2024年12月 4日 (水曜日)

アヴィシャイの新作 ”Brightlight”

2024年もあと残すところ一ヶ月。2024年はコロナ禍も下火になって、ジャズについても、新規アルバムのリリースも順調になり、ライヴ演奏の頻度も回復基調になった。演奏の編成も、コロナ禍での少人数の演奏(ソロ&デュオ)から、トリオ以上のグループ・サウンドに回復し、コロナ禍以前の「深化」と「裾野の広がり」度合いに戻ったイメージがある。

Avishai Cohen『Brightlight』(写真左)。2024年11月のリリース。スウェーデンとテルアビブでの録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b, vo), Guy Moskovich, Eden Giat (p), Roni Kaspi, Noam David (ds), Yuval Drabkin (sax), Lars Nilsson (tp), Hilel Salem (flh), Jakob Sollerman (tb), Yosi Ben Tovim (g), Ilan Salem (fl), Jenny Nilsson (vo)。

イスラエルを代表する当代最高のベーシスト、アヴィシャイ・コーエンの新作。クラシック〜ジャズにおける伝統の音世界に、イスラエルに根付いている個性的なメロディ、リズム&ビートが融合、21世紀の現代のジャズのトレンドである、ネオ・ハードバップ、ネオ・モードな、コンテンポラリー・ジャズをさらに「深化」させた、コーエンが考える「イスラエル・ジャズ」がこの盤の中に溢れている。
 

Avishai-cohenbrightlight

 
リーダーのアヴィシャイ・コーエンはベーシスト。当然、アヴィシャイのアコベが要所要所でフィーチャーされる。これがまた絶品なベースのパフォーマンス。躍動感溢れるソリッドで骨太なアコベの響きが官能的。時にストレートに旋律を奏で、時にフロントをリード&鼓舞し、時に演奏全体のリズム&ビートをコントロールする。この盤でのアヴィシャイのベースは、アルバム全体を掌握しコントロールする「リーダーのベース」である。

アヴィシャイの周りを固めるサイドマン達も素晴らしいパフォーマンス。ロニ・カスピのドラミングは躍動的で迫力満点、ポリリズミックで変拍子を交えたドラミングは個性抜群。ガイ・モスコビッチとエデン・ギアットのピアノは、ハーモニー・センス抜群、きめ細やかなタッチ、高いテクニックは聴き応え十分。アヴィシャイの「リーダーのベース」と合わせて、「現代のリズム・セクション」の最高レベルのバッキング・パフォーマンスを聴かせてくれる。

リズム・セクションのパフォーマンスだけでも十分に楽しめるが、そんな最高レベルのリズム・セクションをバックに、フロントのトランペット、サックス、ギター、トロンボーン、フルートが、クールに端正に静的スピリチュアルにモーダルに吹きまくるのだから、このフロント管入りのトータルなグループ・サウンドも魅力満載。2024年のメインストリームな純ジャズの優秀盤だと思います。
 
 

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2024年11月26日 (火曜日)

ジョーヘンは申し分ないのだが.....

ジョー・ヘンダーソンは、5枚目のリーダー作『Mode for Joe』(1966年1月27日録音)で、ブルーノート・レーベルを離れる。まだ、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがプロデュースの実務を直接、取っていた時期にも関わらず、である。他の大手レーベルのオファーが金銭的にかなり魅力的だったのだろうか。とにかく、ヘンダーソンは、まずは、マイルストーン・レーベルに移籍する。

Joe Henderson『The Kicker』(写真左)。1967年8月10日と9月27日の録音。マイルストーン・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Grachan Moncur III (tb), Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Louis Hayes (ds)。リーダーのヘンダーソンのテナー、ローレンスのトランペット、モンカーのトロンボーンがフロント3管のセクステット編成。プロデューサーは、オリン・キープニュース。

前作『Mode for Joe』のセプテット編成から、ハッチャーソンのヴァイブを抜いて、ヘンダーソンのテナーとロンのベース以外の4人は異なるメンバーに交代したセクステット編成。基本的にはハッチャーソンのヴァイブを抜いただけだが、出て来る「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度は、ブルーノート時代の諸リーダー作と比較すると、はっきり言って「落ちている」。
 

