2026年2月 3日 (火曜日)

ファーマーがジャズ有名曲を演奏

1960年代後半になると、ビートルズの米国上陸からロックの台頭、ソウル・ミュージックの人気上昇、ニュー・ポップスの発展など、聴き手の音楽ジャンルの好みが地殻変動を起こし、ジャズは一気に人気に翳りが出だして、大衆音楽の中での人気は一気に下降していた。

そんな人気の下降の中、大手のレコード会社、例えば、ヴァーヴやコロンビアでは、ジャズのインスト特性を活かして、軽音楽風のイージーリスニング志向のアルバムをプロデュースし、販売するという、安易な売上維持策に出た。ジャズのアーティスティックな面を完全に無視した「暴挙」である。その軽音楽風のイージーリスニング志向のジャズ盤は、実は、この1960年代後半〜1970年代前半に集中している。

『The Art Farmer Quintet Plays the Great Jazz Hits』(写真左)。1967年5月と6月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh, tp), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。アート・ファーマー・クインテットがジャズの名曲を演奏するという、途方もなく「ベタ」な企画盤。

とにかく、ジャズの有名曲がズラリと並ぶ(括弧内は作曲者)。9曲目の「Gemini」だけ、演奏メンバーのジミー・ヒースの作で、残りは、全て、ジャズ有名曲。見渡すと、ファンキー・ジャズの有名曲が中心。ところどころ、モンク曲「'Round Midnight」や、変則拍子曲の「Take Five」が混じっているところが惜しい。どうせなら、ファンキー・ジャズの有名曲で固めれば良かったのに・・・。
 
The-art-farmer-quintet-plays-the-great-j  
 
 1.  "Song for My Father" (Horace Silver)
 2.  "'Round Midnight" (Thelonious Monk)
 3.  "Sidewinder" (Lee Morgan)
 4.  "Moanin'" (Bobby Timmons)
 5.  "Watermelon Man" (Herbie Hancock)
 6.  "Mercy, Mercy, Mercy" (Joe Zawinul)
 7.  "I Remember Clifford" (Benny Golson)
 8.  "Take Five" (Paul Desmond)
 9.  "Gemini" (Jimmy Heath)
10. "The 'In' Crowd" (Billy Page)

恐らく、この収録された曲名を見たら、硬派なジャズ者の皆さんは敬遠するだろうが、聴いてみるとそんなには悪く無いと思う。こんな有名曲の連続、ジャジーなリズムに乗せた軽音楽風の大衆向けインスト盤でしょ、と思うんだが、まず、アート・ファーマーのフリューゲルホーンとトランペットの、哀愁感を帯びたウォームで切れ味の良い音とフレーズが良い。これだけでも「聴く価値」あり。

リズム・セクションは、単純なリズム&ビートを刻み続けることは無く、おかずを入れたり、チェンジ・オブ・ペースしたり、細かくリズム&ビートを変化させていて、有名曲がずらりと並ぶ、一見、飽きが来そうな展開を、きっりと飽きさせず、意外と全編、演奏に引きつけさせる工夫を施している。

確かに、対峙して聴き込む様な、アーティスティックな側面に乏しい盤ではあるが、ジャズの有名曲をズラリ並べているので、ジャズ者の僕達にとっては耳慣れている曲であり、アレンジにちょっと捻りを入れているので、ちょっと違った雰囲気のジャズ有名曲が楽しめる。「ながら聴き」に特化するに最適のファンキー・ジャズの企画盤だと思う。
 
 

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2026年2月 2日 (月曜日)

ファーマーのハッピーな好盤です

2月に入って、そろそろ「立春」。暦の上では「これ以上寒くなることはない」。冬来たりなば、春遠からじ、というが、まだまだ寒さ、冷えは続く2月。ジャズ盤の鑑賞は、暖房のしっかり入った部屋で、冬寒の外の風景を見ながらの、ちょっと内省的な鑑賞スタイルになったりする。

Art farmer Quintet『The Time and the Place』(写真左)。1967年2月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。もともとライブ・アルバムとして扱われていたが、実際にはスタジオで録音され、観客の拍手やざわめきはオーバーダビングされた「擬似ライヴ盤」。確かに、観客の拍手などは人工的な感じがする。

