2023年2月19日 (日曜日)

桑原あいの10周年記念ライヴ盤

「Disc Grand Prix 年間グランプリ」を眺めていて、このピアニストの名前が目に入った。「桑原あい」。ジャズ・ピアニスト。1991年生まれ。そろそろ、ジャズ・ミュージシャンとしては、まだまだ若手。

幼い頃より、天才エレクトーン少女として頭角を現し、中学生後半よりピアノに転向。2012年5月、完全セルフ・プロデュースによる初リーダー作、桑原あい Trio Project『from here to there』をリリース。実は、僕はこの「桑原あい」については、デビュー盤から、リーダー作をほぼ聴き続けているクチである。

彼女のピアノは、明確に「日本人のジャズ・ピアノ」。ファンクネスは希薄、端正で切れの良いオフビートでジャジーな雰囲気を醸し出し、芯の入った繊細でロマンティシズムが仄かに香るタッチと流れる様な弾き回しが特徴。チック・コリア、ブラッド・メルドーに通じるリリカルで切れ味の良い、現代音楽に通じる硬質なタッチが個性。

桑原あい ザ・プロジェクト『Making Us Alive』(写真左)。2022年4月から7月にかけて、全国4ヶ所で開催した「Recording Tour 2022 “Live Takes”」を全編録音し、その中からベスト・テイクを厳選して収録。ちなみにパーソネルは、桑原あい (p), 鳥越啓介 (b), 千住宗臣 (ds)。桑原あいデビュー10周年記念作。日本全国で繰り広げた白熱のトリオ・ライヴ盤である。
 

Making-us-alive

 
真面目である。真摯である。とにかく、息をつく間もない、「真面目で真摯」でストイックなジャズが展開される。聴き手の期待する「コンテンポラリーな純ジャズ志向」のパフォーマンスを堅実に実行している。

なんせ、冒頭の曲が、あのデューク・エリントンの「Money Jungle」である。こんなに硬派で玄人好みの選曲があるだろうか。このエリントンの名演を、桑原なりに解釈し、桑原オリジナルの「Money Jungle」になっている。いや〜、硬派やなあ。

全編ストイックでコンテンポラリーな純ジャズ、正統派のメインストリーム・ジャズで埋め尽くされる。選曲がユニークで、ルー・リードの「Pale Blue Eyes」や、ローリング・ストーンズ「She's a Rainbow」、ウエストサイド・ストーリーから「Cool」、歌劇カルメンから「Habanera」など、他のジャズ・ミュージシャンが選ばない曲を、個性的なアレンジで、なかなか洒落たカヴァーに仕立て上げている。

途中、現代音楽風にアブストラクトに展開したり、フリーに展開したりするところがあるが、これはちょっと「肩に力が入り過ぎ」かな。全編、かなり真面目で真摯でストイックなジャズで統一されているので、硬派にアブストラクトやフリーに展開するなら、ちょっとポップに、ちょっとソウルフルに展開した方が良いアクセントになるんではないかなあ、と思った次第。
 
 

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2021年5月 9日 (日曜日)

桑原あいのソロ・ピアノの快作

ジャズのジャンルで「ソロ演奏」というものがある。ジャズの場合、リズム&ビートの存在が重要なので、ピアノ、ギター、ドラム、ベース等、リズム&ビートを表現出来て、かつ旋律が奏でられる楽器の「ソロ演奏」が多い。逆に、フロントを張る管楽器、トラペットやサックス、フルートなどは「ソロ演奏」はほとんど無い。

以前からソロ・ピアノ盤はあるにはあったが、腕に覚えのあるピアニストが単発でリリースするに留まっていた。が、1970年代、キース・ジャレットによって、新しいイメージのジャズにおける「ソロ・ピアノ」盤が開拓された。欧州的なクラシック音楽の雰囲気を濃く宿しつつ、ジャジーなビートとフリーキーな展開を織り交ぜて、完全即興演奏をベースとした、ジャズにおける「ソロ・ピアノ」の形を確立した。

