2025年12月20日 (土曜日)

クリスマス・ジャズの定盤・3

あと4日でクリスマス・イヴである。コロナ禍以降、クリスマス・シーズンになっても、世間が過剰にクリスマス、クリスマスと騒がなくなったので、うっかりしていると「気がつけば、クリスマス・イヴ」状態になることがしばしば。今年も、気がつけば、あと4日でクリスマス・イヴ。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、やっと10日前から、クリスマス・ジャズを流し始めた次第。

クリスマス・ソングと言えば、僕の発想は「オルガン」になる。幼稚園と大学がミッション系だったこともあって、クリスマス・シーズンの賛美歌には馴染みが深い。特に、伴奏オルガン、曲調としてはゴスペル、というのが、自分としては最高の組みあわせで、この組みあわせで、クリスマス・ソングをジャズ化してくれると、それだけで至福の時となる。そんなアルバム、あるのか、と思って探せば、これが「ある」んですね。

Jimmy Smith『Christmas Cookin'』(写真左)。1964年4月20日、9月29日の録音。1966年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell, Quentin Warren (g), Art Davis (b), Grady Tate, Billy Hart (ds), George Devens (perc) がメインのバンド編成で、ここに、ジャズ・オーケストラが入る(パーソネルは割愛)。

ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスのクリスマス・アルバムである。大手レーベルのヴァーヴからのリリースで、一流のメンバーをこれでもかと投入、ゴージャズなジャズ・オケもバックにつけている。音のイメージとしては、ジミーの名盤『The Cat』のジャズ・オーケストラをバックにつけたゴージャズな演奏の雰囲気で、クリスマス・ソングを、良いアレンジでやっちゃいました、って感じの音世界。
 

Christmas_cookin_3

 
加えて、アレンジが秀逸なのと、演奏するメンバーが一流どころで、ダレたりよれたりところが皆無で、しっかりと端正な演奏で、クリスマス・ソングをカバッてるんで、聴き応えが実に良い。ジャズ・オーケストラをバックにつけたゴージャズな演奏と最小構成単位のトリオでの演奏と、ほぼ半々で「1粒で2度美味しい」てな感じの、聴いて楽しい、オルガン・ジャズのクリスマス・ソング集。

超一流のジャズ・オルガンが唸りを上げるだけで、数々の有名なクリスマス・ソングは、どっぷりとゴスペルっぽくなるからたまらない。教会でクリスマスの賛美歌を聴いている様な、そんな敬虔でファンキーな、思わず腰が動くような雰囲気は、とにかく「たまらない」。そこに、ゴージャズなジャズ・オケの伴奏がガッツリ入ったりして、敬虔な雰囲気をより増幅して、極上のクリスマス・ソング集になっていくのだから、このアルバム、聴き甲斐、満載である。

実は、この『Christmas Cookin'』というアルバム、1964年に『Christmas '64』(写真右)として、先行リリースされている。大手ヴァーヴ・レコードとしては安易な対応だったが、当時、クリスマス商戦期にクリスマス・アルバムをリリースするのが
定番だった時代だったことを考えると、まあ仕方が無いところですかね。聴く方としては紛らわしいですけどね。良い内容のクリスマス・アルバムなんで再発したくなったんでしょうね。でも、ジャケット、タイトルまで変えなくて良いのに(笑)。

また、CD化に際して、CDの録音可能時間の長さに合わせてか、アルバム『ダイナミック・デュオ』から「外は寒いよ」、アルバム『オルガン・グラインダー・スゥイング』から「グリーンスリーブス」という、クリスマスにゆかりのある曲を追加収録していて、これまた、紛らわしい(笑)。クリスマス・ソングを、ジャズ・オルガンの神様であるジミー・スミスの演奏で聴けることを考えると、これも仕方の無いところですかね。
 
 

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2025年10月30日 (木曜日)

