2024年3月28日 (木曜日)

ミンガスの名盤 『メキシコの想い出』

ベーシストがリーダーのアルバムは難しい。ベースという楽器自体、リズム&ビートと演奏のベースライン’を供給するのがメインの楽器なので、管楽器などの様に旋律を奏でるのが「得手」ではない。つまり、演奏する旋律をメインに、演奏の個性や特徴を全面に出すのが難しい。

それでも、ベーシストがリーダーのアルバムには、リーダーのベーシストの個性や特徴、テクニックを全面に押し出したアルバムもある。しかし、これは後が続かない。個性や特徴、テクニックを披露したらそれでお終い。次のリーダー作を同じコンセプトで作るわけにはいかない。もう一つのベーシストのリーダー作の傾向としては、そのセッションのリーダーとして、ベーシストの表現したいスタイルや音楽性をバンド全体で表現するというもの。

Charlie Mingus『Tijuana Moods』(写真左)。1957年7月18日と8月6日の録音。邦題『メキシコの想い出』。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Clarence Shaw (tp), Jimmy Knepper (tb), Shafi Hadi (as, ts), Bill Triglia (p), Dannie Richmond (ds), Ysabel Morel (castanets, vo), Frankie Dunlop (perc), Lonne Elder (vo)。

トランペット、トロンボーン、サックスの3管フロントに、リーダーのミンガスをメインとしたピアノ・トリオのリズム・セクションのセクステットがメイン。そこに、ボーカルとパーカッションがゲストとして参加する。

総勢9名編成のバンド・セッションなのだが、とにかく音が分厚い。まるで、ビッグバンドの演奏を音を聴いているよう。そして、音の重ね方が独特。2〜3フレーズ聴いただけで、これはミンガス、と判るくらい特徴のある音の重ね方。この独特の音の重ね方で、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルが奏でられるのだ。もうそこは絶対に「ミンガスの音世界」。このミンガスの音の重ね方が僕は大好きで、ジャズを本格的に聴き始めた頃から、折につけ、ミンガスのリーダー作は耳にしている。
 

Charlie-mingustijuana-moods

 
さて、この盤は、ミンガスがメキシコの都市、ティファナに傷心旅行をした時の経験を基にした楽曲で固めた「企画盤」。冒頭の「Dizzy Moods」の、フラメンコのコード進行を拝借しつつ、ちょっとすっとぼけた、それでいて、硬派で切れ味の良いアンサンブルは、もう既に「ミンガス独特の音世界」。そんなアンサンブルのバックで、ミンガスの重低音ソリッドなベースがブンブン唸りを立てて闊歩する。この1曲だけで、ミンガス・ミュージックここに極まれり、である。

2曲目の『Ysabel's Table Dance』は圧巻。収録時間は10分を超える大作だが、スパニッシュな響きのするカスタネットに続いて、フロント管がミンガス独特のマイナーな哀愁ユニゾン&ハーモニーがスッと入ってきて、ミンガスはフラメンコ・ギターの如く、アコベを重低音よろしく骨太に「掻き鳴らす」。アンサンブルからアドリブまで、バッチリ決まった、むっちゃ格好良い、至高のミンガス・ミュージックの「具現化」である。

全体にエキゾチックな香りを醸し出し、フラメンコのリズムやコード進行を拝借していたり、ミンガス流の「スパニッシュ・モードへの接近」が、このアルバムのそこかしこに感じられて、しかも、そんな音志向をベースにしたミンガスのアレンジも素晴らしいの一言。このミンガスのアレンジがアルバム全体を通じて一貫していて全くブレがない。この盤での、参加メンバーそれぞれのパフォーマンスの統一感は半端ない。

それぞれの楽器をフルフルに鳴らし、基本セクステットの演奏をまるでジャズ・オケの様に、分厚く豊かなアンサンブルで聴かせるアレンジとパフォーマンスは、ミンガス・ミュージックの真骨頂。ミンガス自身も「我が最高の作品」と自評する熱の入ったリーダー作。名盤です。
 
 

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2023年1月14日 (土曜日)

ライヴ「不思議の国のミンガス」

チャールズ・ミンガスのリーダー作を聴き継いでいると、曲毎のテーマでのフロント楽器の奏でるフレーズを聴くと、すぐに「これはミンガスの音」だと判る。ミンガス・ミュージックの音の響きは独特の個性があって、これは、あの偉大なジャズ界のレジェンド、デューク・エリントンの音に通じるもの。

