2026年6月 6日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・324

ハンク・モブレーの、ブルーノートに残した最後のリーダー・セッションとして知られるジャズ盤。フロント2管に、リーダーのハンク・モブレーのテナー、そして、新進気鋭の若手ウッディ・ショウのトランペット。リズム・セクションに、モード・プレイの雄シダー・ウォルトンがピアノを担当している。ギター、ベース、ドラムは当時の中堅〜若手のジャズマン。セクステット編成である。

Hank Mobley『Thinking Of Home』(写真)。1970年7月31日、Van Gelder Studioでの録音。リリースは1980年。ブルーノートの4367番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Woody Shaw (tp), Cedar Walton (p), Eddie Diehl (g), Mickey Bass (b), Leroy Williams (ds)。1970年のブルーノートには珍しい、真摯実直、硬派ストレートアヘッドなポスト・バップなモード・ジャズ盤。

まず、モブレーのテナーは申し分ない。ストレートアヘッドな吹奏も、イージーリスニング志向のソフト&メロウな吹奏もどちらも水準以上。この盤でのモブレーは好調である。ウディ・ショウの瑞々しいトランペットやシダー・ウォルトンの堅実なピアノワークも優れたパフォーマンスで、モブレーのスモーキーで哀愁漂うサックスと見事に調和している。
 

Hank-mobleythinking-of-home

 
ギターの存在は、演奏全体がポスト・バップしすぎて大衆受けしないリスクを和らげる為に、イージーリスニング志向のギターを織り交ぜている様だ。演奏レベルとしては、ブルーノートの標準レベル以上をキープしている。1970年の録音ということを勘案すると、ブルーノートにおける「最後の価値あるハード・バップ・アルバムの一つ」と評価して良い内容の充実度である。

サイドマンとしては、やはり、ショウのトランペットが素晴らしい。ショウの放つエネルギッシュで瑞々しいソロは、モブレーの少しスモーキーで哀愁のあるサックスと最高のリリシズムを生み出している。ウォルトンのピアノも良い。モブレーの哀愁あるサックスや、ショウの鋭いトランペットの背後で、一切の無駄がない完璧なバッキングを聴かせる。知的なソロも素晴らしく、全体の音楽的な気品と統一感は、彼のピアノがコントロールしていると言っても過言ではない。

モブレーは15年間にわたりブルーノートの看板テナー・サックス奏者として活躍。本作はその最後を飾る隠れた名盤。録音後すぐに発売されず、1980年まで未発表だった為、当時のリアルタイムな評価こそ逃したものの、後年その完成度の高さから再評価が進んでいる逸品。とにかく、モブレーのテナーが好調で元気なのが良い。好盤である。
 
 

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2026年4月16日 (木曜日)

”Jazz Message #2” の再聴

内容は良いのに話題に上ることが少ない盤。よくある「あるある」はジャケット。ジャケット・デザインの意味するところが判らない盤は、なかなか人気が出ない。このモブレーのリーダー作が、その最たる例だろう(笑)。どうして、こういうジャケット・デザインになったのか、理解に苦しむ(笑)。サボイ・レーベルの謎である。

Hank Mobley『Jazz Message #2』(写真左)。1956年7月23日、11月7日の録音。Savoyレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。リーダーのハンク・モブレーのテナーと、ダグ・ワトキンスのベースは、2回のセッション共通。後は、総取っ替えである。

1曲目「Thad's Blues」,2曲目「Doug's Minor B' Ok」は、1956年1月7日の録音で、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Hank Jones (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。

3曲目「B. for B.B.」4曲目「Blues Number Two」5曲目「Space Flight」は、1956年7月23日の録音で、Hank Mobley (ts), Donald Byrd (tp), Barry Harris (p), Doug Watkins (b), Kenny Clarke (ds)。
 

Hank-mobleyjazz-message-2  

 
サヴォイ・レーベルの録音なので、音がまずまず良い。1956年、ハード・バップ全盛に向かって、若きジャズ・ミュージシャン達が技を競い合った時期。ハードバップど真ん中な、躍動感溢れる、熱気ムンムンの演奏に思わず、聴き耳を立ててしまう。

