2024年1月 4日 (木曜日)

心地良きハリスのエレ・グルーヴ

今年の冬は暖冬傾向だとは言うが基本的には冬、当然、寒い日が続く。寒い日には暖かい部屋でジャズを聴く、と言うのが定番なんだが、聴くジャズもクールなジャズは心までがクールになりそうでちょっと。ファンキーでソウルフルなジャズが温まって良い。と言うことで、この冬は「エディ・ハリス」を集中して聴き直している。

「趣味が悪いなあ」と言う声が聞こえてきそうなんだが、それもそのはず。エディ・ハリスは、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズがメイン。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Plug Me In』(写真左)。1968年3月14 & 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Melvin Lastie, Joe Newman, Jimmy Owens (tp), Garnett Brown (tb), Haywood Henry (bs), Jodie Christian (p), Ron Carter, Melvin Jackson (b), Chuck Rainey (el-b), Richard Smith, Grady Tate (ds)。
 

Eddie-harrisplug-me-in  

 
前作『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。この盤では、セルマー社が開発した「ヴァリトーン」を大々的に導入している。「ヴァリトーン」とは、サックスのネック部分にピックアップを取り付け、アンプを通して変調させたり、エフェクターのオクターバーやコーラスのようなことができる代物。

冒頭の「 Live Right Now」は、エレクトリック・サックスが炸裂、渋〜いジャズ・ファンクが心地よい。4曲目の「Lovely Is Today」はエレベの絡みが実にファンキー。そして、面白いのは、5曲目の「Theme In Search Of A T.V. Commercial」。ダイナミックでスリリングなアレンジのビッグバンド・ジャズ・ファンクで、ビッグバンドをバックに、ソウルフルなハリスのテナーが乱舞する。

この盤の収録曲、現代においてサンプリングされているものが多い。それだけ、ソウルフルでファンキーで魅力的なフレーズが詰まっている。加えて、自在に音色を変化させ、ノリに乗ったブロウを吹き上げる、エレクトリック・サックスのグルーヴの心地よさ。クロスオーバー・ファンクとして、十分に楽しめる好盤です。
 
 

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2023年12月23日 (土曜日)

エディ・ハリスのファンキーな盤

エディ・ハリス(Eddie Harriss)は、『The In Sound』の「Freedom Jazz Dance」が転換点となって、聴き手に飽きられつつあった、イージーリスニング志向のジャズと決別。アーシーなファンキー・ジャズを経て、一気に、ソウルフルなエレ・ジャズ・ファンクへ志向を変えていく。この「志向の変化」を追いかけていくのが、意外と面白い。

Eddie Harris『The Tender Storm』(写真左)。1966年3月と9月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Ray Codrington (tp, track 5), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds, track 5), Bobby Thomas (ds, tracks 1-4 & 6)。先にご紹介した『Mean Greens』(2023年12月20日のブログ)の次のリーダー作になる。

『Mean Greens』で、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンクに転身。録音が1966年3, 6月だったので、今回ご紹介する『The Tender Storm』と全く同時期の録音になる。

どちらも1966年のリリース。しかし、こちらの『The Tender Storm』は、アーシーでソウルフルなファンキー・ジャズ満載。どちらかと言えば、こちらの『The Tender Storm』の方が、メインストリーム系の純ジャズの面影濃厚である。
 

Eddie-harristhe-tender-storm

 
冒頭の「When a Man Loves a Woman」のアーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズが良い。まず、エディ・ハリスのテナーが、あっさりとした「ソウルフル&ファンキー」なテナーで唄いあげる。そんなエディ・ハリスのテナーをバックのシダー・ウォルトンが、これまた趣味の良いファンキーなピアノでガッチリとバッキングする。

2局目以降、この「アーシーでソウルフルな、どこかゴスペルの雰囲気濃厚なファンキー・ジャズ」で突っ走るかと思いきや、とても趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズが展開される。

が、これがとても良い内容なのだ。演奏レベルも高く、完成度の高いファンキー・ジャズ。エディ・ハリスのテナーも良いが、この盤では、ピアノのシダー・ウォルトンが大活躍である。流麗でガッツのあるファンキー・ピアノで、バンド全体をグイグイ引っ張っていく。

