2025年9月 9日 (火曜日)

サム・リヴァースのお蔵入り盤

1966年、ブルーノートはリバティ・レコードに買収されたが、大手レコード会社のリバティ・レコードの意向で、大衆受けする、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズ盤をリリースする一方、ブルーノート設立当初からの「これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する」姿勢は変えなかった。

Sam Rivers『Dimensions & Extensions』(写真左)。1967年3月17日の録音。ブルーノートの4261番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Donald Byrd (tp), Julian Priester (tb), James Spaulding (as, fl), Cecil McBee (b), Steve Ellington (ds)。サム・リバースのサックス&フルート、ドナルド・バードのトランペット、ジュリアン・プリースターのトロンボーン、ジェームス・スポルディングのアルト・サックス&フルートの4管フロントのピアノレスのセクステット編成。

ブルーノートお得意の内容は優れているのに、なぜか録音当時は「お蔵入り」盤である。録音は1967年だが、リリースは1986年。オリジナルのカタログ番号と予定されていたカバーアートワークで発売されている。もともと1967年に発売が予定されていたが、1975年に発売が延期。アンドリュー・ヒルの指揮下で録音されたトラックと組み合わせた2枚組LPセット『インボリューション』(1976年、BN-LA 453-H2)に収録されているが、単独でのリリースは1986年。
 

Sam-riversdimensions-extensions

 
内容的には、サム・リヴァースの得意とする「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズがメイン。それも、理路整然とした、カッチリまとまった「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズで、アブストラクトなところや、現代音楽的な無調な展開は全く無い。勿論、フレーズ的にもテクニック的にも「破綻」が無い。「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの成熟形を聴く思いがする。それほどまでに、理路整然とした、カッチリまとまった内容に惚れ惚れする。

パーソネルを見渡すと、皆、「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズを得意とするメンバーだが、ハードバップ初期から第一線で活躍したベテランのドナルド・バードがトランペットで頑張っているのが、意外と言えば意外。それでも、聴いていると、キッチリとリヴァースの考える「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズに適応しているのだから立派である。

「コールマン流」から明らかに外れた音色と気質が、サム・リヴァースの「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの個性。この録音がなぜ約10年もの間、お蔵入りになったのか、理解に苦しむのだが、大手リバティ・レコード傘下のブルーノートでは、売上に貢献しそうにない「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズは敬遠されたのかも知れない。しかし、内容は一級品。1960年代の「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの代表盤として、いつまでも聴き継がれていくべき逸品である。
 
 

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2025年8月11日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・293

ブルーノート・レーベルは懐の深い、硬派なレーベルである。必要最低限しか商業主義に走らない、これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する。だからこそ、ブルーノートは今でも尊敬され、一目置かれるレーベルとして君臨しているのだ。

Rivers『A New Conception』(写真左)。1966年10月11日の録音。ブルーノートの4249番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Hal Galper (p), Herbie Lewis (b), Steve Ellington (ds)。サム・リヴァースの3枚目のリーダー作。サム・リヴァースによる7曲のジャズ・スタンダード曲の解釈が収録されている異色盤。

新主流派、そして、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースが、スタンダード曲に挑んだ、ブルーノートの異色盤。しかし、ただの「スタンダード曲」への挑戦では無い。当時、サム・リヴァースが持っている、サックス&フルート吹奏のテクニックの全てを総動員して、スタンダード曲を解釈している。つまり「リヴァースが考えるスタンダード演奏」な内容なのだ。

冒頭の「When I Fall in Love」から、ラストの「"Secret Love」までを聴けば、それが良く判る。初めのテーマを吹奏するところは、ハードバップ、若しくは、イージーリスニング・ジャズ志向の、流麗でテーマに忠実な吹奏。これが、確かなテクニックで吹かれるので、テーマの魅力がダイレクトに伝わる。リヴァースの吹奏の歌心がビンビンに伝わる。
 

Riversa-new-conception

 
そして、アドリブ部に入ると、モードに展開する。リヴァース十八番の、成熟したモーダルな展開。自由度は高いが、吹き回しが流麗なので、とても耳に優しい。そして、時々、フリーにアブストラクトに展開する。バラード曲では、スピリチュアルな響きがとても魅力的、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースの面目躍如。