Joe-hendersonthe-kicker

 
演奏者毎に「ジョーヘン流モード」の理解度にばらつきがあり、当然、楽器ごとの「ジョーヘン流のモード」に対する適応度にもばらつきがある。この「ばらつき」が「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度のレベルを落としている。加えて、ブルーノートの様な、本録音に先だった「充実したリハーサル」が不足しているのか、演奏自体が全体的に荒い。

リーダーのジョー・ヘンダーソンの「ジョーヘン流モード」の吹奏は申し分ないのだから、実に惜しい内容の6枚目のリーダー作になる。加えて、「ジョーヘン流モード」は硬派なモード・ジャズなのだが、甘いメロディーが 人気のハードバップの名曲「Nardis」、ボサノバの名曲「O Amor Em Paz (Once I Loved)」を選曲しているが、この2曲はどうにもモード奏法にあまりフィットしない曲の様で、この2曲の演奏には違和感が漂っている。

ジョーヘンのテナーについては申し分ないのだが、他の録音に参加したジャズマンの人選、アルバム・コンセプトにフィットする演奏曲の選曲、この2点について十分なプロデュースが出来なかった分、前作の名盤『Mode for Joe』の内容よりも一段、内容が落ちるところが実に残念なアルバムである。録音もジャケ・デザインもイマイチで、このアルバムは、逆説的に、ジャズにおけるプロデュースの重要性を我々に再認識させてくれる。
 
 

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2024年11月25日 (月曜日)

”ジョーヘン流モード” の充実形

ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)。愛称は「ジョーヘン」。若い頃から今に至るまで「ジョーヘン」で通している(笑)。1937年4月生まれ。2001年6月に惜しくも鬼籍に入る。64歳。早過ぎる逝去であった。初リーダー作が1963年、26歳の時だったから、ちょっと遅咲きのテナーマン。ハードバップ後期から頭角を現し、1960年代前半での初リーダー作ということで、ジョーヘンは、バリバリ、新主流派の範疇のテナーマンである。

Joe Henderson『Mode for Joe』(写真左)。1966年1月27日の録音。ブルーノートの4227番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Bobby Hutcherson (vib), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。うねうねモーダルなテナーマン、ジョーヘンの5枚目のリーダー作になる。ジョーヘンのテナー、モーガンのペット、フラーのボーン、ハッチャーソンのヴァイブの4楽器がフロントのセプテット編成。

さすが、リーダー作も5枚目になると、ジョーヘン流のモード・ジャズも洗練されて、ほぼ確立された状態なのが、この盤を聴くと良く判る。モーダルなフレーズ独特の「ウネウネ」感。ウェイン・ショーターのそれと同じ感じではあるが、ジョーヘンの「ウネウネ」感は、ショーターのそれよりも整然としていて流麗。捻れそうで捻れないストレートな音での「ウネウネ」フレーズの連発。ジョーヘンのモーダルなフレーズは滑らか。フレーズの音が飛んだり跳ねたりしない。聴けばすぐに「ジョーヘン流のモード」と判る独特の個性。
 

Joe-hendersonmode-for-joe

 
ジョーヘンのテナー、モーガンのペット、フラーのボーン、ハッチャーソンのヴァイブの4楽器がフロントを張るが、楽器ごとの「ジョーヘン流のモード」に対する適応度の違いは無い。フロント楽器の全メンバーが「ジョーヘン流のモード」を理解し、自分のものとし、自分の個性の中で「ジョーヘン流のモード」を表現する。リハーサルにも十分にコストと時間をかけて、演奏の精度と内容を向上させる、ブルーノートならではの演奏の充実度。

特に、モーガンのトランペット、フラーのトロンボーンの、ほど良く抑制が効いた、思索的でクールでエモーショナルな吹奏が素晴らしい。そして、管楽器の吹奏にパーカッシヴに絡み、「ジョーヘン流の」モーダルなフレーズをより印象的にする、モーダルなヴァイブの響き。そして、ウォルトン=ロン=ジョーチェンのリズム隊が供給する「ジョーヘン流のモード」に適したリズム&ビート、そしてグルーヴは聴きもの。

