2023年10月26日 (木曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第三弾

サックス奏者のチャールズ・ロイド(Charles Lloyd)は、機を見て敏なる、というか、意外と変わり身の早いテナーマンである。

1960年代後半の「判り易いコルトレーン」、ECM時代の「欧州ジャズへの接近」、そして、現在の「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」と、それぞれの時代の「流行」をよく読んで、音の志向を変えている。まあ、それぞれの音の志向が、水準以上のパフォーマンスを持って表現されるのだから、テナーマンとしての実力は一流である。

そんな、チャールズ・ロイドが、80歳になった2018年から、3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」を展開する。

「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は『Trios: Chapel』(左をクリック)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。良い意味であざとくもあるが、この10年間辺りの流行である「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を志向した、現代のモダン・ジャズである。

「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾は『Trios: Ocean』(左をクリック)。2020年9月9日、ロイドの故郷であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの150年の歴史を持つロベロ・シアターでの録音。自由度の高いモーダルなインタープレイがメインだが、ブルース曲を中心に純ジャズな雰囲気を強く感じつつ、曲によっては、ECM的な「ニュー・ジャズ」なサウンド志向も見え隠れする、ユニークな「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を表現していた。

Charles Lloyd『Trios: Sacred Thread』(写真左)。2022年11月のリリース。Healdsburg Jazz Festival でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, alto-fl, tarogato, maracas), Zakir Hussain (tabla, perc, vo), Julian Lage (g)。異なるトリオ編成の3枚のアルバムを包含する「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目になる。
 

Charles-lloydtrios-sacred-thread

 
この「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目には、ギタリストのジュリアン・ラージとパーカッショニストのザキール・フセインが参加している。フセインは魅惑的かつエスニックなボーカルも担当している。このトリオ編成、ベーシストがいない。サックス・ギター・パーカッションの変則トリオである。

この盤の音世界は、一言で言うと「エキゾチックな静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。エスニックな音の響き、ワールド・ミュージック的なリズム&ビート、そこにロイドの「判りやすいスピリチュアルなコルトレーン」を彷彿とさせるサックスが飛翔する。この盤では、アルト・フルートも吹いていて、このロイドのアルト・フルートの音色が、これまた、エキゾチックな雰囲気をしっかりと醸し出している。

エキゾチックで民族音楽的な要素が印象的な音世界ではあるが、その要素を全面に押し出す訳ではない。クールに漂うが如く、その雰囲気を醸し出して、あくまで、ロイドの「静的でスピリチュアルなサックス」の引き立て役に徹している。これが良い。この演奏をしっかりと「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」として成立させ、決して、ワールド・ミュージック志向の融合ジャズにはしていない。

フセインのエスニックで正統派なボーカルが、そんなエキゾチックな雰囲気を増幅させる。更に、ラージのギターがそんなエキゾチックな雰囲気の音にしっかり適応し、フロントのロイドのサックスにしっかり寄り添っている。

「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目は「エキゾチックな静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。「トリオ・オブ・トリオズ」は、3作とも、現代の静的でクールなスピリチュアル・ジャズの優秀作。どのアルバムを取っても、現代の静的でクールなスピリチュアル・ジャズの優れた成果を体感することが出来る。
 
 

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2023年7月 7日 (金曜日)

ロイド4の温故知新 『A Night In Copenhagen』の追記

1984年、EMI傘下のジャズ・レーベルとして復活した「ブルーノート」。復活の手始めに「85100 シリーズ」として、 Stanley Jordan『Magic Touch』を1985年にリリースして以降、1987年まで、当時のメインストリーム志向の純ジャズを立て続け40枚弱、リリースしている。

Charles Lloyd Qartet『A Night In Copenhagen』(写真左)。サブタイトルが「Live At The Copenhagen Jazz Festival, 1983」。ブルーノートのBT 85104番。1983年7月11日、コペンハーゲン・ジャズフェスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Chinese oboe), Michel Petrucciani (p), Palle Danielsson (b), Woody Theus (ds, perc), Bobby McFerrin (vo,on #4 only)。

