2021年8月16日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・2

「僕なりの超名盤研究」の第2回目。今日は「Charlie Parker(チャーリー・パーカー)」。ビ・バップの祖の一人とされる。破滅型ジャズマンの典型的な例として、よくその名が挙げられる。が、パーカーの天才的パフォーマンスと破滅型の生き方とは全く因果関係が無い。純粋に、パーカーはジャズのアルト・サックス奏者として、その才能は突出していて、彼のアドリブ・パフォーマンスは他の追従を許さない。いわゆる「希有なジャズ演奏家」の一人である。

僕がジャズを聴き始めた頃、ジャズ入門書については、とにかく「パーカーを聴け、パウエルを聴け、コルトレーンを聴け」だった。特に、パーカーを聴かないと、パーカーを理解出来ないとジャズは理解出来ない、などという極論が横行していた時代で、ジャズを聴き始めた頃、とにかくパーカーを聴かないと、という強迫観念があった(笑)。

Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(写真左)。1952年から53年にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。チャーリー・パーカーのアルト・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成。パーカー最晩年の録音で、この盤の録音の2年後、1955年に心不全でパーカーは逝去する。

僕はジャズ者初心者の頃、ジャズ入門書でお勧めされていたのが、ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤で、これにはアルバム収録に採用されたテイク以外に、別テイクや失敗テイクなどがごった煮で入っていて、それらを全て聴かないと、理解出来ないと駄目、なんていう評論が多かった。でも、ジャズ者初心者で、別テイクや失敗テイクを聴く意味など判る訳も無く、ほとんど修行僧の趣で、我慢して拝聴すること強いられていた。
 

Thegeniusofcharlieparker3

 
実は、この盤、僕がパーカーを初めて聴いたアルバムで、この盤で良かったなあ、と今でも思っている。ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤から入っていたら、パーカーの演奏に親しみを持って聴くことが出来る時期は、相当、後になっていたような気がする。また、パーカーが活躍した最盛期は1940年代後半。まだまだ録音技術は低く、音が良くない。音が良くない盤で、パーカーのパフォーマンスの素晴らしさを聴き取るのは、ジャズ者初心者の耳にはハードルが高かった。

そういう意味で、この『Now's The Time』というVerveレーベル盤は、1952年から53年の録音なので、まずまず音が良い。録音が良いので、この盤を聴き直して気付くのは、パーカーの吹くアルト・サックスって、とびきり楽器が凄く良く鳴っているということ。パーカーの演奏テクニックについては評価が高いのだが、テクニック以前に、パーカーの楽器の吹き方、鳴らし方が素晴らしい。このパーカーのアルト・サックスの吹き方、鳴らし方は、歴代のジャズマンの中で、今でも飛び抜けて素晴らしい。

この『Now's The Time』には、「Kim」「Cosmic Rays」「Chi Chi」の別テイクが収録されている。しかし、この別テイクの選び方が秀逸で、アレンジの違い、アドリブ展開の違い、吹き方や表現の違い、本テイクと別テイクを聴き比べることによって、そんな「ジャズの即興演奏の妙」が良く判るのだ。こういう形でのテイク違いの収録は、ジャズ者初心者にとってもその意味が良く判る。

録音の良さ、別テイクの収録の工夫、この盤は、その2点で僕にとっての「パーカーのイチ推し盤」となっている。1952年から53年という、ハードバップ初期に差し掛かる時期の「充実し成熟した演奏テクニック」を基にした流麗で熱い演奏で「ビ・バップ」を唄い上げていく。この盤を聴くことによって、何となく雰囲気で「ビ・バップ」が理解出来ると思う。初めはそれで良い。それから長年、ジャズを聴き続けて、ジャズ理論の勉強を進めるうちに理屈は後からついてくる。
 
 
 
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2021年7月20日 (火曜日)

サヴォイ・レーベルのパーカー盤

サヴォイ・レーベルと言えば、1942年に設立以来、ビ・バップ華やかりし1940年代後半から1950年代前半にかけて、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなどのセッションをどんどん録音していった。が、パーカーについては、アルバムとして今も流通しているものは数少ない。