このジョーヘンの5枚目のリーダー作には、「ジョーヘン流のモード」への完全適用の演奏がぎっしり詰まっている。しかも、演奏全体はしっかりと理路整然と整っている。「ジョーヘン流のモード」が、直感に頼ったり、その時の気分によったり、感情に左右されたり、ファジーなモード・ジャズで無いことがよく判る。さすがはブルーノート・レーベル。そんな「ジョーヘン流のモード」の充実形をしっかりと記録している。
 
 

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2024年11月16日 (土曜日)

ハンコックの「凄み」を引き出す

ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」。今日はその「第4位」。

Herbie Hancock『Maiden Voyage』(写真左)。1965年3月15日の録音。ブルーノートの4195番。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Freddie Hubbard (tp), George Coleman (ts), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。邦題『処女航海』。マイルス・スクールで、直接、帝王マイルスの薫陶を受けた(ハバードは除く)若き精鋭達で構成されたクインテットの名演集。

この盤の評価については、アルバム紹介本で、雑誌で、ネットのブログなどで語り尽くされているので、ここでは語らない。ここでは、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」の第4位になった、この『処女航海』というアルバムのブルーノートらしさ、という切り口から考察してみたい。

この盤のパーソネルが面白い。ピアノのハンコック、ベースのロン、ドラムのトニーについては、当時のマイルスの「1960年代黄金のクインテット」のリズム・セクション。しかし、フロント管にマイルスとショーターはいない。当時のマイルスの「1960年代黄金のクインテット」の「ウリ」はモード・ジャズ。しかし、これは、マイルス&ショーターのモード・ジャズであって、ハンコック、ロン、トニーのモード・ジャズではない。

それでは、ハンコック、ロン、トニーの、当時のマイルスの「1960年代黄金のクインテット」のリズム・セクションのモード・ジャズはどうか。リズム・セクション主導のモード・ジャズはあり得るのか。モード・ジャズの個性を決定づける要素は何か。その答えが、この盤にあるように思える。

ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンのフロント2管のメンバー選定が面白い。テナー・サックスに、若干、ショーターの様に吹けるコールマン、トランペットに、確実にマイルスの様に吹けるハバード。何だか、疑似マイルスの「1960年代黄金のクインテット」の様な布陣。
 

Herbiehancockmaidenvoyage_1

 
出てくる音は、モード・ジャズの「教科書の様な」演奏。フロント2管のパフォーマンスに化学反応は起きない。テクニカルで端正な、マイルス&ショーターの様な、マイルス&ショーターのモーダルなフレーズをフォローした吹奏。今の耳で振り返って聴くと、この盤のフロント2管の吹奏は、テクニックは凄く素晴らしいが、フレーズ的には「安全運転」。

しかし、面白いことに、フロント2管が安全運転な分、バックのリズム・セクションのバッキングの演奏の創造力は素晴らしい。安全運転なフロント・フレーズに相対する様な、創造的でバリエーションに富んだモーダルなフレーズの連発。特に、バッっキングに回った時のハンコックのピアノの創造性と革新性は素晴らしいのだが、ここでも、その「バッキングに回ったハンコック」の凄みが噴出している。

バックに回って、フロントにマイルスとショーターがフロント管にいない時、不思議なことに、ハンコックは凄まじい想像性と革新性に富んだモーダルなフレーズを叩き出す傾向にある。ハンコックは、マイルスがフロントの時は、マイルスのモードにピッタリ寄り添い、ショーターがフロントの時は、ショーターのモードにガッチリ適応する。しかし、他のフロント管のモーダルな展開のバッキングに回った時のハンコックは、ハンコックならでは、の個性溢れるモーダルなフレーズを連発する。

そして、そんなハンコックならでは、の個性溢れるモーダルなフレーズの連発に、ベースのロン、ドラムのトニーは的確に反応する。そして、三位一体となったハンコックなモード・ジャズを展開する。この盤でも、フロントのコールマンハバードのバックで、ハンコック流のモード・ジャズが展開されていて立派。

ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、「他のフロント管のモーダルな展開のバッキングに回った時のハンコックは、ハンコックならでは、の個性溢れるモーダルなフレーズを連発する」という特性を理解していたのだろうか。

この盤は、テクニックが素晴らしい、教科書の様な、安全運転なフロント管のモーダルな展開の、バッキングに回った時のハンコックの、凄みある、創造性と革新性に富んだモーダルな弾き回しを愛でる為にあるアルバムだと僕は思う。

