ファーマーがジャズ有名曲を演奏
1960年代後半になると、ビートルズの米国上陸からロックの台頭、ソウル・ミュージックの人気上昇、ニュー・ポップスの発展など、聴き手の音楽ジャンルの好みが地殻変動を起こし、ジャズは一気に人気に翳りが出だして、大衆音楽の中での人気は一気に下降していた。
そんな人気の下降の中、大手のレコード会社、例えば、ヴァーヴやコロンビアでは、ジャズのインスト特性を活かして、軽音楽風のイージーリスニング志向のアルバムをプロデュースし、販売するという、安易な売上維持策に出た。ジャズのアーティスティックな面を完全に無視した「暴挙」である。その軽音楽風のイージーリスニング志向のジャズ盤は、実は、この1960年代後半〜1970年代前半に集中している。
『The Art Farmer Quintet Plays the Great Jazz Hits』(写真左)。1967年5月と6月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh, tp), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。アート・ファーマー・クインテットがジャズの名曲を演奏するという、途方もなく「ベタ」な企画盤。
とにかく、ジャズの有名曲がズラリと並ぶ(括弧内は作曲者)。9曲目の「Gemini」だけ、演奏メンバーのジミー・ヒースの作で、残りは、全て、ジャズ有名曲。見渡すと、ファンキー・ジャズの有名曲が中心。ところどころ、モンク曲「'Round Midnight」や、変則拍子曲の「Take Five」が混じっているところが惜しい。どうせなら、ファンキー・ジャズの有名曲で固めれば良かったのに・・・。
1. "Song for My Father" (Horace Silver)
2. "'Round Midnight" (Thelonious Monk)
3. "Sidewinder" (Lee Morgan)
4. "Moanin'" (Bobby Timmons)
5. "Watermelon Man" (Herbie Hancock)
6. "Mercy, Mercy, Mercy" (Joe Zawinul)
7. "I Remember Clifford" (Benny Golson)
8. "Take Five" (Paul Desmond)
9. "Gemini" (Jimmy Heath)
10. "The 'In' Crowd" (Billy Page)
恐らく、この収録された曲名を見たら、硬派なジャズ者の皆さんは敬遠するだろうが、聴いてみるとそんなには悪く無いと思う。こんな有名曲の連続、ジャジーなリズムに乗せた軽音楽風の大衆向けインスト盤でしょ、と思うんだが、まず、アート・ファーマーのフリューゲルホーンとトランペットの、哀愁感を帯びたウォームで切れ味の良い音とフレーズが良い。これだけでも「聴く価値」あり。
リズム・セクションは、単純なリズム&ビートを刻み続けることは無く、おかずを入れたり、チェンジ・オブ・ペースしたり、細かくリズム&ビートを変化させていて、有名曲がずらりと並ぶ、一見、飽きが来そうな展開を、きっりと飽きさせず、意外と全編、演奏に引きつけさせる工夫を施している。
確かに、対峙して聴き込む様な、アーティスティックな側面に乏しい盤ではあるが、ジャズの有名曲をズラリ並べているので、ジャズ者の僕達にとっては耳慣れている曲であり、アレンジにちょっと捻りを入れているので、ちょっと違った雰囲気のジャズ有名曲が楽しめる。「ながら聴き」に特化するに最適のファンキー・ジャズの企画盤だと思う。
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