2025年10月12日 (日曜日)

フリー・ジャズな”ソウル・ジャズ”

とにかく、聴き始めてビックリ、椅子から転げ落ちる。オルガン・ジャズに代表されるノリの良いソウル・ジャズを想起していたら、絶対に怪我をします(笑)。確かに、マクリーンは正統派ハードバップから、モードに染まり、フリーにチャレンジする「挑戦し変化するジャズマン」でしたが、ここで、いきなり、フリー・ジャズを持ってくるとは。恐れ入りました。脱帽です。

Jackie McLean『’Bout Soul』(写真左)。1967年9月8日の録音。ブルーノートの4284番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Woody Shaw (tp), Grachan Moncur III (tb), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Rashied Ali (ds), Barbara Simmons (recitation)。マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーンの3管フロントのセクステット編成。そして、なんと、そこに女性の朗読が付く。

タイトルが直訳すると「ソウルについて」なので、しかも、ジャケットの妙齢の黒人女性ときてるので、このアルバム、聴く前は、マクリーン流の直球勝負の硬派なソウル・ジャズかと思いきや、冒頭、ゴスペル的雰囲気で、女性の朗読「ソウルソウルソウル・・・」が出てきてビックリ。もしかして、ゴスペルチックな「ラップ」メインのジャズかと身構えたら、高速パルシヴ・ドラミングに乗って、ドバ〜っと、フリー・ジャズへなだれ込んでいく。

アルバムの内容としては、1960年代後半のジャズのスタイル(ソウル、アヴァンギャルド、フリー、モードなど)が混在した実験的な作品。
 

Jackie-mcleanbout-soul

 
特に、アルバムの冒頭には、バーバラ・シモンズによる「ソウル」の意味を語る詩の朗読が収録されているところが象徴的。つまり、ソウル・ジャズといえば「魂の叫び」、よって、メインは「フリー&アヴァンギャルド」ジャズで、スピリチュアルに攻めるのが筋だろう、という感じなんだろうな、と。

フリー&アヴァンギャルドがメインとくれば、フロント楽器の力量が問われる訳だが、フロントは、マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーン、と、フリー&アヴァンギャルドをやらせて一流、ハードバップ&モードをやらせても一流の申し分無いフロント3管なので、モードから入って、いきなりフリー&アヴァンギャルドに流れ込む展開も、安心して、彼らの音に身を任せることができる。リズム隊もラシッド・アリのパルシヴなドラミングが「肝」で安定感がある。

ソウル・ジャズみたいなタイトルだが、実は中身はフリー&アヴァンギャルドがメイン、という問題作で、ジャズ者の方々の間でも好き嫌いが分かれる思う。でも、不思議と聴き易いフリー&アヴァンギャルドで、これはフレーズのところどころにモーダルなフレーズやソウルフルなフレーズが見え隠れするからだろう。この辺りが、マクリーンのフリー&アヴァンギャルド・ジャズの面白いところ。

そう言えば、マクリーンのノリの良い、大衆に受けするソウル・ジャズなんて聴いたことがなかったなあ。ということで、この時代での、フリー&アヴァンギャルドがメインのソウル・ジャズ、というのはマクリーンの「必然」だったのだろう。
 
 

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2025年10月11日 (土曜日)

アーヴィンの初ブルーノート盤

ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)は、早逝のコルトレーン・スタイルのテキサス・テナーマン。モーダルでアグレッシブで自由度の高いテナーで、時々、フリーに走り、アヴァンギャルドに傾倒する。このフリー&アヴァンギャルドな展開も趣味が良く、耳触りでないので、意外とアーヴィンは、フリー&アヴァンギャルドなテナーマンとされることも多い。

Booker Ervin『The In Between』(写真左)。1968年1月12日の録音。ブルーノートの4283番。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin (ts, fl), Richard Williams (tp), Bobby Few Jr. (p), Cevera Jeffries Jr. (b), Lenny McBrowne (ds)。1970年、39歳で急逝してしまう、幻の「ポスト・コルトレーン」最右翼のテナーマンの1人、ブッカー・アーヴィン生前のラスト作である。