パーカーのセッションの全てを収録した「パーカー研究者向け」の企画ボックス盤はあるにはあるが、これは明らかに後の「マニア御用達」なもので、CD複数枚の企画ボックス盤は聴き通すのも大変。やはり、当時LPとしてリリースされたものが良い。

『The Charlie Parker Story』(写真)。1945年11月26日の録音。もともとは、パーカーの死後にリリースされたLPレコード。1945年11月26日に録音されたセッション全体を記録した最初のアルバムになる。

ちなみにパーソネルは不確で、恐らくこれが一番正確なのかと。Miles Davis (tp), Charlie Parker (as), Dizzy Gillespie (tp, p), Sadik Hakim (p), Curly Russell (b), Max Roach (ds)。トランペットとピアノについては、どの曲で誰が担当したか、諸説あって良く判らないみたい。

16トラックあるが、収録曲としては実質6曲。この盤はLPとして1956年にリリースされた折から、セッション全体を順番に収録していて、正式なマスター・テイクから、マスター・テイクに比肩する内容のオルタネイト・テイク、途中で終わっちゃうショート・テイク(失敗テイクでしょうね)など、1曲の中で、3〜5パターンの演奏が収録されている。
 

The-charlie-parker-story-1

 
この盤を通して聴くと、1945年当時の「ビ・バップ」の演奏について、ビ・バップ・ムーヴメントの中心となったジャズマンが集った演奏については、素晴らしく内容のある演奏だったことがよく判る。このサヴォイ盤については「現代のジャズの歴史で作られた最高の録音」と評価されている。

「Billie's Bounce」1曲とってみても、オリジナル・テイクのほか、オリジナル・テイクに比肩する内容のオルタネイト・テイクが3曲収録されており、どの演奏をとってみても充実した内容で、オリジナル・テイクと比べても甲乙付けがたい。こういう場合は、どれが一番優れているかと悩むよりは、いずれも素晴らしい演奏であることを確認して楽しむのが良いだろう。

ただ、今でもその存在が良く判らないのが「Short Take(いわゆる「失敗テイク」)」の存在。収録する必要があったのかなあ。ただ、臨場感は伝わるし、即興演奏を旨とするジャズ演奏は、常に成功テイクばかりでは無い、失敗テイクの積み重ねという側面もあるということを我々に教えてはくれる。けど、演奏を鑑賞するという面では「いらない」と思う。

しかし、「Billie's Bounce」をはじめ「Now's the Time」「Warming up a Riff」「Thriving From a Riff」「Meandering」「Koko」については、マスター・テイクもオルタネイト・テイクも、当時としては、素晴らしい演奏レベルである。

CD複数枚の企画ボックス盤は聴き通すのに疲れます。この盤は録音もまずまずで、ビ・バップのパーカーを感じる第一歩として、最適のアルバムだと思います。LP1枚分の収録時間なので、一気に聴き通すことができます。
 
 
 
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2021年4月22日 (木曜日)

パーカーの非凡な才能・その8

今でも良く聴くチャーリー・パーカーは、彼の音楽活動の晩年、ヴァーヴ時代のアルバムが聴き易くてお気に入りだ。特に1950年前後以降のセッションは、来るハードバップ時代の演奏トレンドを先取りした様な内容の濃い演奏もあって、聴きどころ満載。ビ・バップからハードバップへの移行は、様々な優秀なジャズメンのセッションを経て、比較的緩やかに実行されたと考えるべきだろう。一夜にして、ビ・バップからハードバップに移行した訳では無い。

『The Genius Of Charlie Parker #8 : Swedish Schnapps』(写真)。ヴァーヴ・レーベルからのリリース。tracks 1-6,13が、1951年8月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Red Rodney (tp), John Lewis (p), Ray Brown (b), Kenny Clarke (ds)。tracks 7-12が、1951年1月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Miles Davis (tp), Walter Bishop Jr. (p). Teddy Kotick (b), Max Roach (ds)。

1951年のセッションのパーソネルが興味深い。いずれのメンバーも、後の「ハードバップ時代」に活躍するジャズマンばかり。あの、後に「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイヴィスも参加して、この時点で既に、いかにも後のマイルスらしいトランペットを披露している。他のメンバーも同様で、パーカー以外、かなりハードバップ的な、アーティスティックで「聴かせる音楽」としてのインプロビゼーションを強く意識して展開している様に感じる。
 

