2022年1月31日 (月曜日)

エリントンとブラウンのデュオ盤

パブロ・レーベルには、ハードバップ時代に「ありそうで無かった」メンバーのカップリングが多数ある。加わて、この人がこんな編成の演奏するの、とビックリする企画ものもある。フュージョン全盛期の1970年代に活発に活動したレーベルで、メインストリーム系のジャズ・レーベルからすれば「逆風」の時代ではあるが、純ジャズ・ベースの内容の濃いアルバムも多数リリースしているから立派。

Duke Ellington & Ray Brown『This One's for Blanton』(写真)。1972年12月5日の録音。パーソネルは、Duke Ellington (p), Ray Brown (b)。全編に渡って、ジャズ界きっての巨匠、デューク・エリントンとジャズ・ベースの「ヴァーチュオーソ」の1人、レイ・ブラウンとのデュオ演奏である。この組合せ、パブロ・レーベルでないと成立しないだろう。総帥プロデューサーのノーマン・グランツに感謝、である。

ジャズ界きっての巨匠、デューク・エリントンであるが、最晩年の1971〜73年の間、パブロ・レーベルに、自分のオーケストラを離れ、単独のピアニストとして、5枚のリーダー作を録音している。あまり注目されていないようだが、どのアルバムもピアニスト・エリントンの個性を十分に反映していて、聴き応えのあるものばかり。
 

This_ones_for_blanton

 
このレイ・ブラウンとのデュオ盤も内容は非常に濃い。パーカッシブで硬質なタッチで、音間に「黒いファンクネス」が漂い、ブルージーな右手の「スクエアに流麗な」旋律、という、エリントンのピアノの個性が手に取るように判る。加えて、レイ・ブラウンが、いかに「ヴァーチュオーゾ(卓越した技巧をもつ演奏家)」レベルのベーシストであったかが、手に取るように判る。

エリントンのピアノについては、音数は比較的少なく、バリバリ弾きまくる訳でもない。スクエアにスイングしつつ、間を活かした、流麗で「タメ」のあるアドリブ・フレーズは唯一無二。どこから聴いても「エリントン」な、どこから聴いても「エリントン」と判る個性的なピアノが、ブラウンの卓越したベース・ラインに乗って、乱舞する様はいつ聴いても鳥肌の立つ思い。

エリントンの唯一無二な個性的なピアノを、もっと聴きたかったなあ、と強く思わせる、素敵な内容のデュオ盤。出しゃばらず、エリントン御大を素晴らしいテクニックのアコースティック・ベースでサポートするレイ・ブラウンも素敵。それまでありそうで無かったパブロのデュオ盤。ジャケットもまずまずで、おすすめの名盤です。
 
 
 
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2021年9月 1日 (水曜日)

デューク・エリントンのピアノ

パブロ・レーベル。「昔の名前で出ています」的だの、昔の終わったジャズマンを集めた「懐メロジャズ」だの、我が国ではあまり評判は良くなかった。が、アルバムをちゃんと聴けば判るが「そんなことは無い」。平均的に「内容の整ったメインストリームな純ジャズ」のオンパレードで、聴いていて楽しいジャズばかりである。

しかも、ハードバップ時代には無かった編成やメンバーのカップリングが多数あって、パブロ・レーベルの諸作については、1970年代の「ネオ・ハードバップ」的な優秀作の宝庫と言えるでは無いか、と思っているくらいだ。21世紀になった今、パブロ・レーベルについては再評価をすべきだろう。聴いて楽しい録音が多数、存在する。

Duke Ellington『Duke's Big Four』(写真左)。1973年1月8日の録音。パーソネルは、Duke Ellington (p), Joe Pass (g), Ray Brown (b), Louie Bellson (ds)。ビッグバンドの総帥レジェンド、デューク・エリントンがピアニストとしてリーダーを張り、ギター入りのカルテット編成での録音。ピアノのエリントン、ベースのブラウン、ギターのパス、ドラムのベルソン、いずれもレジェンド級のビッグネーム。
 

Dukes-big-four_1

 
ビッグバンドの総帥かつ作曲家のエリントンのピアノは流麗でメロディアスなピアノを想起するのだが、どうして、そんな流麗なイメージとは正反対。硬質なタッチでアグレッシブ。フレーズも先進的で時に前衛的。あくまでコードがベースの旧来のスタイルだが、間を活かした、音を選んだ右手のシングル・トーンは典雅。左手のブロックコードが穏やかでは無い、硬質な打ち下ろす様な、少し不協和音な響きを宿したマイナーなブロックコード。

