ハンクの「ソウルフルなピアノ」
アーゴ&カデット・レーベルの諸作には、レーベル・サウンドによる「統一感」がある。ちょっと癖の強い、ソウルフルな雰囲気濃厚なもの、ファンクネス濃厚なもの、どっぷりブルージーな歌心満点なもの、いわゆる「強めのファンキー&ソウルフルな音志向に統一されている。その「統一感」は見事なものである。
Hank Jones『Here's Love』(写真左)。1963年10月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Kenny Burrell (g), Milt Hinton (b), Elvin Jones (ds)。ギターがフロントのカルテット編成。
いぶし銀なバップ・ピアニストのレジェンド、ハンク・ジョーンズのリーダー作。バックを固めるのは、漆黒ブルージー&アーバン・ギターのケニー・バレル。ベースは「ジャッジ」の愛称でも知られる、ジャズ・ベース界の重鎮ミルト・ヒントン。ドラムはハンクの弟、バップ・ドラムを叩かせても一流のエルヴィン・ジョーンズ。
いぶし銀なバップ・ピアニスト、ハンク・ジョーンズの、ダイナミックで流麗、そこはかとなくファンクネス漂う典雅なバップ・ピアノが、アーゴ&カデット・レーベルの音志向と交わると、どんなバップ・ピアノに変身するのか。このハンクのリーダー作は、そんな興味にしっかりと応えてくれている。
内容的には、1963年10月初演の、メレディス・ウイルソンのミュージカル「Here's Love」を基に製作された企画盤。このミュージカルの楽曲を基にした、ギターがフロントのカルテット演奏なんだが、ハードバップというよりは、そこはかとなくソウルフル。ミュージカルの楽曲の流麗さを活かして、ちょっとファンクネスを漂わせ、端正でソウルフルな展開が実にお洒落。
そんなソウルフルな展開を牽引するのが、リーダーのハンク・ジョーンズのピアノ。ハードバップでファンキーな、バリバリな弾き回しを、ちょっとファンクネスを漂わせ、端正でソウルフルで、ちょっと小粋な弾き回しに変えて、アルバム全体の雰囲気を「ファンキー&ソウルフル」に整える。このハンクの弾き回しの「変化」はさすがである。ハンクの持つテクニックの高さを再認識する。
但し、ハンクのピアノのファンキー&ソウルフルは、「どっぷり」なものではない。流麗で典雅な、シンプルでジャジーな弾き回しで、ハンク独特の、ハンク仕様のファンキー&ソウル・ジャズになっているところが、ハンクが超一流の証。ハンクのピアノの個性の弾き回しの中で、ファンキー&ソウルフルなピアノを追求する。これぞ「プロの技」である。
ケニー・バレルのギターは長いソロを取らないが、小粋でソウルフルなフレーズを弾きまくる。明らかに、ソウルフルなハンクのピアノに呼応している。ソウルフルなハンクのピアノとバレルのギター。そして、その「ソウルフル」は、流麗で典雅な、シンプルでジャジー。
アーゴ&カデット・レーベルの音志向に沿いながらも、自らの個性を全面的に活かす。そんなアーゴ&カデット・レーベルの音志向の中で、自分の個性をしっかりと押し出す、そんなプロフェショナルな「技」を聴くことができる。そんなハンクの好盤である。
しかし、このジャケット・デザインは無いよな〜。ジャズ者の皆さん、決してこのジャケに引かずに、このハンクのリーダー作をお楽しみ下さい(笑)。
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