あるアルバムに仕上がっていると思う。好盤です。
 
 

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2026年1月31日 (土曜日)

ジョージ・ベンソン ”白いうさぎ”

唄って弾きまくるレジェンド・ギタリスト、ジョージ・ベンソンの「異色盤」。ターニング・ポイントとなった「唄って弾きまくる」までの、初期の「弾きまくり」ベンソンは、R&B志向のソウルフル&ジャズファンクなパフォーマンスがメイン。しかし、このアルバムは、ベンソンのリーダー作の中では「異端」で、基本が「スパニッシュ・タッチ」。CTIサウンドを創り上げた天才アレンジャー、ドン・セベスキー色が強く出た「異色盤」。

George Benson『White Rabbit』(写真左)。1971年11月の録音。CTIからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (el-g), Earl Klugh (ac-g : 5), Jay Berliner (Spanish-g), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b : 1, 3, ac-b :2, 4, 5), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc, vo), Phil Kraus (vib, perc), Gloria Agostini (harp)。ここに、木管楽器とブラス・セクションが加わっている。

タイトル曲は、グレイス・スリックによるジェファーソン・エアプレインの名曲のカヴァー。「California Dreamin'」は、ママス&パパスのヒット曲のカヴァー。そこに、有名サウンド・トラックの「"Theme from Summer of '42(おもいでの夏)」があり、エイトル・ヴィラ=ロボスの「ブラキアナス・バシレイラス第2番」からのブラジルの古典曲「リトル・トレイン」のジャズ・アレンジ・バージョンなど、良好なアレンジでの優秀なカヴァーが目白押し。
 

George-bensonwhite-rabbit

 
これだけカヴァー曲が並ぶと、イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズな内容か、と構えてしまうが、ベンソンのギター・パフォーマンスが、ジャズ・ファンクの様なダイナミズムは控えめだが、印象的で硬派なフレーズを弾きまくっていて、まずはベンソンのギターが堪能出来る、そして、次にカヴァー曲のアレンジの妙に感じ入る、という内容が、しっかり軸足が「ジャズ」に留まっているところが好印象。

バックを固めるメンバーも錚々たるもの。フェンダー・ローズの響きが懐かしいハービー・ハンコック、エレベとアコベの両刀遣いで、曲毎に雰囲気を変えるロン・カーター、クロスオーバーでポップな8ビートを叩きまくるビリー・コブハム、スパニッシュ・タッチなパーカッションが小粋なアイアート・モレイラといったリズム隊が、これまた、本人達にとって異色ではあるが、かなりのレベルで充実している。

オリジナル・ジャケットについては、南アフリカで撮影したポンド族の女性の写真が掲載されている。これも、CTIレーベルのジャケ志向からすると「異色」。しかし、このジャケットが、このアルバムの内容を表しているかの様で、ベンソン自身いわく、プロデューサーのクリード・テイラーがベンソンの写真をカバーに使わなかったことが「このアルバムの成功につながった要因だった」と認めている(笑)。そんなジャケのエピソードはともかく、この盤はクロスオーバー・ジャズの好盤である。
 
 

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2026年1月24日 (土曜日)

ベンソンの初リーダー作です。

本作は記念すべきジョージ・ベンソンのファースト・アルバムである。ただ、内容的には、当時、ベンソンが所属していたジャック・マクダフのリーダー作の演奏内容とは変わらない。形式上は、ジャック・マクダフのカルテットにベンソンが客演した形だが、演奏内容としては、ベンソンが入ったジャック・マクダフ・クインテットの演奏内容と変わらない。

George Benson『The New Boss Guitar of George Benson』(写真左)。1964年5月の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), 以下、The Brother Jack McDuff Quartet:Brother Jack McDuff (p, org), Red Holloway (ts), Ronnie Boykins (b), Montego Joe (ds: tracks 1–7), Joe Dukes (ds: track 8)。

ベンソンのファースト・アルバムだからといって、ベンソンが全面に押し出て、ベンソンのギターの個性や特徴が良く判る様な内容にはなっていない。どちらかといえば、マクダフのオルガンが目立っている。ただ、マクダフのオルガンがフロントで演奏しているバックで、ベンソンは、ウェスばりの、小粋で味のあるバッキング・ギターを弾きまくっている。若干21歳の若者らしからぬ、ホットな渋さ。
 

