ベイシー楽団のダイナミズム
レコード・コレクターズ 2025年2月号の特集は「この曲のドラムを聴け! ジャズ/フュージョン編」。これは実に興味深い特集だ、と思う。ジャズ/フュージョンにおけるドラムの位置付けは、リズム&ビートのキープ役が主だが、実は、このドラムの立ち回りによって、ジャズ/フュージョンの演奏内容がガラッと変わる。
一昨日、Benny Goodman & His Orchestra、いわゆるビッグバンドにおけるドラムについて、史上初の「スター・ドラマー」、ジーン・クルーパのドラミングについて語ったのだが、確かに、ビッグバンドのダイナミズムを支えるリズム&ビートは「ドラム」に依るところが大きい。
Count Basie『Basie Plays Hefti』(写真左)。1958年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p) がリーダーの "Cont Basie Orchestra" 。今回、注目のドラマーは、Sonny Payne (ds)。カウント・ベイシー楽団の二代目ドラマー。僕はこのソニー・ペインというドラマーを「ベイシー楽団の爆弾男」と呼んで敬愛している。
冒頭「Has Anyone Here Seen Basie」を聴けば、1曲目から「ベイシー楽団の爆弾男」の面目躍如。ホーン・セクションが一斉に吠えるテーマ部では、ペインは「爆弾を落とすが如く」叩きまくり、フロント管がソロを取ると、思いっきりバスドラを「爆弾を落とすが如く」踏み込んで、フロント管を鼓舞しまくる。
2曲目「Cute」では、ミッドテンポのゆったりした演奏の中、ペインは絶妙のブラッシュ・ワークを披露する。ほんと、これが「絶妙」で、フロント管のユニゾン&ハーモニーのバックで、キッチリとリズム&ビートをキープし、ミッドテンポの優しい演奏に効果的なアクセントを散りばめる。
繊細できめ細やかな「紳士的な」ブラッシュ・ワーク。「爆弾を落とす」だけがペインのドラミングではないことが良く判る。この辺りが、「ペインは、間違いなく最高のビッグバンド・ドラマーだ」とされる所以だろう。
以降、全編に渡って、爆弾男と紳士的な男、二つの顔で、ベイシー楽団のダイナミズムを支え、ダイナミズムをベイシー楽団の個性の一つに仕立てあげる。ベイシー楽団のダイナミズムは、このペインのドラミングに依るところが大きい。
時々、ブレイクにトリッキーなフィルインを入れて客を笑わせるユーモア溢れるドラミングもペインの個性。「爆弾を落とすが如く」叩きまくり、繊細できめ細やかな「紳士的な」ブラッシュ・ワークを披露しつつ、ベイシー楽団のダイナミズムを音にする。そういう意味で、ペインも「スター・ドラマー」だと言える。ビッグバンドには「スター・ドラマー」が不可欠である。
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