ミンガスはエリントンを一生敬愛していたと言い伝えれれる位、ミンガスはエリントン・ミュージックの信奉者で、ミンガス・ミュージックは、エリントン・ミュージックの継承とも言えるだろう。ミンガスは事あることに、エリントンに対する「畏怖」を表明し、エリントン・ミュージックを効果的に借用する。

Charles Mingus『Jazz Portraits: Mingus in Wonderland』(写真左)。1959年1月16日、NYの「Nonagon Art Gallery」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), John Handy (as), Booker Ervin (ts), Richard Wyands (p), Dannie Richmond (ds)。

ジョン・カサベテスの映画処女作「アメリカの影」のために書かれた曲(「Nostalgia in Times Square」と「Alice's Wonderland」)などをミンガス流にアレンジしてライヴ録音したもの。フロント2管+リズム・セクションのクインテット編成。わずか5人で演奏しているとは思えないほど、演奏される音は「分厚く迫力がある」。
 

Jazz-portraits-mingus-in-wonderland

 
フロント2管のユニゾン&ハーモニーに厚みがあって、リズム隊のピアノとドラムの低音が効果的に重なって、その底に「超重量級」のミンガスのブンブン・ベースが鳴り響いて、分厚い音圧の高い演奏が耳に飛び込んでくる。これが、ミンガス・ミュージックの真骨頂。ミンガスのアレンジの成せる技である。

ジョン・ハンディのアルト、ブッカー・アーヴィンのテナー2管が好調で、特に、ジョン・ハンディが絶好調。ミンガスはフロント管のメンバーのスカウトに長けているが、この二人も、ミンガス・ミュージックの「分厚い音圧の高い」音世界に大きく貢献している。このフロント2管が活き活きと吹き回している様が実に「ジャズしている」。

このライヴ・パフォーマンスは、バンド全体が適度なテンションの中、良い意味でリラックスして、演奏を楽しんでいる様子が良く判る。そんな良い雰囲気の中、ミンガス御大もリラックスした、伸び伸び自由なベースラインをブンブン、低音を鳴り響かせながら、弾きまくっている。ほんと、全編、楽しそうに演奏している。

このライヴ盤では「ミンガス流のジャングル・ミュージック」をしっかりと感じ取れる。アルバム全体の収録時間はちょっと短くて物足りなさは残るが内容は良い。
 
 

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2023年1月10日 (火曜日)

1955年のミンガス・コンボ

ジャズ・ベーシストのリーダー作を整理している。ジャズの歴史上に名を残している一流ベーシストについては、リーダー作の殆どは押さえておきたい。そう思って整理していると、まだ、しっかりと聴いていなくて、このブログに感想記事をアップしていないアルバムが結構ある。

そもそも、他の楽器に比べて、ジャズの歴史上に名を残している一流ベーシストの数が少ない。チャールズ・ミンガス、レイ・ブラウン、ロン・カーター、ポール・チェンバース、ジミー・ギャリソン、パーシー・ヒース、チャーリー・ヘイデン、最近では、クリスチャン・マクブライド、ジャコ・パストリアス、マーカス・ミラー、と、これくらいしか浮かばない。

ぼやきはさておき、先ず手始めに「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」の整理。意外と聴きかじったままのリーダー作が沢山ある。ディスコグラフィーを確認していて、かの有名な1956年の『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』以前のリーダー作については、聴いたことが無いリーダー作もあることが判明。これはいけない、ということで、早速、真剣に聴き直し。

Charles Mingus『Mingus at the Bohemia』(写真左)。1955年12月23日、NYのカフェ・ボヘミアでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b, cello), George Barrow (ts), Eddie Bert (tb), Mal Waldron (p), Willie Jones (ds), Max Roach (ds, on "Percussion Discussion" only)。名盤『直立猿人』(1956年)リリース前年のライブ録音になる。
 

Charles-mingusmingus-at-the-bohemia

 
この頃のミンガスといえば『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』ばかりがクローズアップされるが、どうして、このカフェ・ボヘミアのライヴのパフォーマンスも「直立猿人」に勝るとも劣らない内容。もうこの頃、既に「ミンガス・ミュージック」は確立されていたことが良く判る。

冒頭の「Jump Monk」は、後の「直立猿人」に似た構造をした秀曲。初めて聴いた時は「直立猿人」かと思いましたぜ。よく聴くとちょっと違う。でも、ベースのオスティナートから始まり、2管のアンサンブルが被さり、シンコペーションで進み、テーマをバーッと展開して、後はブレイキング・コーラスからアドリブというところなんぞ、雰囲気はそっくり。

