2021年8月31日 (火曜日)

スティープルチェイスのデックス 『The Apartment』

Steeplechase(スティープルチェイス)・レーベルのアルバムの聴き直しを再開である。スティープルチェイスは、マイルス・コレクターとして有名なデンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。

このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。カタログを追ってみると、1960年代後半から欧州、特に、この北欧コペンハーゲン界隈に移住した米国ジャズマンの秀作が多い。

Dexter Gordon『The Apartment』(写真左)。1974年5月24日 & 1974年9月8日、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioでの録音。Steeplechaseレーベルの「SCS1025番」。

ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Kenny Drew (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。テナー・サックスのレジェンド、デクスター・ゴードン(愛称:デックス)が1管フロントの「ワンホーン・カルテット」編成。デンマーク出身のベースのペデルセン以外、デックス、ドリュー、ヒースの3人は、ハードバップ期に活躍した一流ジャズマンの「渡欧組」。
 

The-apartment

 
デックスは、1962年8月に『A Swingin'Affair』を録音後、渡欧。主にパリとコペンハーゲンに住み、14年間、欧州を活動拠点としていた。この『The Apartment』は、そんなデックスの欧州時代後半の録音になる。パーソネルにある、ピアノのケニー・ドリュー、ドラムのアルバート・ヒースも渡欧組。ベースのペデルセンは、スティープルチェイスの地元デンマーク出身のベース・レジェンド。

冒頭のタイトル曲から、デックスのテナーがガツンと出てくる。全編、往年の「こってこてハードバップな」演奏が展開される。デックスのアドリブが絶好調で、引用含めてご機嫌に吹き進めていく。あまりの躍動感にこの盤、最初聴いた時はライヴ音源かと思った。続いて、ドリューのピアノも絶好調。バリバリ、典雅でバップなピアノを弾きまくる。

ヒースのドラミングもスインギーで、演奏全体のリズム&ビートを牽引する。ペデルセンの鋼質ブンブンなスイング・ベースは、デックスのサックスの歌心の「底」をしっかりと支える。7曲中3曲がデックスの自作曲。残り4曲がスタンダード曲。とりわけ、このスタンダード曲の出来が良い。

もともとデックス自体が以前より過小評価されているのと、スティープルチェイス・レーベルの盤自体が、1970年代から1980年代にかけて入手し難かったこと、そして、一見するとブート盤の様なシンプル過ぎるジャケット、この3つの要素が絡み合って、これだけ内容のあるハードバップな快作でありながら、我が国では全くマイナーな存在に甘んじているのが残念。再評価すべきデックスの好盤である。
 
 
 
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2020年1月 6日 (月曜日)

ドリューにミュージカルの楽曲

ケニー・ドリューのピアノは、ジャズ者初心者の頃から大好きである。典型的なバップ・ピアニストで、テクニックも十分、明確なタッチでダイナミックな展開が身上。ファンクネスを漂わせながら、唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す。そんなドリューのピアノがお気に入りである。

Kenny Drew『Pal Joey』(写真左)。1957年10月15日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Drew (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。ドリューお得意のピアノ・トリオ編成。明確なタッチでダイナミックに弾き回すドリューにとっては、旋律を奏でるフロントの役割は自分のピアノで十分なんだろう。

この盤は、人気ミュージカル「Pal Joey」(1940年初演で1950年代には繰り返し上演。1957年にはフランク・シナトラ主演、邦題『夜の豹』で映画化されている)の楽曲を採り上げている。主人公はプレイボーイな流れ者シンガーとのことで、収録された楽曲はどれもが魅力的な曲ばかり。そんな楽曲から8曲を選んで、ピアノ・トリオとして演奏している。
 
 
Kenny-drew-pal-joey
 
 
 
ミュージカル曲がベースなので、ドリューのピアノの個性のひとつである「唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す」部分がバッチリ填まっている。明確なタッチと相まって、ベースの楽曲の良い旋律がクッキリと浮かび上がり、そのコード展開を基にしたアドリブは、ドリューのダイナミックな弾き回しで典雅に展開する。ドリューのピアノに「ミュージカル曲」が良く似合う。

