「スタンダーズ」の安定の好盤
キース・ジャレットは、2018年に2度の脳卒中を発症して以降、療養生活を続けており、ピアノ演奏への復帰は難しいとされている。以前のように弾けなくとも、とにかく元気でさえいてくれれば……と思っている。
お気に入りのジャズ・ピアニストについては、キースは絶対に外せない訳で、キースのアルバムについては、ほぼ全部、聴いている。当ブログでも、キースのアルバムに関する記事についても、順次アップしてきて、残るは10枚程度。今年中にはコンプリートできるかな。
Keith Jarrett Trio『The Out-Of-Towners』(写真左)。2001年7月28日、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場でのライヴ録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。2001年夏の「スタンダード・トリオ」ヨーロッパツアー中に録音されたライブ盤。
1996年、キースは慢性疲労症候群と診断され、同年の秋以降の活動予定を全てキャンセルして自宅での療養を余儀なくされる。2年の闘病の後、1998年に復活。このライヴ盤は、復活後3年経った頃の録音で、慢性疲労症候群の影響は全く無くなり、療養前のキースが戻っている。
病気療養後のキースのピアノは明らかに変わった(良い意味で)。アドリブ展開については、変にこねくり回さずにシンプルで判り易い展開に変わっている。
スタンダード曲の解釈については、変にアレンジせずにシンプルになり、スタンダード曲の持つ個性をストレートに押し出している。そして、大きな声で唸らなくなっている。これは良い。3者3様の演奏に耳を集中させることが出来る。
このライヴ盤でも、その傾向は変わらない。病気療養前、自らを体力的にも精神的にも削りに削って、鬼気迫る、テンションMax、切れ味抜群、限りなく耽美的で、息が詰まる様な、限りなくテクニカルなピアノを限界まで弾ききっていたキースが、療養後、自らを追い込むことはせず、自ら浮かんだイメージを信じて、そのままに、フレーズは捻らない。シンプルにそのままにフレーズは展開される。
アドリブ展開はシンプルそのもの。アレンジやアドリブが、ストレートでシンプルになればなるほど、スタンダード曲の良さがポッカリと浮かび上がってくるから不思議。キースの弾くスタンダード曲の旋律が、以前よりもはっきり判る様にアレンジやアドリブがシンプルなものに変わっているのが判る。
ベースのピーコック、ドラムのデジョネットのソロ・パートの長さが増えたなあ、とも感じる。ピーコックの現代音楽的な、硬質な変則ビートで変幻自在、緩急自在なベースラインが見事。捻れて浮遊するベースライン。ピーコックのベースの個性がはっきり判る。デジョネットの究極な「ポリリズミックなドラミング」も素晴らしい。ダイナミズム溢れる、即興要素満載の変幻自在なドラミングは凄い。
キースのピアノの音が美しい。ピーコックのベースの音がソリッド。デジョネットのドラムの音がポリリズミック。このトリオの出す音は、このキースの「スタンダーズ」トリオでしか出せない音。そんな「スタンダーズ」トリオしか出せない音が、このライヴ盤に詰まっている。安心して聞き込むことの出来る、キースの「スタンダーズ」トリオの安定の好盤である。
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