決して、有名盤でも無いし、エヴァーグリーンな名盤でも無い。それでも、この盤は、ソウルフルでハッピーな演奏が特徴のファンキー・ジャズの好盤だと僕は思う。演奏自体がシンプルなハードバップ〜ファンキー・ジャズで占められていて、それでいて、懐古趣味的雰囲気は全く無い。どちらかといえば、1967年という録音年の先、1970年代のハードバップを志向している様な雰囲気で、古さは全く感じ無い。
 

Art-farmer-quintetthe-time-and-the-place

 
ジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」と、さすが、ハードバップの多様化を経ての1960年代後半の録音。バラエティーに富んだ曲想、演奏志向で、聴き手として、とても良い変化を付けた演奏の数々が「イケてます」。

フロントの相棒のヒースのテナーも趣味良く快調、ピアノのウォルトンが率いる、ブッカーのベース、ローカーのドラムの1960年代ハードバップ志向のリズム・セクションも、シャープで小粋なリズム&ビートを供給する。このリズム・セクションの叩き出すリズム&ビートも懐古趣味のかけらもない。1960年代後半のトレンドど真ん中のリズム&ビートが洒落てます。

ジャズ盤紹介には、まず上がって来ないアルバムで、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさが、このアルバムの評価を下げているようですが、アート・ファーマー・カルテット自体の演奏としては良好なもので、ジャズ者初心者からベテランまで、どのレベルのジャズ者の方々も、それぞれの感覚で楽しめる好盤だと思います。
 
 

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2025年1月26日 (日曜日)

ジャズテットの隠れた魅力

ジャズ盤コレクションを振り返りながら、小粋なジャズ盤をピックアップしては聴き直している。初心者向けのジャズ紹介本で、常に挙げられる「名盤」も良いが、何も、その「名盤」だけがジャズ盤ではない。ジャズ盤は世の中に「ごまん」とある。ジャズ紹介本に取り上げられない盤にも「名盤」に負けない内容の「小粋なジャズ盤」が沢山ある。これを探し当て、聴き込む。これが「当たり」であれば、それはもう至福の時である。

『The Jazztet and John Lewis』(写真左)。1960年12月20–21日、1961年1月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Benny Golson (ts), Tom McIntosh (tb), Cedar Walton (p), Tommy Williams (b), Albert Heath (ds), John Lewis (arr)。ジャズテットとしての3枚目のアルバムである。

ファンキー・ジャズの人気グループとして旗揚げした「ジャズテット」。1959年にトランペット奏者のアート・ファーマーとテナーサックス奏者のベニー・ゴルソンによって結成されたジャズ・セクステット。双頭リーダーのファーマーとゴルソンは変わることはないが、リズム・セクションを中心に、メンバーはコロコロ変わる。そして、そのバンド・サウンドもアレンジャーが変わると、そのアレンジャーの志向コロっと変わる。

このジャズテットとしての3枚目のアルバムは、室内楽ジャズの仕掛け人、ジョン・ルイスが、作曲家兼編曲家としてジャズテットと組んだ、いわゆる企画盤。ハードバップなアンサンブルを旨とするファンキー・ジャズが「売り」のジャズテットが、ルイスのアーティステックで室内楽ジャズ志向のアレンジを採用して、理知的でスマートなモダン・ジャズに変身しているのだから興味津々である。
 

The-jazztet-and-john-lewis

 
冒頭の「Bel」から、ジョン・ルイスの個性溢れるアレンジ全開である。まず、この曲、ジョン・ルイスが、このアルバムの為に直々に書き下ろしたもの。オープニングの、メロディアスで、クラクションのように機能する3管フロントのテーマの響き自体、すでに「ジョン・ルイス」の音世界である。

そして、びっくりするのが、3曲目の「Django」。このMJQの耽美的でブルージーな名曲名演を、レコード史上最も激しくスウィングする演奏で、ガンガンにすっ飛ばす。しかし、このアレンジは、ジャズテットの「ハイテクニックで疾走感溢れる、スインぎーなアンサンブル」という個性を、効果的に全面的にアピールするもので、ジャズテットの演奏力のずば抜けた高さを証明してみせる。