ブッカー・アーヴィンは、フリー&アヴァンギャルド系のテナーマンという印象が強い。が、完全にフリー&アヴァンギャルドという訳では無く、伝統的なハードバップとモード・ジャズを基本にしつつ、アドリブ展開において、いきなりフリー&アヴァンギャルドに傾く、といった、モード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズが真骨頂。ダンディズム溢れる豪快な吹きっぷりが爽快である。
 

Booker-ervinthe-in-between

 
アーヴィンのテナー・サックスは、テキサス・テナーをベースとした「コルトレーン・スタイル」。そんなスタイルで、モード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズをやる。コルトレーンのフォロワーと思いきや、出てくる音は、すっと伸びたブロウはコルトレーンっぽいが、モーダルな吹き回し、アヴァンギャルドへの傾倒については、あまりコルトレーンっぽくは無い。

このブルーノート第一作で最終作となったアルバムでは、オーソドックスなブロウが魅力的。確かに、モーダルなブロウがメインで、限りなく自由度の高いブロウが得意ではあるが、ここでは、決して、フリー・ジャズの人では無い。意外と伝統の範囲内で、限りなく自由度を高めつつも、従来のジャズの枠の中に留まるブロウ。コルトレーンのそれよりもスッキリ見通しが良くて、整ったモーダルな吹奏は、当時、意外とアーヴィン以外、見当たらない。そういう音世界がこの盤の魅力である。

アーヴィンの個性とセンスが上手くまとまった、「ポスト・コルトレーン」的テナー、アーヴィン独特のモード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズ。アーヴィンは、この盤の録音後、1970年8月末、腎臓病のため39歳で急逝する。この盤を聴く限り、アーヴィンの「ポスト・コルトレーン」なテナーは発展途上。まことに急逝が惜しまれるテナーマンであった。
 
 

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2025年9月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・299

「予定調和」とは全く無縁の、全く先の読めない展開。音はショーター・ミュージックの音。しかし、出てくるフレーズは全く予測不能な未知の音世界。そんな予測不能な未知の音世界を、このワンホーン・カルテットは確信を持って突き進む。即興演奏、インタープレイの極致。聴き馴れたショーター・ミュージックの音なのに、出てくる音は初出のフレーズがてんこ盛り。

Wayne Shorter『Celebration, Volume 1』(写真左)。2014年10月18日、ストックホルム・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts, ss), Danilo Perez (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。モダン・ジャズ・テナー奏者のレジェンドの一人、ジャズ・ジャイアント、ウェイン・ショーターの81歳の時のライヴ・パフォーマンスの記録。

素晴らしいパーソネルである。ダニロ・ペレスは、パナマ出身のピアニスト。ワールド・ミュージック志向の独特なピアノは変幻自在。ジョン・パティトゥッチは、エレ・アコの両刀使い、技巧派ベーシストの第一人者。ブライアンド・ブレイドは、現代ジャズ・ドラマーのリーダー格。そんな三人をリズム・セクションを従えての、ウェイン・ショーターのテナー&ソプラノ1管の「ワンホーン・カルテット」である。
 

Wayne-shortercelebration-volume-1

 
そんな凄腕のリズム・セクションを従えてのパフォーマンスである。このライヴでは、ショーターも絶好調、心ゆくまで、ショーター・ミュージックの音世界をこれでもか、と言わんばかりに展開している。絞り出すようなテンション、妖しい黒魔術的雰囲気漂う浮遊感、ワールド・ミュージック志向トーンの野趣溢れる流麗なフレーズ。

冒頭の「Zero Gravity To The 15th Dimension」から、そんなショーター・ミュージックが大々的に展開される。リズム・セクションの出だしのワンフレーズから、ショーター・ミュージックの音がする。どう聴いたって、ショーターの音世界。そして、そんな前奏に、ショーターのテナーが滑り込んでくる。濃厚な「ショーター・ミュージックの世界へようこそ」である。

このライヴ音源は、ショーターが生前、自らが監修したと聞く。この音源は、生前、ショーターが残した「新作」。こんな素晴らしいライヴ音源が、しかも、ショーター自ら監修した音源が残っていたなんて。この音源は「Vol.1」。情報によると、このライヴ音源、全部で4枚リリースされる予定らしいので、あと3枚、これはとても楽しみだ。
 
 

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2025年9月28日 (日曜日)