バックのリズム隊も良い味を出している。ドラムのフィリー・ジョーは、バップなドラムをダイナミックにバッシバッシ叩きまくる印象があるが、この盤では、バラード曲は繊細なシンバル・ワークを、軽快な曲ではダイナミックではあるが、楽曲の旋律の邪魔にならないよう、配慮の行き届いた「味のある」ドラミングを聴かせてくれる。フィリー・ジョーの実力を遺憾なく発揮している。

ちょっと奇妙に捻れたベースが個性のウエアもこの盤では、しっかりと低音を響かせた、しなやかなウォーキング・ベースを聴かせてくれる。この端正なウエアのアコベは聴きどころ満載。ウエアのベストプレイのひとつとしても良いのでは、と思う。

「Pal Joey」という人気ミュージカルの楽曲を採用することで、実に魅力的なピアノ・トリオ演奏をものにしている。好盤です。
 
 
 
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2018年2月18日 (日曜日)

珍しいドリューのソロ・ピアノ

SteepleChaseレーベルは、欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である。特に、1970年代の欧州の純ジャズをしっかりと押さえている。加えて、ジャズ好きが立ち上げたジャズ・レーベルだけに、コマーシャルに走らず、ジャズ者が「お〜っ」と唸るような、ツボを押さえた好盤が多い。

Kenny Drew『Everything I Love』(写真左)。SCS 1007番。1974年のリリース。デンマークはコペンハーゲンでの録音。この盤、ジャケットを見れば一目瞭然なのだが、ケニー・ドリューのソロ・ピアノ盤である。これ、ケニー・ドリューとして、有りそうで無い、稀少な記録である。

ソロ・ピアノはピアニストの個性が露わになる。ドリューのピアノはバップなピアノ。テクニックに走ること無く、疾走感に走ること無く、どこか典雅で、そこはかとなくファンクネス漂う、切れ味の良いタッチが個性。フレーズは端正が故に、イージーリスニングに流れそうになるが、これがならない。左手にジャジーなビートが仄かに香り、右手の回りがそこはかとないオフビート感覚。
 

Everything_i_love_1

 
それが故に、ソロピアノであっても、イージーリスニングに聴こえない。立派にジャズしているドリューのソロ・ピアノ。大向こうを張る、大掛かりな展開やテクニックがある訳では無い、どちらかと言えば、落ち着いた、ちょっと地味なものではあるが、彼のフレーズは滋味に富んでいる。

展開はいたってシンプル。複雑なアレンジや展開は皆無。自作曲ではなかなか判らないが、スタンダード曲については、そのシンプルな展開が良く判るが、決して飽きることは無い。一度聴いたら、2度3度、また聴きたくなる、「味のある小粋な」シンプルさ。シンプルさの中に、しっかりとアレンジの「技」が隠されているようだ。

この盤を聴くと、ケニー・ドリューというピアニストは隅に置けないなあ、という気持ちになる。キースの心の赴くままに弾きまくるソロ・ピアノとは対極な、ジャズの基本、ジャズの常識をしっかりと踏まえた、堅実確実な純ジャズ基調のソロ・ピアノである。こんなドリューのソロ・ピアノが記録されているとは。SteepleChaseレーベル侮りが足し、である。
 
 
 
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2017年4月23日 (日曜日)

グリフィンとドリューの好演

いきなり初夏の陽気が数日続いたと思ったら、天候は不安定になって、昨日から4月上旬の気候に逆戻り。これだけ寒暖の差が激しいと身体がついていかない。我が千葉県北西部地方、今年の春は気候が不順でいけない。

せめてジャズは不順は避けたい。こういう天候不順で体調が優れない時は、鉄板の「ハードバップ」な演奏が良い。ハードバップとはいえ、1950年代後半から1960年代前半の伝統的なハードバップでは無く、1980年代の「純ジャズ復古」以降の洗練され尽くしたハードバップが安心で良い。しかし、そんなアルバムあったっけ?