George-bensonthe-new-boss-guitar-of-geor
 

ただし、ベンソンのオリジナルが5曲、あるところが、ベンソンのリーダー作かな、とも思わせるところ(笑)。ベンソン作がが「Shadow Dancers」「The Sweet Alice Blues」「I Don't Know」「Just Another Sunday」「Rock-A-Bye」。そして、スタンダードが2曲で「Will You Still Be Mine」と「Easy Living」。CDリイシュー時のボートラの1曲が、マクダフ作の「My Three Sons」で、全8曲。このボートラはいらない(笑)。

しっかり、ベンソンのギターに耳を傾けてみれば、ベンソンのギターの個性が良く判る。ソウルフルなリフ&カッティング、ブルージーなソロ、シングルノートによるバリバリ弾きまくるところ、そして、よく聴いていると、時々、ウエスの十八番だった「オクターヴ奏法」も披露する。ウエスの正当な後継者とされたベンソン。その片鱗が、この初リーダー作にしっかり記憶されている。

当時、ベンソンのギターといえば「ウエスの真の後継者」だが、ウエスのギターより、ソウルフルで、フレーズに伸びがある。いわゆる、R&B志向のソウル・ジャズ一歩手前の、ベンソン流のソウルフルなギターを感じ取る事ができる。R&B志向から、やや手前のファンキー色の強いソウル・ジャズという感じかな。アーバンな雰囲気、ミッドナイトな雰囲気は、オルガン・ジャズとして好盤。ベンソンの伴奏上手を聴くことが出来る異色盤、といった位置づけの初リーダー作です。
 
 

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2025年6月24日 (火曜日)

ベンソンの ”ブリージン” 再聴

今月発売のレココレ2025年7月号の特集「ジャズ/フュージョン・ギターの名演・洋楽編」に載っている、ウエス・モンゴメリーの名盤を聴き直していて、ふと「ジョージ・ベンソン」のギターが聴きたくなった。

ジョージ・ベンソンは、ウエス・モンゴメリーの後継者と言われた「ジャズ・ギターのレジェンド」。ベンソンは、ウエス・モンゴメリーに多大な影響を受けたジャズ・ギタリストであり、ウエスを心より敬愛しているギタリストである。つまり、ウエスを聴いたら、次はベンソン」が定番なのだ(笑)。今回は、ベンソンの「ジャズ・ギター」に着目して、このフュージョン名盤を再聴した。

George Benson『Breezin'』(写真左)。1976年1月の録音、1976年のリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Jorge Dalto (ac-p, clavinet), Ronnie Foster (el-p, Minimoog), Phil Upchurch (rhythm-guitar, b on #1, 3), Stanley Banks (b guitar on #2, 4–6), Harvey Mason (ds), Ralph MacDonald (perc), Claus Ogerman (arr, cond)。ちなみにプロデューサーは「トミー・リピューマ」。

ジョージ・ベンソンの代表盤に、フュージョン・ジャズの軟弱盤を持ってくるとは如何に、とご立腹のジャズ者ベテランの方もおられるかと思うが、この『Breezin'』、しっかりとベンソンのギターに注目して、じっくり聴いていただくと、この盤でのベンソンのギターが「エグいほど」素晴らしい、純ジャズ志向のギターを弾きまくっていることがよく判るかと思う。
 

George_benson_breezin

 
とにかく「弾きまくり」のベンソンである。ギターの音色は「ウエス直系」と評されるだけあって、ウエス独特のバップ・ギターの個性である「硬派でソリッドで骨太なギター」の音と同じテイストの、太く豊かで温かい淀みないフレージングでベンソンは弾きまくる。じっくり聴いていたら、ウエスそっくりだったりする。

違いは、ウエスはオクターヴ奏法を要所要所で繰り出すが、ベンソンはオクターヴ奏法は控えめで「売り」にはしていない。逆に「ウエスそっくり」と言われたくないので、ベンソンは「もう一つの得意」であるボーカルに、ウエスとの差異化要素を求めた。これが大当たり。そのベンソンの個性の一つ「優れたソウルフルなボーカル」は、2曲目の「This Masquerade」で聴くことが出来る。

冒頭のタイトル曲「Breezin'」の前奏のリフが「エグい」。米国西海岸の爽やかな風のような、スピード感+爽快感なリフ。そんな「エグい」リフに続いて出てくる、心地良いフレーズが爽快感抜群、躍動感抜群。ウエスの『A Day in The Life』の秀逸ギターもぶっ飛ぶ、凄くキャッチャーで印象的なリフ+フレーズ。