リーダー・ミュージシャンの個性と特性、長所を最大限に引き出し、音にして記録する。そんなブルーノート・レーベルの凄さが感じ取れるハンコックのリーダー作である。第4位はちょっとなあ、とは思うが、ブルーノート・レーベルの、レーベルの特徴が良く出たアルバムであることは間違いない。
 
 

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2024年11月14日 (木曜日)

ECMサウンドのモード・ジャズ

月刊誌レココレの2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この特集のアルバム・セレクトが興味深く、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きをしている。どの盤にも新しい発見があって、実に楽しい。今回のアルバムは初めて聴く「初聴き」盤。

Arild Andersen『Shimri』(写真左)。1976年10月、オスロの「Talent Studios」での録音。ECMの1082番。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Juhani Aaltonen (ts, ss, fl, perc), Lars Jansson (p), Pål Thowsen (ds)。ノルウェーのジャズ・ベーシスト兼作曲家アリルド・アンダーセンの2枚目のアルバムである。

典型的なECMサウンド。耽美的でリリカル、静的スピリチュアルな展開、力強くブリリアントな管の響き、切れ味良く透明度の高いリズム隊のリズム&ビート。リーダーのアンダーセンがノルウェー出身、サックス担当のアールトネンはフィンランド出身、ピアノ担当のヤンソンはスウェーデン出身、ドラム担当のトーセンはノルウェー出身。カルテットのメンバー全員が北欧出身だが、北欧ジャズ独特の響きとフレーズは希薄。
 

Arild-andersenshimri

 
ゆったりとしたミッド・テンポの演奏がメイン。演奏される展開はモーダル。演奏の雰囲気、響きはECM流のヨーロピアンな純ジャズ。そう、この盤の演奏は「欧州的なモーダルな純ジャズ」。ピアノのヤンソンのモーダルなアドリブ・フレーズは、どこか米国的。しかし、音の響きは「欧州的」。この盤の音世界は、米国的なモーダルな純ジャズを、ECMレーベルというフィルダーを通して、ECMサウンドを纏った「欧州的な響きのするモーダルな純ジャズ」に変換したが如くの音世界。

アンダーセンのベースは力感溢れる、しっかり「胴鳴り」のする、骨太なアコースティック・ベース。モーダルな演奏のベース・ラインをしっかりと押さえ、フロント楽器がアドリブ・フレーズを奏でる時は、しっかりと展開の底を支え、時に自らが前面に出て、印象的で骨太なアドリブ・ソロを聴かせる。ピッチもしっかりあって破綻が無い、いかにも「欧州ジャズ」的なアコベの音。聴き味抜群なベース音。

ECMレーベルのアルバムについては、即興演奏をメインとした、伝統的なジャズとはかけ離れた「ニュー・ジャズ」なアルバムが多数あるが、この盤は違う。この盤は、典型的なECMサウンドの中での欧州的なモード・ジャズ。静的でリリカルでクールで透明度溢れるモード・ジャズ。この盤では、ECMレーベルの中では、ちょっと異質な、伝統的なジャズが展開されている。とても興味深く、ECMとしてユニークな盤だと僕は思う。
 
 

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2024年10月30日 (水曜日)

お蔵入りに「成熟」を聴くJM

ショーターが、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(以降、JMと略)の「新・音楽監督」として残したショーター流モード・ジャズは、モーガンのトラペット、ショーターのテナーの「2管フロント」時代と、トロンボーンのフラーを追加した「3管フロント」時代と、2つの時代に分けることが出来る。今回は「2管フロント」時代のお蔵入り盤のレビューである。

Art Blakey and The Jazz Messengers『The Witch Doctor』(写真左)。1961年3月14日の録音。1967年のリリース。ブルーノートの4258番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガンのトラペット、ショーターのテナーが2管フロントのクインテット編成。

この1961年3月14日のセッションは、録音後、丸々、お蔵入りになっている。もともと1961年のJMはブルーノートを中心にかなりの量の録音を残している。お蔵入りになったのは、あまりの乱発になるのを防ぐ為だったのだろう。しかし、内容は一級品揃いで充実しているものばかり。お蔵入りにしっぱなしでは惜しいので、徐々に蔵出しイシューしていった。その一枚がこの盤である。
 

