2026年3月25日 (水曜日)

この盤には”一本取られた感”満載

一言で言うと、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズ。CTI盤だからと、甘々のイージーリスニング志向のフュージョン。ジャズでしょ、と思うなかれ。スタンリー・タレンタインも甘々なフュージョンに身をやつしたか、と思うなかれ。聴いてみると判るが、上質のコンテンポラリー・ジャズが展開されているから爽快である。

Stanley Turrentine『Don't Mess with Mister T』(写真左)。1973年3月, 7月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Bob James (ac-p, el-p, arr, cond), Harold Mabern (el-p), Richard Tee (org), Idris Muhammad, Billy Cobham (ds), Rubens Bassini (perc), Ron Carter (b), Eric Gale (g)。ここに、Randy Brecker (tp), John Frosk (flh), Alan Raph (b-tb), Pepper Adams (bs), Jerry Dodgion (as), Joe Farrell (ts)のブラスセクションとストリングスが入る。

まず、リーダーのスタンリー・タレンタインのテナー・サックスであるが、これが硬派でダンディズム溢れる、ファンキーでソウルフルな正統派テナーで、ばりばりに吹きまくっているから堪らない。ソフト&メロウなんて、どこにも無い。力感溢れるファンキーでソウルフルなテナーが各曲に響き渡り、その吹奏こそが、この盤を上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズに仕立て上げている、大きな要素である。
 

Stanley-turrentinedont-mess-with-mister-  

 
ボブ・ジェームスのアレンジとアコースティック・ピアノが実に「効いている」。ジャジーにファンキーにコンテンポラリーにアレンジされたエレ・ジャズで、ロンのベースも、ムハンマド&コブハムのドラムもジャジーに効いていて、この盤の演奏の数々は、決して、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズなんかでは無い。しっかり、ジャズしている。

ティーのオルガンも良い感じ。エリック・ゲイルのギターも良い感じ。ファンキー&ブルージー、ソウルフルな雰囲気をこれでもかと増幅する。後の伝説のフュージョン・グループ「スタッフ」のメンバーの二人。R&Bなグルーヴ感が半端ない。そうそう、ボブ・ジェームスとハロルド・メイバーンのエレクトリック・ピアノも良い味を出している。

聴く前は、ブラス・セクションとストリングスの存在がちょっと不安だが、ソウルフルでブルージー。これはアレンジの勝利。この盤のブラス・セクションとストリングスのアレンジはとても良い。ボブ・ジェームスの面目躍如。

ずっと昔にこの盤は聴いたことがあったが、その演奏内容については「忘却の彼方」。今回、改めて聴き直して、ちょっとビックリ。なんと、とってもジャジーでファンキーでソウルフルな、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズが展開されている。1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2025年11月24日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・310

リーダーのパーランとタレンタイン兄弟は、米国ペンシルベニア州ピッツバーグ出身の同郷で、ピッツバーグにいた時から共演を重ねた気心知れた仲。このパーラン盤でも、リラックスして息の合った内容の濃い演奏を繰り広げている。そこに、タッカーのベースとヘアウッドのドラムが、演奏のリズム&ビートしっかり支える。非常にバランスの取れた、柔軟性の高いクインテットである。

Horace Parlan Quintet『Speakin' My Piece』(写真左)。1960年7月14日の録音。ブルーノートの4043番。 ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Tommy Turrentine (tp), Stanley Turrentine (ts), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。フロント2管に「トミー&スタンリー」のタレンタイン兄弟を擁し、リズム・セクションに、パーラン・トリオを配したクインテット編成。

1960年、ハードバップが成熟した後期の録音。確かに、いかにもハードバップらしい、ハードバップの良いところを全部集めた、とにかく、音も響きもフレーズもなにもかもが、ハードバップらしい、ピアノのホレス・パーランがリーダーのクインテット盤。ホレス・パーランの規律あるピアノが、いかに「伴奏上手」に貢献しているかが良く判る内容になっている。
 

Horace-parlan-quintetspeakin-my-piece

 
まず、パーランの規律あるピアノのバッキングが耳に残る。パーランのピアノの個性「ロック・コード弾きでグイグイ押しまくる。短い連続フレーズを間を取りながら繋げる独特のアドリブ・フレーズ。右手のリズム・タッチのドライヴ感」が、フロント管を擁する編成でのバッキングに、好要素として反応するからだろう。パーランのピアノの個性は、フロント管のバッキングに最適なのだ。