Swedish_schnapps

 
「ビ・バップ」だの「ハードバップ」だの、と言う前に、パーカーはパーカーらしく、ハイテクニックな、力感溢れるブリリアントな音で流麗に吹き進める。とにかく、晩年とは言え、運指のテクニックが素晴らしい。パーカーらしい、しっかりクッキリと硬派なブロウが堪らない。「ビ・バップをしっかり聴かせてくれる」ジャズ盤として、このアルバムの存在は価値がある。

この盤にはブルース曲が多く収録されているところが聴いていて楽しいところ。1曲目 の「Si Si」からブルース曲が炸裂。「Back Home Blues」と「Blues for Alice」も題名を見てのとおり、それぞれ順にCそして、Fのブルース。「Au Privave」はFのブルース。マイルスがなかなか張りのあるソロを披露している。

僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半は、まことしやかに「ヴァーヴのバードは駄目だ」と言われていましたが、とんでもない。この『Swedish Schnapps』は、僕の大好きなバーカー盤。1950年前後の録音なので、録音状態もまずまずで、鑑賞に十分に耐えるレベルであるというのも嬉しいところ。これからバードを聴きたいなあ、と思われているジャズ者初心者の方々に、お薦めの一枚です。
 
 
 

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2021年4月21日 (水曜日)

パーカーの非凡な才能・その7

暖かくなった。ここ千葉県北西部地方は桜のシーズンを過ぎ、藤のシーズンも過ぎ、今は「さつき」のシーズン。これだけ暖かくなると、ジャズ鑑賞についても、どんな種類の、どんなスタイルのジャズもOKになる。寒いと「クール」なジャズはちょっと、だし、暑いと「バップ」なジャズや、フリーなジャズはちょっと、だし。

『The Genius Of Charlie Parker #7 : Jazz Perennial』(写真左)。1949年から1953年にかけてのコンボからオーケストラまでの4種のセッションの寄せ集めで、演奏形式の統一感は無い。よって、パーソネルについては、そういう意味で割愛する。なんせ、様々なセッションのごった煮なので、ほぼ曲毎にパーソネルが変わるイメージ。

詳しくは、1949年2月〜3月、1949年5月、1950年4月、1953年5月のそれぞれのセッションからの選曲になるんだが、この盤、セッションの寄せ集め盤ではあるが、チャーリー・パーカーのアルト・サックスはどのセッションでもブレが無く、複数のセッションからの寄せ集めの選曲でも、意外と統一感がある。そこがパーカーの凄いところである。
 

Jazz_peremmial

 
パーカーのアルト・サックスは切れ味鋭く、訴求力高くかつ流麗。ストリングス入りのものやオーケストラを従えたもの、ヴォーカル等々、ヴァラエティに富んでいて、戸惑う位の「ごった煮」ではあるが、パーカーのアルト・サックスは「ダイヤル・セッション」などでの、息の詰まるような迫力は無い。力強くはあるが、フレーズは優しく、意外とポップなのだ。

1曲目「Cardboard」のアドリブから、しっかりと耳を奪われる。アルト・サックスなので、吹き上げる時に、ちょっと金属的な音が特徴のブロウが耳につくことが多いのだが、このアルバムのパーカーのブロウは比較的穏やか。流麗なアドリブラインが実に魅力的。5曲目の「Star Eyes」は傑作。曲の冒頭から、とにかく、パーカーは淡々と吹き進めていく訳だが、そのアドリブ・フレーズが流麗かつ複雑。簡単そうに聴こえるが、意外と複雑なアドリブラインを吹き上げている。

パーカーの凄みというのは、こういうところにあって、簡単に淡々と吹いている様に聴こえるが、意外と複雑で難しいラインを吹いていることが多い。簡単そうに聴こえるが、実は複雑で難しい。そんなプロフェッショナルなインプロビゼーションが「テンション高い演奏」として聴こえたりするのだ。
 
 
 
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2021年4月20日 (火曜日)