ただし、完全即興演奏をベースとした場合、聴く方にとっては何が演奏されているのかが全く判らなくなる危険性がある。よって、最近のソロ・ピアノは、事前に用意されたモチーフや、スタンダード曲などの既存の楽曲をベースに、即興演奏をメインとして展開するものがほとんどである。完全即興演奏をベースとするソロ・ピアノはキース・ジャレットのみなのかもしれない。

桑原あい『Opera』(写真左)。2021年4月のリリース。桑原あい の初となるソロ・ピアノ盤である。ジャズに留まらない、クロスオーバーなジャンルからの名曲のカヴァーをメインに構成されている。うち5曲は著名人に選曲を依頼。シシド・カフカ、社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS)、立川志の輔、平野啓一郎、山崎育三郎が「桑原あいに弾いてほしい」という曲をそれぞれセレクトしている。

ボン・ジョヴィから、GReeeeN、モンキーズ、そして、クインシー・ジョーンズ、アストル・ピアソラ、エグベルト・ジスモンチ、ビル・エヴァンスまで、ロックからJポップ、R&B、ジャズと幅広い音楽ジャンルからの選曲が楽しい。この盤の選曲の全貌は以下の通り。
 

Opera

 
1.ニュー・シネマ・パラダイス (エンニオ・モリコーネ)
2.リヴィン・オン・ア・プレイヤー (ボン・ジョヴィ)  シシド・カフカ 選曲
3.レオノーラの愛のテーマ (アストル・ピアソラ)
4.ロロ (エグベルト・ジスモンチ)
5.ワルツ・フォー・デビイ (ビル・エヴァンス)  立川志の輔 選曲
6.星影のエール (GReeeeN) 山崎育三郎 選曲
7.ゴーイング・トゥ・ア・タウン (ルーファス・ウェインライト)
8.ミスハップス・ハプニング (クアンティック)  社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS) 選曲
9.エヴリシング・マスト・チェンジ (クインシー・ジョーンズ)  平野啓一郎 選曲
10.ザ・バック (桑原あい)
11.デイドリーム・ビリーヴァー (ザ・モンキーズ)


桑原のソロ・ピアノは、タッチがハッキリしていてダイナミック。幅広にピアノを弾き回していて、強弱とメリハリが明確で歯切れが良い。一聴した雰囲気は「欧州&クラシック」。オフ・ピートが薄い分、クラシックな弾き回しと和音の響かせ方、そして、深いエコーが「欧州&クラシック」を彷彿とさせる。オフ・ビートを効かせたジャジーでアーシーな弾き回しを期待すると肩すかしを食らう。

日本人ジャズ・ピアニストらしいソロ・ピアノである。変にフリーに走ったり、アブストラクトに傾倒したりしないところが良い。ジャズの基本である「即興演奏」の部分をしっかり表現して、ファンクネス希薄な、端正で歯切れの良い、しっかりと弾き込んだソロ・ピアノは傾聴に値する。このソロ・ピアノ、今までに無い音の展開なので、とても聴き応えがある。

濃厚なジャズっぽさは無いが、これも「ジャズ」。桑原あいのピアノの個性が明快に理解出来る快作である。
 
 
 

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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2020年10月24日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・192

しばらく「和ジャズ」のアルバムを聴いていないのに気がついた。「和ジャズ」=日本人によるジャズ。特に、21世紀に入って、若手〜中堅中心に好盤がどしどしリリースされている。この半年ほど聴くのを忘れていたら、好盤が結構の数、ストックに上がっている。これは順番に聴き進めて行かないと。それほど、和ジャズの世界は充実している。

桑原あい, Steve Gadd & Will Lee『Live at Blue Note Tokyo』。2018年9月23日、東京ブルーノートでのライヴ録音。改めて、ちなみにパーソネルは、Ai Kuwabara (p), Will Lee (el-b, vo), Steve Gadd (ds)。米フュージョン・ジャズを代表するミュージシャンの大物二人と結成したトリオによるライヴ録音盤。