若きモブレーの、まだ荒削りで野太い、それでいて歌心を感じさせるテナーは「これぞモダン・ジャズ」的な音で、聴いていて心が和みます。ワトキンスのベースは、太くて堅実。ブンブン鳴ってます。

1曲目「Thad's Blues」,2曲目「Doug's Minor B' Ok」では、リー・モーガンのトランペットが溌剌としてブリリアント。バリバリとテクニックよろしく、うるさいくらい元気に、トランペットを吹き上げていく。若きモブレーの、まだ荒削りで野太い、それでいて歌心を感じさせるテナーで、モーガンに追従する。

3曲目「B. for B.B.」4曲目「Blues Number Two」5曲目「Space Flight」でのトランペットは、ドナルド・バード。バードのトランペットも溌剌としてブリリアント。バリバリとテクニックよろしく、理知的に元気に、トランペットを吹き上げていく。バードの端正で理知的なトランペットは聴きもの。

ペットのモーガンやバードは、もうこの頃、既に、彼らそれぞれ特有の「クセ」が、ところどころに見え隠れして優秀。。ハード・バップの美味しいところが詰め込まれていて楽しい。リラックスして聴けます。
 
 

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2025年9月21日 (日曜日)

ローチの ”ビ・バップ振り返り”

フロントがトランペットとテナー・サックスの2管、ピアノレスのカルテット編成での演奏になる。ちなみに、ローチがピアノ無しで演奏した最初のアルバムでもある。クリフォード・ブラウン急逝後、ソニー・ロリンズとケニー・ドーハムを迎えてスタートした、マックス・ローチ・カルテットであったが、テナーのロリンズが脱退して、その後、テナーの後任に、ジョージ・コールマンとハンク・モブレーのどちらにするか、試行錯誤していた時代のリーダー作になる。決して、コールマンとモブレーのテナーを比較しようとする企画盤では無い。

『The Max Roach 4 Plays Charlie Parker』(写真左)。1957年12月23日と1958年4月11日の録音。パーソネルは、以下の通り。リーダーのマックス・ローチのドラムと、ケニー・ドーハムのトランペットは2つの録音に共通。テナー・サックスとベースが、それぞれの録音で代わる。1957年12月23日の録音のパーソネルは、Hank Mobley (ts), Kenny Dorham (tp), George Morrow (b), Max Roach (ds)。1958年4月11日の録音のパーソネルは、George Coleman (ts), Kenny Dorham (tp), Nelson Boyd (b), Max Roach (ds)。

テナーの後任を選ぶ過程で、次に制作するアルバムのコンセプトとして、ローチが選んだのが「チャーリー・パーカー」。ローチのドラミングは、ビ・バップで育まれた「バップ・ドラミング」。ここで、今一度、自分のドラミングの原点である、ビ・バップに戻ってみる、つまり「チャーリー・パーカー」ゆかりの楽曲をやることで、自らがやりたい、表現したいジャズとは何か、を再確認している様な内容に僕は感じる。
 

The-max-roach-4-plays-charlie-parker

 
まず、リーダーのローチのドラミングであるが、さすがである。ビ・バップなドラムを味わい深いテクニックで叩きまくる。ハードバップな雰囲気でビ・バップなドラムを叩く。それが、この盤でのローチのドラミング。フロント2管を引き立て鼓舞するバップ・ドラミングは一聴に値する。ジャズ・ドラムのスタイリストの1人の圧倒的パフォーマンスが、この盤に聴くことが出来る。

録音日によって交代するテナー・サックス、モブレーとコールマン、どちらがどうかと言えば、甲乙付けがたい。どちらもバップなテナーは得意だし、チャーリー・パーカーの曲にも順応する。端正で新鮮な響きとしてはコールマン、個性的な吹奏を楽しめるモブレー。そして、ベーシストについては、こちらも全く甲乙付けがたい。ベース自体のソリッドで重低音な音の響き、弾力ある力感溢れるウォーキング・ベース、両者ともなかなかのパフォーマンスで楽しませてくれる。

