2026年6月 2日 (火曜日)

極上ソウル・ジャズ・パーティー

米国のジャズ・オルガン奏者ルーベン・ウィルソン(Reuben Wilson)の、ソウルフルでファンキーなジャズ・ファンク盤である。全体の音的には、ソウル・ジャズというよりも、軽くアーシーなリズム&ビートをメインにしたジャズ・ロック&ジャス・ファンクという雰囲気で、1960年代のソウル・ジャズとは、グルーヴが縦ノリなのが特徴。

Reuben Wilson『A Groovy Situation』(写真左)。1970年9月18 & 25日、Van Gelder Studioでの録音。ブルーノートの4365番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Earl Turbinton (as), Eddie Diehl (g), Harold White (ds)。滑らかでファンキーなグルーヴを湛えた、楽しいクロスオーバー・ファンキーなアルバムである。

ルーベン・ウィルソン自身、前作『Blue Mode』(1969年)の硬派な路線から、本作では意図的にポップで親しみやすい「コマーシャル・ルート」へと舵を切った、ということだろう。ジャズ者(ジャズ・マニア)に対してだけでは無く、幅広いリスナー層にアプローチを試みた、キャッチーな作品として評価できる。
 

Reuben-wilsona-groovy-situation  

 
ポップス&ソウルのカバーが中心で、当時のヒット曲に対して、大胆にジャズ・ファンクなアレンジを充てている。乾いた明るい粘り気のあるソウルフルな、そしてR&Bな音色と、タイトなリズム・セクションが融合して、このアレンジに乗って、滑らかでファンキーなグルーヴを醸し出している。ジャズ者御用達の濃厚なグルーヴではない、軽快で明るい傾向のグルーヴである。

4曲目「A Groovy Situation」は、メル&ティムの有名なシカゴ・ソウル名曲をカバーしたタイトル曲。5曲目「Happy Together」は、ポップロックなバンド、ザ・タートルズの代表曲をソウルフルなジャズ・ファンクへ大胆カバー。6曲目「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」は、スティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲をジャズ・ファンクにアレンジ。

レーベル全体がジャズ・ファンクやソウル・ジャズ、そして商業的でキャッチーな路線へシフトしていく過渡期を象徴する、ファンクやR&B、ロックの要素を取り入れたサウンドが全盛の中での、ブルーノートの「コマーシャル路線」への挑戦の音である。難しいことを考えずに、純粋に、滑らかでファンキーなグルーヴを楽しむ盤だろう。ながら聴きに最適な好盤である。
 
 

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2026年5月30日 (土曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク好盤

1960年代後半からドナルドソンが精力的に取り組んでいた、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク路線のアルバムの中で、最もポップでイージーリスニング志向なアルバム。

後のフュージョン・ジャズのイージーリスニング志向盤と比べても、引けを取らない内容である。あまりに、ポップでイージーリスニング志向なので、硬派な純ジャズ者の方々からは毛嫌いされる傾向にあるが、後年のレア・グルーヴやヒップホップのサンプリング・ソースとしても非常に高く評価されている。

Lou Donaldson『Pretty Things』(写真左)。1970年1月9日、6月12日の録音。ブルーノートの4359番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (varitone-as, vo), Blue Mitchell (tp), Lonnie Smith (org, track 1), Leon Spencer (org, tracks 2–6), Melvin Sparks (g, track 1), Ted Dunbar (g, tracks 2–6), Jimmy Lewis (el-b, track 1), Idris Muhammad (ds)。

冒頭、パティ・ペイジなどの歌唱で有名な往年の名曲「Tennessee Waltz」を、ゆるゆるのブルース・ロック調のキャッチーなビートでのカバーが出てくるので面食らう。あまりに俗っぽくて、あまりにイージーなカバーなので、これはなあ、と思うんだが、じっくり聴いていると、演奏するメンバーが、ハードバップ後期から活躍する一流どころなので、意外と演奏自体は充実している。なので、演奏途中で飽きることは無い。
 

Lou-donaldsonpretty-things

 
逆に、こんなにポピュラーで俗っぽい曲をテーマに据えても、アドリブ部に入ると、上質な純ジャズ調のアドリブが展開されるからたまらない。この「上質な純ジャズ調のアドリブ展開」が、後のフュージョン・ジャズに欠けていくところなので、このルーさんの「テネシー・ワルツ」のカバー演奏は隅に置けない。