ハードバップで入って、モードに展開し、時々、フリーにアブストラクトに効果的に展開し、スローな曲調では、スピリチュアルな雰囲気全開。そして、どのスタイルで吹いても、底に流れる「歌心」。これが「リヴァースが考えるスタンダード演奏」である。

今の耳で聴いても、新しい響き。今の耳で聴いても、全く違和感は無い。今の、現代のジャズのスタンダード解釈は、この1966年のサム・リヴァースのリヴァースが考えるスタンダード演奏」と変わりが無い。リヴァースは自分の演奏志向と聴き手とのバランスを、しっかりと考えることの出来るジャズマンだったのだろう。

このリーダー作では、聴き手の立場に立って、スタンダード曲を解釈するリヴァースが透けて見える。そして、このリヴァースの企画にゴーサインを出した、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼。ブルーノート4249番、ブルーノート4200番台の名盤の1枚である。
 
 

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2025年4月 1日 (火曜日)

トニーの考えるモード&フリー

このアルバムは、若い頃に聴いた時には、フリー・ジャズだと感じた。年を経て、10年くらい前に聴き直した時には、これは、フリー・ジャズだけではない、と感じた。加えて、モード・ジャズがしっかりとある、と感じた。

この様に「ジャズを聴く耳」も、時代と共に、年齢と共に成熟していく。いわゆる「耳が良くなって」くることを強く感じる今日この頃である。

Tony Williams『Spring』(写真左)。1965年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony (Anthony) Williams (ds), Wayne Shorter (ts, 1, 3, 5), Sam Rivers (ts, 1, 3-5), Herbie Hancock (p, 3-5), Gary Peacock (b, 1 & 3-5)。テナー・サックス2本がフロントの、ハンコック=ピーコック=トニーのリズム隊のクインテット編成。

このトニー・ウィリアムスの2枚目のリーダー作には、当時のマイルス・クインテットの3人、トニー、ハンコック、ショーターがパーソネルに名を連ねる。マイルスは別格なので置いておいて、ベースのロンがいない。代わりにピーコックが入っている。

録音時期の1965年といえば、マイルス・バンドの下に、待望のウェイン・ショーターが加入、遂に、1960年代のマイルス黄金のクインテットが成立した年で、マイルスのモーダルな名盤『E.S.P.』の録音が1965年の1月。そして、このトニーの『Spring』の録音が、1965年の8月、『E.S.P.』の7ヶ月後の録音である。

マイルスのモーダルな1960年代の黄金のクインテットの音楽監督は「ウェイン・ショーター」。しかし、このトニーがリーダーの『Spring』のモーダルな音は、ショーターが参加しているにも関わらず、「ショーターのモード」では無い。
 

Tony-williamsspring

 
「ショーターのモード」は、フレーズが捻れに捻れ、音が流麗に飛びまくる。モードこれに極まれり、といった雰囲気の、完璧にモード奏法を組み入れたものだが、このトニーのアルバムのモードはそれでは無い。

テナーのフレーズが流麗でストレートでシンプル。捻れは無い。シャープで切れ込む様なトニーのドラミングがしっかりと印象に残る、これは「トニーの考えるモード」だろう。ピーコックのベースのモーダルなフレーズも、流麗でストレートでソリッド。「トニーの考えるモード」に合致するベース・ワーク。

そして、興味深いのはショーターのテナー。「トニーの考えるモード」に則ったテナーを、リヴァースと一緒に吹きまくる。リヴァースは明らかに「トニーの考えるモード」にぴったりのモードで、フレーズが流麗でストレートでシンプル。「トニーの考えるモード」そのものなリヴァースのテナー。

そして、このアルバムには「トニーの考えるモード」に加えて、「トニーの考えるフリー」が展開される。「トニーの考えるフリー」は、「トニーの考えるモード」の延長線上にあるイメージ。「トニーの考えるモード」の自由度をどんどん高めていって、ついにはモードの決め事が無くなる直前のイメージが「トニーの考えるフリー」だと感じる。