この盤は、2020年10月25日に「ロイド・カルテットの温故知新」(ここをクリック)と題して、記事をアップしている。が、今回、再びこのライヴ盤を聴き直して、ちょっと追記したくなってので、以下に追記部分をまとめてみました。

機を見て敏なるテナー・サックス奏者、チャールズ・ロイドが1管フロント。ミシェル・ペトルチアーニがピアノ、スウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソン、そして、米国出身のウッディ・ゼウスがドラマー、のリズム・セクション。ロイドのワンホーン・カルテットになる。

コルトレーンの「軽いコピー」という、ちょっと胡散臭さ漂うテナーのロイドは、1970年代、ジャズシーンから姿を消していた。何処へ行った、という状態だったが、何と欧州にいた。というか、1981年、欧州にて、ペトルチアーニのツアーに参加する形で復活していた。その流れの中で、このライヴ盤はロイドがリーダーのカルテットとして、コペンハーゲン・ジャズフェスの出演した時のライヴ録音である。
 

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ロイドのテナー・サックスは、相変わらず「コルトレーンぽい」のだが、クロスオーバー〜フュージョン時代を通過した、ポップで流麗でかなり判り易いコルトレーンになっている。1960年代のコルトレーンをベースに、1980年代のモーダルで軽快な、少しスピリチュアルなテナー・サックスに再構築されている。

ここまで、以前のコルトレーンの雰囲気とかけ離れたものになったのだから、この時点でのロイドの吹奏は「ロイド・オリジナル」と評価して良いかと思う。軽いが情感溢れるモーダルなフレーズは聴いていて心地良い。

そういう意味では、ロイドはペトルチアーニとの出会いによって復活し、確固たる個性を獲得したことになる。そんなロイドの記録がこのライヴ盤。ペトルチアーニ、ダニエルソン、ゼウスのリズム・セクションのパフォーマンスも実に良い感じなんだが、このライヴ盤では、自らの個性を確立したロイドのテナー・サックスを第一に愛でるべき盤だろう。

演奏される曲は、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな吹奏はちょっと横に置いて、硬派で真摯なモードあり、ボサノバ調な軽快な演奏あり、ボーカルものあり、意外と「とっちらかって」いるのだが、以前より聴き手に迎合する傾向のある、機を見て敏なるロイドについては、まあこれも「アリ」だろう。

1981年の復活で自らの個性を獲得し、やっと「胡散臭さ」が抜けたロイドのテナー・サックス。このライヴ盤でのロイドの吹奏はオリジナリティー満点。復活して良かった、と心から思える素敵な内容のライヴ盤です。
 
 

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2022年11月30日 (水曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第二弾

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は『Trios: Chapel』(左をクリック)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。良い意味であざとくもあるが、この10年間辺りの流行である「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を志向した、現代のモダン・ジャズである。

Charles Lloyd『Trios: Ocean』(写真左)。2020年9月9日、ロイドの故郷であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの150年の歴史を持つロベロ・シアターでの録音。コロナ・パンデミックの最中、観客無しでライブ配信されている。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (as, ts, fl), Gerald Clayton (p), Anthony Wilson (g)。

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾。共演のジェラルド・クレイトンは、西海岸ベースの伝説的存在ジョン・クレイトンの息子。アンソニー・ウィルソンは著名なバンドリーダー&トランペッター、作曲・編曲家のジェラルド・ウィルソンの息子。この「Trio of Trios」の第二弾は、有名なミュージシャンを父に持つ2人のミュージシャンとの共演になる。
 

Charles-lloydtrios-ocean

 
この盤は、ジャズは「即興演奏の賜物」を再認識させてくれる。冒頭の「The Lonely One」は、クレイトンとウィルソンの伴奏に合わせてキーとテンポが決まった瞬間から、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。反芻的でありながら神秘的。静的でクールなスピリチュアルな音世界が厳かに展開される。

「Hagar of the Inuits」は、ブルース的なグルーヴを醸し出しつつ、ここでも、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。とりわけ、ウィルソンのギター・ソロが印象的。続く「Jaramillo Blues」もブルース志向で、明るいトーンが印象的。ブルース志向の自由度の高いインタープレイが実に「スピリチュアル」。クレイトンのピアノが演奏全体を仕切っているのにも感心した。