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まだ3管フロントになる直前(約3ヶ月後に3管フロントになる)、2管フロントのショーター流モード・ジャズなJMである。内容はかなり充実していて、一言で言うと「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」の成熟を聴くことが出来る好盤である。スタジオ録音後、即アルバム化された『A Night in Tunisia』が、1960年8月の録音なので、それより、7ヶ月も後なので、『A Night in Tunisia』と比較すると、やはり、「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」は更に成熟度を増している。

特に、新・音楽監督でもあるショーターのテナーの迫力が凄い。分厚い切れ味の良いラウドな音で、本家本元のショーター流モード・ジャズのモーダル・フレーズを吹きまくっている。このショーターのテナーの吹きまくりが凄い。ショーターのテナーは意外に冷静沈着な風情のモーダル・ブロウが印象的なんだが、この盤ではエネルギッシュでバイタルでモーダルな吹きまくりが凄い。

ショーター流モード・ジャズに完全適応しているモーガンのトランペットももちろん素晴らしいパフォーマンスなのだが、それを凌駕するショーターのテナーがグイグイ前へ出てくる。クインテットのグループ・サウンズという面では、ちょっとショーターが前面に出過ぎたきらいがあるので、それがお蔵入りになった理由かもしれない。
 
 

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2024年10月29日 (火曜日)

インパルスのモーダルな「JM」

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!)』(写真左)。1961年6月13, 14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガン、フラー、ショーターの3管フロントのセクステット編成。

1960年3月6日録音の『The Big Beat』から参加したウェイン・ショーター。ベニー・ゴルソンに代わる「新・音楽監督」として、辣腕を振るう。『Moanin'』で一世を風靡した、ファンキー・ジャズの旗手的存在だったジャズ・メッセンジャーズに、当時、ジャズ奏法の最先端だった「モード・ジャズ」を徐々に導入して行った。
 

Art-blakey-and-the-jazz-messengers1961-a

 
バリバリのファンキー・ジャズをやっていたJMが、いきなりモード・ジャズに転身する。ショーターは音楽監督として、徐々にモード・ジャズに対応する作戦に出る。まず、真っ先に、リーダーのブレイキーのドラムがモードに適応、ほどなく、トランペットのモーガンが適応し、フラーがそれに続く。そして、ベースのメリットが何とかモードに対応。しかし、ピアノのティモンズは時間がかかった。

しかし、『The Big Beat』から1年3ヶ月。ティモンズもしっかりモードに対応している。しかも、ブロック・コードを織り交ぜた、独特のモード奏法で、実に個性的なモーダルなパフォーマンスを展開している。この盤は、JMがモードに完全適応した姿を記録していて、演奏全体の雰囲気は、端正で整然として内容の濃い、JMならではのモード・ジャズを展開している。

この盤のセッションで、新・音楽監督のウェイン・ショーターが推進してきた、JM流のモード・ジャズは完成したイメージである。それぞれのメンバーの演奏は充実、完全にモードに適応。ただ、ティモンズのピアノだけが、ショーターのモードではなく、ティモンズ独自のモードで展開しているところが気になると言えば気になる。が、アルバム全体の印象は良好。
 
 

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2024年10月28日 (月曜日)

叙情的ジャズ・メッセンジャーズ

ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

逆に、それぞれの時代での「音楽監督」が表現するジャズの演奏トレンド、演奏志向に、ドラマーとして、ことごとく適応していった。ブレイキーのドラマーとして能力の高さを如実に表しているエピソードである。

Art Blakey and the Jazz Messengers『Like Someone in Love』(写真左)。1960年8月7日 (#3, 4, 6) と、8月14日(#1, 2, 5)の録音。リリースは1967年。ブルーノートの4245番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。LP時代は全5曲。6曲目はCDリイシュー時のボートラ。

ブルーノートの名盤、4049番『A Night In Tunisia』と、同日セッションの音源で構成されたアルバム。1960年に録音され『A Night In Tunisia』は、1961年5月に、ほぼリアルタイムでリリースされている。が、この盤は録音から7年経ってのリリース。裏『A Night In Tunisia』とも呼ばれるアルバムである。よって、アルバム評も『A Night In Tunisia』との比較がメインとなる。
 