同時期に「趣味の良い、ダイナミックでソウルフルなファンキー・ジャズ」と「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」。おそらく、エディ・ハリスは「どちらの方向に進むのか」自らがしっかりと吟味した結果が、今回の『The Tender Storm』であり、前にご紹介した『Mean Greens』なんだろう。

そして、エディ・ハリスは次作『The Electrifying Eddie Harris』で、電気サックスを取り入れ、着実に「ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク」志向に舵を切る。

2023年12月21日 (木曜日)

エディ・ハリス最後の大衆ジャズ

エディ・ハリスのテナーは、先日ご紹介した『Mean Greens』で、圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナーを引っさげ、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した訳だが、デビュー当時は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」だった。

Eddie Harris『Cool Sax From Hollywood To Broadway』(写真左)。1964年9月、NYでの録音。コロンビア・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Kenny Burrell (g), Cedar Walton (p), Bob Cranshaw (b), Billy Brooks (ds)。

リーダーのエディ・ハリスのテナー・サックスと、ケニー・バレルのギターがフロントのクインテット編成。バックのリズム隊は、シダー・ウォルトン率いるトリオ。充実のパーソネルである。

デビュー盤『Exodus To Jazz』に収録された「Exodus」がヒットしたことで、エディ・ハリスのリーダー作は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」で統一される。いわゆる「大衆ジャズ」「大衆迎合ジャズ」である。ただ、内容が良いので、僕はこれは「アリ」だと感じて、「ながら聴き」盤として聴いている。

そんな中で、この『Cool Sax From Hollywood To Broadway』は、デビュー盤から数えて、11枚目のリーダー作。デビュー盤が1961年、この11枚目のリーダー作が1964年。3年間で11枚のリーダー作を量産している。いかに人気があったかが窺える。

ミュージカル曲や映画音楽のカヴァーが主のアルバム。この盤で「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」路線も11枚目。
 

Eddie-harriscool-sax-from-hollywood-to-b

 
聴く側からすると、完全に飽きがきており、かつ、演奏する側もアレンジについては「手練れた」感があって、ちょっとマンネリな雰囲気が漂う。しかし、原曲の良さが上回っていて、日米の評論で「ケチョンケチョン」なのだが、聴いてみるとそんなに内容の無いアルバムでは無い、と思う。

エディ・ハリスのテナーはスムーズでファンキー。バレルのギターがファンキーで流麗。この名手二人のフロントがミュージカル曲や映画音楽の印象的なフレーズを基に、小粋なパフォーマンスを繰り広げる。バックのリズム・セクションも、名手ウォルトンのピアノが洒脱、クランショウのベースがビートをしっかり抑えていて好サポート。

充実したメンバーで、スムージーでイージーリスニングなジャズをやるのだ。もちろん、聴き心地は抜群。まあ、それが硬派なジャズ者の方々からすれば「商業主義」に流れて許せないのでしょうけど(笑)。

大手のコロンビア・レコードに移籍したので、どうしても「大衆迎合的なイージーリスニング・ジャズ」を求められてしまうので、この盤の内容がスムージーでイージーリスニングになってしまうのは仕方がない。

でも、そんなに悪くは無い。パーソネルが充実しているだけに、硬派なジャズを聴いた合間に聴く「ながら聴き」のジャズ盤としては良好な内容だと思います。とにかリラックスして、難しいこと考えること無く聴ける。

なお、エディ・ハリスは、次作『The In Sound』で、ジャズの志向を方向性をガラリと変え始める。その第一歩が名曲「Freedom Jazz Dance」。この曲がエディ・ハリスの大きな転換点となる。
 
 

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2023年12月20日 (水曜日)

エディ・ハリスの「転身」盤です

エディ・ハリス(Eddie Harris)を聴き直すことにした。もともと、Les McCann and Eddie Harris『Swiss Movement』を聴いて、エディ・ハリスの名を知った。ソウルフルなテナーがとても気に入った。それから、彼のリーダー作を2〜3枚聴いて以降、忘れた存在になっていた。