パーカーの非凡な才能・その6

昨日、9日ぶりにブログを再開した訳ですが、チャーリー・パーカーの入門盤に最適なヴァーヴ・レーベルからリリースされた「The Genius Of Charlie Parker」シリーズのご紹介記事が途中で途絶えていたので、あと2枚なんですが、再開させて頂こうかと。

『The Genius Of Charlie Parker #6 : Fiesta』(写真左)。1948〜1952年の間のセッションの寄せ集め。パーソネルは「Charlie Parker And His Orchestra」で、Charlie Parker (as), , Benny Harris (tp), Walter Bishop, Jr. (p), Teddy Kotick (b), Roy Haynes (ds), Max Roach (ds), Jose Mangual (bongos), Luis Miranda (conga)。

チャーリー・パーカーと言えば「ビ・バップ」の祖の一人。「ビ・バップ」の演奏スタイルは後に続く、ジャズ史上最大の演奏スタイル「ハード・バップ」の礎でもある。やはり「ハード・バップ」以降のジャズを聴く場合、たまには「ビ・バップ」の演奏にも耳を傾け、現代ジャズの「礎」の演奏の雰囲気を感じることは大切だと思っています。

ただし、チャーリー・パーカー=「ビ・バップ」といえば、激しいアドリブ合戦や超絶技巧な高速フレーズの連発で、ちょっとジャズ初心者の方は敷居が高く、苦手やなあと感じてしまう気がします。

ジャズ盤の入門盤紹介の記事を見て、『オン・ダイアル』や『オン・サヴォイ』なんてアルバムを入手して聴いた時には、何が何だか判らず、ただ激しく、やかましく、うるさいだけで、きっと、パーカーやビ・バップが嫌いになってしまう危険性大です。
 

Fiesta-charlie-parker

 
盤によっては、別テイク(本収録されたテイクと内容に遜色ない出来だが、アルバムの収録時間の制約上、やむなく不採用となったテイク)やアウトテイク(演奏は完結したが不採用となったテイク)、失敗テイク(何らかのトラブルが生じて完結しなかったテイク)が入り混じって収録されて、何が何だか判らなくなります。

やはり、聴き易く馴染み易いセッションで固めたアルバムが良いと思う訳で、そう言う意味では、このパーカーの『The Genius Of Charlie Parker #6 : Fiesta』はなかなか良い感じの盤かと思っています。

この盤は、チャーリー・パーカーが吹き込んだ唯一のラテン・ジャズ盤。通常のコンボに2名のラテン・パーカッション(コンガ&ボンゴ)を加えた編成で、めくるめくラテン・ジャズの祭典(Fiesta)。エネルギッシュなパーカーのアルト・サックス。

1948〜1952年の間のセッションなんですが、既にジャズとラテン音楽は融合していたんですね。アレンジも良好、しっかりとラテン音楽の要素がジャズに融合していて、取って付けたような違和感は全くありません。演奏する方も手慣れた感が感じられて、皆、エネルギッシュに吹き上げ、叩きまくる。

特にパーカーの「ビ・バップ」マナーの、エネルギッシュでテクニカルなアルト・サックスが、ラテン音楽の旋律を吹き上げるのにピッタリ。ポップで聴き易い「ビ・バップ」マナーのアルバムに仕上がっていて素晴らしい出来です。ポップで聴き易い内容なので「ながら聴き」なジャズにも最適かと。好盤です。
 
 
 

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2021年4月10日 (土曜日)

パーカーの非凡な才能・その5

ビ・パップと聞くと、ビ・バップが流行した頃、一般の音楽マニアから「うるさくて、騒々しい、ジャズのどんちゃん騒ぎ」に感じた、今の耳にはメリハリの効いた、テクニック優秀な、切れ味抜群な即興演奏を思い浮かべる。丁々発止としたアクロバティックなアドリブ合戦のイメージが強いが、ビ・バップの祖の一人、チャーリー・パーカーのアルト・サックスは歌心も満点なのだ。

『The Genius of Charlie Parker #5 : Charlie Parker Plays Cole Porter』(写真左)。1954年3月31日と12月10日の2セッションで成る。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Roy Haynes, Arthur Taylor (ds), Jerome Darr, Billy Bauer (g), Teddy Kotick (b), Walter Bishop Jr. (p)。