マックス・ローチが、自らの「音の原点」である、ビ・バップに立ち返って、「チャーリー・パーカー」ゆかりの楽曲をやることで、自らがやりたい、表現したいジャズとは何か、を再確認したかのような「セッションの記録」であり、その内容の良さから、ハードバップの雰囲気の中でのビ・バップな演奏が楽しめる、なかなか面白い趣向のアルバム内容になっている。
 
 

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2025年5月30日 (金曜日)

ケリーの熱い「好ライヴ盤」です

春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる、と以前書いたが、今年はもう初夏である。それでも、突如「ウィントン・ケリー」が聴きたくなった。手元のディスコグラフィーを見ると、「ウィントン・ケリー」のリーダー作で、普通に手に入る範囲で、当ブログの記事にしていない盤があと5枚。ラストスパートである。

Wynton Kelly featuring Hank Mobley『Interpretations』(写真左)。1967年11月12日、メリーランド州ボルチモアのジャズ・ファン団体「レフト・バンク・ジャズ・ソサエティ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Hank Mobley (ts), Cecil McBee (b), Jimmy Cobb (ds)。

ウィントン・ケリーのマニア「ケリー者」がこよなく愛する、知る人ぞ知る、ウィントン・ケリー晩期のライヴ・パフォーマンスの記録である。基本は、ウィントン・ケリーのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジミー・コブのドラムのピアノ・トリオがメインで、ゲストとして、ハンク・モブレーのテナー・サックスが参加している。

ケリーは、どこまで行っても「ケリー」である。いつの時代も、ケリーのピアノには「ブレ」が無い。健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。

コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「ケリー」の個性。
 

Wynton-kelly-featuring-hank-mobleyinterp

 
そんなケリーの個性が、このライヴ盤の中で弾けている。徹頭徹尾、ハードバップである。モードに傾くことも、フリーに傾くことも無い。ケリー節を振り撒きながら、ファンクネスをそこはかとなく漂わせながら、好調ケリーは弾きまくっている。

モブレーも吹きまくっている。モブレーもこの頃は、ポップに傾いたり、モーダルに走ったり、ジャズの多様化にビビットに反応していたのだが、ここでは、徹頭徹尾、オーソドックスなハードバップである。しかも、バリバリ積極的に、ストレート・アヘッドに吹きまくっている。

これは、バックのリズム隊との相性が良い証拠。モブレーのテナーには、ケリーのピアノが合う。そして、コブのドラムが、そんなモブレーとケリーの「ハードバップ」を的確にフォローし、効果的に鼓舞する。ケリーのピアノの個性とモブレーのテナーの個性を熟知しているコブならではのドラミングは、このライヴ・パフォーマンスの聴きものの一つ。

新進気鋭のマクビーのベースが新しい響きを連れてきている。フロント管のモブレーや、ピアノのケリーは、圧倒的にハードバップなんだが、マクビーのベースは、どこか新主流派のモーダルな響きとフレーズを連れてきている。生粋のハードバップのフロントに、モーダルなベースラインの対比。これがこのライヴ・パフォーマンスの面白さの一つ。1967年のハードバップ最先端である。

ジャズの多様化、モードだのフリーだの全く関係無し。ここでのカルテットの4人は、徹底的にハードバップを演っている。しかも、その時代の最先端のハードバップ。以前から意外と話題に上らないライヴ盤だが、ライヴ特有の熱っぽい雰囲気も芳しい、なかなか熱い内容の、ハードバップな好盤である。
 
 

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2024年5月24日 (金曜日)

面倒な『The Jazz Message of』

さて、ハンク・モブレーの「録音リアタイ〜アルバム化」の盤については「あと1枚」。最後の一枚はサヴォイ盤。しかも、モブレー単独のリーダー作ではない。モブレーと無名に近いアルト・サックス奏者との、やっつけ感満載のカップリング盤で人気が無い。恐らくこの盤が、モブレーのリーダー作コレクションのラストになるだろうと、ずっと気にかけていたのだが、なかなか入手できなかった。

