ケリーの熱い「好ライヴ盤」です
春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる、と以前書いたが、今年はもう初夏である。それでも、突如「ウィントン・ケリー」が聴きたくなった。手元のディスコグラフィーを見ると、「ウィントン・ケリー」のリーダー作で、普通に手に入る範囲で、当ブログの記事にしていない盤があと5枚。ラストスパートである。
Wynton Kelly featuring Hank Mobley『Interpretations』(写真左)。1967年11月12日、メリーランド州ボルチモアのジャズ・ファン団体「レフト・バンク・ジャズ・ソサエティ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Hank Mobley (ts), Cecil McBee (b), Jimmy Cobb (ds)。
ウィントン・ケリーのマニア「ケリー者」がこよなく愛する、知る人ぞ知る、ウィントン・ケリー晩期のライヴ・パフォーマンスの記録である。基本は、ウィントン・ケリーのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジミー・コブのドラムのピアノ・トリオがメインで、ゲストとして、ハンク・モブレーのテナー・サックスが参加している。
ケリーは、どこまで行っても「ケリー」である。いつの時代も、ケリーのピアノには「ブレ」が無い。健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。
コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「ケリー」の個性。
そんなケリーの個性が、このライヴ盤の中で弾けている。徹頭徹尾、ハードバップである。モードに傾くことも、フリーに傾くことも無い。ケリー節を振り撒きながら、ファンクネスをそこはかとなく漂わせながら、好調ケリーは弾きまくっている。
モブレーも吹きまくっている。モブレーもこの頃は、ポップに傾いたり、モーダルに走ったり、ジャズの多様化にビビットに反応していたのだが、ここでは、徹頭徹尾、オーソドックスなハードバップである。しかも、バリバリ積極的に、ストレート・アヘッドに吹きまくっている。
これは、バックのリズム隊との相性が良い証拠。モブレーのテナーには、ケリーのピアノが合う。そして、コブのドラムが、そんなモブレーとケリーの「ハードバップ」を的確にフォローし、効果的に鼓舞する。ケリーのピアノの個性とモブレーのテナーの個性を熟知しているコブならではのドラミングは、このライヴ・パフォーマンスの聴きものの一つ。
新進気鋭のマクビーのベースが新しい響きを連れてきている。フロント管のモブレーや、ピアノのケリーは、圧倒的にハードバップなんだが、マクビーのベースは、どこか新主流派のモーダルな響きとフレーズを連れてきている。生粋のハードバップのフロントに、モーダルなベースラインの対比。これがこのライヴ・パフォーマンスの面白さの一つ。1967年のハードバップ最先端である。
ジャズの多様化、モードだのフリーだの全く関係無し。ここでのカルテットの4人は、徹底的にハードバップを演っている。しかも、その時代の最先端のハードバップ。以前から意外と話題に上らないライヴ盤だが、ライヴ特有の熱っぽい雰囲気も芳しい、なかなか熱い内容の、ハードバップな好盤である。
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