今回の「Trio of Trios」の第二弾は、自由度の高いモーダルなインタープレイがメインだが、ブルース曲を中心に純ジャズな雰囲気を強く感じつつ、曲によっては、ECM的な「ニュー・ジャズ」なサウンド志向も見え隠れする、ユニークな「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を表現していて、実に興味深い。
 
 

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2022年10月16日 (日曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第一弾

1960年代後半から1970年代前半にかけて、チャールス・ロイドは売れた。ロイドのテナーは「こじんまりしたコルトレーン」、言い換えれば「期待を裏切らない、予想を外さないコルトレーン」。アブストラクトにも振る舞うんだが、徹底的に、ということは無く「安全運転のコルトレーン」。

どうにもコルトレーンのコピーのイメージがつきまとう。当時のジャズ者の方々は、ロイドに「判り易いコルトレーン」を求めていた様に思う。ロイドもそれに応えた。しかし、人気を獲得したのもいきなりだったが、飽きられるのも早かった。1970年代後半以降、ほぼ忘れ去られた状態のテナーマンであった。

が、1989年、ECMレーベルに出会って復活。テナーの音志向は「北欧ジャズ」。しかし、テナーの音は、北欧ジャズの「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。加えて、米国ジャズ譲りの、クールな熱気をはらんだテナーは、欧州のテナーマンには無い独特の個性だった。21世紀に入って顕著になった、米国ジャズの「欧州ジャズへの接近」を先取りしていたと言える。

そして、2015年、ECMレーベルを離れて、ブルーノート・レーベルに移籍。欧州ジャズ志向のロイドのテナーはどうなるんだ、と思っていたら、当時、流行始めていた「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」に音の志向を大きく変えていた。

1960年代後半の「判り易いコルトレーン」、ECM時代の「欧州ジャズへの接近」、そして、現在の「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」と、それぞれの時代の「流行」をよく読んで、音の志向を変えている。機を見て敏なる、というか、意外と変わり身の早いテナーマンである。まあ、それぞれの音の志向が、水準以上のパフォーマンスを持って表現されるのだから、テナーマンとしての実力は一流である。
 

Charles-lloydtrios-chapel

 
Charles Lloyd『Trios: Chapel』(写真左)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, Alto-fl), Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。資料によると、3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾、とのこと。

この「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は、ドラムレス、テナー、ギター、ベースの変則トリオ編成。ギターは、捻れスピリチュアル・エレギの達人、ビル・フリゼール。ベースは、フリゼールとの共演実績もある若手ベーシスト、トーマス・モーガン。コーツ・チャペルという、会場の礼拝堂の音響特性上、ドラムやパーカッションは排除したらしい。

ビリー・ストレイホーン作曲の「Blood Count」で始まるのだが、演奏の志向は「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。ストレイホーンの楽曲を静的なスピリチュアル・ジャズにアレンジするところなどは、良い意味で実に「あざとい」。キューバのシンガーソングライター、ボラ・デ・ニエベの「Ay Amor」も、感情豊かにテナーを吹き上げて、スピリチュアルな響きが濃厚。アルト・フルートで演奏するオリジナル「Beyond Darkness」も、フルートの音色が聴き手の感情を揺さぶる。

限りなく自由度の高い、3人三様のインタープレイが素晴らしい。フリゼールのエレギの音はもともとスピリチュアルだし、トーマス・モーガンのベースは、自由度高く、スピリチュアルに展開するロイドとフリゼールをガッチリ受け止め、しっかりと的確なビートを提供している。適度なテンションの下、発想豊かで歌心溢れるインタープレイは、このトリオ3人の相性の良さが窺い知れる。

今から「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾が楽しみである。良い意味であざとくもあるが、「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」なロイドは充実している。このライヴ盤も、現代のモダン・ジャズとして一聴すべき好盤だろう。
 
 

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2021年6月20日 (日曜日)