そんなパーラン率いるピアノ・トリオのバッキングのもと、トミー・タレンタインのトランペット、スタンリー・タレンタインのテナーが躍動感溢れる、ファンキーなフレーズを吹きまくる吹きまくる。ユニゾン&ハーモニーは魅惑的な響きを撒き散らし、それぞれのソロは切れ味良く、溌剌として、ファンクネスを撒き散らす。どちらも、ソロに入るときの「ぶわーっ」という音圧が、いかにもハードバップという感じで「アガる」。

パーランの規律あるピアノの見事なバッキングと、異常なほど振り切れてるタレンタイン兄弟のフロント・パフォーマンス、そして、それを支えるタッカーとヘアウッドのリズム隊。聴きどころ満載のハードバップ盤。この盤にはジャジーな「黒さと煙」が漂って周りの風景が霞んでいるような、そんなファンクネス溢れるハードバップが詰まっている。ハードバップな名盤の1枚でしょう。
 
 

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2025年10月31日 (金曜日)

BNのイージーリスニング盤です『Always Something There』

硬派な老舗ジャズ・レーベルのブルーノート。4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。とにかく「聴き心地」優先、ジャズのアーティスティックな面を封印し、ポップ度を高める為に、ジャジーなリズム&ビートを活用し、ストリングスをオーバーダビングする。ほとんど、イージーリスニングなアルバムも制作していた。

Stanley Turrentine『Always Something There』(写真左)。1968年10月の録音。ブルーノートの4298番。ちなみにパーソネルは以下の通り。フレンチ・ホルン入り小ビッグバンド編成。ここに、ストリングスをオーバーダビングしている。ただし、波ー祖ネルを見渡すと、ジェローム・リチャードソン、サド&ハンク・ジョーンズ、ケニー・バレル、ハービー・ハンコック、メル・ルイス、ミッキー・ローカーなど、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加している。

Stanley Turrentine (ts), Burt Collins (flh), Jimmy Cleveland (tb), Jerry Dodgion (as, fl, cl), Jerome Richardson (ts, fl cl), Thad Jones (tp, arr), Kenny Burrell (g), Barry Galbraith (g, tracks 2, 10), Hank Jones (p, tracks 2, 3, 5-8, 10), Herbie Hancock (p, tracks 1, 4, 9), Bob Cranshaw (b), Mel Lewis (ds, tracks 1, 2, 4, 9 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 3, 5-8), Dick Berg, Jim Buffington, Brooks Tillotson (French horn)。
 

Stanley-turrentinealways-something-there

 
しかし、冒頭の「(There's) Always Something There to Remind Me」から、あ〜遂に、ブルーノート・レーベルも、ここまで俗っぽくなってしまったか、と苦笑いする。軽快なブラスのユニゾン&ハーモニー、小洒落たポップなビッグバンド・サウンド、途中、ストリングスがオーバーダビングされて、もう、これは、ジャズなリズム&ビートをベースにした「イージーリスニング音楽」。

演奏自体は、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加しているんで、カッチリとまとまっているし、楽器の響きも良い。でも、いかんせんアレンジがポップで俗っぽい。アレンジは誰か、と確認したら、サド・ジョーンズ。意外。サドもこんな俗っぽいポップでライトなビッグバンド・アレンジをするんだ、と変に感心する。

レノン&マッカートニーの「Hey Jude」「The Fool on the Hill」、ドアーズの「Light My Fire」など、ロックのヒット曲のカヴァーが入っていたり、フィフス・ディメンションの「Stoned Soul Picnic」が入っていたり、とにかく、一般大衆の訴求する、大衆受け狙いのイージーリスニング盤である。ただし、オーバーダビングされたストリングス以外のジャズマンの演奏はしっかりしているので、聴き心地は良い。ながら聴きのジャズ盤としては良い内容かもしれない。
 
 

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2025年10月14日 (火曜日)

ながら聴き用のブルーノート盤『The Look of Love』

大手リバティーの傘下に入って以降、当時のブルーノートとして、純ジャズ度、モダン・ジャズ度は落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする様になる。これは、4100番台までは、ほとんど無かったこと。しかし、4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。