エディ・ハリスは、シカゴ出身のテナー奏者。スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズでデビュー、1966年にソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身。電気増幅サックスを導入したことでも知られ、それ故、我が国では「キワモノのテナー奏者」扱いされる傾向がある。が、彼のテナーは素性が良く、彼の奏でるソウルフルなジャズ・ファンクは今の耳にもしっかりと訴求する優れものである。

Eddie Harris『Mean Greens』(写真左)。1966年3, 6月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, el-p), Ray Codrington (tp, tamb), Cedar Walton (p), Sonny Philips (org), Ron Carter (b), Billy Higgins (ds), Melvin Jackson (b), Bucky Taylor (ds), Ray Codrington, Ray Barretto & Bucky Taylor (perc)。
 

Eddie-harrismean-greens

 
革新的なラテン リズム、グルーヴ感溢れる柔らかなトーン。エディ・ハリスのジャズ・ファンク、クロスオーバー・ジャズの走り的な、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した最初のアルバムだろう。もともとデビュー当時は、スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズを趣味よくやっていたのだが、この盤で突然、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身である。

ソウルフルなテナーを吹き上げる、ストレートなジャズ・ファンク、タイトル曲の「Mean Greens」。ジーン・ハリスのカヴァーから、エディ・ハリス自身のセルフ・カヴァーなどで知られる代表曲「Listen Here」。「Goin' Home」のワイルドで柔軟なシャッフル。アルバム全編に渡って、エディ・ハリスならでは、のジャズ・ファンク~ソウル・ジャズが展開される。

ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズ志向のジャズ・ファンク。ラテンのリズムの導入など、クロスオーバー的な音の融合もあり、単純にソウル・ジャズの範疇に留めるよりは、先に控えるクロスオーバーなジャズ・ファンクの先駆と捉えた方が座りが良い。そういう意味で、再評価するに値するエディ・ハリスの「転身」盤である。
 
 

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2023年12月 4日 (月曜日)

エディ・ハリスの初リーダー作

Eddie Harris(エディ・ハリス)。このテナー・サックス奏者については、当ブログで取り上げることがほとんど無かったのではないか。1934年10月、シカゴ生まれ。1996年11月に62歳の若さで鬼籍に入っている。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルが身上。電気的に増幅されたサックスを紹介したことでも知られる。

Eddie Harris 『Exodus To Jazz』(写真左)。1961年の録音&作品。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Joseph Diorio (g), Willie Pickens (p), William Yancey (b), Harold Jones (ds)。リーダーのエディ・ハリスのテナーとジョセフ・ディオリオのギターがフロントのクインテット編成。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー奏者、エディ・ハリスの初リーダー作。

収録曲を見渡せば、全8曲中、ハリスの自作曲が4曲、ピアノを担当するピケンズの作曲が2曲、スタンダード曲が2曲と、初リーダー作としてバランスの取れた選曲に好感が持てる。ジャズマンの初リーダー作は、そのリーダーのジャズマンの持つ個性&特徴が把握、理解しやすいのだが、自作曲でそのジャズマンの長所が理解でき、スタンダード曲など他人の作曲の曲で、そのジャズマンの個性&特徴が把握できる。そういう面で、このハリスのリーダー作は選曲のバランスがとても良い。
 

Eddie-harris-exodus-to-jazz

 
初リーダー作なので、後の「圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナー」はまだ存在しないが、ファンキー&ソウルフルなテナーについては、その片鱗がそこかしこに散りばめられている。エディ・ハリスのテナーについては、この初リーダー作にして、他のテナー・マンには無い個性&特徴が備わっていることが良く判る。

冒頭の映画音楽「Exodus」での、情感溢れ、ファンクネスを湛えたテナーの音色。決してハードバップなテナーの延長線上に無い、ファンキー&ソウル・ジャズに端を発したエモーショナル&ソウルフルで典雅なテナーの吹き回し。そして、2曲目の自作バラード曲の「Alicia」での、寂寞感、切ない情感のこもったスピリチュアルなブロウ。ダイナミックかつ繊細、ファンクネス&ソウルフル溢れる情感たっぷりのテナー。エディ・ハリスのテナーの個性&特徴が良く理解出来る。