管入りスミスの置き土産音源

ブルーノートのお抱えオルガニストだったジミー・スミス。1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。この盤は、その「置き土産」音源のひとつ。

Jimmy Smith『Plain Talk』(写真左)。1960年3月22日の録音。ブルーノートの4296番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Blue Mitchell (tp), Jackie McLean (as), Ike Quebec (ts), Quentin Warren (g). Donald Bailey (ds)。ブルーノートの4269番『Open House』と同一日録音で、リリースは1968年4月。ジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源のひとつ。

この盤は、『Open House』と同じ編成で、スミスのギター・トリオ(スミスのオルガンに、ウォーレンのギター、ベイリーのドラム)に、ミッチェルのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、ケベックのテナー・サックスの管楽器が入ったセクステット編成。演奏の内容は、『Open House』と同様で、スミスのオルガンは、ダイナミズムを封印した、流麗でシンプルで優しい弾き回し。
 

Jimmy-smithplain-talk

 
フロントを引き立て、鼓舞しつつ、自らも素晴らしいバッキングを聴かせる、裏方に徹したジミー・スミスのオルガンは、実に印象的。優れたソリストは、優れた伴奏者でもある。モダン・ジャズでの定説だが、この盤でのジミー・スミスのオルガンは、その例に漏れない優れたバッキング。

フロント管を引き立てつつ、自らのアピールも忘れないのが、オルガンの神様、ジミー・スミスの真骨頂。しかし、この盤では、ダイナミックなグイグイ前に出る、アグレッシヴな弾き回しを封印し、流麗でシンプルで優しい弾き回し。それに呼応するように、ブルー・ミッチェルのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、アイク・ケベックのテナー・サックスが順番にソロを取るのだが、これがまた流麗でシンプルで優しいソロ・パフォーマンスを聴かせてくれるのだ。

このジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源は、ヴァーヴに移籍したずっと後の6年後、ブルーノートがリヴァティ社に買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが引退した後にリリースされているが、この盤のプロデュースは、アルフレッド・ライオン。往年のブルーノートらしい音、ブルーノートらしい録音で、安心して聴くことが出来る。内容的にも申し分無い。好盤です。
 
 

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2025年9月20日 (土曜日)

管入りジミー・スミスの優秀盤

ジミー・スミスは「ジャズ・オルガンの神様」。スミスのオルガン一発で、そのオフェンシヴでダイナミックでスケールの大きい弾き回しは、唯一無二で、他のオルガニストの追従を許さない、孤高のじゃず・オルガンとしても、未だに、ジャズ・オルガニストの最高峰に君臨している。そんなジミー・スミスのパフォーマンスは、多くブルーノート・・レーベルに記録されている。

Jimmy Smith『Open House』(写真左)。1960年3月22日の録音。1968年1月のリリース。ブルーノートの4269番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Quentin Warren (g). Donald Bailey (ds) のトリオに、ゲストとして、Blue Mitchell (tp: tracks 1, 3), Jackie McLean (as: tracks 1, 3, 4; feature track 4), Ike Quebec (ts: tracks 1, 2, 3; feature track 2) が入る。

1960年3月22日の録音だが、リリースは 1968年1月。ブルーノートお得意の「録音当時、何故かお蔵入り」盤。トリオ盤のオフェンシヴで、ダイナミックな弾き回しのジミー・スミスも魅力満点だが、実は、バックに回った伴奏上手のジミー・スミスも魅力的。フロント管を引き立てつつ、自らのアピールも忘れない。この盤でのスミスのオルガンは、ダイナミズムを封印した、流麗でシンプルで優しい弾き回し。これがとても印象的で、ジミー・スミスのアルバムの中でも、特別な響きを宿している。
 

Jimmy-smithopen-house  

 
ジミー・スミスは、前セッションのアルバム『Crazy! Baby』(1960年1月録音)で組んだ新トリオ編成で、1960年3月に、今度は「管入り」セッションに臨んでいる。米国ジャズのリスナーは「管入り」が好みみたいで、そのリスナーの好みに応えたセッションだったように思う。まず、ジミー・スミスのトリオについては、『Crazy! Baby』での好調を維持している。