『The Jazz Message of』(写真左)。1956年1月30日と2月8日の録音。ちなみにパーソネルは、1月30日の録音が、John LaPorta (as), Donald Byrd (tp), Horace Silver (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。2月8日の録音が、Hank Mobley (ts), Donald Byrd (tp), Ronnie Ball (p), Doug Watkins (b), Kenny Clarke (ds)。

サボイ・レーベルの録音の記録を見てみると、1956年1月30日の録音が「ケニー・クラークがリーダーで、バードとラポルタの2管フロントのクインテットのセッション」となっている。実はこのセッション、たった3曲しか録音してない様で、これでは一枚のアルバムにするには全く「録れ高」が足らない。

よって、2月6日に、ホレス・シルヴァーのピアノをロニー・ボールに代えて、「ケニー・クラークがリーダーで、バードとラポルタの2管フロントのクインテットのセッション」を追加で録音している。このセッションは全6曲を録音し、ケニー・クラークのリーダー作『Klook's Clique』として、全曲リリースされた。

ということで、ホレス・シルヴァーがピアノの1956年1月30日の録音の「ケニー・クラークがリーダーで、バードとラポルタの2管フロントのクインテットのセッション」の3曲が余ってしまった。

そこに、2月8日の録音の「モブレーがリーダーで、バードとの2管フロントのクインテットのセッション」が録音されるのだが、このセッションが、これまた、一枚のアルバムにするには全く「録れ高」が足らない中途半端なセッションで、この後、「モブレーがリーダーで、バードとの2管フロントのクインテットのセッション」が追加録音されることは無く、このモブレーのセッションの音源も余ってしまった。
 

The-jazz-message-of

 
この盤は、そんな一枚のアルバムにするには全く「録れ高」が足らなかった、2月8日の録音の「モブレーがリーダーで、バードとの2管フロントのクインテットのセッション」と、1月30日の録音の「ケニー・クラークがリーダーで、バードとラポルタの2管フロントのクインテットのセッション」を、LPのA面、B面に分けて収録した、やっつけ盤である。

ネットなどのアルバム紹介の記事などによると、この盤を『The Jazz Message of Hank Mobley』として紹介しているケースが散見されるのだが、この盤の正式なタイトルは『The Jazz Message of』である。ジャケットには、このタイトルの右下に、2つのセッションに参加したジャズマンをずらり並べてある。ジャケからして、やっつけ感が満載である。

この盤が、ハンク・モブレーのディスコグラフィーに、リーダー作の第2弾として紹介されているのが多いので、モブレーのセッション部分、LPのA面、CDで言うと、1曲目から4曲目までをじっくりと聴いてみると、意外や意外、かなり充実した内容のハードバップ・セッションが記録されているから面白い。

若いジャズマンを育て、励ましてきた人格者、ドナルド・バードがフロントのパートナーだったことが、モブレーにとって安心安定の大きな「要素」だった様で、このセッションでのモブレーのテナーは堂々として、テクニックは確か、骨太でジャジーなブロウで吹きまくっている。その横で、バードのトランペットが、モブレーを支え、鼓舞するように、ブリリアントで端正なトランペットを吹きまくっている。

このモブレーとバードの2管フロントの活躍が素晴らしい、2月8日の録音の「モブレーがリーダーで、バードとの2管フロントのクインテットのセッション」。もう少し、録れ高があって、一枚のリーダー作としてリリース出来ていたら、とモブレーの初期の名盤になっていたのではないか、と思うくらい、充実したモブレーのテナーである。

ちなみに、この『The Jazz Message of』のLPのB面、1月30日の録音の「ケニー・クラークがリーダーで、バードとラポルタの2管フロントのクインテットのセッション」は、といえば、明らかに、ジョン・ラポルタのアルト・サックスが軽くて弱い。