「ミラノ」や「ニューヨーク19」のような緩やかで牧歌的な曲とアレンジは、ゴルソンのテナーの、意外というか「暖かく息づくような音色」とファーマーのトランペットの「叙情的なスタイル」を引き出し、これらの曲には、バックに、穏やかでブルージーで印象的なハーモニーがふんだんに盛り込まれている。

ジョン・ルイスのアレンジによって、ジャズテットの新しい魅力が発掘された、そんなジャズテットのサード・アルバム。この盤では、ジャズテットは「単純なファンキー・ジャズなバンド」ではなく、様々なアレンジに完全対応する「能力の高いプロフェッショナルなバンド」だということが良く判る。ジャズテットのアーティスティックな隠れた魅力が出た好盤だと思う。
 
 

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2024年11月27日 (水曜日)

ホールの「哀愁のマタドール」

結構、ハードなモダン・ジャズをシビアに聴き続けたらしく、耳がちょっと疲れた。と言うことで「耳休め」に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤を聴くことにする。今年はジャズ・レーベル毎の名盤・好盤を聴きなおすことをしているのだが、今日はその流れで「A&Mレーベル」の名盤・好盤の聴き直しを進めることにした。

Jim Hall『Commitment』(写真左)。邦題「哀愁のマタドール」。1976年6, 7月の録音。A&Mレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Art Farmer (flh), Tommy Flanagan (p), Don Thompson (p, track 2 only), Ron Carter (b), Allan Ganley (ds), Terry Clarke (ds, track 7 only), Eroll Bennett (perc, track 3 only), Jane Hall (vo, track 5), Joan La Barbara (vo, track 3) Don Sebesky (arr, tracks 1, 3 & 8)。

ジム・ホールのギターは、繊細で透明感溢れる、しかし、力感もしっかりあって、奏でるフレーズがくっきり浮かび上がる、従来のジャズ・ギターの奏法を一歩二歩進めた、プログレッシヴなバップ・ギターである。そんなジム・ホールのギターに、アート・ファーマーの柔らかで流麗な、それでいて、しっかり芯の入ったフリューゲルホーンが良く合う。よほど相性が良いのだろう、ジム・ホールのギターとファーマーのフリューゲルホーンのユニゾン&ハーモニーは絶品である。
 

Jim-hallcommitment  

 
このアルバムは、この前年の発表された『Concierto(アランフェス協奏曲)』の大ヒットの後のアルバム。前作の代表的名演「アランフェス協奏曲」の雰囲気をそのまま踏襲した、3曲目の「Lament For A Fallen Matador(哀愁のマタドール)」が聴きもの。ジム・ホールのギターは意外に硬派なので、甘きに流れない。力感溢れるプログレッシヴなバップ・ギターが、こういった耽美的なメロディーを持つクラシックのカヴァーに向いている。「哀愁のマタドール」以外に「When I Fall In Love」「My One And Only Love」等のスタンダード曲もいい感じ。

ジム・ホール自身のお気に入りなミュージシャンを起用しての豪華なアルバムだが、この盤では、特にロン・カーターのベースが良い。当時のロンとしては珍しいことに、ピッチが合っていて、弦を弾くピチカート奏法もブンブン胴鳴りして、切れ味の良いジャジーなグルーヴを撒き散らしている。加えて、1曲目「Walk Soft」、3曲目「Lament For A Fallen Matador」、8曲目の「Indian Summer」におけるセベスキーのアレンジも良好。

A&Mレーベルのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤の一枚。イージーリスニング・ジャズ志向な演奏内容ではあるが、ジム・ホールの硬派でプログレッシヴなバップ・ギターや、アート・ファーマーのジェントルで流麗だが、意外とバップなフリューゲルホーンは、ハードバップ時代からの「純ジャズ」なパフォーマンスをしっかり維持していて、聴き応え十分。この盤、硬派でメインストリームな内容のクロスオーバー&フュージョン盤。意外と聴き応えがあって、長年の愛聴盤になってます。
 
 

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2024年2月26日 (月曜日)