桑原あいは29歳。ジャズ界ではまだまだ若手である。女性ピアニストとして、2012年、初リーダー作『from here to there』でメジャー・デビューしている。桑原は自作曲をメインに、ネオ・ハードバップの範疇で、モーダルな演奏を中心に繰り広げる。自由度、創造性が高く、女性ピアニストらしからぬ力強さと、女性ピアニストらしい繊細さ、ロマンティシズムが同居した個性が「ウリ」。
 
 
Live-at-blue-note-tokyo-ai-kuwabara  
 
 
このライヴ盤、発売予告の情報を見た時に、正直なところ「大丈夫かいな」と心配になった。桑原は録音当時27歳。他の2人、ガッドは73歳、リーは66歳から見れば、桑原は「孫」の世代。桑原のそれまでのリーダー作でのパフォーマンスは、メインストリーム志向のジャズとはちょっと違った雰囲気、少し「キラキラ」感が入っていたり、妙な捻りが入ったりで、米フュージョン・ジャズを代表するミュージシャンの大物二人が本気になって相手をしてくれるか、気がかりだった。

聴けば、そんな気がかりは杞憂だったことが良く判る。この大物二人、ガッドとリー、桑原のオリジナル曲については、その曲想と桑原のピアノの個性をよく理解して、素晴らしいバッキングを繰り広げてくれる。そして、スタンダード曲の「Black Orfeus Medley」や「Blue Rondo A La Turk」では、桑原がその個性を最大限に発揮して弾きまくる中、しっかりとリズム&ビートの底を押さえて、桑原の良いパフォーマンスを最大限に引き出している。

桑原のピアノも、大物2人をバックに回して、臆することなく、ちょっと緊張している雰囲気はあるが大健闘。彼女の個性を最大限発揮している。特にガッドとリーをバックに従えた時、彼女のオリジナル曲での彼女のパフォーマンスが、完璧にメインストリーム・ジャズな志向になっているところが聴きもの。ギミックを入れることなく、ストレート・アヘッドに弾きまくる桑原。見直した。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて       
【更新しました】 2020.10.07 更新。
 
  ・『Middle Man』 1980
 
 ★ まだまだロックキッズ    【更新しました】 2020.10.07 更新。
  
  ・The Band の「最高傑作」盤
 
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.10.07 更新。
 
  ・僕達はタツローの源へ遡った


 
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2019年11月 2日 (土曜日)

桑原あいの真っ先に聴くべき盤

最近、ジャズにおいて、日本ジャズの女子力は留まることを知らない、と書いた。未だ、第一線で活躍している日本人女子のジャズ奏者は多い。この「ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログ」でも、様々な女性ジャズ奏者を紹介してきた。そんな女性ジャズ奏者の中で、再度、当ブログでご紹介し直したい女性ジャズ・ピアニストがいる。「桑原あい」である。

「桑原あい」は、1991年9月生まれ。今年で28歳。ジャズ界ではまだまだ若手も若手。洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業。2010年からプロとして活動。ピアニスト&作曲家として、前衛的・革新的なサウンドが身上。コンテンポラリーな純ジャズではあるが、ちょっと一筋縄ではいかない、ちょっと前衛的な香りのするフレーズが個性。この部分が気に入るか入らないかで、彼女の評価は変わるだろう。

桑原あい Trio Project『from here to there』(写真左)。2012年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、桑原あい (p), 森田悠介 (el-b), 今井義頼 (ds), 神田リョウ (ds), 鈴木 "Soopy" 智久 (ds)。ピアノの桑原あい、とエレベの森田悠介は固定、ドラムを三人使い分けているが、基本はピアノ・トリオ。自作曲もアレンジも今までに無い響きで、その内容は「ユニーク」。
 
 
From-here-to-there-ai-kuwabara  
 
 
桑原のピアノは、今までの日本人女性ピアニストの一聴すると「もしかすると男性ピアニストか?」と感じるダイナミックなタッチは無い。聴くと判るが、このピアノは確実に女性のピアノ。ガーンゴーンというダイナミックなタッチでは無い、良い意味でしっかりと芯はあるが「線の細い」、ちょっと繊細でライトなタッチと流れる様な弾き回し。女性のジャズ・ピアノの特質を全面に押しだしている。