フレーズの展開も単純で平凡、ブリリアントで端正なバードのトランペットのブロウが溌剌としている分、明らかに見劣りがする。ケニー・クラークがリーダーのセッションなので、ラポルタを除く、残りの4人の演奏が優れているので、なんとか、内容的に水準レベルを維持している程度。ケニー・クラークのリーダー作をまとめる上で、このセッションの3曲が切り捨てられたのは至極納得、である。
 
 

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2024年5月23日 (木曜日)

奥ゆかしいモブレーのテナー

ハンク・モブレーのリーダー作の「落穂拾い」。録音リアタイ〜アルバム化の盤については「あと2枚」。一枚はサヴォイ盤でなかなかCDで入手できなかった、僕にとっての難物。もう一枚は、プレスティッジ盤なのだが、ハンク・モブレーとしては、マイナーな存在みたいで、なかなか現物を見つけることができなかった難物。どちらも、今ではやっと音源確保できて、時々、引きずり出して来ては聴く「好盤」。

Hank Mobley『Mobley's 2nd Message』(写真左)。1956年7月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Kenny Dorham (tp), Walter Bishop (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。リーダーのモブレーのテナー・サックスと、ドーハムのトランペットがフロント2管のクインテット編成。プレスティッジ・レーベルとしては、なかなかまともな人選、なかなかまともなリズム・セクションを選定している。

モブレーは結構人見知りで、特に年上の先輩ジャズマンが苦手みたいで、パーソネルの人選によって、テナーの好不調が左右されたりすることが多い、結構、メンタル面で「難しい」テナー・マンだったらしい。モブレー自身のテナーと共同でフロントを張るジャズマンにも、モブレー独特の「相性」があったみたいで、トランペットの場合、先輩トランペッター、ドナルド・バードを選ぶことが多かった。
 
しかし、この『Mobley's 2nd Message』では、哀愁のバップ・トランペッターのケニー・ドーハムが参加している。モブレーは1930年生まれ、ドーハムは1924年生まれ。ドーハムはビ・バップの時代から第一線で活躍してきた、モブレーにとっては「大先輩」トランペッター。
 

Hank-mobleymobleys-2nd-message

 
しかも、アルバム録音における、モブレーのリーダー・セッションについては「初見」に近い。この盤でのモブレーは、大先輩ドーハムのトランペットの雰囲気の合わせている。中音域をメインに淡々とバップなトランペットを吹き上げるドーハムに合わせて、神妙に哀愁感溢れる小粋でバップなテナーを披露している。

どうも、モブレーは人が良いのか、根性が無いのか(笑)、自らのリーダー作であっても、共演するジャズマンに、相当、気を使うことろがあるみたいで、フロントの相方の先輩ジャズマンの雰囲気に合わせたり、先行のソロを譲ったりで、どうにも人が良い。というのか、共演者のジャズマンに影響されることが多い。

この盤では、ドーハムのトランペットの個性に寄せた、「哀愁感漂う、優しくラウンドした音のエッジと流麗なフレーズの吹き回し」のモブレーのテナーが聴ける。抑制が効いていて、ハードバップな「バップなテナー」にしてはちょっとおとなしいが、音の芯はしっかりしていて、テクニックも申し分ない。

ドーハム先輩のトランペットに寄り添い、決して邪魔することなく、存分に引き立てる。そんな奥ゆかしいモブレーのテナーが聴ける、異色のリーダー作だと僕は思う。
 
 

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2024年5月22日 (水曜日)

充実の『Hank Mobley With Donald Byrd And Lee Morgan』

しっかりと芯の入った骨太なブロウ。テクニック良く流れる様なアドリブ・フレーズ。ハンク・モブレーは、フレーズの密度が濃い、バップなテナー・マンだった。

そんな愛すべきバップなテナー・マンのハンク・モブレーのリーダー作の「落穂拾い」をしている。正式にリリースされたリーダー作の中で、まだ、当ブログの記事でご紹介していないものが3枚。1972年以降、引退後、発掘リリースされた盤が6枚。今年中には全9枚を記事にして、モブレーのリーダー作をコンプリートしたい。