「ファーマーの音色」だけを聴く盤

ジャズの演奏の世界って、アレンジが重要なんだなあ、と思う時がある。アレンジの良し悪しで、リーダーの担当する楽器や、フロント管の旋律やアドリブがくっきり前面に明確に聴こえたり、聴こえなかったり。聴いていて、演奏全体が聴き心地良かったり、悪かったり。アルバム全体を聴き通していて、集中して最後まで聴けたり、途中で飽きがきたり。意外とジャズには「アレンジの重要性」が必須要素としてある、と僕は睨んでいる。

Art Farmer with The Quincy Jones Orchestra 『Last Night When We Were Young』(写真左)。1957年3月28日、4月24 & 29日の録音。ちなみにパーソネルは、メインセットに、Art Farmer (tp), Hank Jones (p), Tommy Kay (g, on March 28, tracks 2, 4, 8), Barry Galbraith (g, on April 24 & 29), Addison Farmer (b), Osie Johnson (ds, on March 28, tracks 2, 4, 8), Sol Gubin (ds, on April 24 & 29), Quincy Jones (arr, cond)。ここに、それぞれの録音日で、それぞれのオーケストラ・メンバーが加わる。

当時の人気アレンジャー、クインシー・ジョーンズ(以降、愛称「Q」)のジャズオケ・アレンジに乗って、アート・ファーマーが心ゆくまでトランペットを吹き上げる、イージーリスニング志向のビッグバンド・ジャズの企画盤。ABC-Paramountレコードからのリリース。さすがに大手レコード会社、ジャズ・ファンのみならず、一般の音楽ファンにも訴求する、聴き心地の良い、それでいて、内容的にしっかりしたイージーリスニング志向のジャズに仕上がっている。
 

Art-farmer-with-the-quincy-jones-orchest

 
冒頭の「Two Sleepy People」の演奏内容が、この企画盤の雰囲気を決定づけている。Qのムーディーで新鮮な響きでアレンジされたジャズオケの伴奏に乗って、ファーマーのトランペットが唄うように囁くように流れてくる。かなりムーディーな雰囲気だが、決して俗っぽくない。さすが、Qのアレンジである。特に尖ったところがない、流麗でムーディーなアレンジだが、底にしっかりジャズがある。

優れたアレンジの下で、ファーマーのトランペットが映えに映える。「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色が映えに映える。ファーマーのトランペットの個性が、とても良い響きで、いい感じ流れて来る。これが全編に渡って展開される。これが実に良い。

この企画盤は、Qのアレンジの優秀性と、この優れたQのアレンジに乗った、ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色だけを愛でる盤。バリバリ尖ったアドリブよろしくインタープレイを展開するハードバップも良いが、こういう内容の伴った、聴き心地の良いイージーリスニング志向のジャズも良い。特に、ながら聴きのジャズに最適。これも「良い音楽」、これも「良きジャズ」である。
 
 

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2024年2月25日 (日曜日)

Art Farmer『The Aztec Suite』

邦題『アズテック組曲』。キューバの作曲&編曲家、指揮者のチコ・オファリル(Chico O'Farrill)のアレンジによるアフロ・キューバン・ジャズ。トランペットのアート・ファーマーがリーダーの12人編成のスモール・ビッグ・バンドのたエキゾチックな雰囲気が芳しい企画盤。アル・コーンが音楽監督を務めている。

Art Farmer『The Aztec Suite』(写真)。 1959年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Bernie Glow, Nick Travis (tp), Jimmy Cleveland, Frank Rehak (tb), Jim Buffington (French horn), Zoot Sims, Seldon Powell (ts), Hank Jones (p), Addison Farmer (b), Charlie Persip (ds), José Mangual (perc), Chico O'Farrill (arr)。

3トランペット、2トロンボーン、2テナーにフレンチホルンを加えた8管フロントに、パーカッションを加えたリズム・セクションをバックに、エキゾチックでミステリアスな響きのする、ブラスのパンチが効いたアフロ・キューバン・ジャズの演奏で全編、埋め尽くされている。8管フロントのアンサンブルが迫力満点で、しばしば圧倒される。
 