しかし、そのテクニックは優秀で、その自作曲は聴いていて「気持ちの良い」もの。モーダルなフレーズの響きは心地良く、ところどころ前衛の響きが混ざって、そのピアノは個性的。モンクの様に幾何学的なフレーズが散りばめられているが、モンクの様な「間」は無い。ぎっきり敷き詰められた音符。多弁な右手の幾何学的なフレーズ。それが繊細でライトなタッチで奏でられる。

桑原あい、の個性は今までのジャズには無いもの。この『from here to there』はデビュー盤なので、抑制が効きすぎて、ちょっと「温和しめ」なんだが、それでも、この飛んだり跳ねたりしつつ、流麗に展開する幾何学的フレーズは、ジャズを聴く耳には「気持ちが良い」もの。ジャズ奏者のデビュー盤には、そのジャズ奏者の個性が詰まっている、というが、この盤はその例に漏れない。「桑原あい」を聴くには、真っ先に聴くべき初リーダー作だろう。
 
 
 
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2019年9月23日 (月曜日)

桑原あいの「新ディズニー曲集」

日本人女子ジャズ・ミュージシャンの中で、最近、特に元気なのが「桑原あい」。ちょっとだけ難解なニュー・ジャズな盤でデビューしてきたので、どうかな〜と思っていたんだが、歳を重ねる毎に熟れてきて、最近はとても良い雰囲気のジャズ・ピアノを聴かせてくれている。1991年生まれだから、今年で28歳。これから中堅の域に入る、期待の有望株である。

桑原あい『My First Disney Jazz』(写真左)。そんな「桑原あい」が、ディズニー・ソングのカヴァーにチャレンジした盤。ディズニー公式カヴァー盤とのこと。ディズニー・ソングといっても、1950年代、ハードバップ全盛期からの「ジャズ・スタンダード曲」としての曲では無く、最近のディズニー・ソングを中心に選曲して、それだけでも新鮮な印象がある。

『アラジン』から「ホール・ニュー・ワールド」「フレンド・ライク・ミー」。不朽の名作『美女と野獣』のメドレー。『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『塔の上のラプンツェル』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』など、バラエティに富んだアレンジがなかなか優れていて、聴き応えがある。全曲聴き通しても全く飽きが来ない。
 
 
My-first-disney-jazz  
 
 
ちなみにパーソネルは、Ai Kuwabara: Piano (#1~10) / Keisuke Torigoe: Bass (#1, 5, 8, 10) / Takumi Katsuya: Electric Bass (#2, 6, 7, 9) / Akira Yamada: Drums (#1, 2, 5, 6, 7, 8, 9) / Takezo Yamada: Trumpet (#1, 7) / Yasuki Sogabe: Tenor Saxophone, RIO: Baritone Saxophone (#1) / MARU: Vocal (#1) / Akira Wada: Vocal & Chorus (#9) / Kenta Okamoto: Percussion (#2) 。これに弦楽四重奏 (#3, 8)が加わる。

基本は、桑原あいのピアノをメインとして、ドラムは曲毎に演奏フォーマットを変え、メンバーを変え、管を入れたり、ボーカルを入れたり、さらに弦楽四重奏が加わる。ドラムは山田玲が一手に引き受け、ベースはアコベが鳥越啓介、エレベを勝矢匠が担当。このピアノ・トリオをベースとして、トランペットやサックス、ボーカルなどのゲストを迎えて、それぞれの曲に相応しい音を形成している。

演奏自体の響きも、しっかりとネオ・ハードバップな響きをキープしていて、新鮮な響きがする。新しいディズニー・ソング集という面持ちで、聴いていてとても楽しい。ネオ・ハードバップな好盤として、じっくりと腰を据えて聴くも良し、メロディーが印象的なので、ながら聴きにも最適。ちょっと小難しいニュー・ジャズな音も良いが、こういうあっけらかんとしたカヴァー盤も魅力的である。
 
 
 
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2013年4月 2日 (火曜日)