後のダンサフルでエモーショナル、ソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルのハリスと比べると、地味で大人し目の初リーダー作でのテナーだが、ジャズ・テナーとしての個性と特徴について、エディ・ハリスは素性確かなものだ、ということが良く判る。決して「際もの」なテナーでは無い。メインストリームで正統派なファンキー&ソウル・ジャズのテナーである。
 
 

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東日本大震災から12年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

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2020年2月28日 (金曜日)

基本に始まり、基本に終わる

ミュージシャンというもの、覚えて貰おうとするなら「個性を身につける」ことが大切で、他と比較して抜きんでるとしても「個性を身につける」ことが大切になる。しかし、この個性が強烈であればあるほど、その一度身につけた個性を、本人の意向に関係無く手放せなくなる。ファン(聴き手)が他の個性に走ることを許さないのだ。これはミュージシャン本人にとってはどうなんだろう。

Eddie Harris Quartet『Freedom Jazz Dance』(写真)。1994年6月18日、N.Y.の Clinton Studio “A”での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Jacky Terrasson (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。ヴィーナス・レコードからのリリース。Eddie Harris(エディ・ハリス)と言えば「ミスター・ファンキー・サックス」で知られる。所謂、ソウル・ジャズの代表的サックス奏者である。

大概、レス・マッキャンと組んだ『Swiss Movement』のみが代表作として挙げられる。『Swiss Movement』はソウル・ジャズの好盤である。エディ・ハリスはファンクネスたっぷりの、歌心満載、ポジティヴで陽気な「ソウルフルなサックス」が個性。このソウルフルなサックスを武器に、こってこてファンキーに吹きまくり、ラップを織り交ぜたり、ファンク風に吹いたかと思えば、コルトレーンの難曲「Giant Steps」をいとも容易く吹き上げたり、多様なスタイルを吹き分けた。
 
 
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しかし、である。この『Freedom Jazz Dance』は、そんなエディ・ハリスが、ソウル・ジャズに走ること無く、硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくる好盤。冒頭のタイトル曲「Freedom Jazz Dance」はエディ・ハリス作の名曲。ミュージシャンズ・チューンとして多くのジャズメンに演奏されている。しかし、2曲目以降の曲名を見ていくと、かなりコッテコテのスタンダード曲が並んでいる。

ソウル・ジャズのハリスが、スタンダード曲をソウル・ジャズ風に吹きまくるのかと思いきや、実に硬派にハードバップ風に吹きまくっている。これが実に良い。エディ・ハリスって、やっぱり優れたテナー・サックス奏者やったんやなあ、と感心することしきり。とにかく上手い。情感タップリにストレートに、ブラスを輝く様に震わせながら、実にテナー・サックスらしい音で吹き進めていく。

バックを固めるのは、厳選されたリズム・セクション。硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくるエディ・ハリスをしっかりとサポートする。この盤、エディ・ハリスが残した最後のスタジオ録音盤だそうだ。ハリスはこの盤の録音の2年後、62歳で逝去する。最後のスタジオ録音の一枚が、このハードバップで、ストレート・アヘッドなブロウで固めたスタンダード集。ジャズマンとして「基本に始まり、基本に終わる」。そんな大団円な感じがとても素敵なアルバムである。
 
 
 
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2019年12月23日 (月曜日)

エディ・ハリスを侮るなかれ

実は僕は「Eddie Harris(エディ・ハリス)」のテナー・サックスが好きだ。レス・マッキャンと組んだ『Swiss Movement』を聴いて、このハリスのテナーを聴いて感心した。とにかくテナーが良く鳴っている。だけど、ずっと我が国での評価は芳しくない感じがずっと続いている。純ジャズはもちろんのこと、ファンクあり、ラップあり、冗談音楽のようなアプローチもやったりするから、ジャズをシビアに捉える我が国ではまず「ウケない」。