フォスターの初ブルーノート盤

フランク・フォスター(Frank Foster)は、カウント・ベイシーのビッグバンドのテナー奏者。1953年の加入になる。1970年から1972年にかけて、エルヴィン・ジョーンズと共演。1975年には、サド・ジョーンズ=メル・ルイス・ビッグバンドに加入。1972年から1976年まで、フォスターはニューヨーク州立大学バッファロー校の黒人研究プログラムの常勤助教授。1986年6月には、カウント・ベイシー・オーケストラのリーダーに就任。フランク・フォスターは、ビッグバンド畑のテナー奏者であった。

Frank Foster『Manhattan Fever』(写真左)。1968年3月21日の録音。ブルーノートの4278番。ちなみにパーソネルは、Frank Foster (ts, alto-cl), Marvin Stamm (tp), Garnett Brown (tb), Kenny Rogers (bs), Richard Wyands (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。リーダーのフォスターのテナー、スタムのトランペット、ブラウンのトロンボーンがフロント3管のセクステット編成。

この盤も、CDリイシュー時、ボートラを5曲追加して、全11曲になっている。オリジナルLP盤は全6曲、録音日は1968年3月21日。ボートラ追加の5曲、1969年1月31日の録音で、当然、オリジナルLPには入っていない。よって、この記事では、オリジナルLPの6曲(CDの1〜6曲目)で、内容をまとめていきたい。

冒頭の「Little Miss No Nose」は、こってこてファンキーでソウルフルなジャズロック。リズム&ビートはR&B志向。どこかモータウンに通じるビートに乗って、フォスターがノリノリのテナーを聴かせる。ここでも、ミッキー・ローカーのドラムが効いている。R&B志向の8ビートを、ノリノリで叩きまくる。フロント3管がこのローカーのドラムに煽られて、こってこてファンキーでソウルフルなジャズロックなフレーズを吹きまくっている。
 

Frank-fostermanhattan-fever

 
2曲目「Manhattan Fever」が面白い。最初は、ファンキーなソウルフルなハードバップって感じなのだが、演奏が進むにつれ、特にフォスターのテナーが「コルトレーン化」していく。シーツ・オブ・サウンド風のモーダルな吹き回しから、ちょっとフリーキーに展開するとことは「コルトレーン・シンパ」な吹奏である。3曲目のバラード「Loneliness」は、温和でハードバップなコルトレーン・ライクな吹奏に終始する。

4曲目「Stammpede」になると、モード・ジャズな演奏に変化。ただ、フレーズは端正でポップ。とても聴き易いモード。ここでもフォスターのテナーは、コルトレーンの影を追いかける。続く5曲目の「You Gotta Be Kiddin」は、R&B志向のソウル・ジャズ。モータウン・ライクなリズム&ビートに乗って、ソウルフルな3管ユニゾン&ハーモニーもご機嫌な、R&B志向のソウル・ジャズが展開される。ブレイクも恰好良い、素敵なソウル・ジャズ。

ラストの「Seventh Avenue Bill」は、硬派でメインストリーム志向でストイックなモード・ジャズ。4曲目「Stammpede」と同様に、フレーズは端正でポップ。とても聴き易いモード。ここでもフォスターのテナーは、コルトレーンの影を追いかけているが、トランペットのスタムまでが「コルトレーン化」している。トランペットで、シーツ・オブ・サインドを吹きまくる。

フランク・フォスターのブルーノートでの初登場盤。ジャズロック、モード・ジャズ、ソウル・ジャズな要素を効果的に配置した、当時のジャズのトレンドを聴く様な、バラエティーに富んだ内容になっている。ただ、アレンジが優秀なので、アルバム全体に統一感があって、その辺りはさすがブルーノートという感じにまとまっている。佳作です。
 
 

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2025年9月15日 (月曜日)

ジャック・ウィルキンスを愛でる

ウィルキンスは、1970年代から2000年代まで、息の長い活躍をしたジャズ・ギタリスト。過小評価されている(特に我が国で)ジャズマンの一人で、1970年代のアルバム2枚は、一時的に彼を「一流ジャズマン」の位置に押し上げたが、それ以降は無名に近い存在になってしまう。

しかし、豊かな才能は他のプレイヤーからは尊敬された「幻のハイテクニックなジャズ・ギタリスト」、つまり、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして、かろうじてその名を留めている。