近年のロイドの「屈指の好盤」

ジャズの最重要な老舗レーベルである「ブルーノート・レーベル」。1950年代〜1960年代のカタログ番号、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台はジャズの進化の歴史が体感できる「モダン・ジャズの宝庫」なんだが、現代の「ブルーノート・レーベル」も、先進的で個性的なジャズをリリースし続ける、ジャズの最重要なレーベルである。

Charles Lloyd & The Marvels『Tone Poem』。2021年のリリース。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bill Frisell (g), Greg Leisz (steel-g), Reuben Rogers (b), Eric Harland (ds)。ピアノレス、チャールズ・ロイドのテナー・サックスが1管フロントのクインテット編成。ギターが通常のギターと、ジャズでは珍しいスチール・ギターが参加している。

不思議な響きが詰まったジャズ盤である。1970年代のECMレーベルがお得意の「ニュー・ジャズ」の雰囲気でもあり、現代の静的なスピリチュアル・ジャズの雰囲気もあり、米国ルーツ・ミュージックをベースとした「ネイチャー・ジャズ」の雰囲気もあり、とにかく、今までに無い、ネオ・ハードバップとは全く対極の、クールでスピリチュアルな雰囲気が満載である。
 

Tone-poem

 
この不思議な音の雰囲気に貢献しているのが「選曲」で、オーネット・コールマン作の「Peace」「Ramblin'」(1〜2曲目)、レナード・コーエン作の「Anthem」(3曲目)、セロニアス・モンク作の「Monk's Mood」(6曲目)、ガボール・サボ作の「Lady Gabor」(8曲目)など、一癖も二癖もある「素敵に捻れた楽曲」が選曲されている。これが「ミソ」なのだ。

これらの「素敵に捻れた楽曲」が、ロイドのテナー、フルート、そして、フリゼールの捻れギター、そして、レイズのスチール・ギターのクールでスピリチュアルな音とぴったりマッチして、ニュー・ジャズの様な、スピリチュアル・ジャズの様な、ネイチャー・ジャズの様な、適度に緩い、不思議な雰囲気の響きが充満している。

近年のロイドのリーダー作、充実している。ロイドのテナーは激しく吹きまくる訳でも無く、淡々として落ち着いた語り口だが説得力は抜群。フリーゼルとレイズのギターも全編に渡って効いていて、思いっ切り印象に残る。ロジャースのベースとハーランドのドラムのリズム隊は、そんな自由度溢れるインプロビゼーションを、変幻自在にサポートしている。これ、ロイドのリーダー作として、屈指の好盤ではないかしら。とにかく現代のモダン・ジャズとして一聴すべき好盤だと思います。
 
 
 

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  ・Santana『Inner Secrets』1978

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  ・イエスの原点となるアルバム

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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2020年10月25日 (日曜日)

ロイド4の温故知新 『A Night In Copenhagen』

ブルーノートはジャズ界最大のジャズ・レーベル。ブルーノートのカタログには幾つかのシリーズがある。一番有名なのが、1500番台、4000番台など、カタログ番号を基本としたシリーズ。もう1つはカタログの分類記号を基本としたシリーズ。「BN-LA」シリーズや「LT」シリーズがそれに当たる。どのシリーズを聴いても、その時代のトレンドを反映したジャズを味わえるところがブルーノートの凄いところ。

そんなブルーノート・レーベルのシリーズの中で「85100」シリーズというのがある。1985年から1987年まで、僅か3年のシリーズで41枚の短期間のシリーズであった。しかし、このシリーズ、ちょうど1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のムーヴメントの時代にリリースされたシリーズなのだ。どのアルバムも「純ジャズ復古」や「初期ネオ・ハードバップ」な雰囲気の演奏が詰まっていて、実は意外となかなか面白いシリーズなのだ。

Charles Lloyd Quartet『A Night In Copenhagen』(写真左)。1983年7月11日、デンマークの「The Copenhagen Jazz Festival」でのライヴ録音。リリースは1985年。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Chinese oboe), Michel Petrucciani (p), Palle Danielsson (b), Woody Theus (ds), Bobby McFerrin (vo)。
 