Johnny Griffin Quartet feat. Kenny Drew『Catharsis』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Kenny Drew (p), Jens Melgaard (b), Ole Steenbert (ds)。リトル・ジャイアント、ジョニー・グリフィンのカルテット。ベースとドラムは、ごめんなさい、僕は知りません。しかし、ピアノには大ベテラン、ケニー・ドリューが座る。
 

Catharsis_1

 
録音場所はコペンハーゲン。といって、スティープルチェイスの本拠地モンマルトルでは無い。しかし、音の雰囲気は確かに北欧。欧州ジャズらしい、スッキリとしてはいるが、音に芯の入った切れ味の良いもの。グリフィンの豪快で切れ味の良いテナーが心地良く響くところが良い感じ。

アルバム全体の演奏は明らかに「ハードバップ」。モーダルなアドリブ・ラインもあるが、全体の傾向は明らかに伝統的はハードバップ。エネルギッシュでパワフルなグリフィンのテナーが素晴らしい。加えて、そんなグリフィンに呼応するように力の入ったバップ・ピアノを披露するケニー・ドリューも聴きものだ。グリフィン〜ドリューの掛け合い、アドリブの応酬。

僕は知らないとしたドラムとベースも堅調。しっかりとリズム&ビートの底を支えています。1980年代後半、二人のレジェンド(グリフィンとドリュー)が、これだけ洗練し尽くされたハードバップを演奏していたとは、ちょっと驚きです。当時のグリフィン・カルテットの実力の高さが窺い知れます。
 
 
 
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2013年5月16日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・34 『By Request』

このピアノ・トリオ盤は、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達にお勧めである。そのピアノ・トリオ盤とは、Kenny Drew Trio『By Request』(写真左)。

タイトルからして、ははん、と思われるジャズ者の方も多いだろう。確かに、このピアノ・トリオ盤は、当時のジャズ雑誌の権威「スイング・ジャーナル」で、ケニー・ドリュー・トリオで演奏して欲しいスタンダード曲は何、という読者からの人気投票を受けて、上位10曲を演奏して収録した、いわゆる「企画盤」。

もちろん選ばれている曲は超有名なスタンダードばかり。日本のレコード会社のジャズの企画盤は、その意気込みの割に凡庸なものが多い。企画は悪くはないんだが、それをプロデュースする、それをアレンジする、そして、ジャズ界の有名ミュージシャンを集めて、演奏させる。

と、あ〜ら不思議、内容イマイチの、演奏イマイチの、アレンジがイマイチの「なんでこ〜なるんや」的なへんてこりんな内容の企画盤が完成する。日本のレコード会社の企画盤にこの傾向が強い。

この『バイ・リクエスト』も最初はそう思った。スイング・ジャーナルのレビューの絶賛評論を読んでも信用出来ない。こういう企画盤って、レコード会社とジャズ雑誌は絶対に「つるんでいる」からな(笑)。でも、このケニー・ドリュー・トリオのパーソネルを見て考え直した。

そのパーソネルとは、Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Ed Thigpen (ds), Kenny Drew (p)。ちなみに、このアルバムの録音日は、1985年8月24&25日。日本のレコード会社の企画盤ではあるが、なんと録音地はコペンハーゲン。しかも、ケニー・ドリューがセルフ・プロデュース。この録音地とプロデュースが良かったのではないか。
 

Kenny_drew_by_request_2
 


素晴らしく良い内容のピアノ・トリオ演奏である。ケニー・ドリューのバップで黒く、そこはかとなくファンキーなピアノが、このアルバムでは端正に響く。スタンダード曲を演奏するのに、この端正さは実に良い塩梅である。テーマが良く判るし、インプロビゼーションの展開もタッチが明快で気持ち良い。

そして、ペデルセンの超弩級のベースが、このピアノ・トリオの花形。鋼質のブリブリ響くペデルセンのウォーキング・ベースとソロが凄い。ドリューのピアノを惹き立て、インプロビゼーションの底をしっかりと支えつつ、自分の盤になると、ブリンブリンと鋼質なベースを響かせる。野太いが繊細さも併せ持つ「男のベース」である。

そしてそして、エド・シグペンのドラムが良いんだな〜、これが。このアルバムでのシグペンのドラムは素晴らしいものがある。シグペンの名演のひとつに挙げたい。オスカー・ピーターソン・トリオで鍛えに鍛えられたエド・シグペン。タムタムやスネア、シンバル等々、ドラム・セットを構成するそれぞれが、実に良い音を出している。実に趣味の良い小粋なドラミング。