Jack Wilkins『Windows』(写真左)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Jack Wilkins (g), Bill Goodwin (ds, perc), Mike Moore (b)。ブルックリン出身の幻のハイテクニック・ギタリスト、ジャック・ウィルキンスのシンプルなギター・トリオ盤。初リーダー作になる。ギターが完全に主役なので、ウィルキンスのギターの個性がとても良く判る。

クロスオーバー&フュージョン・ジャズが全盛だった1970年代、頑なに、純ジャズ志向の、ストレート・アヘッドなアコ&エレ・ギターを弾き続けたジャック・ウィルキンス。活躍した当時は、ジャズ界きっての速弾きギタリストの一人だった。ウィルキンスは15歳でギターを始め、バーニー・ケッセルやジョニー・スミス、ジャンゴ・ラインハルト等 に影響を受けているので、純ジャズ志向+ストレート・アヘッドなウィルキンスのギターというのは、とても説得力がある。
 

Jack-wilkinswindows

 
ムーディーな、アーバンな雰囲気を醸し出す、洗練されたジャズ・ギター盤。ギターに豊かで絶妙なエコーがかかって、臨場感が豊かなギター・トリオ盤である。ジョージ・ベンソンやパット・マルティーノに引けを取らない鬼ピッキング。1970年代の純ジャズ志向の「本物のギター」で、ウィルキンス自体は、ほぼ無名ではあるが、そのギター・テクニックは特筆に値するレベルの優れたもの。

選曲がふるっていて、チック・コリアのタイトル曲「Windows」、ジョン・コルトレーンの「Naima」、ウェイン・ショーターの「Pinocchio」、ジャズロックなフレディ・ハバードの「Red Clay」等、1960年代後半から1970年代半ばくらいまでの人気曲を選んで、弾きまくっているところが、このアルバムの一番、興味を引くところ。バンド・メンバーのマイク・ムーアのペンになるラテンタッチの「Canzona」、ウィルキンスがクラシック・ギターの技巧を存分に披露する「Song for the Last Act」も好曲、好演奏。

ジャズマンの中には、1〜2枚程度、優れた内容のアルバムをリリースし、その内容が評論家筋からの評価されたジャズマンが、忽然とシーンから遠ざかってしまうケースが多くある。

いわゆる「幻のジャズマン」達で、あの人は今何処、なのだが、大体が行方不明のジャズマンが多い。逆に日本では何故か知られていない、特殊事情の「幻のジャズマン」も結構いる。今回のジャック・ウィルキンスもそんな中の一人。しかし、アルバムの音源は残っている。まずはこのJack Wilkins『Windows』を愛でることで、ウィルキンスのギターの優秀性を体感されたい。
 
 

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2025年9月14日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・296

1966年、アルフレッド・ライオンはブルーノートを米リバティー社に売却し、経営から退く。しかし、プロデュースは継続。大手リバティーの傘下に入り、純ジャズ度、モダン・ジャズ度を落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする傍ら、大衆受けしない、アーティスティック志向の硬派なモード・ジャズやフリー・ジャズの優れた内容のアルバムもリリースし続けた。このアルバムを聴けば、その一端、ブルーノートの矜持が良く判る。

Larry Young『Contrasts』(写真左)。1967年9月18日の録音。ブルーノートの4266番。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Hank White (flh), Herbert Morgan, Tyrone Washington (ts), Eddie Wright (g), Eddie Gladden (ds), Stacey Edwards (congas), Althea Young (vo)。

リーダーのラリー・ヤングのオルガン、フロント管が、ホワイトのフリューゲルホーン、モーガン、ワシントンのテナー・サックス、そして、グラッデンのドラム、エドワードのコンガのセクステット編成。ボーカルが1曲だけ入る。これまでのリーダー作には無かった、大編成コンボが本作の特徴。
 

Larry-youngcontrasts

 
特に、コンガが入った3曲が特にユニーク。演奏全体がリズミックなビートで覆われる「Majestic Soul」、モード&フリー・ジャズ志向のボサノバ・グルーヴが印象的な「Evening」、フリーな演奏の中にスピリチュアルな響きのする「Means Happiness」。これは、後世に継がれる、先進的なオルガンがメインのモード&フリー・ジャズ。この真髄は、1990年代以降、純ジャズ復古以降、次の世代のジャズ・オルガニストに弾き継がれていく。