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この頃のロイドは相変わらず「コルトレーン」しているが、クロスオーバー〜フュージョンの時代を経た「ポップでライトな」コルトレーンになっているところが面白い。とっても軽やかなテナーと爽やかなフルート。それをコルトレーン・ライクに吹き上げるのだから、個性的といえば個性的。

そして、この盤の聴きどころは、バックのリズム隊。とりわけ、ペトルシアーニのピアノが斬新。1960年代後半、ロイドのカルテットでピアノを担当していたキース・ジャレットを彷彿とさせるが、この盤でのペトはキースよりアグレッシブで革新的。切れ味の良いタッチ、創造的で個性的なモーダルなフレーズ。「ミューズ」と呼ばれる所以である。そして、ベースのダニエルソンは欧州のニュー・ジャズなベース・ラインで、このロイドのカルテットを多国籍化している。

ブルーノート・レーベルの復活を記念して行われた「One Night With Blue Note」が1985年。純ジャズ復古のムーヴメントの中で、このロイド・カルテットの演奏内容は象徴的。後の「ネオ・ハードバップ」のベースがこの演奏に詰まっている。このライヴ盤を聴いていて、孔子の「故きを温ねて新しきを知る(温故知新)」という諺を思い出した。
 
 
 

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  ・『Middle Man』 1980
 
 ★ まだまだロックキッズ    【更新しました】 2020.10.07 更新。
  
  ・The Band の「最高傑作」盤
 
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  ・僕達はタツローの源へ遡った


 
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2020年6月11日 (木曜日)

復帰後ロイドのブロウの個性

いよいよ梅雨入りである。このところ暫く、好天が続いたので梅雨入りが遅れた感があるが、こうやって入梅してみると、やっぱり梅雨は鬱陶しい。とにかく湿度が高いのが困る。ちょっと動いただけで「ベトベト、ジメジメ」。じんわり変な汗までかいて、不快なことこの上無し。こういう時には、クールで静的な耳に優しいジャズが良い。

と言うことで、今日も昨日に引き続き、復活後の「チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)」。復活後のロイドは、こうやって振り返って聴くと、現代のジャズの新しいスタイルである「クールで穏やかなスピリチュアル・ジャズ」の先鞭を付けているように感じる。

恐らく、ECMレーベルの総帥アイヒヤーも、当のリーダーのロイドも、当時はあんまり意識はしていなかったとは思うが、1990年代のロイドのリーダー作は、そんな「新しいジャズの響き」に満ちている。

Charles Lloyd『All My Relations』(写真左)。July 1994年7月、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Tibetan oboe), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Billy Hart (ds)。パーソネルは、前作『The Call』と同じ。復活後、やっとメンバーが固定化された。ということは、いよいよ、復活後の演奏のコンセプトとモチーフが固まった、ということなのだろう。
 
 
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ECMの音のカラーを踏襲した、クールで穏やかなモード・ジャズ。耽美的であり静的であり、それぞれの音に透明感が溢れ、そこに心地良いECM独特のエコーがかかる。ロイドは意外と昔の演奏スタイルに戻って来ている。基本はコルトレーン。しかし、複雑でエモーショナルなブロウは皆無。判り易くポップなコルトレーン。しかし、そこに加わるのは、復帰後の独特の個性である「クールでスピリチュアルな」ブロウ。これが復帰後のロイドのブロウの個性の「決め手」となっている。

この盤、全編に渡って聴いていると、このロイドの「クールでスピリチュアルな」ブロウは、ピアノのボボ・ステンソンに引き出されているのでは、と感じるのだ。キースほど難しくは無い、奥ゆかしく、シンプルで耽美的で透明感のある「北欧ジャズ」ならではのステンソンのピアノ。ヨルミンのベースとハートのドラムの良きサポートを得て、ステンソンのピアノがロイドのテナーを支え、鼓舞する。