Art-blakey-and-the-jazz-messengerslike-s

 
4049番『A Night In Tunisia』は、演奏全体の雰囲気が躍動的でバップ志向、それを前提にモーダルな演奏が展開される。4245番『Like Someone in Love』は、演奏全体の雰囲気が叙情的でリリカル、それを前提にモーダルな演奏が展開される。どちらもモード・ジャズの良好盤であるが、敢えて言うなら、『A Night In Tunisia』は「動」、『Like Someone in Love』は「静」。

新「音楽監督」のショーターが腕をふるう、叙情的なモーダルな演奏が実に心地良い。叙情的な、ゆったりしたテンポの演奏では、意外とモードは難物なんだが、この時代のジャズ・メッセンジャーズはこともなげに、粛々と、ミッドテンポ中心の叙情的でリリカルなモーダルな演奏を徹頭徹尾、繰り広げている。

タイトル曲の冒頭「Like Someone in Love」がこのアルバムの雰囲気を代表している。美しくドラマティックな展開のアレンジが秀逸。叙情的でリリカルなモード・ジャズが、意外とジャズ・メッセンジャーズの「別の側面」を聴いてりう様で実に良い。

熱くエネルギッシュでバップな演奏ばかりでは無い。こういった叙情的でリリカルなモード・ジャズもこともなげに、上質に演奏に仕立て上げるところは、この時代のジャズ・メッセンジャーズのポテンシャルの高さを物語る。

この『A Night In Tunisia』は、4049番『A Night In Tunisia』と併せて聴いて、その魅力は倍増する。「動」な演奏と「静」な演奏との対比も美しいし、「ショーターの考えるモード・ジャズ」が完成の域に達していることを確認できるのも、この盤のメリットだろう。
 
 

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2024年10月19日 (土曜日)

僕なりの超名盤研究・34

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。

ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Maiden Voyage』を聴かせてもらって、フュージョン・ジャズのアルバムも良かったが、特に、純ジャズの2枚については、いたく感動したのを覚えている。

そして、友人の家からの帰り道、久保田高司「モダン・ジャズ・レコード・コレクション」を買い求めて、ジャズ盤コレクションの道に足を踏み入れた。ハービー・ハンコックについては、FMレコパルの記事でその名前は知っていたので、まずはハンコックのアルバムの収集を始めた。

そこで、まず最初に手にしたのが、Herbie Hancockの『V.S.O.P.』。アコ・ハンコックとエレ・ハンコックの2つの側面をLP1枚ずつにまとめた名盤なのだが、僕はこの「アコースティックな純ジャズ」の演奏が実に気に入った。

このアコ・ハンコックのユニットは「V.S.O.P.」=「Very Special Onetime Performance」と命名された。ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演の折、ハービー・ハンコックがマイルスの黄金クインテットを再現することで、マイルスのカムバックを促す予定が、直前で肝心のマイルスがドタキャン。仕方なく、フレディ・ハバードを迎えて結成したこのV.S.O.P.クインテット。本来一1回きりの結成のはずが、予想外の好評に継続して活動することになる。

V.S.O.P.『Tempest in the Colosseum』(写真)。邦題は『熱狂のコロシアム』。1977年7月23日、東京の田園コロシアムでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard (tp), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。伝説の「V.S.O.P.」ユニットである。
 
Vsoptempest-in-the-colosseum  
 
V.S.O.P.名義のアルバムは、他に2枚、V.S.O.P.『The Quintet』(1977年7月録音)、V.S.O.P.『Live Under the Sky』(1979年7月26日、27日録音) があるが、この『Tempest in the Colosseum』の出来が一番良い。USAツアーの後の日本公演だけに、メンバーそれぞれの演奏もこなれて、十分なリハーサルを積んだ状態になっているようで、この日本公演のライヴ録音の内容は秀逸である。

ライヴアルバムとしての編集も良好で、この『Tempest in the Colosseum』が一番ライヴらしい、臨場感溢れる録音〜編集をしている。演奏自体も変に編集することなく、トニー・ウィリアムスの多彩なポリリズムが凄まじい長尺のドラムソロや、ロン・カーターのブヨンブヨンとしているが、高度なアプローチが素晴らしい長尺のベースソロも、しっかり余すことなく収録されているみたいで、ライヴそのものを追体験できる感じの内容が秀逸。