コンガ抜きの3曲も、ヤング・オリジナルのオルガン・モード&フリー・ジャズで、聴き応え十分、様々な音の展開に聴いていてワクワクする。オルガンとドラムの攻撃的なデュオ「Major Affair」、ヤングの妻アルテアのボーカルが素敵なバラード曲「Wild Is the Wind」、そして、軽快なバンド・アンサンブルが楽しいTender Feelings」。ラリー・ヤングのモード&フリー・ジャズの懐の深さと応用力の高さが窺い知れる、グッドな演奏ばかり。

オルガンがメインの、硬派で先進的な、モード・ジャズ、そして、フリー・ジャズ。大編成コンボでのモード&フリー・ジャズは、当時のコルトレーン・ジャズを彷彿とさせるが、コルトレーン・ジャズとは一線を画する、ラリー・ヤングのオリジナルのモード&フリー・ジャズ。オルガン・ジャズの革命児、ラリー・ヤングの面目躍如である。
 
 

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2025年9月 9日 (火曜日)

サム・リヴァースのお蔵入り盤

1966年、ブルーノートはリバティ・レコードに買収されたが、大手レコード会社のリバティ・レコードの意向で、大衆受けする、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズ盤をリリースする一方、ブルーノート設立当初からの「これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する」姿勢は変えなかった。

Sam Rivers『Dimensions & Extensions』(写真左)。1967年3月17日の録音。ブルーノートの4261番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Donald Byrd (tp), Julian Priester (tb), James Spaulding (as, fl), Cecil McBee (b), Steve Ellington (ds)。サム・リバースのサックス&フルート、ドナルド・バードのトランペット、ジュリアン・プリースターのトロンボーン、ジェームス・スポルディングのアルト・サックス&フルートの4管フロントのピアノレスのセクステット編成。

ブルーノートお得意の内容は優れているのに、なぜか録音当時は「お蔵入り」盤である。録音は1967年だが、リリースは1986年。オリジナルのカタログ番号と予定されていたカバーアートワークで発売されている。もともと1967年に発売が予定されていたが、1975年に発売が延期。アンドリュー・ヒルの指揮下で録音されたトラックと組み合わせた2枚組LPセット『インボリューション』(1976年、BN-LA 453-H2)に収録されているが、単独でのリリースは1986年。
 

Sam-riversdimensions-extensions

 
内容的には、サム・リヴァースの得意とする「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズがメイン。それも、理路整然とした、カッチリまとまった「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズで、アブストラクトなところや、現代音楽的な無調な展開は全く無い。勿論、フレーズ的にもテクニック的にも「破綻」が無い。「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの成熟形を聴く思いがする。それほどまでに、理路整然とした、カッチリまとまった内容に惚れ惚れする。

パーソネルを見渡すと、皆、「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズを得意とするメンバーだが、ハードバップ初期から第一線で活躍したベテランのドナルド・バードがトランペットで頑張っているのが、意外と言えば意外。それでも、聴いていると、キッチリとリヴァースの考える「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズに適応しているのだから立派である。

「コールマン流」から明らかに外れた音色と気質が、サム・リヴァースの「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの個性。この録音がなぜ約10年もの間、お蔵入りになったのか、理解に苦しむのだが、大手リバティ・レコード傘下のブルーノートでは、売上に貢献しそうにない「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズは敬遠されたのかも知れない。しかし、内容は一級品。1960年代の「モード+フリー+アバンギャルド」なジャズの代表盤として、いつまでも聴き継がれていくべき逸品である。
 
 

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2025年8月11日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・293

ブルーノート・レーベルは懐の深い、硬派なレーベルである。必要最低限しか商業主義に走らない、これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する。だからこそ、ブルーノートは今でも尊敬され、一目置かれるレーベルとして君臨しているのだ。

Rivers『A New Conception』(写真左)。1966年10月11日の録音。ブルーノートの4249番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Hal Galper (p), Herbie Lewis (b), Steve Ellington (ds)。サム・リヴァースの3枚目のリーダー作。サム・リヴァースによる7曲のジャズ・スタンダード曲の解釈が収録されている異色盤。