いやはや、こんな3人が、超有名なスタンダード曲を演奏するのだ。これがまあ素晴らしいのなんのって。超有名なスタンダード曲ばかりなので、ジャズ者ベテランとしては、なんだか気恥ずかしさが先に立ったりするんだが、そんなつまらないプライドは捨てなさい、と言いたい(笑)。

当然、ジャズ者初心者の方々には、絶対のお勧めピアノ・トリオ盤です。とにかく、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達に言いたい。この『By Request』の良さは「聴けば判る」。
 
 
 
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
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2012年1月14日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・33

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第33回目。ありそうでなかなか無い、ジャズ・ピアノとジャズ・ベースのデュオをご紹介したい。

ケニー・ドリュー(Kenny Drew)のピアノは、黒くブルージーでありながら、クラシック的な優雅さを底に湛えた、端正でテクニック豊かなピアノである。底に漂うそこはかとないファンキーな雰囲気が無ければ、どちらかと言えば、欧州ジャズ系のピアニストの音である。

ニールス・ペデルセン( Niels-Henning Orsted Pedersen)のベースは驚異的なテクニックの塊。ギターの様に、歌うように、アコースティック・ベースを弾く。流れるようなフレーズ。凄いテクニックと歌心。ペデルセンのベースはピッチが合っていて気持ちが良い。ボウイングのテクニックもクラシックの演奏家のそれとひけを取らない素晴らしさである。

ドリューは1961年に渡仏、1964年にデンマークのコペンハーゲンを活動の拠点とし、盟友のベーシスト、ペデルセンと出会っている。恐らく、ジャズを芸術として愛してくれる欧州の聴衆とこのペデルセンとの出会いが、ドリューの心の中の「何か」を変えたのだろう。ニューヨーク時代の苦しさから解き放たれたかのように、端正なタッチ、明快で判り易いフレーズ、ポジティヴで典雅な演奏になって、一躍、人気ピアニストの仲間入りをした。

このドリューとペデルセンがガッチリとデュオを組んで、オリジナルからジョビンのナンバーまで心ゆくまで演奏しまくった記録が、この『DUO』(写真左)。1972年4月2日、デンマークはコペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、言うまでも無く、Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b)。1曲だけ、Ole Molin (g) が入る。
 

Drew_pedersen_duo

 
さすがに、盟友同士のデュオである。素晴らしい演奏が繰り広げられている。ドリューの個性、ペデルセンの個性、奏法の個性の良いところが全て出尽くした、一期一会の名演がずらりと並ぶ。そう、どの演奏も素晴らしい。これ1曲っていうものは無い。全てが素晴らしい。

そんな素晴らしい演奏の中でも特に素晴らしい演奏が、10曲目の「ハッシャ・バイ」。このドリューとペデルソンとのデュオ演奏は極めて完成度が高い。至高の名演である。

特に、ここでのペデルセンの会心のパフォーマンスは凄い。ちなみに、このアルバムのレコードミキサーが興奮してボリュームを上げすぎて、音が思いっきり歪んでいる。それでも良い演奏は多少歪んでも良い。良い演奏の全てをしっかり記録して貰った方が聴き甲斐がある。

優れたジャズ・ベースはどんな演奏を言うのか、と問われれば、僕はこのアルバム『DUO』のペデルセンを聴いて貰うことにしている。音程の合っているジャズ・ベースとはどんな音なのか、そして、音程の合っているボウイング奏法とはどんな音なのか。そして、リズム&ビートとメロディの奏法を担当できるベースの演奏とはいかなるものか。このアルバムのベデルセンのベースが的確に教えてくれる。

互いにでしゃばらず、それぞれの個性を尊重し、良い意味で譲り合うような、ドリューとペデルセンの至芸がここに記録されている。ジャズのデュオという演奏フォーマットの中でも、最高峰に位置づけられる名盤である。ジャケット・デザインも落ち着いていて良い。ジャズ者の方々全てにお勧めしたい。
 
 
 
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2011年3月31日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・20 『Dark Beauty』