ブルー・ミッチェルのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、アイク・ケベックのテナー・サックスが順番にソロを取るのだが、これがまた素晴らしいソロ・パフォーマンスを聴かせてくれる。そこに伴奏で絡むジミー・スミスのオルガンが、これまた、フロントを引き立て、鼓舞しつつ、自らも素晴らしいバッキングを聴かせる。このアンサンブルがこの盤の最大の聴きものだろう。

1960年はトリオ演奏の『Crazy! Baby』(1960年1月録音)の1枚だけのリリースに留めている。次の年、1961年は、バレルのギター入りの『Home Cookin'』、そして、同じくバレルのギター入りの名盤『Midnight Special』(1960年4月録音)の2枚のリリースになっているので、管入りのセッションは、バレルのギター入りのアルバムの内容に押されて、見送られた感がある。しかし、その内容はピカイチ。ブルーノート、遅れてリリースして大正解である。
 
 

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2025年8月24日 (日曜日)

落ち着いたオルガン・ジャズ

ジミー・スミスは、マイルスに紹介され、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンに見出され、ブルーノートからアルバム・デビューしている。1956年の初リーダー作以来、ブルーノート一本槍。後に「オルガンの神様」と呼ばれるほどの、革新的なオルガン・ジャズ盤を多数リリースしてきた。

1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。この盤は、その「置き土産」音源のひとつ。

Jimmy Smith『I'm Movin' On』(写真左)。1963年1月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Grant Green (g), Donald Bailey (ds)。質実剛健、オルガン、ギター、ドラムのベースレス、正統派オルガン・トリオの1枚。派手さのない、落ち着いた、滋味溢れるトリオ盤である。
 

Jimmy-smithim-movin-on

 
ブルージーで小粋な雰囲気が良い、ちょっと渋めのオルガン・トリオ盤。デビュー当時のアグレッシヴでダイナミックなオルガンは影を潜め、落ち着いた、ジャジーでブルージーな、滋味溢れるオルガン。これが、この盤の一番の「聴きどころ」。収録された演奏は全て、ミッド・テンポからスロー・テンポの渋〜く、小粋に落ち着いた演奏で、聴いていてしみじみしてしまう。

基本はファンキー・ジャズ。ソウル・ジャズほど、ファンク度合いは高くないし、フレーズの粘りも少ない。どちらかと言えば、ファンキー・ジャズをベースとした、落ち着いたイージーリスニング志向の、上質なオルガン・ジャズとすると座りが良い。とにかく、趣味の良い、小粋なアドリブ・フレーズが、止めどなく流れてくる。オルガンの神様、ジミー・スミスの面目躍如。

クラント・グリーンのギターもなかなかの味を出している。ジミー・スミスのオルガンに応じて、パッキパキなファンクネスだだ漏れギターを少し封印し、濃厚なファンクネスは、ジミー・スミスのオルガンに委ねるような、ちょっとファンクネス控えめのグラント・グリーンのギターは味わい深い。ジミー・スミスとの相性というよりは、グループ・サウンズとしての自分の役割をわきまえた、なかなか滋味溢れるギターである。
 
 

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2025年5月 6日 (火曜日)

もう一つのバレル&スミス盤

漆黒ブルージー&アーバンなバップ・ギタリスト、ケニー・バレル。バレルは人気のジャズ・ギタリストで、かなりの数のリーダー作を残している。その中で、バレルのリーダー作には「企画盤」が多い。人気ジャズマンとの共演あり、人気作曲者の楽曲に特化したトリビュートあり、特に大手のレーベルにおいて「企画盤」の制作が多い。