Hank Mobley Sextet『Hank Mobley With Donald Byrd And Lee Morgan』(写真左)。1956年11月25日の録音。ブルーノートの1540番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Donald Byrd (tp), Lee Morgan (tp), Horace Silver (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。

さて、正式にリリースされたリーダー作の中で、まだ、当ブログの記事でご紹介していないもの、の一枚。ハンク・モブレーとして6枚目のリーダー作、かつ、ブルーノート・レーベルでの、30㎝LPでのリリース第一弾。

ブルーノートの総帥プロデューサーの気合いを感じる。モブレーを全面的に売り出したい、そんな気合いをガッツリ感じられるのが、このパーソネル。
 

Hank-mobley-with-donald-byrd-and-lee-mor

 
ダブル・トランペットに、バードとモーガン、ピアノにシルヴァー、ベースにチェンバース、ドラムにパーシップ。当時のブルーノートの、名うてハウス・ジャズマンでガッチリ固めている。

名うてのジャズマンで固めるのには理由があったみたいで、モブレーの書いた楽曲の出来が相当に良く、この相当に内容のある楽曲の優秀性をダイレクトに聴き手に届けるには、優れたジャズマンの、優れた演奏が必須。そういう観点でのこのパーソネル。当時のブルーノート・レーベルが、いまだにリスペクトされる所以である。

モブレーのリーダー作だけあって、モブレーのテナーは好調の部類。と言って、絶好調ではない。パーソネルに、錚々たる先輩ミュージシャンの名が連なっているので、モブレーにとっては結構しんどかったのでは、と感じている。それでも、バックの先輩ミュージシャンが、そんなモブレーを慮って、モブレーを支え、優しく鼓舞するサポートが、なかなか味わい深い。

セクステット編成の演奏なので、曲とアレンジの良し悪しが、アルバムの出来不出来のカギを握るのだが、この盤については、まず、モブレー作曲の曲の出来が良く、その曲を踏まえたアレンジがバッチリ決まっている。典型的な良好なハードバップな演奏がぎっしり詰まっている「隠れ名盤」としても良い、充実したハードバップ盤である。
 
 

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2024年5月 3日 (金曜日)

最後の録音リアタイのリーダー作

『The Flip』のリリースにて、ブルーノートを離れたハンク・モブレー。『The Flip』の録音は1969年7月12日。それから2年7か月、モブレーは短命のコブルストーン・レーベルにリーダー作を吹き込む。しかし、このリーダー作が、録音リアルタイムでリリースされた最後のモブレーのリーダー作になってしまった。

Hank Mobley『Breakthrough!』(写真)。1972年2月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Charles Davis (ss, bs), Cedar Walton (p, el-p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモブレーのテナーと、デイヴィスのソプラノ&バリトン・サックスの2管フロント。バックは、ウォルトンのピアノ、ジョーンズのベース、非銀子のドラムの当時、流行のど真ん中を行く活きの良いリズム・セクション。

まず、このリーダー作は全編、ハードバップで埋められている。それも、1972年という、その時代の音楽背景を踏まえたハードバップ。ロックやソウルの台頭に煽られた、ポップで根明な、聴いてノリが良く判り易いハードバップ。しかも、全6曲中、ブルーノート時代は作曲の優れた才能を活かして、アルバム全曲中、ほぼモブレーの自作曲で埋められていたのに、この盤では、モブレーの自作曲は2曲のみ。収録曲から感じるモブレーの個性はグッと薄まった。
 

Hank-mobleybreakthrough

 
しかも、ブルーノート時代の後半、必ず冒頭を飾っていた「ジャズ・ロック」な曲は見当たらない。やはり、ブルーノート時代の後半のモブレーのジャズロック曲は、アルバムの売り上げを目論み、ジャズ人気の維持を狙ったものだったのだろう。しかし、ブルーノートを離れて、モブレーはジャズロックには手を染めていない。

モブレーのテナーはストレートに、軽くモーダルに、ハードバップなフレーズを吹きまくる。バックのリズム・セクションは、ウォルトンのピアノがモーダルな展開でバッキングしているのだが、モブレーは気にかけず、ハードバップ時代のコード展開に則ったアドリブ展開で吹きまくる。やはりモブレーの本質はハードバップだったのだろう。従前の中音域中心の歌心溢れる流麗な、基本モーダルなフレーズは全く変わっていない。