Art-farmerthe-aztec-suite

 
さすが、キューバ出身のチコ・オファリルのアレンジが優秀で、アレンジの問題で、ややもすれば俗っぽく安っぽくなるリスクのあるアフロ・キューバン・ジャズを、鑑賞に耐える、聴き応えのあるものに仕立て上げているのは見事。東海岸ジャズの中、優れたアレンジで、西海岸ジャズを意識した様な「聴く為のジャズ」を実現している。

「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットが、アフロ・キューバンなグルーヴの中でブリリアントに響き、アフロ・キューバンな熱いアンサンブルの中で「流麗でウォーム」なフレーズがくっきりと浮き出てくる。

アフロ・キューバンにファーマーのトランペット。水に油かと思ったら、意外と相性バッチリなのにちょっビックリする。流麗バップなハンク・ジョーンズのピアノも、しっかりアフロ・キューバンして、いつになく熱いフレーズを叩き出している。アレンジ上々、整って聴き応えのあるアフロ・キューバン・ジャズの佳作です。
 
 

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2024年2月20日 (火曜日)

『The Art Farmer Septet』

何故か、我が国では実力に見合った人気が伴わないジャズマンは多々いる。が、21世紀に入って、過去のジャズ盤の音源の入手が飛躍的に楽になったので、過去のリーダー作が聴き直しし易くなった。聴き直してみると「イケる」。どうして、我が国では人気が伴わないのか、訝しく思う。そんなジャズマンが結構いるから面白い。

『The Art Farmer Septet』(写真左)。1953年7月2日と1954年6月7日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。1953年7月2日のセッションのアレンジが「Quincy Jones」。1954年6月7日のセッションのアレンジが「Gigi Gryce」。

どちらのセッションも同じ楽器編成でのセプテット。異なる日のセッションで、同一楽器編成で、優れたアレンジャーをチョイスしている。やっつけ構成盤が大好きなプレスティッジらしからぬアルバムである。

ちなみにパーソネルは、1953年7月2日の録音(tracks 1–4)が、Art Farmer (tp), Jimmy Cleveland (tb), Clifford Solomon (ts), Oscar Estell (bs), Quincy Jones (p, perc track-1 only), Monk Montgomery (el-b), Sonny Johnson (ds)。

1954年6月7日の録音(tracks 5–8)が、Art Farmer (tp), Jimmy Cleveland (tb), Charlie Rouse (ts), Danny Bank (bs), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Taylor (ds)。2つのセッションで、共通のメンバーは、Art Farmer (tp), Jimmy Cleveland (tb) の二人のみ。
 

The-art-farmer-septet

 
このアルバムは、アート・ファーマーの初リーダー作になる。1953年7月2日の録音(tracks 1–4)は、10インチLP時代に『Work of Art』としてリリースされている。

セプテット編成の演奏の中でのアート・ファーマーのトランペットである。初リーダー作にしては、派手に目立ってはいないが、アドリブ・ソロを取る時のファーマーはなかなかのトランペットを聴かせているから立派。良く鳴るオープンとリリカルなミュートの両方が楽しめる一枚でもある。

1953年7月2日と1954年6月7日のどちらのセッションも、優れたアレンジャーがそれぞれアレンジを担当していて、それぞれの演奏の内容が整っていて聴いていて楽しい。クインシー・ジョーンズのアレンジも、ジジ・グライスのアレンジも、どちらも優秀。

ストレートなハードバップなアレンジと重厚なアンサンブルをベースに、趣味の良いラテン・フレーバーや盛り上がるラテンのリズム&ビート、哀愁感漂うジャジーなフレーズなど、当時としてはかなりレベルの高いアレンジである。そんな優秀なアレンジとバック・メンバーに支えられて、ファーマーはブリリアントで朗々と鳴るトランペットを吹き上げる。

アート・ファーマーの初リーダー作として、というか、ハードバップ初期の佳作として評価出来るアルバムだと思います。

ちなみにこの『The Art Farmer Septet』は、1960年代に入ると『Work Of Art』<New Jazz NJLP-8278>(写真右)として、アルバム・タイトルを当初の10インチLPのものに戻し、加えて、ジャケットを変更した上で、内容はそのままに、しれっと再発している。プレスティッジらしい、ボブ・ウェインストックらしい仕業である。
 