エリントンはジャズ界最大のレジェンドの1人。そんなエリントンがピアノを弾くのだ。それをサポートするベース、ギター、ドラムは、それはそれは神妙に慎重にサポートしている様が良く判る。ブラウンのベースは往年の骨太でソリッドで歌心溢れるベースだが、エリントンの邪魔は絶対にしない。エリントンのピアノのイメージと被ることは全く無い、パスのギターは力強く流麗。ベルソンは洒脱なドラミングでエリントンのピアノにピッタリ寄り添う。

滋味溢れる、他に無い、エリントン独特のジャズ・ピアノ演奏がこの盤に記録されている。ハードバップ期のファンクネスを漂わせた、躍動感溢れるインタープレイとは一線を画した、ファンクネスを奥にしまい込みつつ、コードの妙によって「黒い情念」を表現し、間を活かした演奏で、そのイメージを増幅するという、意外ととんでもないピアノ・トリオ+ギターの演奏がここにある。1970年代のパブロ・レーベルを侮ってはならない。
 
 
 
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2020年10月20日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・191

「彼のピアノ」のスタイルは「ありそうでない」スタイル。部分部分を聴くと、過去の誰かのスタイルと同じじゃないか、と思うんだが、良く聴くと、どれも過去のスタイルとはちょっと違う。そういう「過去のスタイルとはちょっと違った」スタイルをいくつか散りばめて、プレイ全体で、伝統に根ざした新しい響きのスタイルを獲得している。つまりは、新伝承派のモットーを地で行っているということ。

「彼のベース」の演奏テクニックは群を抜いている。特に、ピチカート奏法における、旋律を奏でるギター・ライクなインプロビゼーションは傑出したもの。クラシックの素養が垣間見えるベースは、ピッチがしっかりと合っていて、彼のソロの旋律弾きは聴いていて気持ちが良い。「旋律弾き」は、まるでギターである。これがあの図体のでかいアコベを使っての技とは思えない、驚愕のテクニックである。

Mulgrew Miller & Niels-Henning Ørsted Pedersen『The Duo Duke Ellington 100』(写真左)。January 15, 1999年1月15日、Copenhagenでの録音。ちなみにパーソネルは、Mulgrew Miller (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。
1999年、デンマークのオーディオ・ブランド、バング&オルフセン(B&O)が、デューク・エリントンの生誕100周年とエリントンとベース奏者ジミー・ブラントンのパートナーシップを祝して企画したトリビュート盤である。
 
 
The-duo-duke-ellington-100  
 
 
先の「彼のピアノ」とは、Mulgrew Miller(マルグリュー・ミラー)、「彼のベース」とは、Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン)のことである。ミラーは、2013年5月(享年57歳)、ペデルセンは2005年4月(享年58歳)鬼籍に入っている。デュオを構成する2人は共に故人となる。どちらも50歳台後半、早過ぎる逝去であった。

デューク・エリントンの曲をデュオでやる。エリントンの曲って、かなりの数のカヴァーがあるので、どこかで聴いたことがあるような、ちょっと手垢が付いた様な雰囲気がするものなんだが、このデュオに限ってはそうならない。まず、アレンジがユニーク。こうきたか、と思わせる、意外性のある、ユニークで小粋なアレンジが施されていて新鮮。これって、2人ともかなり高度なテクニックと歌心あってのこと。

ミラーのピアノもペデルセンのベースも唯一無二な個性なので、聴いていて実に楽しく、実に興味深い。ミラーの変幻自在、硬軟自在、緩急自在な、とても柔軟性と適応力のあるピアノと、どっしりとした重低音フレーズで旋律の底をしっかりと支え、デュオの相手を鼓舞するベース。有名なエリントン曲が続くのだが、とても耳新しく響くデュオ盤。こんな優秀な音源が、約20年の時を経てリリースされたことに「拍手喝采」である。
 
 
 

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2020年5月 8日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・128

ステイホームで自宅にいる時間が長くなった分、いろいろとジャズ盤に関する情報収集や整理が捗っている。当ブログは、ジャズ者初心者向けのジャズ盤紹介が基本のブログであるが、当ブログでご紹介していない好盤がまだまだある。それらの盤について、詳細の情報収集をしたり、ネットや雑誌の情報を確認して、もともと自分が知らない好盤について、リサーチを進めたりしている。

Duke Ellington『The Duke Plays Ellington』(写真左)。1953年4月13, 14日、12月3日の3回に分けての録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Wendell Marshall (b), Butch Ballard (ds, tracks 1-12), Dave Black (ds, tracks 13-15), Ralph Collier (congas, track 14)。1曲だけ、コンガが入るが、基本はエリントンのピアノをメインにした、ピアノ・トリオ演奏である。
 
タイトル通り、エリントン・ジャズ・オーケストラの統帥であるデューク・エリントンが、ピアニストとして、自らが作曲した名曲の数々を、ピアノ・トリオ編成でセルフカヴァーするという企画盤。ピアノが主役のピアノ・トリオでのパフォーマンスであること、そして、エリントン自らが作曲した、数々のスタンダード曲を演奏することで、デューク・エリントンのピアニストとして個性と特徴が際立つ内容になっている。
 
