プログレとクロスオーバーの融合
聴くたびに思うんだが、英国では、プログレッシヴ・ロック(プログレ)とクロスオーバー・ジャズの境目が実に曖昧である。プログレも変則拍子や即興演奏はお手のもので、プログレの有名ミュージシャンが、結構、内容のあるクロスオーバー・ジャズのバンドのリーダーをやったり、演奏をやったり。当時、プログレのミュージシャンのテクニックは優秀で、クロスオーバー・ジャズでも、全く問題なく対応できた。
Bill Bruford『One Of A Kind』(写真左)。1979年1-2月の録音。EGレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds, perc), Allan Holdsworth (g), Dave Stewart (key, syn), Jeff Berlin (b)。プログレの有名バンド、イエス、キング・クリムゾンのドラマーを務めた、ビル・ブルーフォードのリーダー作。
Bill Bruford(ビル・ブルーフォード)。僕たちがイエスやキング・クリムゾンなどの有名プログレ・バンドをリアルタイムで聴いていた頃は「ビル・ブラッフォード」というカナ読みだった。しかし、2012年に発行された自伝「Bill Bruford The Autobiography」の日本語版で、「ブルーフォード」の表記が採用されたことで、以降「ブルーフォード」が正式カナ読みとなった。実際の発音も同じ響きだそうだ。
閑話休題。このアルバムは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ。決して、プログレではない。リズム&ビートが明らかにジャジーで、オフビートが強調されている。ホールズワースのギターは、エレもアコも超絶技巧フュージョンの流れを汲むものだし、ジェフ・ベルリンのベースのビートはジャズ。しかし、スチュワートのキーボード、特にシンセサイザーの使い方は、どこかプログレしていて、この盤は、一言で言うと「プログレとクロスオーバーの融合」なアルバムと形容することが出来る。
全編に渡って、ブルーフォードのドラミングが効いている。お得意の変則拍子ドラミング、ポリリズミックなドラミングが炸裂する。ブルーフォードのドラミングは重心が低く重厚。決して高速なドラミングではないが、芯の入った重心の低い、密度の濃いドラミングで、演奏全体のボトムが堅牢で、演奏全体がとても分厚く感じる。そこに切れ味良い、疾走感溢れるホールズワースのエレギが乱舞し、スチュワートのシンセが、キーボードが練り歩く。
プログレの要素を色濃く湛えた、ジャズロックというよりは「プログレとクロスオーバーの融合」によるクロスオーバー&フュージョン。ジャズロックとするほど単純ではない、意外と自由奔放で複雑な音作り。このバンドの音世界は、英国の音楽シーンだからこそ成し得た、プログレ)とクロスオーバー・ジャズの境目が曖昧だからこそ成し得た、独特の個性的な融合サウンドである。一聴の価値はある。
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