新主流派、そして、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースが、スタンダード曲に挑んだ、ブルーノートの異色盤。しかし、ただの「スタンダード曲」への挑戦では無い。当時、サム・リヴァースが持っている、サックス&フルート吹奏のテクニックの全てを総動員して、スタンダード曲を解釈している。つまり「リヴァースが考えるスタンダード演奏」な内容なのだ。

冒頭の「When I Fall in Love」から、ラストの「"Secret Love」までを聴けば、それが良く判る。初めのテーマを吹奏するところは、ハードバップ、若しくは、イージーリスニング・ジャズ志向の、流麗でテーマに忠実な吹奏。これが、確かなテクニックで吹かれるので、テーマの魅力がダイレクトに伝わる。リヴァースの吹奏の歌心がビンビンに伝わる。
 

Riversa-new-conception

 
そして、アドリブ部に入ると、モードに展開する。リヴァース十八番の、成熟したモーダルな展開。自由度は高いが、吹き回しが流麗なので、とても耳に優しい。そして、時々、フリーにアブストラクトに展開する。バラード曲では、スピリチュアルな響きがとても魅力的、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースの面目躍如。

ハードバップで入って、モードに展開し、時々、フリーにアブストラクトに効果的に展開し、スローな曲調では、スピリチュアルな雰囲気全開。そして、どのスタイルで吹いても、底に流れる「歌心」。これが「リヴァースが考えるスタンダード演奏」である。

今の耳で聴いても、新しい響き。今の耳で聴いても、全く違和感は無い。今の、現代のジャズのスタンダード解釈は、この1966年のサム・リヴァースのリヴァースが考えるスタンダード演奏」と変わりが無い。リヴァースは自分の演奏志向と聴き手とのバランスを、しっかりと考えることの出来るジャズマンだったのだろう。

このリーダー作では、聴き手の立場に立って、スタンダード曲を解釈するリヴァースが透けて見える。そして、このリヴァースの企画にゴーサインを出した、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼。ブルーノート4249番、ブルーノート4200番台の名盤の1枚である。
 
 

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2025年8月 7日 (木曜日)

優れたモーガンの”ショーケース”

リー・モーガンは、ハードバップ期から、1960年代に入っての「ジャズ多様化の時代」の中で、モードに完全対応し、ジャズロックに適応する。テクニックが途方も無いモーガンならではの快進撃で、イージーリスニング・ジャズ志向のニーズに対しても、魅力的なカヴァー演奏で応える。そんなモーガンの雄姿を捉えたアルバムがこれ。

Lee Morgan『Delightfulee』(写真左)。1966年4月8日、5月27日の録音。ブルーノートの4243番。ちなみにパーソネルは、

1966年4月8日(Tracks 3, 4, 7-10)の録音では、Lee Morgan, Ernie Royal (tp), Tom McIntosh (tb), Jim Buffington (French horn), Don Butterfield (tuba), Phil Woods (as, fl), Wayne Shorter (ts), Danny Bank (bs, b-cl, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Philly Joe Jones (ds), Oliver Nelson (arr)。オリヴァー・ネルソンがアレンジを担当したビッグバンドの大編成。

1966年5月27日(Tracks 1, 2, 5, 6)の録音では、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。モーガンのトランペット、ジョーヘンのテナーがフロント2管のクインテット編成。

冒頭の「"Ca-Lee-So」は、モーガンの鯔背なトランペットが大活躍のカリプソな演奏。モーガンは演奏力抜群。カリプソな演奏も難なくこなす、というか、モーガンのカリプソ演奏は根性が入っている。モーガン節をメインとした、硬派でメインストリーム志向なカリプソ演奏。聴衆に迎合しない、「モーガンの考えるカリプソ」が、この演奏に詰まっている。
 

Lee-morgandelightfulee

 
続く「Zambia」は、モーガンらしい格好良い演奏。ハードバップとモードが混然一体となった、とにかく「格好良い」モーガンのトランペット。ジョーヘンのテナーが一生懸命。モーガンの奏でる、ハードバップとモードが混然一体となった展開に、遅れてはならじ、と気合いを込めて、モーガンのトランペットに追従する。