迫力あるモブレーのブロウと、ウォルトンのモーダルなピアノが魅力の佳作。まだまだ元気なモブレーだが、この盤を最後に、録音リアルタイムのリーダー作のリリースは途絶える。ヘビースモーカーだったモブレーは肺に問題を抱え(テナー奏者としては致命的)、1970年代半ばに引退を余儀なくされる。加えて、引退後はホームレスの問題も抱えることになる。そして、1986年5月30日、肺炎にて55歳で逝去する。あまりに早過ぎる逝去であった。
 
 

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2024年5月 2日 (木曜日)

モブレーのブルーノート最終作

ブルーノートでの初リーダー作が、1955年3月録音のブルーノートの5066番『Hank Mobley Quartet』。以来14年間で、録音リアルタイムでリリースされたリーダー作が17枚。ほぼ1年に一枚のペースでリーダー作をリリースし、サイドマンでの参加も多数。今回、ご紹介するアルバムは、ブルーノートのハウス・テナー奏者の位置付けだったモブレーのブルーノート最終作である。

Hank Mobley『The Flip』(写真左)。1969年7月12日の録音。ブルーノートの4329番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Dizzy Reece (tp), Slide Hampton (tb), Vince Benedetti (p), Alby Cullaz (b), Philly Joe Jones (ds)。モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンが3管フロントのセクステット編成。

パーソネルを見ると面白い。フロントが、モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーン。ハードバップ時代を彩った一流ジャズマンが大集合。加えて、ドラムがこれまたハードバップ時代のファースト・コール・ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズ。ピアノとベースはちょっと無名の人たちだが、今回のパーソネルは「ハードバップ同窓会」の趣である。

内容を聴いてみると、収録曲の曲調の展開は、1965年リリース『The Turnaround!』から続いてきた、冒頭の1曲目はコッテコテのジャズロック、2局目以降は根明でポップなハードバップ、という収録曲の並びの傾向は変わらない。
 

Hank-mobleythe-flip

 
冒頭の「The Flip」はジャズロック志向。モブレーのテナー、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンのフロント3管が、ピンプルで判り易い「熱い」パフォーマンスを繰り広げている。フィリー・ジョーのドラミングが、ジャズロック志向の演奏をハードバップに染め直している。ジャズロック志向のハードバップ・ナンバーと聴いても良いかもしれない。

2局目「Feelin' Folksy」、4局目「18th Hole」、ラストの「Early Morning Stroll」は、根明でポップなハードバップではあるが、明るい曲調のアレンジの中、フロント3管のパフォーマンスは、モードの影も形もない、あくまでハードバップ。モブレーのテナーもこの盤では、モード風のアドリブ展開を封印し、リースのトランペット、ハンプトンのトロンボーンと足並みを合わせる様に、硬派でハードバップなアドリブを展開している。

3曲目の「Snappin' Out」は、ジャジーなマイナー・コード+ラテン調で演奏されるボサノバ・ジャズな演奏。冒頭のジャズロック志向と同じ、ロックやソウル・ファン向けに迎合したコマーシャルな曲かと思いきや、この曲でもフィリー・ジョーのドラミングがハードバップしていて、硬派なブルーノート仕様のボサノバ・ジャズに仕上げている。

このセッションでモブレーはブルーノートを離れることになる。ブルーノート最後のリーダー作は、ハードバップ懐古な内容。但し、懐メロでは無い。昔のパフォーマンスをなぞることもない。あくまで、1969年時点での最新イメージのハードバップ。

特に、フィリー・ジョーのドラムが効いている。モブレーは、従前からの中音域中心の歌心溢れる流麗な、ハードバップなテナーをブイブイ言わせている。1969年という時代背景をしっかり反映した、良質のハードバップ演奏がこの盤に詰まっている。好盤です。
 