5曲目の「Pot Belly」の8分に渡る、イージーリスニング志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな演奏が象徴的。イドリス・ムハマッドによる、タイトで重いドラム・ブレイクから始まり、ヴァリトーン・サックスのソウルフルな音色、ファンキーでパーカッシヴなオルガン、重低音溢れるジャズ・ファンクなエレベのライン。その独特な、ちょっとダルでサイケな部分が見え隠れする音世界は、ジャズ・ファンクの名演のひとつだろう。
 
ラストの「Love」は、ナット・キング・コールなどの歌唱で世界的に大ヒットしたポップ・ナンバー「L-O-V-E」のカバー。ハッピーで爽快なグルーヴ、メインストリーム志向のアドリブ展開、ブルー・ミッチェルのトランペットもブラスの響きがブリブリ輝いている。テッド・ダンバーの「ヘタウマ」ファンキーなエレギが、演奏全体のグルーヴ感を煽っている。

ルーさんのアルト・サックスは全編に渡って絶好調。当時流行していた電子エフェクターを通した「ヴァリトーン(Varitone)」サックスも演奏しており、よりディープで太いファンク・サウンドを響かせていて良好。ポップでイージーリスニング志向なアルバムだが、意外とメインストリームしていて、聴き応えがある。好盤。
 
 

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2026年5月29日 (金曜日)

サイケなジャズ・ファンク盤です

マクダフが1969年から1971年にかけてブルーノートに残した4枚のアルバムのうち、最後の作品。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、そしてサイケデリック・ジャズな要素がほどよく融合した、実験的な演奏内容がユニーク。そして、更にユニークなのが、楽曲提供とアレンジを、ハードバップ時代の変わり種ジャズマンの一人、チューバ奏者のレイ・ドレイパーが担当している。

Brother Jack McDuff『Who Knows What Tomorrow's Gonna Bring』(写真左)。1970年12月1–3日、ブルーノートの4358番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Randy Brecker, Olu Dara (tp), Dick Griffin, John Pierson (tb), Paul Griffin (p), Joe Beck (g), Tony Levin (el-b), Donald McDonald (ds), Mike Mainieri (perc), Ray Draper (perc, vo, tuba, arr)。

全編に渡って、ポップ色豊かな、ライトで明るいジャズ・ファンクが展開され、その中で、怪しげなサイケデリック・ジャズな要素が忍ばされていたり、オルガンの弾きっぷりは、ジャズというよりは、ロックな響きと乾いた音色が大半を占めていたり、一風変わったファンクネスを伴いながら、スペーシーなポップ・ロックな音世界がユニーク。
 

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ジョー・ベックのエレギは、R&B志向+サイケデリック色なエレギで、ジャズ・ファンクというよりは、ファンク・ロック風の乾いたオフビートの粘らないファンクネスを前提としたエレギで、これはこれで、やっぱりユニーク。後にピーター・ガブリエル・バンドやキング・クリムゾン等で活動するトニー・レヴィンが、ジャズ・ファンクなベース・フレーズを弾きまくっているのもユニーク。

楽器の定位が浮遊するような不思議な音響ミックスがユニークで、従来のコッテコテなソウル・ジャズ(コテコテのオルガン+サックス+ギター)とは一線を画する。この浮遊感がサイケデリックな雰囲気に直結している。バックのサウンドには、サックスなどの木管楽器を一切排除し、トランペット、トロンボーン、チューバという金管楽器(ブラス)のみを配置して、アルバム全体に独特の「泥臭さ」と「重量感」を与えている。

なんか聴いていて、どこか「隅に置けない」好盤。従来のコッテコテなソウル・ジャズではない、サイケデリックな、ポップでロックで、どこか明るいジャズ・ファンクという雰囲気がとにかくユニーク。特にラストの「Wank's Thang」は、そんな雰囲気の代表的演奏だと感じていて、どこかディスコ調が漂う、マイルドでメロウなグルーヴが芳しい、マクダフのどこか哀愁あるオルガン・プレイが心地良い。
 
 

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2026年5月28日 (木曜日)