Kenny Burrell & Jimmy Smith『Blue Bash』(写真左)。1963年7月16, 25–26日の録音。Verveレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Jimmy Smith (org), Vince Gambella (g, tracks 1 & 7), Milt Hinton (b, tracks 2–4 & 6), George Duvivier (b, track 5), Bill English (ds, track 5), Mel Lewis (ds, tracks 2–4 & 6)。

漆黒ブルージー&アーバンなバップ・ギタリスト、ケニー・バレルと、ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスとの共演。ジミー・スミスは自己主張が強く、ダイナミックで豪快な弾き回しで、共演者をものともしない、唯我独尊なところがあるのだが、バレルとの相性は良かった様で、以前に『Home Cookin'』や『Midnight Special』(Blue Note, 1961年)、この2枚の名盤を残している。
 

Kenny-burrell-jimmy-smithblue-bash

 
そんなブルーノートでの良き共演の感覚のまま、大手のヴァーヴに移って、このバレルとスミスの二人は再び共演を果たした。大手ヴァーヴなので、アルバムの音の傾向は「売れるファンキー・ジャズ」。ジャズのマニアだけでなく、一般の音楽好きにも訴求する、小粋でお洒落で聴き応えのある「売れるファンキー・ジャズ」を目指しての音志向である。

大手レーベルの、そんな商業ジャズ志向のニーズに、バレルとスミスは堅実に応えている。バレルはスミスの、スミスはバレルの、お互いの音をしっかり聴きながら、お互いの音を引き立てる。そんな大人の職人芸的なパフォーマンスを繰り広げていて、良い感じの、ギターとオルガンがお互いを主役として引き立てあった、大人でブルージーでアーバンなファンキー・ジャズを展開している。

「売れるファンキー・ジャズ」を目指す上で、スミスのオルガンが、バレルのギターの個性である「漆黒ブルージー&アーバン」に合わせたところが、この盤の聴きどころ。伴奏上手のバレルのギター、伴奏上手のスミスのオルガンが聴けるところが、実に味わい深い。ブルーノートの共演の諸作と比肩する、なかなか小粋な内容の、バレルとスミスの共演盤である。
 
 

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2025年2月 1日 (土曜日)

ジミー・スミスの「ブルース集」

超一流のジャズマンというのは、やらせてみれば、様々な演奏スタイル、演奏トレンドに適応して、しっかりとした成果を残す、そんなことを、いとも容易くやってのけたりする。演奏スタイル、トレンドに関する適応力、応用力がずば抜けているのだろう。この盤を聴いて、改めてそう思った。

Jimmy Smith『Six Views of the Blues』(写真左)。1958年7月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Cecil Payne (bs), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds, racks 4–6), Art Blakey (ds, racks 1–3)。アルバムタイトルの日本語訳は「ブルースの6つの見方」。ブルース曲で固めた企画盤。

録音当時は「お蔵入り」。なんと、録音後の41年後、1999年にようやくリリースされた。ジャズ・オルガンのイノベーター、ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスが、そんなオルガンでブルースだけを演奏している、ブルーノートには珍しい企画盤。バップでアグレッシヴで切れ味の良いダイナミックなスミスのオルガンが、渋いブルースを演奏する。こんなに魅力的な企画盤が他にあっただろうか。
 

Jimmy-smithsix-views-of-the-blues

 
演奏内容として、スミスの「極上のブルージーなオルガン」が素晴らしい。ダイナミックなプレイが身上のスミスが、しっかり抑制を効かせて、まことにブルージーにオルガンを響かせる。スミスの奏でるブルースは極上の響き。さすが、ジャズ・オルガンの神様、バップな弾き回しで、極上のブルースを我々に聴かせてみせる。

バレルのギターが、スミスのブルースを、よりブルージーにする。漆黒ギターの面目躍如。そして、意外と話題に上らないが、ブレイキー&ベイリーの、ブルースに対する効果的にドラミングが実に効いている。セシル・パインのバリトン・サックスがイマイチだが、音色的にスミスとバレルのブルースを前面に押し出し、映えさせている。