「際物」扱いされることもしばしばである。それでも、1990年後半からの紙ジャケ・ブームに乗って、先の『Swiss Movement』などがリイシューされて喜ばしい限り。但し、先にも述べたとおり、エディ・ハリスは、器用貧乏というか、プレイヤーとしての焦点が定めにくい。よって、代表作を絞りにくい。ハリスの様々な「芸風」毎に、ハリスらしい好盤を選んだ方が良いみたいだ。

『The Electrifying Eddie Harris』(写真左)。1967年3月20日でのニューヨーク録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts, varitone), Jodie Christian (p), Melvin Jackson (b), Richard Smith (ds) がメイン。Melvin Lastie, Joe Newman (tp), King Curtis (ts), David Newman (ts, bs),Haywood Henry (bs), Ray Barretto, Joe Wohletz (perc) が客演している。
 

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いち早く電気サックスを取り入れたエディ・ハリスの好盤。パッキパキのファンクネス溢れるソウル・ジャズかしら、と思いきや、冒頭の「Theme in Search of a Movie」の様に映画音楽のような美しいバラードからノリのいいミディアム・テンポのナンバーまでバラエティ豊かな内容が魅力。後のフュージョン・ジャズを先取りした様な内容におもわず頬が緩む。
 
4曲目の「Sham Time」がこれまたエディ・ハリスらしい、ラテン調のソウル・ジャズ大会。とにかく楽しい音世界。ジャズって良いなあ、って思う。エディ・ハリスって、曲調毎にテナーの「芸風」を変えているのだ。素晴らしいテクニックである。しかも、テナー・サックスがとても良く鳴っている。どんな音のテナーも耳に馴染む。これって、良い楽器が良い楽器らしく「鳴らされている」からなんだよね。
 
エディ・ハリスについては、サブスク音楽サイトで、かなりの数のリーダー作がアップされている。良い時代になったもんだ。今回のエディ・ハリスとの再会を機会に、ハリスのリーダー作を一気聴きしようかと考えている。なんだかワクワクする。これだから「ジャズ盤鑑賞の旅」は止められない。暫くは「エディ・ハリスの森」を彷徨うことになりそうだ。
 
 
 
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2017年7月10日 (月曜日)

ソウル・ジャズの人気ライブ盤

意外とソウル・ジャズが好きだ。結構、俗っぽいので「ソウル・ジャズなんてな〜」と思って控えようかと思うんだが、あの独特のノリとファンクネスが忘れられず、やっぱり聴いてしまう(笑)。肩肘張らずに笑顔で「ノリノリ」で聴けるところが良いよね。ソウル・ジャズって、ジャズのこと、何も知らなくても十分楽しめるから隅に置けない。

ソウル・ジャズの好盤と言えば、このアルバムが良く出てくる。僕も最初、ジャズ盤紹介本で読んで、誰か判らんなあ、と思いつつ、紹介本で絶賛されているもんだから、手に入れて聴いてみて、ありゃ〜これは、コッテコテのソウル・ジャズではないの。良い感じです。Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(写真)。

1969年6月。スイスはモントルー・ジャズ・フェスでのライブ録音。ソウルフルなテナー奏者エディ・ハリスとソウルフルなピアノ奏者レス・マッキャンが初共演。ジャズメンによる、コッテコテのR&B大会の様相。これが「ソウル・ジャズ」だ、と言わんばかりの独特のノリとファンクネス。
 

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冒頭、ロバータ・フラックの名唱でも知られる、ソウルフルな「Compared To What」から、リズミカルな演奏が心地良い「Cold Duck Time」と1〜2曲目の流れを聴くだけで、これは本当のコッテコテの「ソウル・ジャズ」であることを確信する。聴いていて、自然と身体がスイングし、足でリズムを取りつつ、顔はいつの間にか笑顔でニコニコ、強調されたオフビートのリズムでクラップハンド。

我が国では「踊れるジャズ」は敬遠される傾向があって、どういう訳か全然人気のない2人、レス・マッキャンとエディ・ハリス。このライブ盤もなかなか表に出ることは無かった。つい10年位前からかなあ、このライブ盤がジャズ盤紹介本で取り上げられるようになったのは。ソウル・ジャズって俗っぽいという評価だが、そんなことは全く無い。とにかく聴いていて楽しい。それが一番ではないか。