パーカーのアルト・サックスが1管フロントの、ギター入りクインテット編成。メンバーは何れも、ビ・バップで鳴らした、ビ・バップ演奏の「手練」の名手がズラリ。タイトル通り、コール・ポーター楽曲を演奏した「コール・ポーター・ソングブック」である。ビ・バップには珍しく「歌もの」をメインとした企画盤的内容である。
 

The-genius-of-charlie-parker-5

 
ビ・バップ特有の丁々発止としたアクロバティックなアドリブ合戦がメインでは無く、メンバー的にも、ビ・バップの演奏フォーマットで、コール・ポーターの歌心溢れる楽曲の数々を唄い上げることをメインにした内容。いわゆる「聴かせるビ・バップ」盤である。

コール・ポーターの楽曲をパーカーは唄うが如く、吹き上げていく。ビ・バップの演奏フォーマットなので、明朗に流麗にアドリブ展開がなされると思いきや、抑制が効いていて、少し気怠いアーバンな吹きっぷりは特徴的。それでも、パーカーのアドリブ展開部の歌心満点な吹き回しには惚れ惚れする。

実はこの盤のセカンド録音は、パーカーの最晩年に行われたもので、このセカンド録音の約3ヶ月後、本盤のリリース前に逝去してしまう。いわゆるパーカーの正式録音としての「ラスト・レコーディング」を収めたものして貴重な音源である。

こうやって聴いていると、パーカーは自らの私生活の状態がどうであれ、アルト・サックスを手に録音する時は、最後まで素晴らしいパフォーマンスを発揮した、ということが良く判る。
 
 
 

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2021年4月 9日 (金曜日)

パーカーの非凡な才能・その4 『Bird And Diz』

ビ・バップの祖として有名なのは、アルト・サックス奏者のチャーリー・パーカーと、トランペット奏者のディジー・ガレスピー。まあ、この二人がビ・バップの祖であり、その二人の数々の名演を押さえることで、ビ・バップへの理解は飛躍的に高まる。しかし、である。このビ・バップの祖の二人、パーカーとガレスピーについては意外と共演盤が少ない。

『The Genius Of Charlie Parker #4 : Bird And Diz』(写真)。ビ・バップ晩期、1949ー50年の録音。ビ・バップの祖、Charlie Parker (as), Dizzy Gillespie (tp) の共演盤。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Dizzy Gillespie, Kenny Dorham (tp), Curley Russell, Tommy Potter (b), Buddy Rich, Max Roach (ds), Carlos Vidal (ds, bongo), Thelonious Monk, Al Haig (p), Tommy Turk (tb)。

パーソネルを見渡して、ビ・バップで活躍していたメンバーがズラリ。録音時期はビ・バップ晩期の1949ー50年。ビ・バップが成熟し、演奏テクニックも充実していた時期。演奏テクニック、アドリブ展開のイマージネーション、スタンダード曲のアレンジなど、かなり優秀である。加えて、この頃のアルバムは時代が時代だけに音が悪かったりするが、この盤は音も良く、いずれの演奏も水準以上。ビ・バップの完成形を見る想いのする内容である。
 

Birdanddiz

 
この盤に詰まっている演奏は「典型的なビ・バップ」。ビ・バップの教科書の様な演奏がギッシリ詰まっている。アバンギャルドで躁状態の尖った演奏が主で、ビ・バップが流行した頃、一般の音楽マニアからは「うるさくて、騒々しい、ジャズのどんちゃん騒ぎ」に感じたことが良く判る。今の耳には、メリハリの効いた、テクニック優秀な、切れ味抜群な即興演奏で、アレンジだけ見直せば、現代でも充分に通用するポテンシャルの高い演奏である。

この盤の「ビ・バップ」は聴き易い。パーカーのアルト・サックスは、とりわけ即興演奏のパフォーマンスが。とても「安定」している。ビ・バップなので、アクロバティックにオーバードライブ気味に、前掛かりに即興演奏をかましがちなのだが、この盤では、抑え気味に流麗な吹き回しを心がけている様に感じる。もともと歌心溢れるアドリブ展開が身上のパーカーのアルト・サックス。見事なアドリブ・パフォーマンスに惚れ惚れする。