 
The-duke-plays-ellington-piano-reflectio  
 
 
エリントンのピアノは、音数を厳選した、印象的で耽美的な弾き回し。しっかりとしたタッチではあるが、ダイナミズムを抑制した、ほど良くコントロールされたスイング感。単音の音の響きを大事にした、シンプルなフレーズ作り。音数が少なく、シンプルではあるが、その典雅な響きは実に「クール」。そして、その「クール」さの裏には、しっかりとファンクネスが漂い、ブルースが流れる。
 
この盤を聴いて、エリントンは非常に優れたピアニストであることを再認識した。このエリントンのピアノの個性と特徴は、他のピアニストには無い。唯一無二の個性という面でも、ブルージーでスインギーであるという面でも、エリントンのピアノは「実にジャズらしいジャズ・ピアノ」と言える。その「ジャズらしいジャズ・ピアノ」で、最もジャズらしいひとつとされる、エリントン作のジャズ・スタンダード曲をセルフカヴァーするのだ。これはもう堪らない。
 
僕はこの盤をつい先日まで失念していた。というのも、この盤、1989年に、ブルーノートからCDリイシューされたのだが、その時のタイトルが、『Piano Reflections』(写真右)と新しく名づけられてのリイシューだったのだ。この時、僕は、このリイシュー盤、実は『The Duke Plays Ellington』であることを知らなかった。今回、とある資料を読んでいて、その事実を知った次第。そして、聴いてその優れた内容にビックリして、思わず「こんなアルバムあったんや〜」。 
 
 
 

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  ・『Christopher Cross』 1979

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・167

デューク・エリントンの関連盤はどれも取っ付きが悪い。出てくる音がブルースを基調としたマイナー調の渋いフレーズの演奏が多いのと、独特のハーモニー感覚が原因と思っている。しかし、取っ付きは悪いのだが、聴き込んでいくと、どんどん味わいが出てくる。このマイナーでほの暗いブルージーなフレーズ、固有の泥臭さ、アーバンな雰囲気、が癖になる。

終生エリントンへ絶大なる敬意を抱いていた、かのマイルス・ディヴィスいわく、すべての音楽家は、すくなくとも1年のうち1日は楽器を横にエリントンにひざまずき、感謝の念を示すべきだ」。マイルスのみならず、ジャズメンは皆、エリントンの音楽に敬意を抱いている。確かに、エリントンの創り出す音は全てが「ブルージーでクール」だ。

Duke Ellington & Johnny Hodges『Play the Blues Back to Back』(写真)。1959年2月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Johnny Hodges (as), Harry "Sweets" Edison (tp), Les Spann (g), Al Hall (b, tracks 1 and 4),Sam Jones (b,tracks 2, 3, 5, 6, 7), Jo Jones (ds)。エリントン楽団の統帥デューク・エリントンはピアニストとしても優れている。今回の双頭リーダーのジョニー・ホッジスは、エリントン楽団の花形アルト・サックス奏者。
 
 
Back-to-back  
 
 
この2人をメインとして、エリントンの音楽性の最大の「要素」である、ブルースをテーマに素敵な演奏を繰り広げている。面白いのは、トランペットのハリー・エディソンと、ドラムのジョー・ジョーンズは、ベイシー楽団出身。つまり、この盤は、エリントン楽団とベイシー楽団の花形奏者が集結した「オールスター・コンボ」の演奏といえる。

エリントンのピアノは音を選んだ、間を活かしたピアノ。そんな「粋なピアノ」がブルースを奏でていく。ホッジスのアルト・サックスは硬質であるが「繊細でメロウ」。エディソンのトランペットはスィートで流麗、スパンのギターはブルージー。そんなフロント隊が様々なブルース曲を奏でていく。アーバンでアダルトなブルージーなジャズ。素敵だ。

ホールとサム・ジョーンズのベースとジョー・ジョーンズのドラムのリズム隊も堅実で豊かな「ブルージーでスインギーなオフ・ビート」を供給する。この盤で聴くことの出来る「ブルースだけを選んだ、ブルージーな演奏」は唯一無二。ジャズマンの中でも、ブルースを大得意とする希有な奏者達が共演しているのだ。この盤はブルースをテーマにした、一期一会の、唯一無二な「企画盤」である。
 
 
 

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  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

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  ・チューリップのセカンド盤の個性



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2019年11月21日 (木曜日)

デュークのピアノの個性を愛でる

デューク・エリントンはビッグバンドの主宰者で有名だが、実はピアノニストとしても優れた才能の持ち主である。ピアニストとして参加して、優れたアルバムを多く残している。しかし、昔は、このデュークのピアノ盤がなかなか入手出来なかったという状況もあって、なかなかポピュラーな存在にならなかった様に感じる。