他の曲、特にスタンダード曲の「Serenade in Blue」「Septemberly」「All The Things You C#」のアレンジと演奏が秀逸。他のハードバップなアレンジとは一味もふた味も違う、ミンガス・オリジナルなアレンジが見事。ミンガスはリーダー作をオリジナル曲で固めることが多いが、スタンダード曲を扱わせても「超一級品」。この盤でもその才能を遺憾なく発揮している。

ダニー・リッチモンド、ジミー・ネッパー、エリック・ドルフィーといった強烈な曲者ジャズマンを従えたミンガスの「黄金のコンボ」以前のパフォーマンスなんだが、その「黄金のコンボ」には及ばないにせよ、予想外に充実しているのには感心した。マイルス同様、当時のミンガス周りのジャズのレベルは高い。
 
 

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2022年8月 7日 (日曜日)

ミンガス・ミュージックの確立

Charles Mingus(チャールズ・ミンガス)。モダン・ジャズにおける希有のベーシストである以上に、バンド・リーダーとして、アレンジャー&コンポーザーとしての実力が突出していると僕は感じる。何時の時代でも、ミンガス・バンドの構成力、演奏力、展開力は非常似高いレベルを維持しているのは立派だ。

Charles Mingus『The Clown』(写真左)。邦題『道化師』。1957年2月13日と3月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Shafi Hadi (as, ts), Jimmy Knepper (tb), Wade Legge (p), Dannie Richmond (ds), Jean Shepherd (narration, track 4)。

1956年の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』の次のリーダー作。パーソネルを見渡すと、前作からガラッとメンバーを入れ替えている。前作のパーソネルとの大きな違いは、この「道化師」は、あまり有名で無いメンバーが採用されている、ということ。この盤以降、ミンガス・バンドのリズム&ビートと預かるドラムのリッチモンドと、トロンボーンの盟友ネッパー以外は、有名どころのメンバーは見当たらない。

しかし、そんなちょっと地味なメンバーなので、この盤、前作の『直立猿人』と比べて、内容は劣るのだろうだろうと思いきや、前作の『直立猿人』の内容を上回るレベルの、ミンガス・バンド史上、ベスト5に入る位の内容の充実度を誇るのだから、ミンガスのバンド・リーダーとしてのバンド・サウンド作りの手腕の凄さ、そして、何より、メンバーの演奏力と個性を最大限に発揮させる、アレンジャー&コンポーザー賭しての実力の高さを実感する。
 

Charles-mingusthe-clown

 
この『道化師』というアルバム、ミンガス・ミュージックの個性と特徴の全てが反映されている、といって良い位の内容の充実度高さ。バンド・サウンドのアレンジの基本は「エリントン・ミュージック」ということは判るが、ミンガスのアレンジは、エリントン・ミュージックを更に発展させ、ミンガス独特の音の重ね方と響かせ方、そして、それぞれの楽器のアドリブ展開のスペースの絶妙な配置を施して、独特で唯一無二な「ミンガス・ミュージック」を確立させている。

アンサンブルの「音の塊」が整然と重厚に響き、ドラマチックな展開を増幅させる。整然としたジャジーでブルージーな響きは、否が応でも「ジャズ」を強烈に感じさせる。そして、特徴的なのは、ユニゾン&ハーモニー、アンサンブルが画一化せず、自由度が高く、バリエーションに富んでいるところ。サウンドのパーツそれぞれがカラフルなのは、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルの自由度が高く、バリエーションに富んでいるからだろう。

そんな「確立されたミンガス・ミュージック」がこの『道化師』にギッシリ詰まっている。前作『直立猿人』よりも旋律が美しく、展開がドラマチックで聴き易い。ミンガスのブンブン鳴り響く重低音ベースも心おきなく堪能出来る。

「ミンガス・ミュージック」は何たるか、を感じるには絶好の一枚が、この『道化師』。かなり重厚な内容のモダン・ジャズなので、その迫力に押されるかもしれないが、これが「ジャズ」である。スピーカーの前で、そこそこの音量で、この「ミンガス・ミュージック」を体で受け止めていただきたい。
 
 

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2022年7月31日 (日曜日)

『Cumbia & Jazz Fusion』再び

久々に「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」のリーダー作を一気に聴き直したくなった。ミンガスのキャリア初期の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』 を聴いて、雄大なオーケストラルな音世界、正統なモダン・ジャズのアレンジを踏襲した重厚な音作り、しっかりと統率されたグループ・サウンド、に感じ入って以来、節目節目でミンガス・ジャズを聴いてきた。