こんなに素敵な内容の「スミスのオルガンでブルースだけを演奏する」という企画盤。どうして「お蔵入り」になったのか、今でも理解に苦しむ。パインのバリサクがイマイチだったからか、そもそも、バップでアグレッシヴで切れ味の良いダイナミックなスミスのオルガンが、しっかり抑制を効かせて、まことにブルージーにオルガンを響かせることが「らしくない」と判断したのか。

ジャケもイマイチなんだが、僕はこのジミー・スミスのブルース・オルガン盤、気に入っている。
 
 

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2025年1月28日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・278

小粋なジャズ盤、探索の日々。なんだか、昨日から、ジャズ・オルガンが聴きたくなって、色々、アルバムを物色していたのだが、やはり、久々に聴くジャズ・オルガン、最初は、ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスのアルバムだろう。それも、有名盤ではない、いわゆる「隠れ好盤」の類のアルバムが良い。

 Jimmy Smith『Lonesome Road』(写真左)。1960年6月と1963年2月の2つのセッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、1960年6月が、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Sam Jones (b), Donald Bailey (ds)。1963年2月が、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds)。

いつ聴いても見事なオルガンである。ダイナミズム溢れ、ダンディズム溢れ、歌心溢れ、テクニック優秀。ジャズ・オルガンの祖、と呼ばれるのも納得である。そんなジミー・スミスが、ファンクネス満載のソウルフルな「ソウル・ジャズ」に大接近したアルバムがこれである。
 

Jimmy-smithlonesome-road

 
ジミー・スミスのオルガンは、うるさいくらいにダイナミックで白熱の「切れ味抜群のオルガン」が、一つの大きな特徴なのだが、この盤ではしっかり抑制を効かせて、まことにソウルフルにオルガンを響かせる。そんな、こってこてソウルフルなオルガンで、小粋なスタンダード曲を、切れ味よく聴かせてくれる。

ヴィブラートを効かせたスインギーな演奏、足鍵盤フル稼働のバラード演奏など、他のジミー・スミスのアルバムではなかなか聴くことが出来ない、ちょっと違った「顔」をこの盤は効かせてくれる。クウェンティン・ウォーレンのギターも、ジミー・スミスのオルガンに相対して、バリバリ弾きまくって、その役割を全うしているし、やはり、タレンタインの漆黒テナーは、ジミー・スミスのオルガンによく似合う。

1980年代、ブルーノートが日本向けにリリースしたアウトテイク集だが、それぞれの曲の演奏について、どれもが最高のパフォーマンス。この盤をアウトテイク集と名付けるのは、ちょっと違和感がある。恐らくこの盤は、LPの収録時間制限に基づいてアルバムを作るが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが収録時間制限の中で、収録したいのに出来なかった、泣く泣く諦めた「優れた内容の演奏」の類だろう。
 
 

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2024年3月25日 (月曜日)

聴かせる Jimmy Smith Trio + LD

1950年代から1960年代のブルーノート・レーベルは、プロデュースが大変優れていると感じる。セッションのジャズマンのブッキングなど、その対象となるリーダー作が、どの様な「志向」の演奏内容にするかによって、メンバーを厳選している。そして、その演奏の「志向」に則った演奏を実現する。このブルーノートの優れたプロデュースが数々の名盤を生み出している。

『Jimmy Smith Trio + LD』(写真左)。1957年7月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Lou Donaldson (as, tracks 1–2, 4, 6), Eddie McFadden (g), Donald Bailey (ds)。当時の売れっ子オルガニスト、ジミー・スミスのトリオに、アルト・サックスのベテラン職人、ルー・ドナルドソン(以降「ルーさん」)がフロント管として客演する格好のカルテット編成。