あくまで、伝統のモダン・ジャズのイメージを残しつつ、「トニーの考えるモード」の自由度をどんどん高めていって、ついにはモードの決め事が無くなる直前のイメージで、楽器相互のインタープレイを展開する。それまでにない、新しいイメージのフリー・ジャズ。それが「トニーの考えるフリー」であり、それがこの盤に詰まっている。

当時のジャズとしては、相当に尖った、相当に実験的な内容で、商用ジャズとは全く無縁。しかし、ブルーノート・レーベルは、何のためらいも無く、この「トニーの考えるモード」&「トニーの考えるフリー」がてんこ盛りのアルバムを制作し、リリースしている。そこがブルーノートたる所以であり、そこがブルーノートに一目置く所以なのだ。
 
 

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2023年7月25日 (火曜日)

新主流派の名演・名盤の1枚

1950年代から1960年代のブルーノート・レーベルはかなり「懐が深い」。1500番台からそんな傾向は出ていた訳だが、とにかく、その時その時に出現した、ジャズの「新しいトレンド&奏法」に長けたジャズマンをチョイスして、しっかりリーダー作を録音させている。4100番台を見渡すと、当時、ジャズの最先端を走るフリー・ジャズやモード・ジャズにもしっかりと対応しているから凄い。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月11日の録音。ブルノートの4184番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。新主流派の中でも先進的で尖ったテナーのサム・リヴァースがリーダー。ピアノに、これまた新主流派で尖ったジャッキー・バイヤード。ロンとトニーは新主流派のリーダー格。

サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースは、1923年生まれなので、40歳を過ぎての遅い初リーダー作になる。僕がリヴァースを初めて知ったのは、マイルスの『イルス・イン・トーキョー』でのサックス・プレイ。モーダルではあるが、かなり前衛的で、マイルスの下で限りなくフリーに走ったり、ちょっとだけアヴァンギャルドに傾いたり、当時として「かなりヤバい」サックス奏者だった。
 

Sam-riversfuchsia-swing-song

 
そんなリヴァースの初リーダー作。収録曲は全てリヴァースの自作曲。メンバーは皆、新主流派。当然、出てくる音はモードなんだが、かなりヤバいモードである。とにかく、フリーか、と思う位の自由度の高いモーダルな展開、最低限、伝統のジャズの範疇には留まって、最低限の決め毎に従って演奏してはいるが、とにかく尖っている。それでも、今の耳には五月蠅くない、しっかりとしたモード・ジャズをやっているのだから、その力量たるや、目を見張るものがある。

バックのリズム・セクション、バイヤードのピアノ、ロンのベース、トニーのドラム、皆、喜々として、リヴァースの相当に限りなくフリーに近いモーダルな吹奏に追従している。バイヤードがカチカチ硬質なモーダル・フレーズを叩き出し、ロンの自由奔放なベースラインが蠢き、トニーが安全装置を外して暴走叩きまくり。それでも、しっかりと伝統のジャズの範疇に留まった演奏でまとめているのだから、このリズム隊の力量も凄いものがある。

何だか、とんでもない「モーダルな」内容の演奏の数々だが、フリーに走っても、アブストラクトに傾いても、ちゃんと伝統のジャズの範疇に着地するのだから、このアルバムは素晴らしい。当時の新主流派の演奏の中でも、とびきり硬派でとびきりカッ飛んだ内容のアルバムで、21世紀の今から振り返ってみると、この盤、新主流派の名盤の1枚として評価してよいかと思う。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2019年11月 9日 (土曜日)

リヴァースのモードへの対応力 『Contours』

このアルバムを聴けば、当時、サム・リヴァース(Sam Rivers)のモード・ジャズにおける先進性が良く判る。モード奏法はモードに基づく旋律による進行に変更したもので、演奏の自由度が飛躍的に高い。リヴァースのモーダルなテナーは、クールでメロディアスでバリエーション豊かなもの。特に、この「クールでメロディアス」な部分。リヴァースはこの部分に秀でていた。

