マクリーンの果敢な挑戦の記録
ブルーノートには「ボツになった理由不明」の未発表音源がゴロゴロしていた。そんなブルーノートの未発表音源を「Blue Note LTシリーズ」として、1979〜1981年にLP40数タイトルでリリースした。どのアルバムも聴いてみて、「どこがお蔵入りなんや」「どこが気に入らなかったんや」と思ってしまう優秀な音源ばかりなのだ。
Jackie McLean『Vertigo』(写真左)。1959年5月2日、1963年2月11日の録音。ここでは、1980年リリースの「Original LP」の収録曲(全6曲)に絞ってコメントする。ちなみにパーソネルは以下の通り。
1959年5月2日の録音(3曲目: 「Formidable」のみ)については、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Walter Davis Jr. (p), Paul Chambers (b), Pete LaRoca (ds)。
1963年2月11日の録音(3曲目以外: 「Marney」「Dusty Foot」「Vertigo」「Cheers」「Yams」)については、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Tony Williams (ds)。
2セッション共通で、ジャキー・マクリーンのアルト・サックスとドナルド・バードのトランペットの2管フロント。リズム・セクションは総入れ替え。
3局目の「Formidable」だけが、マクリーンの『New Soil』(ブルーノートの4013番)録音時のボツテイク。この曲だけは、この『New Soil』収録曲と同列で評価されたい(2021年5月3日のブログ参照)。ここでは、3局目の「Formidable」以外の1963年2月11日の録音についてコメントする。
パーソネルを見渡すと、リズム・セクションの3人に目がいく。ピアノに若かりし頃のハービー・ハンコック、ベースにブッチー・ワーレン、そして、ドラムに、当時弱冠17歳のトニー・ウィリアムス。そう、この音源、トニー・ウィリアムスの初録音である。
録音は、正式盤でリリースされた『One Step Beyond』(2016年1月8日のブログ参照)の約2ヶ月前の録音で、トニー・ウィリアムスだけが、『One Step Beyond』にも、ドラム担当としてチョイスされている。
さて、1963年2月11日のセッションについては、成熟したハードバップと、当時、マクリーンが取り組んでいた「モード・ジャズ」が良い塩梅でミックスされたユニークな内容。テーマ部のフロントのユニゾン&ハーモニーは、成熟したハードバップの響き、アドリブ展開部は、少しハードバップのコードな展開が見え隠れするマクリーンなりのモーダルなフレーズ。
で、ピアノのハンコックは、と問えば、意外とモード・ジャズしていない、ハードバップなバッキングをメインにしているのが面白い。ハンコックなりのモーダルなフレーズを封印して、マクリーンならではのモーダルな展開を優先させていることがよく判る。サイドマンの鏡の様なバッキング。
トニーのドラムも同様。後の細かくシンバルを叩きまくりつつ、フロント管を煽りに煽る攻撃的なドラミングは全く無し。神妙にハードバップなビートを正確に叩き出している。が、これが意外と「老獪」。弱冠17歳にして、トニーのハードバップなドラミングは完成されている。
この1963年2月11日のセッションの内容については、ボツとした理由が判らない。モードに適用する過渡期のマクリーンの独特の個性をしっかり捉えている。恐らく、この日のセッションについては、ここに収録された5曲のだった様で、LPにしてリリースするには、収録時間を考えると、曲が1曲、足らなかったのだろう。ブルーノートは、プレスティッジの様に、やっつけのアルバム編集はしない。
3曲目をちょっと横に置いて、残りの5曲は意外と聴き応えのある内容です。モードに果敢にチャレンジするマクリーンの奮闘ぶりが良く判る佳作だと思います。
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