ビ・バップとは何か、パーカーのアルト・サックスとは何か、これらの問いにズバリ答えるような内容の好盤である。パーカーとガレスピーの顔写真、またはイラストをあしらったジャケットにはちょっと「ひく」が、内容はピカイチ。ビ・バップの教科書の様な内容がギッシリ詰まっています。ジャズ者初心者の方々には是非一度は聴いて頂きたい盤ですね。
 
 
 

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2021年4月 8日 (木曜日)

パーカーの非凡な才能・その3

「The Genius Of Charlie Parker」の#1と#2は「ウィズ・ストリングス」。パーカーの考案した、パーカーお気に入りの演奏フォーマットだった。この「ウィズ・ストリングス」はパーカーのアルト・サックスの優秀性、音色の素晴らしさ、アドリブ・フレーズの芸術性を愛でるのに最適なのだが、ビ・バップという演奏フォーマットの中でのパーカーについては良く判らない。

『The Genius Of Charlie Parker #3 : Now’s The Time』(写真左)。1952年から53年にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。チャーリー・パーカーのアルト・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成。

1952年から53年の頃って、パーカーの生活の状態が最悪の時期で、生涯最後の奥さんとの間に生まれたパーカーが可愛いがりまくった女の子が肺炎で亡くなり、ここからパーカーは人が変わったみたいになる。ステージに行くと言って家を出たままステージに来ない、楽器は無くす、ステージ上で泥酔し演奏出来ず、果ては自殺未遂 等々、ボロボロである。そして、この盤の録音の2年後、1955年に心不全で逝去する。
 

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僕がジャズを聴き始めた頃のジャズ盤紹介本では、そんなこんなで「1950年代のパーカーは駄目」と断言されていた。が、大学近くの「秘密の喫茶店」でこの盤を聴かされて以来、そんなことは一切無い、という思いが強い。それほど、この盤でのパーカーのアルト・サックスは素晴らしい。アルト・サックスの音自体、ブリリアントでブラスがキュインと鳴っているし、アドリブ・フレーズの独創性とテクニックは見事という他ない。

そして、収録曲が良い。「Kim」「 Cosmic Rays」「Chi-Chi」「Now's The Time」「Confirmation」といった、パーカー作のビ・バップの名曲がズラリと並ぶ。その名曲を、1952年から53年という、ハードバップ初期に差し掛かる時期の「充実し成熟した演奏テクニック」を基にした流麗で熱い演奏で唄い上げていく。パーカーの私生活が不調だったなんてとても思えない、素晴らしいパーカーのパフォーマンスである。

ジャケットも雰囲気があるし、録音も1952年から53年にかけての録音としては良好。パーカーだけで無く、ヘイグ〜ヒース〜ローチのリズム・セクションの演奏も優れていて、グループ・サウンドとしても、ビ・バップの演奏ではあるが、「ハードバップっぽく」充実してところが、この盤を聴きやすくしている。パーカーのビ・バップなアルト・サックスを愛でる入門盤として最適な盤です。
 
 
 

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2021年4月 7日 (水曜日)

パーカーの非凡な才能・その2

今から70年ほど前のジャズの演奏トレンド「ビ・バップ」。そのビ・バップの祖の一人、アルト・サックスのチャーリー・パーカー。パーカーの好盤を聴けば、その「ビ・バップ」が判る。僕は「パーカーを最初に体感するアルバム」については、ヴァーヴ・レーベルの「The Genius Of Charlie Parker(パーカーの非凡な才能)」シリーズをお勧めすることにしている。

『The Genius of Charlie Parker #2 : April In Paris』(写真左)。1949年11月30日、1950年7月5日、1952年1月22日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Stan Freeman (p), Ray Brown (b), Buddy Rich (ds), Mitch Miller(oboe, English Horn) に with Strings。アレンジはジミー・キャロル。