この盤でのベンソンの壮絶なアドリブは凄いの一言。フュージョン・ジャズは緩いなどと言ってはいけない。このベンソンのアドリブは凄い。フュージョンな「ソフト&メロウ」な雰囲気は皆無、硬派で純ジャズな正統派バップ・ギターの、ダンディズム溢れるフレーズがてんこ盛りである。この『Breezin'』、ベンソンの代表盤の一枚です。
 
 

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2024年8月14日 (水曜日)

純ジャズ・ボーカルのベンソン

2ヶ月ほど前になるだろうか。ネットのジャズの新盤情報を覗いていて、こんな文章が目に飛び込んできた。

「ジャズ・ギタリストそしてシンガーのジョージ・ベンソンが全盛期に録音していながら、長きにわたり発表されてこなっかた幻のアルバムが遂に35年の時を経て現代の技術でリマスターを施した公式作品となって登場!」

ジョージ・ベンソンは「唄って弾きまくる」ギタリスト兼ボーカリストの、いわゆる「ジャズ二刀流」のレジェンド・ジャズマン。ギタリストの側面は、ウエス直系、ウエス後継の壮絶技巧なギターの弾き回しが特徴。ボーカリストの側面は、ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカルが特徴。

常々、ベンソンの「ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカル」も良いが、正統派な純ジャズ志向のボーカルを披露してくれないかなあ、と思っていた。

純ジャズ志向の正統派なボーカルは絶対にベンソンに合う。そして、歴代の純ジャズ志向ボーカリストのレジェンド達、フランク・シナトラやメル・トーメ、果てはナット・キング・コールらと肩を並べるだけの力量がベンソンに備わっていると睨んでいたからだ。

George Benson『Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon feat. The Robert Farnon Orchestra』(写真左)。1989年の制作。「唄って弾きまくるギタリスト兼ボーカリスト」のレジェンド、ジョージ・ベンソンとロバート・ファーノンが率いるオーケストラとのコラボレート。しかし、なぜか「お蔵入り」になって、長きにわたり未発表だった「発掘音源」。
 

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内容は、20世紀のポップ・スタンダードを取り上げたアルバム。有名スタンダード曲の「Autumn Leaves」「At Last」「My Romance」など、いわゆる、アメリカン・スタンダードな楽曲、そして、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」、ポール・モーリア楽団の「Love Is Blue(恋はみずいろ)」といったポップ・クラシックを選曲している。

これらの楽曲が、ロバート・ファーノンのアレンジと、ファーノンと彼が率いるオーケストラの演奏によって、見事な「コンテンポラリーなジャズ・ボーカル曲」として、華麗な変身をとげている。

そして、ベンソンがこれらの楽曲を、ポップでジャジーな「正統派ボーカル」で、見事に唄い上げている。特に、ポップ・クラシックのリメイクが良い。しっかりとコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気をしていて、ポップ・クラシックのスタンダード化に成功している。

ジャジーな雰囲気をさらに盛り上げてくれるのが、ベンソンのギター・ワーク。短いものではあるが、ベンソンのジャズ・ギターの弾きまくりが実に良いアクセントになっている。

オーケストラだけだと、どうしても甘さが前面に出て、耳にもたれるケースが多々あるのだが、このベンソンの正統派ジャズ・ギターの弾き回しが、そんなオーケストラの甘さを排除し、見事にジャジーな雰囲気をアルバム全体に振り撒いている。

「最近になってベンソンのアーカイヴで発見されるまで、長らく行方不明となってしまっていた音源がレコーディングから35年の時を経て、ついに正式にリリース」なのだが、どうして、行方不明のまま放置されたのかなあ。

しかし、発掘リリースされて良かった。この盤は、ベンソンのジャズ・ボーカルの名盤として評価して良い。素直に発掘リリースされたこと喜びたい。
 
 

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2024年8月13日 (火曜日)

バップ・ギタリストなベンソン

マイルス・デイヴィスに見出され、ウェス・モンゴメリーの後継として頭角を表した「バップ・ギタリスト」のジョージ・ベンソン。クロスオーバー&フュージョン・ブームの折には、余芸だったボーカルを前面に押し出し、「唄って弾きまくるフュージョン・ギタリスト」として一世を風靡した。

1980年代以降、現在まで「超一流のギターの巧いブラコン志向のボーカリスト」として、ボーカリストをメインに活動を継続。今では、ベンソンが、ウエス・モンゴメリー直系のバリバリのバップ・ギタリストだったことは、ほぼ忘れ去られた状態になっている。