レア・グルーヴなキャンディド

キューバのジャズパーカッショニスト、カンディド・カメロのリーダー作。“千の指を持つ男(Thousand Finger Man)”と称された彼が、アフロ・キューバンの強烈なリズムと、当時のアメリカのソウル・ジャズ、ファンクの要素をスタイリッシュに融合させたレア・グルーヴの、後のフュージョン・ファンクを先取りした名盤である。

Candido『Beautiful』(写真左)。1970年10月20 & 27日の録音。ブルーノートの4357番。ちなみにパーソネルは、Candido Camero (conga, bongos), Bernie Glow, Pat Russo (tp), Alan Raph (tb), Joe Grimm (ss, bs), Frank Anderson (p, org), David Spinozza (g), Jerry Jemmott, Richard Davis (el-b), Herbie Lovelle (ds), Joe Cain (arr)。

ファンク系のフュージョン・ジャズの音作りと同傾向の「ジャズの即興演奏よりもダンスやグルーヴに重きを置く」音作りで、ファンキーなオルガン、エレキベース、そしてキャンディドの躍動感あふれるコンガが絡み合うソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のエレ・ジャズ。後のフュージョン・ジャズの要素満載である。

キャンディドのパーカッションは勿論のこと、アフロ・キューバン・リズムの重鎮であるキャンディドを支える、ニューヨークのトップクラスのスタジオ・ミュージシャンたちによるタイトでハイレベルな演奏が素晴らしい。ファンキーなカッティングギター、うねるエレベのグルーヴなライン、パーカッションと完璧にシンクロする重厚なドラムが、キャンディドのパーカッションを逆に映えに映えさせている。
 

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ジョー・ケインのプロデュース&アレンジが抜群。ソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のフュージョン・ファンクな音作りを小粋にお洒落にグルーヴにやっている。オリジナル曲だけでなく当時流行していたポップスやR&Bのカバーも含まれていて、このアレンジも優秀。

2曲目「Tic Tac Toe」は、Booker T. & the M.G.'sの名曲をカバーした、タイトなリズムのファンキーナンバー。初めて聴くと、この演奏は、1970年代後半のフュージョン全盛時代の優れたフュージョン・ファンクな演奏と錯覚するくらいの充実した、グルーヴィーなジャズ・ファンク・チューン。

3曲目の「Hey, Western Union Man」は、ジェリー・バトラーのR&Bヒット曲のカバー。洗練されたフィラデルフィア・ソウルと、アフロ・キューバンの熱いダイナミズムが見事にクロスオーバーした、アルバム随一のファンキー・トラック。分厚いホーン・アンサンブルとコンガの掛け合い、スピノザのカッティングギター、ジェモットによる重厚な「イカした低音」のエレベ。

キャンディドが主役でありながら、ソロで目立つのでは無く、「強力なニューヨークのバックバンドのキーマン」として、アンサンブルのグルーヴを、パーカッションで増幅させる役割に徹している。これが、このアルバムを「レア・グルーヴの名盤」化しているのだ。
 
 

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2026年5月22日 (金曜日)

アーバンなファンクネスとソウル

ジェームス・ブラウン風の泥臭いファンク、ストリート感溢れるジャズ、そしてアフリカ的なリズムを、彼の代名詞であるハモンドオルガン(B-3型)のカラフルな音色で包み込んだ、アーバンなファンクネスとソウルに満ちた内容である。

Lonnie Smith『Drives』(写真左)。1970年1月2日の録音。Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jerseyでの録音。ブルーノートの4351番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Dave Hubbard (ts), Ronnie Cuber (bs), Larry McGee (g), Joe Dukes (ds)。

ジャズ・オルガン奏者ロニー・スミス(Dr. Lonnie Smith)のソウル・ジャズ/ファンク・ジャズの佳作。アーバンでウォーム、ソウルフルかつエモーショナルなグルーヴが蔓延している。オリジナル盤は全5曲で構成されており、ジャズのスタンダードから当時のR&B/ポップスのカバーまで幅広く収録されている。

1.Twenty-Five Miles(エドウィン・スターのファンク・ナンバー)
2.Spinning Wheel(ブラッド・スウェット&ティアーズの大ヒット曲)
3.Seven Steps to Heaven(マイルス・デイヴィスの名演曲をアレンジ)
4.Psychedelic Pi(ロニー・スミス自身のオリジナル楽曲)
5.Who's Afraid of Virginia Woolf?(ジミー・スミスの名演で知られる佳曲)
 