Stanley Turrentine『The Look of Love』(写真左)。1968年4月15日 (#1, 4, 10) と5月2日 (#3, 5, 7-8) 5月13日 (#2, 6, 9) の録音。5月27日にストリングスのオーバーダビング。ブルーノートの4286番。漆黒ファンキーなテナー・レジェンド、スタンリー・タレンタインのリーダー作。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Stanley Turrentine (ts), Jimmy Nottingham, Snooky Young (flh), Benny Powell (b-tb), Jim Buffington (french horn), Hank Jones (p, tracks 3–5, 7, 8 & 10), Duke Pearson (p, track 1; arr, track 1-3 & 5–9), Roland Hanna (p, tracks 2, 6 & 9), Kenny Burrell (g), George Duvivier (b), Grady Tate (ds, tracks 1, 3–5, 7, 8 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 2, 6 & 9),Thad Jones (arr, tracks 4 & 10)。

3セッションからの収録で、ピアノやドラムは2人で交代して担当しているが、基本の編成は、テナー・サックス :1, フリューゲルホーン :2, ベース・トロンボーン :1, フレンチホルン :1, ギター :1 以上がフロントで、5管のフロント管にギター。そして、リズム隊に、 ピアノ :1, ベース :1, ドラム :1 で、総勢9名=ノネット編成。アレンジは、ピアソンとサドが分担して担当しているが、聴いていて、その差は微少。そして、ノネット編成の演奏のバックに、後日、ストリングスをオーバーダビングしている。
 

Stanley-turrentinethe-look-of-love

 
アルバム全体の音の雰囲気は、イージーリスニング志向のポップなジャズ。いわゆる「イージーリスニング・ジャズ」である。ジャズのリズム&ビートを、ポップで平易な4ビート&8ビートをベースにして、ジャズ臭さを中和して、ポップなイージーリスニング志向のリズム&ビートにしつつ、フロント楽器は、それぞれ、ハードバップ時代の判り易い旋律、判り易いアドリブを展開する。聴き手の「ながら聴き」のニーズにでも合わせたのか、ブルーノートでは、それまでに無かった、完璧なまでの「イージーリスニング・ジャズ」である。

フリューゲルホーン、ベース・トロンボーン、フレンチホルンは伴奏に徹していて、基本はタレンタインのテナーが映える様に仕掛けられたホーン楽器である。そして、この伴奏に徹した管楽器のユニゾン&ハーモニーをベースに、タレンタインは気持ち良く、ポップでファンキーなテナーで、ポップなバカラック曲「The Look Of Love」や「This Guy's In Love With You」、レノン=マッカートニーの「Here, There and Everywhere」、チャップリンの「Smile」などを、明るく朗々とかつ印象的に吹き上げていく。

このアルバムの「イージーリスニング・ジャズ」的な音世界は、1970年代のCTIレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの先駆け的な音と捉えることも出来るが、CTレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの方が、面白い事にリズム&ビートがジャジーで、明らかにジャズに軸足を残している。

この筋金入り漆黒ファンキー&アーバンなタレンタインのテナーと、漆黒ファンキー&アーバンなバレルのギターがフロントにいなかったら、この盤、もしかしたら、完璧に「イージーリスニング・ミュージック」に陥っていたかも。タレンタインのテナーとバレルのギターが、辛うじてこの盤を「ジャズ」に留めている。それほど、この盤のアレンジは、売れ筋の「ポップス」的アレンジに偏っている。やはり、ブルーノートに「イージーリスニング・ジャズ」は似合わない。
 
 

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2025年9月19日 (金曜日)

タレンタインの ”漆黒ソウル”『Easy Walker』

タレンタインの漆黒ファンキー・テナーが、ジャズロック〜ソウル・ジャズの中で疾走する。バラードでは漆黒ファンキー・テナーが情感溢れ、歌心満点のアーバン・ブロウをキメる。オールド・スタイルではない、かといって、コルトレーンの様なニュー・スタイルでもない。その中間をいく、タレンタインの漆黒ファンキー・テナーが良い形で出た、良い演奏がズラリ6曲。

Stanley Turrentine『Easy Walker』(写真左)。1966年7月8日の録音。ブルーノートの4268番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), McCoy Tyner (p, el-p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。タレンタイン自ら、ブルーノート時代の作品の中でベストの1枚、とのコメント残しているジャズロック〜ソウル・ジャズの傑作。タレンタインのテナー1管のいわゆる「ワンホーン・カルテット」。

CDリイシュー時、ボートラが5曲追加されている。ボートラの5曲は、初出の6曲と、録音時期も違うし、パーソネルも異なる。ということで、今回のブログ記事は、LP時代の初出の6曲をメインに進めて行きたい。

オリジナル盤として聴く必要がある場合、CDリイシュー時のボートラというのは、はっきり言って邪魔になる。この盤については、まだ冒頭の1曲目から6曲目までがオリジナル盤と同じ曲順。7曲目以降が、録音時期も異なる、パーソネルも異なるボートラで、ここに持って来た意図が判らない。
 