 

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2024年1月12日 (金曜日)

ファーマーの好盤『Perception』

アート・ファーマーの好盤を聴き進めている。ジャズを本格的に聴き始めた頃から、ずっと聴いてきた、お気に入りのトランペッターなのだが、意外と当ブログの記事になっていない好盤がまだまだ沢山ある。ファーマーについては、ジャズ盤紹介本に載らないリーダー作にも優れたものが多い。

Art Farmer『Perception』(写真左)。1961年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Harold Mabern (p), Tommy Williams (b), Roy McCurdy (ds)。ファーマーはフリューゲルホーンを持って「ワン・ホーン」のカルテット編成。トランペットのワン・ホーン・カルテットは多くは無いのだが、ファーマーは一人でフロント・フレーズを吹きまくっている。

アート・ファーマーのトランペットは「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」もの。そんなファーマーの「流麗でウォーム」の部分が突出した、ファーマーの紡ぎ出す流麗なフレーズがとことん愛でることの出来る盤である。
 

Art-farmerperception

 
フリューゲルホーンで吹いているので、出てくるフレーズが、トランペットの時よりもエッジがラウンドして、耳当たりが優しく、聴き心地が増す。全編、落ち着いた、温かみを感じる「クール」なフリューゲルホーンがとても良い。スタンダード曲もファーマーの自作曲も、同じトーンで統一される。それぞれの曲の持つ流麗なメロディーだけが浮かび出る。

メイバーンの小粋でメリハリの聴いた流麗なピアノをメインにした、ウイリアムス、マカーディのリズム・セクションが、ファーマーの落ち着いた、温かみを感じる「クール」なフリューゲルホーンをしっかりとサポートする。ファーマーのフリューゲルホーンが引き立つリズム&ビート。このリズム・セクションの貢献度は高い。

レナード・フェザーがライナー・ノーツを担当しているのだが、最後をこう締め括っている。「As long as there is room for beauty and lylicism in jazz,such voices as Farmer's will never be silenced.」(ジャズに美しさと叙情性の余地がある限り、ファーマーのような声が沈黙することは決してありません)。良いこと言うなあ、と思う。このリーダー作にぴったりの表現だと感じます。
 
 

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2024年1月11日 (木曜日)

隠れ名盤 Live at the Half-Note

アート・ファーマーは、ジャズ・トランペッターとしてお気に入りの一人。ジャズを聴き始めた頃から、ずっとファーマーのトランペット&フリューゲルホーンを聴いてきた。アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」がずっとお気に入り。

Art farmer Quartet featuring Jim Hall『Live at the Half-Note』(写真左)。1963年12月、NYの「ハーフノート」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Steve Swallow (b), Walter Perkins (ds)。このライヴでは、ファーマーはフリューゲルホーンを吹いている。フロントの相棒にジム・ホールのギター、ピアノレスの変則カルテット編成。

録音時は1963年。ハードバップをベースに、ジャズは多様化の時代に突入。純ジャズ志向としては、モード・ジャズが主流になり、エンタテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズなど、聴いて楽しいジャズが主流に、そして、新しいジャズとしては、フリー&スピリチュアル・ジャズが出現していた。

しかし、ここでのアート・ファーマーは、ハードバップを極める「志向」でパフォーマンスしている。演奏志向はあくまでハードバップ。しかし、従来のハードバップのフレーズとは違う、従来のコード進行とは違う、クールで静的な響きを持ったフレーズ展開で、当時として新しい響きのハードバップな演奏を繰り広げる。
 

Art-farmer-quartet-featuring-jim-hallliv

 
いわゆる「ジャズのライヴ演奏」と聞いて、熱いバトルチックな演奏を想起するが、このファーマー・カルテットの演奏はクールで静的。ファーマーはフリューゲルホーンを使って、流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いフレーズを吹き上げる。しかし、そのフレーズの響きは、1950年台のハードバップのそれでは無い。それまで聴いたことのないフレーズで攻める。