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ロニー・スミスのオルガンをメインに、デイヴ・ハバードのテナーとロニー・キューバ―のバリサクの2管に加えてラリー・マギーのギター、ノリの良いタイトなドラムはマクダフ・バンドのジョー・デュークス。ジャズ・シーンを見渡した時、ロニー・スミス以外、あまり名の通ったメンバーでは無いが、出てくるグルーヴ感は一流。

ロニー・キューバーが奏でるバリトンサックスの太い低音ラインが、ロニーの操るフットペダル(足鍵盤)によるベースラインと効果的に絡み合い、ロック曲やファンク曲にも引けを取らない、小粋でヘビーなグルーヴを生み出している。

晴れ渡る青空のもと、当時の最新型高級車(1970年型リンカーン・コンチネンタル)のサンルーフから美女と共に顔を出すロニーの姿を捉えたジャケットは、「車の中で窓全開で聴くのに最高の音楽」というアルバムのコンセプトとのこと。

そういう意味では、このアルバムも商業主義に傾いた、売らんが為のイージーリスニング志向のオルガン・ジャズということになる。ただし、そこはブルーノート。演奏内容は及第点以上、アレンジもポップでファンキーで良好。アルバムの演奏自体のクオリティは高いと言える。
 
 

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2026年5月20日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・323

マクグリフのオルガンの個性満載。洗練されたブルース感覚、ゴスペルなど教会音楽の取り込み、抜群のタイム感が生み出す泥臭いグルーヴがマクグリフのオルガンの個性。彼独特のアーシー名音色、左手と足鍵盤による強烈なウォーキング・ベース、独特の「間」とパーカッシブな打鍵、そして、ドローバー(音色調整レバー)の見事なコントロール。マクグリフのオルガンは、その響き、音色、弾き回し、どれをとっても独特の個性。

Jimmy McGriff『Electric Funk』(写真左)。1969年9月、NYでの録音。ブルーノートの4350番。ちなみにパーソネルは、Jimmy McGriff (el-org), Blue Mitchell (tp), Stanley Turrentine (ts), Horace Ott (el-p, arr), Unknown (g), Chuck Rainey (el-b), Bernard Purdie (ds)。ギターが誰だか判らないセプテット編成。

ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクな演奏ではあるが、こってこてファンキーなグルーヴに乗って疾走するマクグリフのオルガンは、それまでの4ビート中心のハードバップではない、ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックそのものである。なので、それまでのブルーノート4300番台のオルガン・ジャズ盤が陥り易かった、イージーリスニング志向のラウンジ風のオルガン・ジャズからは脱却している。
 

Jimmy-mcgriffelectric-funk

 
従来のメンストリーム系のモダン・ジャズとは全く異なるリズム&ビートを底に忍ばせている。ドラムの**バーナード・パーディーとベースのチャック・レイニーという、R&B/ソウル界屈指の黄金コンビがリズム&ビートを支えているところが、この盤の、8ビートのジャズ志向のアレンジによる、「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックな雰囲気、を確実なものにしている。特にエレベの弾き出すベースラインはエグい。

ホレス・オットがアレンジするエネルギッシュなホーン・セクションの存在も大きい。「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックの音世界を、より濃いものにしている。凄まじいファンク・グルーヴでカヴァーした、当時の大ヒットロックバンド、ブラッド・スウェット&ティアーズのヒット曲「Spinning Wheel」も、オットのアレンジに負うところが大きい。

このアルバムは、従来の4ビート&スインギーな純ジャズとは、一線を画すものではあるが、当時のソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの最大の成果の一つ。マクグリフのディスコグラフィーの中でも最高傑作の1つとして良いだろう。コッテコテでスマートで泥臭い、オルガン・グルーヴが全編にわたって炸裂している。ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックとして聴けば違和感は全く無い。
 
 

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2026年4月30日 (木曜日)

ソウルフルなアンドリュー・ヒル

メロディーの断片、落ち着きなく変化する音階、濃密な多色和音、予測不能なリズム。自由度の限りなく高いモードからややフリー。突出した個性で、1960年代前半、遅れてきた鬼才ピアニストとして、記憶に残るピアニスト、アンドリュー・ヒル。そんな鬼才ピアニストが、1960年代終盤、ブルーノートの4300番台では、大変貌を遂げていく。