このライブ盤に収録されたライブ演奏について面白いエピソードがある。このライブ演奏、レス・マッキャンとエディ・ハリスのスケジュールが合わず、なんとリハーサル無しの一発勝負でライブ録音されたらしい。いや〜リハ無しの一発勝負でこれだけノリの良い、コッテコテのソウル・ジャズが展開できるなんて、やはりジャズのフィールドで培われた「即興の底力」ですね〜。素晴らしい。
 
 
 
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2012年7月25日 (水曜日)

ジャズ・ロック出身の名曲の一つ

ジャズ・ロック。音楽のジャンルにおいて、ジャズおよびロックより発展した一つの演奏スタイル。ジャズにおいて、ロックビート、いわゆる8ビートや16ビートというロック風なビートを取り入れた、新しい演奏スタイルが生まれた。ファンキー・ジャズの延長線上で、その発展形として、1960年代後半をピークに1970年代にかけて流行した。

そんなジャズ・ロックの中で、「ジャズ・ロック出身の名曲」と呼ばれる曲が幾つかある。その一つが「Freedom Jazz Dance」。Eddie Harrisの手になる8ビートの名曲である。一度聴くと絶対に忘れられないフレーズがぎっしり詰まっています。不思議に捻れたフレーズに、上下動の激しい旋律の上げ下げ。ギクシャクした感じの展開なんですが、口ずさめるようなキャッチャーな旋律が素晴らしい。

そんなジャズ・ロックの名曲中の名曲「Freedom Jazz Dance」。僕が思うに、やはり、作曲者本人の演奏が一番良いみたいで、このへんてこりんなジャズ・ロックな名曲「Freedom Jazz Dance」を楽しめるアルバムが、Eddie Harris『The In Sound』(写真左)。

1965〜66年の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Cedar Walton (p), Ron Carter, Melvin Jackson (b), Billy Higgins (ds), Ray Codrington (tp), Sonny Philips (org), Bucky Taylor, Ray Barretto (perc)。さすが、ジャズ・ロックの名盤の一枚。リズム・セクションには要となるメンバーがガッチリと入っている。ピアノのシダー・ウォルトン、ベースのロン・カーター、ドラムのビリー・ヒギンス。パーカッションのレイ・バレット。
 

The_in_sound

 
アルバム全体のトーンは、ファンキー・ジャズ。聴き易い、親しみ易いファンキー・ジャズ。冒頭の「The Shadow of Your Smile」など、良質なファンキー・ジャズの名演である。寛ぎのファンキー・ジャズ。これだけでも、このアルバムは「良し」。

2曲目の「Born to Be Blue」以降もファンキー・ジャズの名演がゾロゾロ続く。3曲目大スタンダード曲の「Love for Sale」のファンキー度といったら、ファンキー・ジャズ・マニアからすると、もう「メロメロ」である ww。

冒頭の「The Shadow of Your Smile」からずっとファンキー・ジャズの名演が続いた後、6曲目のラストに、突如として、このジャズ・ロックな名曲「Freedom Jazz Dance」が、満を持して登場する。

一度聴いたら忘れられない、奇妙で癖になる不思議な捻れと上げ下げが織り込まれたファンキーでジャズ・ロックな名曲。それまでのファンキー・ジャズの曲と、この「Freedom Jazz Dance」というジャズ・ロックな名曲とのギャップというか、落差というか、まったく次元の異なる、実にクールな響きに思わずクラクラする ww。

ジャズ・ロックな名曲として、これまで、様々なジャズ・ミュージシャンにカバーされた名曲「Freedom Jazz Dance」。ジャズ・ロック出身の名曲として、全てのジャズ者の方々に体験して頂きたいと思います。体験するに、やはり極めつけは、作曲した本人のリーダー作『The In Sound』。良いアルバムです。良いジャズ・ロックの佳作です。一度、体験してみて下さい。 

 
 

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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