Duke Ellington『Money Jungle』(写真左)。1962年9月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Charles Mingus (b), Max Roach (ds)。ハードバップが成熟、ジャズが多様化に舵を切った時代に、デューク・エリントンが、ビ・バップ時代からのレジェンド級の大物2名を従えて、堂々のピアノ・トリオである。

事前知識として、ミンガスのベースとローチのドラムを採用して、デュークはピアノ・トリオを組んだ、ということは判ったんだが、何故ミンガスとローチだったのか。他のベースと他のドラムでは駄目だったのか。それはデュークのピアノの個性を聴いたら、何となく理解出来る。
 
 
Money-jungle-1  
 
 
デュークのピアノは「ゴツゴツ硬派なバップ・ピアノ」である。硬派で指の回る、音符が適度に多いセロニアス・モンク、とでも形容したら良いのか。雄々しい太い硬質な音。いわゆる「バップな」音。そんな「バップな」ピアノには、バップなベースとバップなドラムが良く似合う。ここではバップなベースは「チャールズ・ミンガス」、バップなドラムは「マックス・ローチ」。

とにかく、デュークのピアノの個性がビンビンに伝わってくる好盤。とにかくユニークなデュークのピアノ。それまでの、そして、それからの他のジャズ・ピアノには全く類似の無い、唯一無二のデュークのピアノの個性。そんなデュークのピアノには、やはりデューク作のオリジナル曲が良く似合う。

このピアノ・トリオ盤は、デュークの、デュークによる、デュークの為のピアノ・トリオ盤。デュークのピアノをフィーチャーし、デュークのピアノが一番聴こえてきて、デュークのピアノが一番楽しめる盤である。ミンガスのベースとローチのベースは、デュークのピアノの個性を更に惹き立たせる為に存在する。
 
 
 
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2019年11月19日 (火曜日)

僕のエリントン楽団の入門盤

ジャズのビッグバンドの「横綱格」といえば、デューク・エリントン楽団だろう。かたや、カウント・ベイシー楽団という声もあるが、僕はエリントン楽団に軍配を上げたい。音の厚み、個性的なフレーズ、優れたアレンジ。ほんの僅かではあるが、エリントン楽団を「東の横綱」に、ベイシー楽団を「西の横綱」に推したい。

しかし、である。僕はジャズ者初心者の頃、エリントン楽団の良さが全く判らなかった。マイナーでアーバンな響き。分厚いユニゾン&ハーモニー。ちょっと捻れた個性的なフレーズ。当時の僕の耳には重かった。シンプルでキャッチャーなベイシー楽団に走った。あれから、40年あまり経って、今では、先ほどのような評価に落ち着いている。ほんの僅かな差、なんですけどね。

『The Popular Duke Ellington』(写真)。1966年3月の録音。デューク・エリントンは、1974年に亡くなっているので、彼にとっては晩年の録音になる。が、1966年の録音なので音が良い。世代的にハイファイ志向の我々としては、ビッグバンドを愛でる場合、音は良い方が安心するし、集中して聴ける。そういう意味で、この盤は音が良いので、入門盤の位置づけで、エリントン楽団を聴き込むには最適な盤である。|
 
 
The-popular-duke-ellington-1  
 
 
なんせ、冒頭が「Take the "A" Train(A列車でいこう)」なのが良い。小学校6年生の時、ラジオでこの曲の演奏を聴いて、思いっ切り好きになって以来、ずっと愛聴曲。これが良い。今の耳には、この曲の演奏のダイナミズム、繊細さ、奔放さが良く判る。自由奔放に演奏している様で、しっかりと規律が守られ、しっかりとコントロールしている。この良い意味での「抑制の美」が、エリントン楽団の良さの1つだと感じている。

2曲目の「I Got It Bad (and That Ain't Good)」以降、エリントン楽団の自由奔放で、緩急自在で、硬軟自在で、変幻自在な演奏が堪能出来る。収録されている曲は、エリントン楽団の有名曲、十八番がズラリ揃っていて、それだけでもエリントン楽団の真髄を心ゆくまで堪能出来る。まずはこの盤を入門盤として聴き込み、エリントン楽団の他の好盤に手を伸ばして、エリントン楽団の音世界を極める。そのアプローチがお勧め。

油井正一著の『ジャズ―ベスト・レコード・コレクション』にこの盤の評がある。「デューク・エリントンほど同じ作品を何度もレコーディングしながら、そのつど時代にふさわしい編曲としてレコーディングしている人も珍しいだろう。このアルバムはタイトル通りエリントンのファンの人以外にも親しまれている名盤だ。内容的にも彼の代表作の1枚に挙げられる」。けだし名言、けだし言い得て妙である。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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