George Benson『Love for Sale』(写真左)。1973年4月29日、ニュージャージー州プレインフィールドのカーサ・カリブでライヴ録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Mickey Turner (p), George Duvivier (b), Al Harewood (ds)。ベンソンのギターがメインのカルテット編成。ベンソンは、この時点では「唄っていない」。

この『Love for Sale』とタイトルされたベンソン盤は、ネット上で幾種類もリリースされているらしいが、僕の聴いている盤は以下の収録曲全7曲のバージョン。

1. Witchcraft (Carolyn Leigh, Cy Coleman)
2. Blue Bossa (Kenny Dorham)
3. All Blues (Miles Davis)
4. Invitation (Bronsislaw Kaper, Paul Francis Webster)
5. Love Walked In (George Gershwin)
6. Love for Sale (Cole Porter)
7. Oleo (Sonny Rollins)
 

George-bensonlove-for-sale

 
ジョージ・ベンソンは当時 CTI と契約していた為、ブートとしてしかリリースされていなかった音源が、正式盤扱いでリリースされていたのに気がついた。

このライヴ盤では、若き日のウエス・モンゴメリー直系のバリバリの超一流バップ・ギタリストのジョージ・ベンソンの凄まじいパフォーマンスが記録されている。

ストレート・アヘッドな演奏で展開する有名スタンダード曲の数々。それぞれの曲で、ベンソンは長尺のソロをふんだんに聴かせてくれる。

高速弾き回しからオクターヴ奏法まで、ウエス・モンゴメリー直系のエモーショナルで切れ味の良い、バリバリのロング・ソロは圧巻である。超一流ギタリストとしてのベンソンを再認識する。

バックのターカー=デュヴィヴィエ=ヘアウッド、のリズム・セクションの演奏も、切れ味よくポジティヴな「攻めの演奏」も良い。記録通りだと、録音は1973年。ジャズの斜陽時代、クロスオーバー・ジャズ全盛の時代に、こんなに硬派でダイナミックなハードバップ演奏が行われていたとは、ちょっとビックリである。

ベンソンの出身は「ギタリスト」。そんな基本的なことを思い出させてくれる、1973年のライヴ録音。おそらく、ベンソンは、今でもこれくらいのパフォーマンスは出せると思うんだけどなあ。

これから時々は、こういった、ストレート・アヘッドなウエス・モンゴメリー直系のバリバリのバップ・ギターだけを弾き回した盤を聴かせて欲しい、と切に思う。
 
 

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2024年3月22日 (金曜日)

『The Other Side of Abbey Road』

バップの如く弾きまくり、ソフト&メロウにR&Bに唄いまくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「ギターをバップの如く弾きまくり、R&Bに唄いまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『The Other Side of Abbey Road』(写真左)。1970年の作品。1969年10月と11月の2セッションの録音。ちなみにパーソネルは、基本セットは、George Benson (g, vo), Bob James, Herbie Hancock, Ernie Hayes (ac-p, org, harpsichord), Ron Carter, Jerry Jemmott (b), Idris Muhammad, d Shaughnessy (ds), Ray Barretto, Andy Gonzalez (perc)。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからのリーダー作の2作目。A&Mレコードからの初リーダー作『Shape of Things to Come』は「唄いまくるが如くギターを弾く」ベンソンが凄かったが、この盤では「ギターを弾きまくり、唄いまくる」、ギターとボーカルの二刀流での大活躍のベンソンを捉えた秀作である。 

全曲、ビートルズ『アビイ・ロード』の収録曲のカヴァーで占められる。それも「Golden Slumbers〜You Never Give Me Your Money」から始まり、「Because〜Come Together」「Oh! Darling」「Here Comes the Sun〜I Want You (She's So Heavy)」そして「Something〜Octopus's Garden〜The End」まで、どういう基準で選曲されたがは不明だが、なかなかマニアックな曲が、オリジナルの曲順も意識せず、並んでいる。

元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。繰り出すフレーズは、R&Bに、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。
 

George-bensonthe-other-side-of-abbey-roa
 

そして、濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに唄いまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに唄わせた」クリード・テイラーの慧眼恐るべし、である。