Andrew Hill『Lift Every Voice』(写真左)。1969年5月16日、Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ,での録音。ブルーノートの4330番。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Woody Shaw (tp), Carlos Garnett (ts), Richard Davis (b), Freddie Waits (ds)。ここに、7人のボーカル&コーラスが入る。

ゴスペル風混声コーラスを導入した鬼才ピアニストのソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。それも、完璧に筋が通ったソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクでは無い。ところどころ、我慢が出来なくなったのだろうか、ヒルのもともとのピアノの個性である、メロディーの断片、落ち着きなく変化する音階、濃密な多色和音、予測不能なリズム。自由度の限りなく高いモードからややフリーなピアノ、テナー、トランペットが出ては引っ込み、出ては引っ込む。

冒頭の「Hey Hey」で、ひっくり返る。アウト気味のテナーが出てきて、これは限りなくフリーなモーダルな展開かと思ったら、いきなり、ライトでゴスペルチックな混声コーラスが出てきてビックリ。これは、当時流行っていた「ライトなジャズ・ファンク」かと思ったら、またまたアウト気味のフリーキーなテナーが出てきて、モーダル&フリーなテナーを吹きまくり、そのうち、トランペットまで、同調したフレーズを吹きまくる。
 

Andrew-hilllift-every-voice

 
そして、ライトでゴスペルチックな混声コーラスがこれに絡む。バックで我関せずと、ヒルが、メロディーの断片、落ち着きなく変化する音階、濃密な多色和音、予測不能なリズム。自由度の限りなく高いモードからややフリーなピアノを悠然と弾きまくっていく。なんなんだ、この演奏は。

2曲目の「Lift Every Voice」に至って、これは従来のヒル・サウンドを踏襲したカルテット演奏、これは以前と変わらない、ヒル独特の「フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズ」を展開している。そこに、ライトでゴスペルチックな混声コーラスが絡んで、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな雰囲気を醸し出す、そんなアレンジの仕掛けになっているのが判る。

しかし、これなら、ライトでゴスペルチックな混声コーラスは要らないんじゃ無いか、とも思うんだが、録音年は1969年。ソウルフルな要素、ジャズ・ファンクな要素は、当時の大手ジャズ・レーベルからすると、必須の「サウンド要素」だっただろう。そうじゃないとアルバムが売れないと思い込んでいたフシがある。この盤だって、ライトでゴスペルチックな混声コーラスを当てることで、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな雰囲気を醸し出そうとしている。

しかし、メインストリームなジャズ、純ジャズ路線は不滅なんだから、ヒルのアルバムは、ヒルの個性のままで、制作〜リリースし続けても良かったのではないか。このライトでゴスペルチックな混声コーラスのお陰で、カルロス・ガーネットとテナー、ウッディ・ショウのトランペットの、アウト気味で限りなくフリーでモーダルな展開が心ゆくまで堪能出来ない。

このアルバム、しっかり聴くと、ヒルのカルテット演奏、ヒル独特の「フリー、スピリチュアル、アバンギャルドなジャズ」が素晴らしいだけに、このソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな雰囲気を醸し出そうとするアレンジが残念である。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2026年2月16日 (月曜日)

硬派クロスオーバーなベンソン

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの代表的レーベルである。クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、聴き手の「聴き心地、聴き易さ」を優先した、イージーリスニング志向のアルバムが多く見られるが、中には、純ジャズ志向の、なかなか硬派でメインストリームな盤もあって、これが意外と楽しめる。

George Benson 『Body Talk』(写真左)。1973年7月17–18日の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Earl Klugh (rhythm-g), Harold Mabern (el-p), Ron Carter (ac-b), Gary King (el-b), Jack DeJohnette (ds), Mobutu (perc, congas), Frank Foster (ts), Gerald Chamberlain Dick Griffin (tb), Jon Faddis, John Gatchell, Waymon Reed (tp, flh), Pee Wee Ellis (arr, cond)。