Stanley-turrentineeasy-walker

 
ほど良くリラックスした吹奏のタレンタインは無敵である。冒頭「Meat Wave」では、ジャズロックのビートに乗って、警戒に疾走する。2曲目の「They All Say I'm the Biggest Fool」は、バディ・ジョンソンの1946年ヒットのR&Bナンバーのカヴァー。こういったブルージーでアーバンなバラードを吹かせたら、タレンタインは天下一品。3曲目の「Yours Is My Heart Alone」は、軽快でスインギーな演奏で、軽やかなタレンタインのテナーも魅力。

4曲目「Easy Walker」は、ピアニスト、ビリー・テイラーのファンキー・テイスト溢れる佳曲で、ミッド・テンポの漆黒ファンキー・テナーに惚れ惚れする。5曲目の「What the World Needs Now」は、バカラック・ナンバーで、唄う様にテナーを吹き上げる様はポップ&メロウ。そして、ラストの「Alone Together」は、ミュージカル曲のカヴァー。軽快でミッド・テンポの中、ハードバップなアドリブ展開で、判り易く軽やかに、アドリブ・フレーズを吹きまくるタレンタインが印象的。

バックでは、全編に渡って、軽快なファンキー・ジャズ・ピアノを聴かせるマッコイ・タイナーが印象に残る。左手のビートが効いていて、バンド演奏全体のリズム&ビートがグッと引き締まる。このアルバム全体の適度なテンションと、逆に適度な「間」を与えているのは、このタイナーのピアノに他ならない。

ジャズロック〜ソウル・ジャズのタレンタイン。特に、ソウル・ジャズ志向の演奏については、この盤でほぼ完成の域に達しているのでは無いか。アレンジも決まっているし、演奏全体のレベルも高い。ジャズロック〜ソウル・ジャズ志向なので「俗っぽい」といって敬遠するのは勿体ない。タレンタインのソウル・ジャズの傑作である。
 
 

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2025年9月 2日 (火曜日)

タレンタインのショーケース『The Spoiler』

1964年2月、ビートルズが米国の地に上陸。ビートルズは米国ポップスの頂点に立ち、ビートルズに刺激されたロックが台頭。米国ポップス音楽の代表の1つだったジャズ人気は徐々に斜陽となる。その始まりが、1965年から66年辺り。フリーやスピリチュアルを追求するハードなジャズと、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズと、二極分化が進んだ時代であった。

Stanley Turrentine『The Spoiler』(写真左)。1966年9月22日の録音。ブルーノートの4256番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Blue Mitchell (tp), Julian Priester (tb), James Spaulding (as, fl), Pepper Adams (bs), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Joseph Rivera (perc), )Duke Pearson (arr)。

漆黒ブルージーなテナー奏者、スタンリー・タレンタインがリーダーの、コンガ入りノネット編成(9人編成)。大所帯である。メンバーを見渡すと、当時のブルーノート・オールスターズと呼んで良いような、ブルーノートで活躍していたジャズマンがずらり。一流のジャズマン達の演奏なので、9人編成とは言え、しっかりと締まった演奏をしている。

内容的には、当時の流行のジャズの演奏トレンドを詰め込んだ「ごった煮」な内容。大人のロックあり、大人のファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズあり、当時の米国ポップスのジャズ・カヴァー(4曲目「Sunny」)、いわゆる、米国ポップスの人気曲のカヴァーありで、演奏自体は前述の様にしっかりしているのだが、曲の収録イメージは「ごった煮」。
 

Stanley-turrentinethe-spoiler

 
しかし、そんな「ごった煮」のアルバムを、タレンタインの個性的で漆黒ブルージーなテナーが、曲毎に一本筋を通している。このアルバム、当時のタレンタインのショーケースの様な感じに仕立て上げられていて、曲毎にジャズの演奏トレンドがコロコロ変わるのだが、違和感が伴わないのは、タレンタインのブレない漆黒ブルージーなテナーのお陰といって良いだろう。

ブルーノート・オールスターズと呼んで良いような豪華なバックではあるが、このアルバムでは、あくまで、タレンタインのテナーを引き立てる役に回っている。

が、このオールスターズのバッキングが見事。ピアソンのアレンジが優れているのだろう、様々なジャズの演奏トレンドに合わせたアレンジに乗って、オースルターズは伸び伸び演奏し、それぞれの個性を出しつつ、タレンタインのテナーを引き立てる。