ピアニスト、ケニー・ドリュー。1928年ニューヨーク生まれ。スウィング感は抜群だが、今いち個性がつかみづらい、パウエル派のバップ・ピアニストだった。しかし、1970年に人種差別問題に嫌気が差し、突如、欧州移住を決意する。

1961年に渡仏、1964年にデンマークのコペンハーゲンを活動の拠点とし、盟友のベーシスト、ニールス・ペデルセン( Niels-Henning Orsted Pedersen)と出会っている。恐らく、ジャズを芸術として愛してくれる欧州の聴衆とこのペデルセンとの出会いが、ドリューの心の中の「何か」を変えたのだろう。まるで、ニューヨーク時代の苦しさから、解き放たれたかのように、端正なタッチ、明快で判り易いフレーズ。ポジティヴで典雅な演奏になっている。

もともと、幼少の頃から、クラシック・ピアノに秀でていて、8歳の時にはリサイタルを開いていたほどの腕前だったらしい。タッチは明快で端正。その明快で端正なタッチに、ほのかに漂うファンクネス。それでいて、絶対に俗っぽくならない。コペンハーゲンという北欧の環境とクラシックの発祥である欧州の雰囲気が、ドリューのクラシックの素養を引き出してくるんだろう。北欧とニールス・ペデルセンの出会い。これが、ドリューのピアノが、ニューヨーク時代と比べて、がらっと変わった理由だろう。

そんな欧州移住後、北欧の地、コペンハーゲンで録音したピアノ・トリオがある。『Dark Beauty』(写真左)。1974年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Drew (p) Niels-Henning Orsted Pedersen (b) Albert Heath (ds)。

ドリューのタッチは、ポジティヴで典雅ではあるが、決して優しくは無い。もともと、パウエル派のピアニストである。強いタッチと荒々しい展開が基本である。そんなドリューのピアノに、ゴリゴリとして力強くぶっとい、ペデルセンのベースが絡む。そして、アルバート・ヒースの垂直に斬り込むような、縦ノリのドラミングが絡んで、すごく躍動感、疾走感のあるダイナミックでメリハリのあるピアノ・トリオが展開される。これ、もはや快感の域である。

冒頭の「Run Away」が凄い。ドッドドドー、とペデルセンの重戦車の様なベースが鳴り響くと、トットトトーとポジティヴで典雅なドリューのピアノが応える。絶妙のコール・アンド・レスポンス。そして、いくぞー、とばかりに、ヒースの縦ノリのドラミングがドドドドドッと参戦する。それからは、3者が一体となった、躍動感、疾走感のあるダイナミックなピアノ・トリオがぶわーっと展開される。
 

Dark_beauty

 
ガラッと雰囲気が変わって、次の
スローバラードな演奏Dark Beauty」続く「Summer Nights」も良い。荒々しく強いタッチを封印して、端正なタッチ、明快で判り易いフレーズ、典雅なスローバラードな演奏が展開されていく。ヨーロピアンなクラシカルな響きが、これまた魅力的なドリューのピアノである。しかし、この演奏にロマンティシズムは無い。演奏の奥底に、黒いファンクネスが漂っている。ドリューのピアノの強烈な個性である。

そして、4曲目、再び、躍動感、疾走感のあるダイナミックなピアノ・トリオに戻った「All Blues」は圧巻。もう圧倒されるトリオ演奏。凄い音圧。ダイナミックな演奏とはこのこと。速いテンポの演奏になると、パウエル派ピアニストの面目躍如。強いタッチと荒々しい展開で、ドドドドドッと突入していく。ペデルセンのベースはブンブン唸り、ヒースのドラムは、トタトタ・トスントスンと縦に揺れる。

とまあ、ラストのCDのボーナストラック「A Stranger In Paradise」まで、すごく躍動感、疾走感のあるダイナミックでメリハリのあるピアノ・トリオが展開される。聴き応え十分。ジャズ者初心者の方々にお勧め。

特に、1曲目の「Run Away」の前奏のコール・アンド・レスポンスを聴いて「格好ええなあ」と惚れ惚れできないのであれば、続くヒースのドラミングが参戦してのく躍動感、疾走感のある展開に「すげーっ」と感動することができないのであれば、残念ながら、貴方の耳はジャズには向かないです(笑)。