録音時点で、ジミー・スミスは29歳、ルーさんは31歳。両人とも実績十分の中堅ジャズマン。どちらも職人気質のジャズマンでプライドも高く、自分が一番前に出たがる。いわゆる「一国一城の主」タイプで、同じレベルのジャズマン同士、対等な立場での共演は好まないタイプなんだが、この盤では一期一会の共演が実現している。

スミス、ルーさん、どちらも前に出たがるタイプみたいなんだが、この盤では「前へ出たがり」同士がぶつかることなく、お互いの音をしっかり聴きながらの、心地良いテンポ、雰囲気のインタープレイが展開されている。ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いオルガン・ジャズを展開している。
 

Jimmy-smith-trio-ld

 
スミスのオルガンは、特徴である「切れ味の良い攻撃的な」オルガンを封印、ルーさんのアルト・サックスのバッキングに徹している。自分のソロの番になっても、オルガンのボリュームを上げて、ガンガンに弾きまくることはない。あくまで、ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いオルガンを弾き進める。

ルーさんのアルト・サックスは、お得意の熱量の高いアグレッシブな「ビ・バップ」風の吹き回しは封印、スミスのオルガンのバッキングを損なうことなく、スミスのオルガンに歩調を合わせる様に、ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いアルト・サックスを吹き進める。

スミス、ルーさん共に、双方の一番の「持ち味」を封印し、グループサウンズ優先、底に小粋なファンクネスを忍ばせつつ、ムーディーで流麗なオルガン・ジャズを展開している。アレンジも優秀で、まるで、ウエストコースト・ジャズにおける上質のオルガン・ジャズの様な雰囲気。いわゆる「聴かせる」オルガン・ジャズとして、聴き手にしっかりアピールする。

しかし、この盤、録音当時は「お蔵入り」。当時のブルーノートお得意の「理由不明のお蔵入り」盤となっている。今でもなぜお蔵入りなのかが良く判らない。それでも、1985年、我が国においてのみ、発掘リリースされ、今ではサブスク・サイトでも鑑賞することが出来る。この盤、後の「イージーリスニングなソウル・ジャズ」としても愛聴することが出来る優れもの。発掘リリースされて良かった、と改めて思う、今日この頃である。
 
 

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2023年8月17日 (木曜日)

力強く優しいオルガン・ジャズ 『Softly As A Summer Breeze』

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。もともと、マイルスの紹介で、オルガンの神様「ジミー・スミス」をデビューさせ、ドル箱人気オルガニストに育て上げた実績があるブルーノートである。オルガン・ジャズには他のどのレーベルよりも造詣が深い。ニッチなジャズ・オルガンではあるが、ブルーノートのカタログには、多くのオルガニストのリーダー作が散見される。

オルガンジャズの神様、ジミー・スミス。デビュー当時は「思いっきり尖ったアグレッシブな、実に攻撃的な」オルガン。半ば辺りで、圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切る。そして、1962年、大手レーベルのヴァーヴ・レコードへ移籍する。

Jimmy Smith『Softly As A Summer Breeze』(写真左)。1958年2月26日の録音。ブルーノートの4200番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g, tracks 1–4), Eddie McFadden (g, tracks 5-6), Philly Joe Jones (ds, tracks 1–4), Donald Bailey (ds, tracks 5-6)。基本は、スミスのオルガンに、ギター、ドラムというオルガン・トリオ編成。

オリジナル盤は全6曲。1998年のCDリイシュー時に、1958年10月14日録音の4曲が追加されているが、オルガン・ジャズでありながら、何故か男性ボーカルが入っている、ちょっと違和感のある音源なので、ここでは割愛させていただく。以下、この盤の感想については、オリジナルの6曲で語りたいと思う。
 

Jimmy-smithsoftly-as-a-summer-breeze

 
この盤はブルーノート・レーベルお得意の「理由が良く判らないが、何故かお蔵入り」な盤の1枚。リリースは1965年だが、この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」音源では無い。1958年の録音で、『The Sermon』と『Home Cookin'』の間に入る録音になる。ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の音源である。