ブルース・フィーリング、ソウル・フィーリングに溢れる、純ジャズ志向のクロスオーバー・ジャズ盤である。演奏全体の構成は、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・ジャズだが、演奏されるジャズの雰囲気は「純ジャズ」。1960年代後半から、エレクトリック楽器の導入が進んだジャズ界の中で、エレクトリック楽器を活用しながらも、演奏内容は硬派な純ジャズという、なかなかの内容のベンソン盤である。
 

George-benson-body-talk

 
とにかく、ベンソンが弾きまくる、弾きまくる。バックには、ハードバップ期から、そして、当時の新進気鋭のジャズマン達が大集合して、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・グルーヴなバッキングを展開するが、そんな充実のバックが霞むほどのベンソンのエレギの弾きっぷり。何かに取り憑かれたように、鬼気迫る、それでいて、どこか余裕のある素晴らしい弾き回しに惚れ惚れする。

ソウル・フィーリング溢れる、R&B志向のクロスオーバーな演奏も良い味を出している。ベンソンのソウル・クロスオーバーな演奏は、ファンクネスを過度に出さず、スマートでライトなファンクネスを撒き散らしながら、ブラス・セクションを絡めながら、R&Bなグルーヴ、モータウン名グルーヴを醸し出しながら、やっぱり「弾きまくる」。このブラス・セクションが「キモ」。R&B、そしてモーダウンには、ブラス・セクションが良く似合う。

全5曲中、4曲がベンソンの作(1曲目「Dance」だけ、エリスとの共作)気合いが入っている。ウエス・モンゴメリーの後継者と目されて脚光を浴びたベンソンではあるが、この盤では、ウエス・モンゴメリーの影響下から抜け出て、ウエスの弾きっぷりを下敷きにしつつ、ベンソンならではのギターの個性を確立させているのが、この盤のパフォーマンスを聴いていて、それが良く判る。純ジャズ志向の良質なエレギである。
 
 

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2026年2月 6日 (金曜日)

CTIのエレなソウル・ジャズ

CTIレーベルのカタログを見つつ、該当のアルバムの有無をチェックしている。A&M 3000シリーズから、CTI 1000シリーズまでの約30枚については、魅力的なイージーリスニング志向の硬派なクロスオーバー・ジャズのアルバムが目白押しで、意外と聴き応えのあるアルバムが沢山ある。

Fats Theus『Black Out』(写真左)。1970年7月16, 22日の録音。CT 1005番。ちなみにパーソネルは、Fats Theus (ts), Grant Green (g), Clarence Palmer, Hilton Felton (org), Chuck Rainey, Jimmy Lewis (b), Idris Muhammad (ds), Eddie Moore (saw)。幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ジャズ盤。CTI初期のレアな1枚。

リーダーの幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ファッツ・テウスは米国ルイジアナ出身。最初のキャリアは、プレストン・ラブのバンドに在籍。次に、オルガン奏者のビリー・ラーキンのバンドに参加。その後、ジミー・マクグリフのバンドに加入し、名の知れた存在になって、この本作は、そのジミー・マクグリフ・バンド在籍中に出したリーダー作。
 

Fats-theusblack-out

 
CTIレーベルのアルバムの中では珍しい、ブラス・セクションは、弦オーケストラがいないスモールコンボでの演奏。さらに録音はルディ・ヴァン・ゲルダー。1960年代のよき時代のソウル・ジャズという雰囲気がプンプンする。CTI盤とは言え初期の盤、ソフト&メロウな雰囲気はなく、音としては、クロスオーバーなエレクトリック・ソウル・ジャズといった雰囲気濃厚。

テウスのテナーが、何かアタッチメントを付けているのであろう、エレクトリックでウォームでファンクなテナーを聴かせる。そして、グラント・グリーンが、パキパキで硬質な音質を少しラウンドさせウォームな響きに変えて、テウスとグリーンのフロント2人で、ライトでウォームでメインストリームな「エレクトリック・ソウル・ジャズ」な演奏を聴かせてくれる。

ジャズ・ファンクとまではいかないまでも、この「エレクトリック・ソウル・ジャズ」のライトでちょっとユルユルのグルーヴはこの盤ならではのもの。聴き進めていくうちに「癖になる」。ソウル・ジャズとクロスオーバー・ジャズの融合。殆ど、無名のサックス奏者のリーダー作ですが、適度にユルユルなファンキー・グルーヴが芳しい好盤だと思います。
 
 

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