おそらく、ジム・ホールの、それまでに無い新しい響きのコード進行と間を活かしたインプロに触発されたのではないか。ジム・ホールのギターは、意外と「プログレッシヴ」。従来のブルージーでジャジーな定型的な響きではない、そこはかとなく捻れて少し破調なフレーズは、今の耳にも新しい。このホールのプログレッシヴなギターがファーマーのフリューゲルホーンのフレーズを刺激する。

そして、そんなプログレッシヴな響きと間を活かしたフレーズの「底」を支えるのが、スティーヴ・スワローのベース。スワローのベースもプログレッシヴ。まるでモーダルなベースラインを弾くように、それまでに無い、新しいベースラインで、ファーマーとホールをガッチリ支える。

クールで静的な響きがメインのライヴ盤なので、一聴すると地味な印象を感じるが、じっくり繰り返し聴くうちに、それぞれの演奏の「プログレッシヴ」さを感じて、何の変哲もない、手垢の付いたハードバップ演奏なのに、滲み出てくる「新しさ」に引き付けられる。

そして、このハードバップな演奏は「只者では無い」ことに気が付く。気がついて、このライヴ盤は隅に置けない、と思う。そんな「隠れ名盤」がこの『"Live" At the Half-Note』である。
 
 

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2024年1月 8日 (月曜日)

ブラス輝く『ブラス・シャウト』

10歳代後半以降、マイルス・ディヴィスが大のお気に入りゆえ、ジャズ・トランペットについては、かなり昔から聴き親しんでいる。

トランペットという楽器の性格上、サックスの様に激情にまかせて、長々とフリーキーに吹き続けることが不得手。肉声よりもキーが高音なので、大きな音はかなり耳障りにもなる。

よって、ジャズ・トランペッターは正統派、純ジャズ志向が大多数。それでいて、音色や吹き方、表現がそれぞれ個性があって、様々なジャズ・トランペットが楽しめる。

Art Farmer『Brass Shout』(写真左)。1959年5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Lee Morgan, Ernie Royal (tp), Julius Watkins (French horn), Jimmy Cleveland, Curtis Fuller (tb), James Haughton (b-horn), Don Butterfield (tuba), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds), Benny Golson (arr, cond)。

ウォームで端正、唄うがごとく流麗なフレーズが個性のトランペッター、アート・ファーマーのリーダー作。ファーマーを含めトランペットが3本、フレンチ・ホルンが1本、バリトン・ホルンが1本、トロンボーンが2本、チューバが1本の計8本のブラスに、ピアノレス、ベースとドラムが加わった11人編成。アレンジ&指揮は、テナー奏者のベニー・ゴルソン。
 

Art-farmerbrass-shout

 
サックスとピアノがいない、ブラスがメインのフロント、リズム隊はベースとドラムのみ。なかなか面白い編成だが、アレンジャーが「ゴルソン・ハーモニー」の主、ベニー・ゴルソンが担当している。なるほど、ゴルソン・ハーモニーはブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーが一番映えるので、この変則編成には合点がいく。

しかも有名ジャズマンがずらり顔を揃えて、この11人編成のアンサンブルに不足は無い。そんな豪華なバックを従えて、ファーマーだけが、ウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペット・ソロを吹き上げる。

ゴルソン・ハーモニーは、分かり易い、シンプルな、美しいフレーズに一番映える。そういうこともあるのだろう、収録された曲は、有名スタンダード曲ばかり。「Nica's Dream」「Autumn Leaves」「Moanin'」「April In Paris」「Five Spot After Dark」「Stella By Starlight」「Minor Vamp」の6曲。

聴き心地に重点を置いているのか、どの曲もちょっと軽めのアレンジが施されていて、軽快で明るい雰囲気で統一されている。そこに、ゴルソン・ハーモニーでメイン・テーマを印象的に浮き出していてメリハリが効いている。そして、アドリブ・フレーズをウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットで吹きまくる。

なんだか訳の判らない女性の横顔のオブジェのジャケには「?」ですが、ゴルソンの良く考えた小粋なアレンジと、ファーマーのウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットの相乗効果がとことん楽しめるスタンダード曲集です。ながら聴きにもいい感じの聴き心地の良い好盤。
 
 

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