 

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2024年5月 1日 (水曜日)

ジャズのポップ化を硬派に進める『Reach Out!』

確か、1965年リリースの『The Turnaround!』から、ジャズロックに手を染め出したモブレー。ジャズロックに加えて、ポップなハードバップにも取り組み出したモブレー。巷では、硬派なジャズ者の方々中心に「軟弱なモブレー」「ダサいモブレー」などと、すこぶる評判がよろしくない。

しかし、モブレーは、ロックやソウルを意識したクロスオーバーなジャズに適応することでジャズ人気を維持する為、「コッテコテのジャズロック」と「根明でポップなハードバップ」に音楽性の舵を切った。しかし、モブレーのサックスのパフォーマンスについては、従前の中音域中心の歌心溢れる流麗な、基本モーダルなフレーズは変わらない。

ジャズロックに加えて、ポップなハードバップに取り組むモブレーを聴いて、商業主義に身を売ったとか、俗っぽくなったとか言われるが、それは作曲とアレンジ面の切り口であって、モブレーのテナー奏者としてスタイルは変わっていない。そう意味では、モブレーは生涯、ブレの無いテナー奏者だったと言える。

Hank Mobley『Reach Out!』(写真左)。1968年1月19日の録音。ブルーノートの4288番。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Woody Shaw (tp, flh), George Benson (g), LaMont Johnson (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。フロントに、モブレーのテナーに加えて、若きウッディ・ショウのトランペットとジョージ・ベンソンのギターが入っている。

1曲目のタイトル曲『Reach Out I'll Be There』は、R&Bグループ 'Four Tops" のヒット曲のカバー。4曲目「Goin' Out of My Head」は、Little Anthony & The Imperialsのヒット曲のカバー。
 

Hank-mobleyreach-out

 
いわゆるソウル・ミュージックの人気曲のカバーで、アレンジはコッテコテのジャズロック。どちらの曲もアレンジはポップでクールでヒップ。バリバリのモダン・ジャズでは無いが、意外と硬派で一本筋の通ったパフォーマンスは、決してポップなイージーリスニングなどでは無い。

モブレーのソロは、ソウル・ミュージックのカバーにしては意外と硬派。判りやすさを前提にした、シンプル過ぎるフレーズがメインだが、どこかモーダルな展開を忍ばしていて、普通のジャズロックにおけるアドリブ展開のフレーズとは響きと流れが全く異なっている。加えて、ぶっ飛んだ弾きまくりなベンソンのギター・ソロも、そんなモブレーに追従し、同じく、どこかモーダルな展開を忍ばしていて、聴いていてなかなかに興味深い。ブリリアントなショウのトランペットも同様で、その辺りはバンド全体として統一感がある。

カバーの2曲以外のモブレーの自作曲「Up, Over and Out」「Lookin' East」「Good Pickin's」の演奏がなかなか硬派でハードバップな演奏。アレンジが「根明でポップ」な分、誤解され易いのだが、バンド全体、かなり「イケてる」ハードバップをやっている。モブレーのテナー、ベンソンのギター、ショウのトランペット、フロント隊のフレーズは切れ味、疾走感良く、ポップでモードな展開でアドリブを突き進む。

そして、バックのリズム・セクションも意外と好調。ジョンソンのピアノは「根明でポップ」で歯切れ良く、クランショウのベースは「根明でファンキー」、ヒギンスのドラムは躍動感溢れる、「根明で柔軟なリズム&ビート」を叩き出す。このセッションのフロント隊の雰囲気にピッタリの意外とご機嫌なリズム・セクションである。

「コッテコテのジャズロック」と「根明でポップなハードバップ」路線を突き進むモブレーだが、聴きやすさ、親しみやすさ優先ではあるが、アドリブ展開など、硬派に一本筋が通っていて、決して軟弱なジャズには陥っていない、と僕は思う。そして、アレンジも「根明でポップ」な分、誤解され易いのだが、爽快感と疾走感溢れる良好なアレンジで、決してダサいジャズには陥っていない、と僕は思う。
 
 

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