アドリブ部に入った途端、このモードに基づく旋律による進行に乗って、アドリブを展開することになる。しかも自由度が飛躍的に高い。演奏する側は自らの閃きを基にアドリブを展開する。閃いたフレーズを一気に吹くので、大体が気合いの入った音になる。逆にそんなにバリエーション豊かに閃きがある訳ではないので、アドリブの手癖・展開がマンネリ化、パターン化する恐れがある。
 
リヴァースは閃いたフレーズをクールに吹き、アドリブの手癖・展開のバリエーションが豊かなのだ。そんなリヴァースが良く判るアルバムが、リーダー作第2弾の Sam Rivers『Contours』(写真左)。1965年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Freddie Hubbard (tp), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。
 
  
Contours  
 
 
バックのリズム・セクションについては、当時、若手の新主流派の精鋭揃い。バックの不手際に引き摺られて、モードな演奏の精度や内容を損なわれることは無い。逆にフロントのソロイストの「モードに対する対応力」をしっかりと見極めることが出来る。フロントはリーダーのリヴァースのテナーと、ハバードのトランペット。既にハバードはモードへの対応力に定評がある。
 
しかし、リヴァースのテナーが明らかに素晴らしい。クールでメロディアスでバリエーション豊かな「モーダルなソロ」が展開される。逆にハバードは、吹きすぎる、パターン化した、ちょっと平凡な「モーダルなソロ」に終始している。特にリヴァースのソロがクール。そして、モーダルなアドリブのバリエーションが豊か。新主流派の「新しい風」を感じる。
 
サム・リヴァースのモードに対する対応力の高さを再認識できる優れたリーダー作である。ハバードの存在のお陰であるが、逆にリヴァースのワンホーンでも良かったのでは、と思う。それだけ、リヴァースのモーダルな演奏は、それまでのモードを得意とするジャズマンとは一線を画するものだったと思う。しかし、それが即、人気の高さに繋がらないのがジャズの不思議。
 
 
 
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2019年11月 1日 (金曜日)

サム・リヴァースの初リーダー作

昨日、デイビット・サンチェスのサックスを聴いていて、突如として「サム・リヴァース(Sam Rivers)」を聴きたくなった。サム・リヴァースのサックスを初めて聴いたのは、マイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』。1964年のライブ録音であるが、黄金のクインテットにまだウェイン・ショーターが参加していない時期。そこにサックスとして参加したのが「サム・リヴァース」。

このマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』でのリヴァースのサックスを聴くと、ショーターのサックスよりも、凛としてシュッとしたサックス。ショーターのサックスはちょっとウネウネしているところがある。意外とリヴァースの方がマイルス・クインテットに合ったりして、と思っていたら、どうもマイルスも留まるようオファーしたらしい。それをリヴァースは断った。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。先ほどのマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』の5ヶ月後の録音。リズム・セクションのうち、ベースとドラムは、マイルス・クインテットと同じメンバー。ピアノだけはハービー・ハンコックでは無い、当時、新進気鋭のジャキ・バイヤード。
 
 
Fuchsia-swing-song-sam-rivers
 
 
このブルーノート・レーベルの4184番は、サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースのテナーが実に魅力的。端正でスッと伸びのある、切れ味の良いテナー。モーダルなフレーズで、限りなく自由なフレーズを吹き上げていくが、決して絶対にフリーに傾かない。どこか節度のある、どこか理知的な響きの宿ったフレーズ。モードのフレーズなので難解そうだが、意外とシンプル。適度な隙間があって聴き易い。

バックのリズム・セクションでは、ピアノのバイヤードが個性的。ハンコックのモーダルなピアノより、フレーズの輪郭がクッキリしていて、適度にエッジが立っている。速いフレーズではスピード感が豊かで、モーダルなフレーズは幾何学的な展開がユニーク。もちろん、ベースのロン、ドラムのトニーは当然、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれる。

ブルーノートの「新主流派のモーダルなテナー」のアルバムの中でも屈指の出来だと思います。変に急いでフリーに走らず、限りなく自由度の高いモーダルな吹きっぷりに、リヴァースの「受け狙い」では無い、我が道を往く「矜持」を感じます。本能、直感で勝負しない、理論派テナーマンの面目躍如です。僕はそんなリヴァースのテナーが「隅に置けない」。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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