注目の大和撫子ジャズ・ピアノ

数少ないジャズ月刊誌「JAZZ JAPAN」を読んでいて、またまた注目の大和撫子ジャズ・ピアニストを思い出した。昨年の10月にメジャー・デビューしていたのは知っていたが、まだそのデビュー盤を聴いていなかった。

その注目の大和撫子ジャズ・ピアニストの名は「桑原あい」。1991年生まれとあるので、今年で弱冠22歳。最早20歳台って、自分の歳から考えると、しっかりと娘の年頃なので、とにかく可愛らしい、のひとこと。エレクトーンからピアノへの転身組。

タワレコ・オンラインのインタービュー記事を読むと、ジャズ・ピアノとの出会いと傾倒を以下の様に語っている。「小学校5年の時、エレクトーンで演奏するために、先生に『マッド・ハッター』を聴かせてもらって“ガーン!” ってなったチック・コリアさん、国際フォーラムで観て感動した上原ひろみさん、ミシェル・ペトルチアーニさんも、みんなピアニストですしね」。

さて、彼女のデビュー盤をやっと聴くことが出来た。ai kuwabara trio project『from here to there』(写真左)である。もともとは、2012年5月に販売開始した自主制作盤。その自主制作盤の内容が注目されて、eweからメジャーデビューと相成った。ジャケット・デザインを見れば、このCDがジャズのアルバムだとは思わないだろうな(笑)。

さて、その内容はと言えば、まず「上手い」。インタビューでも練習が好きだ、と豪語しているだけあって上手い。タッチやフレーズは決して破綻することは無く、高速パッセージも難なくこなす。強いアタックでは、ちょっとひ弱な部分が出るのは女子だから仕方が無い。

そして、彼女は好きなピアニストとして、チック・コリア、上原ひろみ、ミシェル・ペトルチアーニを挙げているが、彼女のピアノは、このお気に入りのジャズ・ピアニストの個性をコピって、演奏の中に散りばめた、つまりは、お気に入りのピアニストの「良いとこ取り」というか「個性の寄せ集め」の様な表現になっている。
 

Ai_kuwabara_from_here_there

 
そして、ところどころ、森田真奈美の様な「捻れフレーズ」が出てくるところもあって、彼女のお気に入りピアニストの「個性のショーケース」の様な雰囲気になっている。

う〜ん、気持ちは判らんでは無いがなあ。初リーダー作である。まずは自分の弾きたい様に弾く。確かにこれが大切なんだが、これだけ、先人の個性の良いとこ取りをすると、これは彼女のピアノの個性、というよりは、先人の有名ピアニストの個性を弾き分ける器用さ、ということになってしまう。ここはグッと一念発起、物真似では無い、自分ならではのピアノの個性を醸成して欲しい。

自作曲の曲作りもまずまず、テクニックは先にも言及した様に実に優秀。それだけに「器用貧乏」で終わって欲しくない。純ジャズ系のジャズ・ピアノではあるんだが、マイナー調に傾かず、どちらかと言えば、メジャー調に傾くフレーズは彼女独特のピアノの個性と言えるかもしれない。きっと彼女ならではの個性が埋もれているはず。そんな期待感を持たせるデビュー盤ではある。

JAZZ JAPANの記事のタイトルが「桑原あい 21歳にしてジャズの未来を切り拓くピアノの妖精」。可愛らしい風貌だからと、アイドル扱いして欲しくは無いなあ。ジャズの世界である。演奏スタイルの個性で勝負するか、アレンジ&コンポーズで勝負するか、純粋アートな音楽ジャンルとして、実力と個性で売り出して欲しい。可愛らしさ優先で売り出すと後で辛くなる。

でも、風貌が可愛らしいからって、このデビュー盤の内容が「可愛らしい」かと言えばそうではない。タッチも強く鋭い、意外と重厚な内容のメインストリーム・ジャズである。これは痛快。だからこそ、自分ならではのピアノの個性を醸成して欲しいのだ。この4月10日にはセカンド・リーダー作『THE SIXTH SENSE』がリリースされると聞く。その内容が今から楽しみだ。 

 
 

★大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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