ジャケットも実に良い。「Dark Beauty」=黒人の美。このドリューのピアノ・トリオの演奏の内容をしっかりと表現してくれてます。聴き応え十分。ジャズ者初心者の方々にお勧め。ジャズ者ベテランの方々も、今一度、 聴き直していかがでしょう。新しい発見があったりして、このアルバムはなかなか飽きません。 
 
 
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2009年7月 2日 (木曜日)

「オモテ名盤・ウラ名盤」って

ジャズのアルバム作りって、収録する予定の曲数よりも多い曲数を収録して、その中から、良い演奏をチョイスしてアルバムにする、という手法が取られることが多い。よって、アルバムに採用された演奏曲は良いとして、日の目を見ない演奏曲もある、ということ。

しかし、そのセッションの演奏の水準が高いと、日の目を見ない演奏曲も、アルバムに収録された演奏曲と比べて、全く遜色のない、優れた出来のものであることが多い。そうすると、レーベルとして「これをお蔵入りにするのは惜しい」ということになり、別のアルバムとして、リリースされることがある。

例えば、ピアニスト Kenny Drew(ケニー・ドリュー)の『If You Could See Me Now』(写真左)。このアルバム、実はドリューの大名盤『Dark Beauty』(2009年5月23日のブログ参照・左をクリック)のアウト・テイク集なのだ。つまり、『Dark Beauty』のセッションの中で、『Dark Beauty』に収録された以外の「お蔵入り」になりそうだった演奏曲をアルバム化したもの。

収録曲は以下のとおり。

1. In Your Own Sweet Way
2. If You Could See Me Now
3. All Souls Here
4. I'm Old Fashioned
5. Free Flight [#]
6. Run Away [Take 3][#]
7. Summer Night [Take 1][#]
8. Stranger in Paradise
9. Prelude to a Kiss
10. This Is the Moment
11. Oleo
 

If_you_could_see_me_now

 
5曲目〜7曲目がLP時代未収録曲。実はこれが「邪魔」なのだ。特に、6曲目の「Run Away」は、とても邪魔。この曲が出てくると、本家本元の『Dark Beauty』と勘違いするというか、混同するので、実に邪魔である。5曲目「Free Flight」、7曲目「Summer Night」も、出来は決して良くない。LP時代に、2枚のアルバムからも漏れた演奏曲なので、CDになって、収録時間が増えたからと言って、このアウトテイクを収録することもなかっただろうに・・・。

でもって、この5〜7曲目はスキップして、LP時代の『If You Could See Me Now』にして鑑賞する。と、これが良いんですね〜。冒頭の「In Your Own Sweet Way」から、ドリューの黒光りする、そこはかとなくファンキーなピアノが実に良い。冒頭から弾きまくりである。続くスローなバラード「 If You Could See Me Now」も良い。実に優雅である。実に趣味がよいバラード演奏。

そして、3曲目の「All Souls Here」は意外と言えば意外。バップ系ピアニストのドリューが、絵に描いたような、ゴスペルチックでファンキー、アーシーでフォーキーな演奏をするとは思わなかった。いや〜、これが実に楽しそうで、実にリラックスした演奏なのだ。ドリューがヨーロッパに渡って、郷愁の念はあれど、ジャズを演奏する環境としては「幸せ」だったことが偲ばれる、実に楽しい、実にファンキーな演奏である。

俗っぽいテーマが難物で、なかなか決定的ジャズ演奏にお目にかかれない(お耳にかかれない?)「Stranger in Paradise」も大健闘。ラストがフェードアウトなのが惜しいが、なかなか硬派な「Stranger in Paradise」が聴ける。バップ系ピアニスト、テクニックと優雅さのバランスが取れたドリューの面目躍如的な演奏である。

良いアルバムです。オモテ名盤を『Dark Beauty』とするならば、この『If You Could See Me Now』は「ウラ名盤」。『Dark Beauty』は正統派ジャズ名盤なのは疑いもない事実ですが、実は、CDトレイに載る回数が多いのは『If You Could See Me Now』だったりする。