ECMの総帥アイヒヤーが全体をほど良くプロデュースして、前作までの「北欧のスピリチュアルなジャズ」は、この盤で「ロイドならではの新しいスピリチュアル・ジャズ」に昇華されている。後にジャズ演奏のトレンドとなる「端正で透明度の高い、クールなスピリチュアル・ジャズ」にいち早く適応している。

コルトレーン・スタイルの「ECMレーベルとの邂逅」。その結果が、このロイドの「クールでスピリチュアルな」ブロウに結集している。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年6月10日 (水曜日)

北欧のスピリチュアルなジャズ

ジャズの世界では、第一線で活躍していたジャズマンが引退状態になって、何かの切っ掛けで「復活」する例が結構ある。人気が無くなってしまったが、時間をおいて復帰したら人気が戻って来た、とか、自らのプレイに自信が無くなって、しばらくライヴ・シーンから距離を置いて練習に勤しんで、自信を取り戻して復帰したり、理由は様々。

この人の場合は理由は良く判らない。1960年代後半、ピアノのキース・ジャレット、ベースにセシル・マクビー、ドラムにジャック・デジョネットという「とんでもないピアノ・トリオ」をリズム・セクションに従えて、コルトレーンを判り易くポップにしたブロウで人気を博した「チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)」。ヒッピー・ムーヴメントに乗って人気を獲得し、時代の寵児となった。が、1970年代に入ると人気は失速、1980年代には録音が殆ど無い状態になった。いわゆる「過去の人」となってしまった。

Charles Lloyd『The Call』(写真左)。1993年7月、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Billy Hart (ds)。リーダーのロイドとドラムのハートは米国人、ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン人。ロイドのテナー・サックスがワンホーンの米欧混合のカルテット編成。
 
 
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1989年、ECMレーベルから突如復活したチャールズ・ロイド。その復活を捉えたリーダー作が『Fish Out of Water』(2019年12月1日のブログ参照)。ステンソンのピアノをメインにした北欧人リズム・セクションを従えての復活。続く『Notes from Big Sur』(2019年12月12日のブログ参照)ではドラムが米国人に代わって米欧混合カルテットでの演奏。しかし、演奏内容は明らかに「北欧ジャズ」。北欧ジャズそのものの雰囲気の中で、ロイドは北欧ジャズらしい、透明度の高い、クールなブロウを披露。過去のロイドを知る我々は思わず仰け反った。

そして、この『The Call』が復帰第3作。ピアノのステンソンは変わらない。ベースは代わったが北欧人、ドラムも代わったが米国人。しかし、奏でる音は変わった、というか「落ち着いた」。透明度の高い、クールなブロウは変わらないが、北欧臭さはかなり抜けて、クールで耽美的でエモーショナルな「スピリチュアル」な要素を前面に押し出した音に「落ち着いて」いる。アルバム全体がスピリチュアルなので、途中出てくるフリーキーなフレーズも違和感無く響く。

以前はコルトレーンの判り易いコピー、コルトレーンを判り易くポップにしたブロウで人気を博したのだが、復活後は、モーダルなブロウは、そこはかとなくコルトレーンの影を感じさせるが、スピリチュアルな表現のベースは「北欧ジャズ」。米国人のロイドが「北欧のスピリチュアルなジャズ」をブロウする。過去には無かった静謐なフレーズも良い味を醸し出していて、ここにきて、ニュー・ロイドの音の方向性が定まったのでは、と感じる。なかなかの好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

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2019年12月12日 (木曜日)

静的でエモーショナルなロイド

21世紀に入って、チャールズ・ロイドを再発見した。が、リリースはECMレーベル。どうも、チャールズ・ロイドとECMレーベルとが結びつかなくて、ECMレーベルにロイドの名前を発見した時は、僕は同姓同名の別人かと思った。しかし、ファースト・ネームの「Charles」は同名はありそうだが、「Lloyd」はどう考えても同姓は無いよな〜、ということで、やはり、ロイドの再発見である。

そして、やっとつい最近、再発見後のロイドの聴き直しを始めた。どうにも印象が曖昧になって、ECMレーベルのロイドの音世界がイメージ出来なくなっていた。メジャー・デビュー当時、1960年代後半のロイドは「コルトレーンのええとこ取り」。そのイメージが強くて、ECMレーベルでの「耽美的で静的でスピリチュアルな」ブロウがどうにも据わりが悪い。