演奏自体も内容は非常に優れていて、この「V.S.O.P.」の演奏が、ノスタルジックな「昔の名前で出ています」風に、1960年代中盤〜後半の演奏をなぞった「懐メロ」な演奏になっていないところが良い。この演奏メンバー5人の強い矜持を感じる。当時として、モードの新しい響きがそこかしこに見え隠れし、この5人のメンバーは、マイルス後も鍛錬怠りなく、確実にモード・ジャズを深化させていたことを物語る。

収録されたどの曲も内容のある良い演奏だが、特にラストのハバード作「Red Clay」が格好良い。ジャズ・ロック風のテーマに対して、インプロビゼーション部になると、メンバー全員が「モード奏法」で襲いかかる。凄い迫力、凄いテンション、そして、印象あるフレーズの連発。

このライヴ盤は、1970年代後半の純ジャズが、どれだけ高度なレベルで維持されていたか、ということが如実に理解できる内容になっている。この「V.S.O.P.」ユニットが切っ掛けとなって、純ジャズが「復古」し始める。

この「V.S.O.P.」ユニットは、純ジャズ復古のムーブメントの「最初の第一歩」となった伝説にユニットである。このユニットの演奏には、現代につながる「新しい」モード・ジャズの要素が散りばめられている。名盤である。
 
 

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2024年9月27日 (金曜日)

ライフタイムの「フリーの成熟」

そういえば、トニー・ウィリアムスって、フリー・ジャズが好きだったな。そんな思い出がある。マイルス楽団にいた頃も、親分マイルスのいないところで、フリーなドラミングに走ったり、自らのリーダー作では、公然とフリー・ジャズを展開して、とにかく「ブイブイ」言わせていた。

The Tony Williams Lifetime『(Turn It Over)』(写真左)。1970年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Williams (ds, vocals on "This Night This Song", "Once I Loved", "A Famous Blues"), John McLaughlin (g, vocals on "A Famous Blues"), Larry Young (org), Jack Bruce (b, lead vocals on "One Word")。

そんなトニー・ウィリアムスが主宰する「ライフタイム」の第2弾。内容的には、先のライフタイムのデビュー作の、電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「先進的なフリー・ジャズ」は変わらない。というか、グッと洗練された「成熟イメージ」。

ベース・ラインの強化を狙ったのか、英国の伝説のブルース・ロック・グループ「クリーム」から、ジャック・ブルースをベーシスト兼ボーカル担当として招聘している。

確かに、デビュー作では、ベース・ラインはオルガンのラリー・ヤングが担当していたのだが、まず、右手でフリーなフレーズを弾きながら、定型のベース・ラインを供給するなんて出来ないので、実は影が薄かった、というか、放棄されていたイメージがある。
 

The-tony-williams-lifetimeturn-it-over

 
この2作目では、ジャック・ブルースがエレベで定型のベース・ラインを供給しているので、トニー+マクラフリン+ヤングのフリーな展開の底に、どっしりとした安定感がある。この辺りが、グッと洗練された「成熟イメージ」として、耳に響くのだろう。

しかし、ロック畑のブルースが、よくここまで、フリーな演奏のベース・ラインを弾きこなせるなあ、と感心する。英国では「ロックとジャズの境界が曖昧」だが、ブルースのエレベのプレイを聴いていて、それが良く判る。

この盤の特徴として、ボーカル入りのナンバーが多く採用されていること、があげられる。ボーカルの雰囲気は「サイケデリック」

。当時、流行だったサイケデリック・ロックからの影響だろうが、フリー・ジャズにサイケデリック、当時、米国で、若者中心に人気のあった「フリーとサイケ」の組み合わせ、そのものを反映しているところが、なんだか「抜け目が無い」。が、先進的なフリー・ジャズが、信条の「ライフタイム」としては、あまり成功しているとは思えない。

この盤は、トニー・ウィリアムスが主宰する「ライフタイム」の音世界である、電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「先進的なフリー・ジャズ」の成熟を聴くことが出来る。逆に言うと、これ以上の発展は難しいくらいの成熟度である。実際に、次作ではメンバー構成がガラッと変わることになる。
 
 

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