親しみのある選曲とリラックスした雰囲気という観点では、ウラ名盤の『If You Could See Me Now』の方に軍配が上がるのでは無いでしょうか。『Dark Beauty』と併せて、対で鑑賞することをお勧めします。
 
 
 
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2009年6月11日 (木曜日)

実はジャズ者ベテラン御用達

ケニー・ドリューのピアノは、黒くブルージーでありながら、クラシック的な優雅さを底に湛えた、端正でテクニック豊かなピアノである。そのドリューのピアノが一番映えるのが、ジャズ・スタンダードをピアノ・トリオで演奏する時。印象的に旋律、キャッチャーな旋律を持つジャズ・スタンダードは、ドリューのピアノが実に映える。

しかしながら、ドリューのピアノは、端正でテクニック豊かなので、やもすると、ジャズ・スタンダードを演奏しているのを聴くと、ちょっと軽音楽的な、カクテル・ピアノっぽい、判りやすいイージーな響きと誤解されることもある。

特に、ジャズ者初心者の場合、この「判りやすいイージーな響き」を誤解して、ドリューのピアノは素人っぽい、判りやすくてなんだか軽い、と思ってしまうこともある。なにを隠そう、ジャズ者初心者時代の私がそうだった。

う〜ん「判りやすい」って、大切な要素なんだけど、底に湛えたクラシック的な優雅さが拍車をかけて、ドリューのピアノを軽んじてしまうことがある。その代表的な例が『By Request』(写真左)である。収録曲の曲名を眺めてみると、錚々たる大ジャズ・スタンダードの名曲がずらりと並んでいる。

この「名曲ずらり」を見ると、逆に、ジャズ者ベテランの方々が引きそうですね(笑)。でも、このアルバムのドリューの演奏に耳を傾けてみると、どうしてどうして、なかなかに含蓄のある内容なのだ。スタンダード曲の解釈、アレンジ、これが実に楽しめる。
 

Kenny_drew_by_reqest

 
もともと、ジャズ・スタンダード演奏を聴く楽しみというのは、曲の解釈、アレンジはもとより、他のミュージシャンの演奏との比較をしながら、今演奏しているミュージシャンの個性を感じるという「比較の楽しみ」というのがある。この「比較の楽しみ」を最大限に味わうには、ジャズ者初心者の方々は、比較するだけの他の演奏を聴きこんでいないから、ちょっと辛い。

この「比較の楽しみ」を前提とすると、このドリューの『By Request』は、ジャズ者ベテランの方々こそが、最大限に楽しむことのできる、ベテラン御用達の佳作ということになる。そういう意味で、ジャズ者初心者の方々には、ドリューを感じ、ドリューを理解するには、以前御紹介した『Dark Beauty』(5月23日のブログ参照)や『Kenny Drew Trio』(5月11日のブログ参照)をお勧めします。こちらの方が、ジャズっぽくて、ちょっとマニアっぽくて、ジャズ者初心者の方々にお勧めです。

逆に『By Request』は、ジャズ者ベテランの方々に是非一度、聴いて頂きたいですね。ドリューがなぜ、BAYSTATEの企画物に手を染めたのか。この企画物って、ドリューをしっかりと理解した、真のドリュー・ファンへのプレゼントに思えます。

スタンダードを演奏するドリューほど、ドリューの個性を感じることの出来るものは無い。この一連の企画物って、決して、一般向けの安易なイージーリスニング物ではないですよ。ドリューは結構硬派に弾きまくっています。ペデルセンのベースも最高。シグペンのドラムも職人芸。良いアルバムです。
 
 
 
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2009年5月23日 (土曜日)

ケニー・ドリューのトリオ名盤

米国活動時代は、そのテクニック、その個性の割に、あまり受けなかったケニー・ドリュー。1970年、人種差別問題に嫌気が差し、ついにデンマークに移住。しかし、この北欧移住が大正解。テクニックは超一流。ドライブ感十分。切れ味あるテンションはあるが、そんなテンションの中に、ほのかに優しさというか、丸さというか、ロマンチックな雰囲気がそこはかとなく感じるところが、ドリューの「個性」。その、そこはなとなく漂う「優しさ、丸さ、ロマンチック」な雰囲気が欧州では「うけた」。