雰囲気的には『Home Cookin'』の流れ。気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルとエディ・マクファデンのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルとマクファデンのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。

ドラムがフィリー・ジョーなのが珍しい。フィリー・ジョーのひかえめハードボイルドなバップ・ドラム。ジミー・スミスと言えば、ドラムは「ドナルド・ベイリー」なので、このフィリージョーのドラムは異色。ベイリーとは明らかに違う。それでも、さすがは名手フィリージョー、ブラシによるシンバル・ワークなど、ドラムの達人らしい技を披露しつつ、フロントのスミスのオルガンを引き立てる。

当時、1958年に録音されて8年間眠っていて、1965年になって発表された未発表音源。フィリー・ジョーとの共演が4曲しか無かったので、やむなくお蔵入りになったのかもしれない。力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」内容が素敵なオルガン・ジャズ盤です。
 
 

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2023年6月19日 (月曜日)

ソウル・ジャズなオルガン盤 『Prayer Meetin'』

ジミー・スミス(Jimmy Smith)は、1950年代から1960年代の初めまで、ブルーノート・レーベルの「ドル箱」ジャズマンだった。ジミー・スミスは、ジャズ・オルガンの祖。ジャズ・オルガンの歴史は、ジミー・スミスの出現から始まったと言って良いかと思う。

ジミー・スミスの伝説は、マイルスがブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに紹介したところから始まる。ライオンはスミスのオルガンに惚れ込み、1956年から1962年の6年間に、なんと20枚以上のリーダー作をリリースしている。年に3枚以上のペースでのリリースで、これはこれで驚きだが、セールス的にも十分な実績を残したというのだから、これもこれで驚きである。

1962年、スミスは破格の好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が見出し育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくのは面白く無いはずだが、なんと、ライオンは一切止めること無く揶揄すること無く、喜んで送り出した。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音をストックとして残していった。

Jimmy Smith『Prayer Meetin'』(写真左)。1963年2月8日の録音。ブルーノートの4164番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds)。スミスのそんな「鶴の恩返し」的レコーディング・ストックの1枚。相性の良いフロント管、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスとの共演盤である。
 

Jimmy-smithprayer-meetin

 
1950年代のデビューから暫くは、硬派でバップな、そして、ハイ・テクニックなオルガンでブイブイ言わせていたのだが、1960年の『Crazy! Baby』あたりから、歌心と味のある「聴かせる」オルガンへシフト。さらに人気が高まり、1961年『Midnight Special』の大ヒットを生む。

そして、この『Prayer Meetin'』は、その『Midnight Special』の雰囲気を踏襲する、「聴かせる」ソウルフルなオルガン・ジャズで統一されている。

もともとテクニック抜群、流麗でバップなフレーズを紡ぎ出すのが得意なオルガニストである。そこに歌心が加われば、無敵である。そんな「じっくり聴かせる」歌心溢れるオルガンがギッシリ詰まっている。

そして、その歌心溢れるスミスのオルガンをがっちりサポートし、がっちりと引き立てているのが、タレンタインのテナー・サックス。スミスがポップなオルガンを弾けば、硬派な男気溢れる漆黒テナーをタレンタインが吹き、スミスが硬派でストイックなフレーズを弾けば、タレンタインはポップで悠然としたフレーズで応える。この2人のアンサンブルとインタープレイが良い感じ。相性が良いんでしょうね。

1960年代前半、ジャズの「多様化」の時代のニーズに合わせた様な、ちょっとポップで歌心溢れる「聴かせる」ソウル・ジャズがこの盤に詰まっています。ジャズの即興の妙など、刺激的な要素は希薄ですが、とにかく聴いていて心地良く、聴いていて楽しい。聴いて楽しい、リラックスして聴き込める、極上のソウル・ジャズなオルガン盤です。
 
 

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