3曲目の「Yesterday」は、レノン=マッカートニー(ビートルズ)の大名曲のカヴァー。これはあまりにベタなカヴァーなので、イージーリスニング・ジャズの甘い甘い、売らんが為の商業ジャズ的カヴァーと思いきや、どうして、モーガンは、モーガンは硬派にメインストリームに、このレノン=マッカートニーの大名曲をカヴァーする。

アレンジが良好で、ジャズっぽさをシッカリ残した、ジャズとしてのカヴァーが成立している。4曲目、ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」の「Sunrise, Sunset」 も、ユニークな、ミュージカル曲のカヴァー。エモーショナルなパフォーマンスのモーガンが良い。

5曲目の「Nite Flite」は、カッ飛ぶ、鯔背なモーガンのトランペットが凄い。ハードボイルドなハードバップとモードが混然一体となった演奏。ダンディズム&力感溢れるモーガンのアドリブ展開。モーガンのトランペットが映えに映える。

豪華共演陣が話題になるこの多いアルバムだが、聴いてみると判るが、主役は明らかに、リーダーのモーガンで、モーガンのトランペットが前面に出て、映えに映える。ハードバップ、モード、ジャズロック、カリプソ、ポップス曲のがヴァーと八面六臂、変幻自在のモーガンが体感出来る。当時の優れたモーガンの「ショーケース」の様な内容が実に魅力的。好盤です。
 
 

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2025年8月 6日 (水曜日)

ヤングの個性の ”正しい表出”

ラリー・ヤング(Larry Young)。ラリー・ヤングは、1940年10月生まれなんだが、1978年3月、37歳で鬼籍に入っている。今から、もう40年も前のことになる。それでも、プレスティッジとブルーノートを中心に、十数枚のリーダー作を残してくれているので、彼のユニークなオルガンを追体験することが出来る。

ラリー・ヤングのオルガンは「オルガン界のコルトレーン」と形容される。ソロ・パートに入ると、コルトレーンばりの「シーツ・オブ・サウンド」で弾きまくる。そして、このアルバムは、「オルガン界のコルトレーン」の形容を更に強固なものとしてくれる。

Larry Young『Of Love and Peace』(写真左)。1966年7月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Eddie Gale (tp), James Spaulding (as track:1, 3, 4, fl), Herbert Morgan (ts), Wilson Moorman III, Jerry Thomas (ds)。
 
この盤は、オルガンがメインの「自由度を最大限に高めたジャズ」である。モードとフリーを適材適所に織り交ぜ、素晴らしくフリー&スピリチュアルなオルガン・ジャズがここにある。

まず、編成がユニーク。ダブルドラム、3管フロントにラリーのオルガンが加わる。ベースはもちろんギターもおらず,パーカッションもいない。自由度を最大限に追求することの出来る、変則セクステット。この編成は誰が考案したんだろう。
 

Larry-youngof-love-and-peace
 

ゲイルのトランペットとスポルディングのアルト・サックスが「スピリチュアル」な雰囲気を醸し出す。モーガンのテナー・サックスが、3管フロントの音の厚みに貢献する。ダブルドラムが、フリーな展開に、リズム&ビートな明確な指針を叩き出す。

ラリー・ヤングのオルガンが、モードに展開し、フリーに展開し、スピリチュアルに展開する。自由度を最大限に高めた即興演奏を現出する為の、八面六臂のオルガンの弾き回し。そして、これが正しく機能して、当時としては珍しい、オルガンがメインのフリー&スピリチュアル・ジャズが展開されている。

といって、自由に弾きまくる、吹きまくるフリー&スピリチュアルでは無い。メインはモード・ジャズ。しっかりと規律を保った、限りなく自由度を高めたモード・ジャズ。

そんなモード・ジャズ本流の中に、フリーな展開、スピリチュアルな展開が織り交ぜられる。規律の中のフリー、規律の中のスピリチュアル。パワーと理性のバランスが取れた、オルガンがメインの「自由度を最大限に高めたジャズ」。

商業ジャズで無い。ジャズの本来の「芸術性」を追求した様な、ストイックで硬派な内容にワクワクする。ラリー・ヤングの「オルガン界のコルトレーン」と形容される個性がストレートに出た好盤。腰を据えて、じっくりと耳を傾けたい。
 
 

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