Charles Lloyd『Notes from Big Sur』(写真左)。1991年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Ralph Peterson (ds)。ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン出身で、ドラムのピーターソンは米国出身。ロイドは米国出身なので、スウェーデンと米国の混成カルテットということになる。
 
 
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この盤に詰まっている音は「静的でエモーショナルな」音世界。全編、ロイドの淡々とクールで耽美的な、流麗でスピリチュアルなブロウが印象的。決して、ホットにエモーショナルになることは無い。当然、変にフリーに傾くことは無い。演奏のベースはモード。モード奏法の良さを最大限に活かして、悠然とした、耽美的で伸びの良いフレーズが心地良い。

バックのリズム・セクションも好調。ピアノのステンソンとベースのヨルミンがスウェーデン出身なので、出てくる音は明らかに北欧ジャズ。しかし、ドラムのピーターソンのドラムの音は米国東海岸ジャズ。当時の若きピーターソンのドラミングが北欧ジャズへの傾倒を緩和させていて、意外と国籍不明なリズム&ビートに落ち着いている。これがまた面白い。

水墨画の様なテナーの音が、時には幽玄に変化し、時には霧のように漂っていく。1960年代後半のロイドの「コルトレーンのええとこ取り」とは全く異なる、唯一無二なロイドの個性。これがロイドのテナーの本質なのか、と思わず感心する。こんなロイドの本質的な個性を引き出したECMレーベルは凄い。マンフレート・アイヒャー恐るべし、である。
 
 
 
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2019年12月 1日 (日曜日)

1990年代以降のロイドを聴く

チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)。1960年代後半、突如、現れ出で、ジョン・コルトレーンの聴き易い部分をカヴァーして人気を博した。特に、コルトレーンのフリーキーな部分は「人種差別に抗議する怒り」として捉えられ、この「コルトレーンのフリーキーな演奏」を聴きやすくしたところが、フラワー・ムーヴメメント、ヒッピー・ムーヴメントの中でウケにウケた。

しかし、このコルトレーンの聴き易い、ええトコ取りをしたアプローチが胡散臭い。加えて、ロイド人気の半分以上は、バックのリズム・セクションの人気だった。このバックのリズム・セクションが、キース・ジャレットのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムで、当時、それはもう新しい響きのモーダルなジャズで素晴らしいもの。このトリオの人気が意外と大きかった。

1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズの波が押し寄せ、商業ロックが台頭し、メインストリーム・ジャズの人気が衰退していった。合わせてロイドの人気は下降し、遂には忘れられた人となった。1980年代は完全にロイドの名前は無かった。が、つい最近、といっても5年ほど前だが、ECMレーベルからリーダー作を出しているロイドに気がついた。調べれば、1989年から、ECMレーベルの下で、ロイドはリーダー作を連発していた。
 
 
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Charles Lloyd『Fish Out of Water』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。バックのリズム・セクションは、スウェーデン出身2人、ノルウェー出身1人。チャールズ・ロイドのテナー&フルートのワンホーン・カルテット。リリースは、欧州ジャズの老舗レーベルのECM。

アルバムに詰まっている演奏の雰囲気は「欧州の純ジャズ」。バックのリズム・セクションが北欧メインなので、音の響きは北欧ジャズ。ロイドのテナーは北欧ジャズのスタンダードである「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。米国ジャズってほどでは無いのだが、クールな熱気をはらんだテナーは意外と個性的である。欧州のテナーマンには無い独特の個性。

1989年にロイドはこんなに魅力的なワンホーン・カルテット盤を出していたんですね。全く知らなかった。1960年代の胡散臭さ漂うリーダー作ばかりが我が国ではジャズ雑誌に載ってきたので、ロイドの1990年代の活躍は全く意識していなかった。全く以て不明を恥じるばかりである。そして、今、1990年代以降のロイドのリーダー作を聴き進めている。これが意外と楽しいのだ。
 
 
 
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