パーカーは「ウィズ・ストリングス」がお気に入りだったとみえる。この盤でも、パーカーは喜々として、切なさと優雅さを併せ持った流麗かつエモーショナルなブロウを繰り広げている。ちなみに、この「ウィズ・ストリングス」を積極的に録音したのは、パーカー自身で、パーカーのアイデアだったそうである。なるほど合点がいった。喜々として気合いを入れて吹く訳である。
 

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しかし、パーカーのアルト・サックスは良く鳴る。ブリリアントでブラスの音の輝きがダイレクトに伝わってくる。しかも、パーカーの演奏テクニックは超優秀。頭の中に閃いたアドリブ・フレーズを、いともたやすく音にしていく。加えて、ここまでバリエーション豊かなアドリブ・フレーズが閃くもんだなあ、と感心する。とにかく彩り豊かなパーカーのアルト・サックスである。

この『#2 : April In Paris』はバックのリズム・セクションも優秀。骨太な職人ベーシスト、レイ・ブラウンと、明快なバップなドラマー、バディ・リッチのプレイが突出している。この2人の叩き出すリズム&ビートがあってこそ、この「ウィズ・ストリングス」盤を、甘さ控えめ、クールでビターでビ・バップな純ジャズとして成立させているのだ。

「ウィズ・ストリングス」は、カルテットやクインテットな演奏に比べて、演奏の自由度が飛躍的高く、アドリブ・ソロを取るのが基本的にパーカーだけなので、パーカーのアルト・サックスだけが目立つことこの上無い。パーカーが「ウィズ・ストリングス」をお気に入りだったのは、昨日ご紹介した『#1 : Night And Day』や、この『#2 : April In Paris』を聴けばその理由が良く判る。
  
 
 

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2021年4月 6日 (火曜日)

パーカーの非凡な才能・その1

なんだかんだと言っても、ジャズの基本を学ぶ上で、チャーリー・パーカーは避けて通れないと思うのだ。ジャズの真髄は「即興演奏」とするところで、パーカーのアルト・サックスの即興演奏、つまりアドリブ・プレイは、そのアーティステックなフレーズ、その高度な演奏テクニック、どれをとっても、現代ジャズにおいても最高峰に位置づけられると思うのだ。

ただ、パーカーの残した音源は意外と雑然としている。ダイアル・セッション、サボイ・セッションが最高とする向きもあるが、マスターテイク、別テイク、同一曲の演奏が混然と収録されていて、しかも、失敗した演奏もそのまま収録されていたりで、ジャズ者初心者からすると判り難い。パーカーを聴き、理解するには、まずはマスターテイクのみを聴くべきかと思う。

そういう点からすると、僕は、パーカーについては、ヴァーヴ・レーベルの「The Genius Of Charlie Parker(パーカーの非凡な才能)」シリーズをお勧めすることにしている。別テイクも入ってはいるが、マスターテイクと遜色ない内容のものばかりだし、失敗テイクは一切収録されていない。#1〜#8まであって、どれもがパーカーの素晴らしさを体感できる内容になっている。
 

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『The Genius Of Charlie Parker #1 : Night And Day』(写真左)。1950年7月、1952年1月、1952年3月の3つのセッションの寄せ集め。別名『Charlie Parker - Big Band』(写真右)としてもリリースされている。ジョー・リップマンの素晴らしいアレンジによる、弦も入った「ビッグバンドもの」。お馴染みのスタンダード曲がズラリと並ぶ。

硬派なビ・バップでは無く、ポピュラー・ミュージック風の作りになっている。それでも、弦入りビッグバンドの演奏をバックに、パーカーの甘くもクールで切れ味の良いアルト・サックスが鳴り響く。テーマ部では、テーマの持つ美しいフレーズをクッキリ浮き立たせ、アドリブ部に入ると、短くはあるがハッと目が覚めるような、切れ味の良い流麗なアドリブ・フレーズが湧き出るが如く次々と出てくる。思わず「ふへ〜っ」と溜息をつく。

CDによっては、ボートラとして、アルトテイク、失敗テイクが追加収録されているものもあるが、パーカーのアルト・サックスを愛でるには、マスターテイクのみの鑑賞で留めて頂きたい。このマスターテイクのパーカーのアドリブ・プレイを次々と聴くことによって、ジャズにおける即興演奏の一端が体感出来るのだ。
 
 
 

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