ビートルズ『アビイ・ロード』から選ばれた楽曲は、かなり斬新なアレンジが施されていて、原曲のメイン・フレーズは残ってはいるが、イントロや間奏、ビートルズ・オリジナルなアレンジはほどんどデフォルメされている。どの曲もイントロだけ聴けば、何の曲だか判らないほど。イージーリスニング・ジャズと曲解されない様に、かなり純ジャズ寄りのアレンジが施されている。

この「かなり純ジャズ寄り」のアレンジに、バップの如く弾きまくるベンソンのギターが映える。ベンソンのソロがイージーリスニングっぽく聴こえず、バップにジャジーに聴こえるので、ジャズ・ギターとして純粋に楽しめる。そして、「ソフト&メロウにR&B」に唄うベンソンの歌唱が、ビートルズの楽曲に濃厚なファンクネスを纏わせている。 

ビートルズの楽曲のジャズ化が主目的では無い、「ギターを弾きまくり、唄いまくる」ベンソンを的確にアピールすべく、当時、人気絶頂だったビートルズの楽曲をチョイスした、と解釈している。そして、その目論見はほぼ成功している。特に、ベンソンの歌唱は、のちのフュージョン・ジャズにピッタリの「ソフト&メロウにR&B」な雰囲気をしていることが、この盤の歌唱で顕になった。                                                         

この盤、意外とマイナーな存在なんだが、ギターを弾きまくり唄いまくる二刀流のジャズマン、ジョージ・ベンソンのターニングポイントとなったアルバムだと睨んでいる。次作以降、ソフト&メロウなソウル・ジャズから、レアグルーヴなファンキー・ジャズをメインに「弾きまくり唄いまくる」ギタリストとして、ベンソンは人気者になっていく。
 
 

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2024年3月21日 (木曜日)

唄いまくるが如くギターを弾く 『Shape of Things to Come』

ソフト&メロウに、R&Bに唄いまくるが如く、バップの如く弾来まくるギタリスト、ジョージ・ベンソン。これが凄い。弾きまくるギタリストや、バップの如く弾きまくるギタリストは沢山いるが、「唄いまくるが如く弾きまくる」ジャズ・ギタリストは、ジョージ・ベンソンしかいない。

George Benson『Shape of Things to Come』(写真左)。1968年8-10月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g, vo), Ron Carter (b), Richard Davis (b), Herbie Hancock (p), Hank Jones (p), Idris Muhammad (ds), Don Sebesky (arr, cond) が主要メンバー。ここに、ドン・セベスキーのアレンジ&指揮のジャズ・オーケストラがバックに付く。

この盤は、ベンソンのA&Mレコードからの初リーダー作。当盤以前のコロンビアからのリリースの2枚、『It's Uptown』『The George Benson Cookbook』では、確かに、クロスオーバー・ジャズ、フュージョン・ジャズの確固たる片鱗が見え隠れした「バップな弾き回し」。そこに目をつけたクリード・テイラー。その慧眼に間違いは無かった。
 

George-bensonshape-of-things-to-come_2

 
元々、ウエス・モンゴメリー2世と形容されたベンソン。バップの如く弾きまくるギターは当然。出てくるフレーズもウエス譲りかそれ以上の、ソフト&メロウに唄うが如くのフレーズ。唄いまくるが如く弾きまくるフレーズの雰囲気は「ソフト&メロウなR&B志向」。濃厚なファンクネスを底に漂わせながら、ベンソンはソフト&メロウに弾きまくる。しかし、ベンソンにこれだけの「ソフト&メロウにR&Bに、唄いまくるが如くギターを弾きまくらせた」クリード・テイラーのプロデュース恐るべし、である。

1曲目の「Footin' It」の、切れ味良く、ソフト&メロウにR&Bにグルーヴするギターが、2曲目「Face It Boy, It's Over」での、ソフト&メロウにバップに弾きまくるギターが、最高に「きまって」いる。セベスキー・アレンジのジャズオケは、いかにも「イージー・リスニング・ジャズ志向」だが、ベンソンの流麗でハイテクニックなギター・フレーズには「芯」がしっかり入っていてバップ風。メリハリが聴いていて、ジャズオケの聴き心地の良さに流されることはない。

グルーヴィーなジャズ・ファンクから、R&Bな「ノリの良い」ソウルフルなエレ・ジャズまで、ベンソンは底にファンクネスを湛えつつ、ソフト&メロウに、クール&グルーヴィーに、唄いまくるが如くギターを弾きまくる。地味な存在の盤だが、意外と内容充実の、クロスオーバー&フュージョンを基本とした、イージーリスニング・ジャズの好盤だと思う。
 
 

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