全体にポップなジャズの味付けがされているので、俗っぽいと敬遠する向きもあるが、僕はそんなことは無いと思う。聴いて楽しいタレンタインのショーケース。ブルーノートの企画する「ショーケース」盤はいつも「一味違う」。
 
 

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2025年7月28日 (月曜日)

ソウル・ジャズなタレンタイン『Rough n' Tumble』

漆黒こってこてファンキーなテナー・マン、スタンリー・タレンタインのテナー・サックス、ペッパー・アダムスのバリトン・サックス、ジェームス・スポルディングのアルト・サックス、そして、ブルー・ミッチェルのトランペットの4管に加えて、グラント・グリーンのギターがフロント。

バックを司るリズム・セクションは、若き精鋭マッコイ・タイナーのピアノ、ボブ・クランショウのベース、ミッキー・ローカーのドラム。当時のブルーノート・オールスターなオクテット布陣。時は「1966年」。どんな音が出てくるのか、興味津々である。

Stanley Turrentine『Rough n' Tumble』(写真左)。1966年7月1日の録音。ブルーノートの4240番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Blue Mitchell (tp), James Spaulding (as), Pepper Adams (bs), McCoy Tyner (p), Grant Green (g), Bob Cranshaw (ac-b, el-b), Mickey Roker (ds), Duke Pearson (arr)。

もともとは、こってこてファンキーなテナーを吹きまくっていたタレンタインである。リズム&ビートを「R&B志向な縦ノリのスインギーなビート」に置き換えて、フレーズのファンクネス度をグッと上げて、演奏全体の雰囲気を「ソウル・ジャズ」に仕立て上げている。

前作の、4201番:Stanley Turrentine『Joyride』の音志向を踏襲しているが、『Joyride』は、ファンキー&ソウル・ジャズだったが、この『Rough n' Tumble』では、ソウル・ジャズ志向の比率が飛躍的に向上。この『Rough n' Tumble』では、ファンキー・ジャズを越えて、ソウル・ジャズの領域に、どっぷり両足を突っ込んでいる。
 

Stanley-turrentinerough-n-tumble

 
オクテット編成、8人編成の大所帯の演奏なので、大迫力、そして、それぞれの楽器のソウルフルなフレーズ回しが聴けるのかと思いきや、あくまで、リーダーのスタンリー・タレンタインの「漆黒こってこてソウルフル」なテナーを前面に押し出し、徹底的にタレンタインのソウルフルなテナーを映えるだけ映えさせる、それだけに集中したアレンジを施している。

あくまで主役はタレンタインはひとり。他の7人はタレンタインの「漆黒こってこてソウルフル」なテナーを引き立て、鼓舞する役割に徹している。アレンジは、デューク・ピアソン。ピアソンのソウル・ジャズなアレンジはかなり優れていると聴いた。

当時のブルーノート・オールスターな布陣を従え、このアルバムでは、タレンタインは重厚なソウル・ジャズを展開する。リズムは「R&B志向」、縦ノリのスインギーなビート。当時の「ソウル・ミュージック」のエッセンスを導入した、端正で適度にコーニー(俗っぽい)な、ブルーノートならではの「ソウル・ジャズ」がてんこ盛り。

この「端正さ」が、ブルーノートのソウル・ジャズの個性。そして、「漆黒こってこてソウルフル」なテナーにマイナー・チェンジしたタレンタインのテナー。そんな、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの移行を聴かせてくれる。そんなタレンタインのソウル・ジャズ盤である。
 
 

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2025年1月 8日 (水曜日)

アストラッドの70年代の傑作

CTIレーベルのアルバムは、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズが多いが、ハードバップ期からのベテラン・ジャズマンを重用して、CTIオリジナルなエレ・ジャズに、純ジャズ志向の音をアクセントに置いて、ジャジーな雰囲気を増幅するアレンジが得意。

Astrud Gilberto & Stanley Turrentine『Gilberto With Turrentine』(写真左)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。どうも、当時のクロスオーバー&フュージョンのアルバムは、登場人物が多くて困る。

Astrud Gilberto (vo), Stanley Turrentine (ts), Eumir Deodato (el-p, arr, cond), Emanuel Green, George Marge, Hubert Laws, Romeo Penque (fl), Gene Bertoncini, Sivuca (g), Sam Brown, Bob Mann (el-g), Toots Thielemans (harmonica), Ron Carter, Russell George (b), Denny Seiwell, Dom Um Romão, João Palma (ds), Airto Moreira (perc), with strings。