さすがに欧州。クラシック音楽を育んだ大陸である。野趣、猥雑、熱気優先のジャズよりも、アーティスティックで、ロマンチシズム漂うジャズの方が「うけた」。しかも、ジャズという音楽を芸術のジャンルのひとつと位置づけ、評価してくれる。ケニー・ドリューも、米国とは違う、この欧州のジャズに対する評価の違いに「救われた」。

その成果の一枚が、1974年5月に録音された『Dark Beauty』(写真左)。パーソネルは、Albert "Tootie" Heath (ds) , Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b)。ドリューにとって、ドラムのヒースとベースのペデルセンは最高のパートナー。

冒頭「Run Away」の出だし、ピアノとベースのチェイスを聴くだけで、もう心は「ワクワク」。う〜ん、ジャズやなあ、これがジャズの音やで〜、と心から思う。そして、ドリューのテクニック溢れるテーマ弾き。バックに、ペデルセンのベースとヒースのドラムが、ドドドドドド〜ンと重量級のビートを供給する。

米国時代のドリューは、超絶技巧なテクニックとドライブ感溢れるアドリブが特徴の割には、なんとなく暗い印象を感じるピアノだった。おそらく、ドリューのピアノのタッチの強さ、少し引きずるようなノリの重さが、そう感じさせるのだろう。でも、そのタッチの強さとノリの重さが、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」で緩和される、というか、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」に置き換わる。

この重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」の存在が、このトリオの肝で、重量級のリズム・セクションをバックにしてこそ、ドリューのそこはなとなく漂う「優しさ、丸さ、ロマンチック」が前面に押し出されてきて、ドリューの個性が良い形で浮き彫りになる。やはり、北欧に来て正解だった。北欧に来たからこそ、ドリューはペデルセンと出会うことが出来たのだ。
 

Dark_beauty

(LP時代の収録曲の構成に敬意を表して・・・)

2曲目「Dark Beauty」、続く3曲目「Summer Nights」の落ち着いたスローテンポのバラードの美しさはどうだろう。素晴らしいの一言。先に述べた、ドリューの「個性」が最大限に活きている。そして、4曲目の「All Blues」。前の2曲とは打って変わって、ハイテンポのブルースだが、これが絶品。祖リューのタッチの強さとノリの重さが、重量級の「ペデルセンのベースとヒースのドラム」で緩和されて、ドリューのタッチの「明るい」だけが浮き出てきて、聴いていて、実にポジティブな印象を受ける。

LP時代にB面を占めた「It Could Happen To You」「Love Letters」「Silk Bossa」「Blues Inn」は、いずれも名演。ドリュー、ペデルセン、ヒースのトリオの良い面だけが前面に出ていて、実に素晴らしい。LP時代、僕はこのB面を通して聴くのが、実は密かな楽しみだった。特に、ペデルセンのベースが凄まじい。ブンブン音を立てていて、それはそれは、ジャズ・ベースの醍醐味を聴かせてくれている。

ペデルセンのボウイングについては、なかなかのものだ。これくらいの演奏レベルだと、十分、鑑賞に耐える。さすが、クラシックも経験しているペデルセン。ベースのピッチも合っているし、ボウイング時の指のポジショニングも良い。米国で活躍したベーシストは、おしなべてボウイングに何らかの課題を抱えていたが、さすがに、欧州出身のベーシストとのボウイングは頭一つ抜きんでている。ベースなどの基本楽器は、やはりなんらかの形で、クラシックの素養、体験だった教育経験が必要なんだと思う。単なる独学ではきつい。

最後に、CDの収録曲についてクレームを。CDの5曲目「Felicidade」10曲目「In Your Own Sweet Way」11曲目「Stranger in Paradise」は、LP時代未収録。 さすがに、LP時代未収録だけあって、その内容はあまり誉められたものではない。特に「Stranger in Paradise」は酷い。収録する意味は無かったように思う。しかも、最後はフェードアウト。ラストのラストでこれか。一気に興ざめしてしまう。加えて、5曲目に「Felicidade」を入れられたおかげで、LP時代のオリジナルの曲順での雰囲気を頭から通して楽しめなくなった。まったく「いらんこと」をしてくれたもんだ。
 
 
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