「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、デオダートの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げたアルバム。彼女のポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声は健在。このアストラッドの歌声と、ダンディズム溢れるファンキー・テナーの雄、スタンリー・タレンタインとの共演。この組み合わせ、明らかに『ゲッツ/ジルベルト』を想起させる。
 

Astrud-gilberto-stanley-turrentinegilber

 
が、この盤、「ボサノバの歌姫」アストラッドのアルバムだが、ボサノヴァの往年の名曲は採用されていない。というか、純粋なボサノヴァ曲は皆無で、当時のポップスのヒット曲やバカラック・チューンをカヴァーしている。

もちろん、アレンジは、ボサノヴァやサンバに通じるブラジル音楽志向のアレンジを採用している。しかし、これが絶妙なアレンジで、どの曲もボサノヴァの名曲に聴こえたりするのだから、デオダートのアレンジ、秀逸である。

当時のポップスのヒット曲も、ボサノヴァ風のアレンジに乗って、軽妙で洒脱なカヴァーに仕上がっていて、アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声が、さらに映える様になっている。アストラッドの歌声の特性を十分に活かした、デオダートのアレンジが冴え渡っている。

そんな軽妙で洒脱なボーカルに相対して、タレンタインのファンキー・テナーが炸裂する。タレンタインのテナーが出てくると、演奏の音の雰囲気がガラッと「ジャジー」に変わる。どっぷりファンクネスに浸ったボサノヴァ志向のアレンジがユニークで心地良い。

アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声を活かしつつ、タレンタインのファンキー・テナーでジャジーな雰囲気を増幅する。そういう観点では、この盤はボサノヴァ・ジャズの名盤『ゲッツ/ジルベルト』を凌駕する出来だと僕は評価している。1970年代のイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの傑作の一枚でしょう。
 
 

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2023年9月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・267

この盤はジャズ者初心者の頃、バイト代を叩いて買った思い出の「名盤」。

当時、ブルーノートのLPは値が張った。他のレーベルでは「廉価盤」と銘打って、LPの通常の値段の千円ほど安い、手に入れやすい価格の盤があったのだが、ブルーノートにはそれが無い。

学生時代のバイト代では、ブルーノートのLPは1ヶ月に1枚がせいぜい。他のLPも買いたいので、これは「廉価盤」で数枚買う、という感じで、ブルーノートのLPは、ジャズ者初心者の僕にとっては、特別な存在だった。

Kenny Burrell『Midnight Blue』(写真左)。1963年1月8日の録音。ブルーノートの4123番。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Stanley Turrentine (ts), Major Holley (b), Bill English (ds), Ray Barretto (conga)。

リーダーのバレルのギターとタレンタインのテナーがフロント2管の、コンガ入り、キーボードレスのクインテット編成。バレルのギターとタレンタインのテナーの相性が抜群で、2つの楽器の相乗効果で、漆黒ファンクネスがだだ漏れ。
 

Kenny-burrellmidnight-blue

 
ブルージーでアダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズ。バレルの漆黒ギターとタレンタインの漆黒テナーが、アーバンな夜の雰囲気を醸し出す。コンガが良いアクセントとなった小粋な曲もあって、アルバム全体を通して、大人のファンキー・ジャズをとことん楽しむ事が出来る名盤。

とにかく、バレルのギターが良い。ブルージーでファンクネス濃厚。そして、どこか洗練された都会的な雰囲気が底に流れている。タイトルの「Midnight」が言い得て妙。都会の深夜のブルージーで漆黒な雰囲気がアルバム全体を覆っているのだ。

この盤は理屈で、蘊蓄で聴く名盤では無い。この盤は雰囲気で、直感で聴くべき名盤である。

特に、CDリイシュー時のボートラ含め、1963年1月8日のセッションの全てを欲しい。セッション全曲、捨て曲無し。充実仕切ったバレル・クインテットのセッションの全てを味わい尽くして欲しい。

この盤は、ジャズ者初心者、ジャズを聴き始めて2年位で手に入れた盤だが、まず、このジャケットに惚れた。そして、LPに針を落として、冒頭の名演「Chitlins con Carne」でドップリ感じ入り、そのまま、一気に聴き切った後、直ぐにA面の戻して、繰り返し聴き直した思い出のある名盤。

ジャズ者初心者でもこの盤の良さが直ぐに判る、ジャズ者初心者にとても優しいジャズ名盤である。
 
 

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