僕はミンガス・ジャズには、モダン・ジャズの「基本中の基本」の音作りが宿っていると感じている。エリントン・ジャズを踏襲し、当時のジャズの最新の演奏トレンドを積極的に取り込み、何時の時点でも、その時点での「先端を行くジャズ」を表現している。つまり、モダン・ジャズを常に進化させている訳で、これは音楽を創造していく上での「基本中の基本」で、ミンガス・ジャズはそれをアルバム毎に、メンバー一体となって表現している。

マイルスと同じレベルで、モダン・ジャズを進化させ続けたミンガス・ジャズ。そんなミンガス・ジャズをもう一度、網羅的に体験したいと思い立った。今回は、遺作からキャリア初期に遡って、ミンガスのリーダー作を聴き直していく。逆に、そのアプローチの方が、ミンガス・ジャズの進化を感じ取れ易いと考えた。

Charles Mingus『Cumbia & Jazz Fusion』(写真左)。1976年3月はローマ、1977年3月はNYでの録音。ビッグバンド編成に、バズーンやオーボエ、イングリッシュ・ホルン、バスクラなど、木管楽器や多くのパーカッションを参入させているので、パーカッションの表記はオミットさせていただく。ドラムに永遠の相棒、ミンガスのベースの最高のパートナーであり、最高のリズム隊を構成するドラマー、ダニー・リッチモンドはちゃんといる。

LP時代の正式な収録曲は2曲のみ。A面を占める「Cumbia and Jazz Fusion」とB面を占める「Music for "Todo Modo"」の2曲。CDリイシュー時のボートラである「Wedding March/Slow Waltz」と「Wedding March/Slow Waltz [alternate take]」は蛇足な追加収録として、本来のアルバム作品としては不要なので、常にオミットして聴いている。
 

Charles-minguscumbia-jazz-fusion

 
"Cumbia(クンビア)"とは、カリブ船沿岸の黒人たちが多く住みついた漁村を中心に広がった、南米の北端に位置するコロンビアを代表する音楽のことで、アフリカン・ネイティヴぽく長閑で土着的な響きが特徴。"Jazz Fusion"は、1970年代後半、「融合」のジャズとして一世を風靡した演奏トレンドのことを指すのだろうが、ここでは、ジャズの歴史的な演奏方法、演奏トレンドの全てが詰まっていて、それが違和感なくミックスされ、展開されていくミンガス・ジャズの「融合」を指すのだと思う。

1曲目の「Cumbia & Jazz Fusion」は、収録時間28分強、長尺の力作。その演奏は、クンビアの長閑でホンワカした演奏から、ハードなジャズ・オーケストラまで目眩く「ジャズ絵巻」。全体的にスピード感のある、非常に優れたジャズ・オーケストラ。クンビアの調べの存在が、この演奏には「ジャズのルーツ」を感じさせる、実に印象的な演奏になっている。クンビアとジャズの「融合」。僕はこの演奏が大好きだ。

2曲目の「Music For "Todo Modo"」は、トランペットやサックスのフロント楽器による映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏から入ります。それが5分ほど経つと、ちょっと捻りの入ったフリーキーな演奏に早変わり。再び、映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏に戻り、次にやって来るのは、正統派ハード・バップな演奏。ミンガスの骨太ベースが響き渡って、この2曲目の演奏は、ジャズの演奏トレンドの「融合」。ミンガス・ジャズの真骨頂である。

途中でダレない構成力と演奏力。この盤に詰まっているメロディーは、意外とキャッチャーであり、ソフト&メロウでもある。時に、フリーキーにアブストラクトにも展開するが、それはジャズが故の、即興演奏を旨とするジャズとしての必然でもある。ミンガスの考える「フュージョン・ジャズ」がこの盤に詰まっている。

ミンガスは、この素晴らしい内容の「融合」ジャズをものにしてリリースした後、翌年早々に鬼籍に入ることになる。潔いと言えば潔い、ミンガスと言えばミンガスらしい、最後のミンガス・ジャズの記録である。
 
 

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2022年6月21日 (火曜日)

ミンガスとホーズの邂逅の記録

昨日、書いたのだが、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤については、だいたい、新装リイシューされるタイミングで、その存在を思い出し、おもむろに聴き直して、再び感動する。のだが、実はこの盤も、そういった、20年ほど前に聴いたっきり、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になっていた類のものである。

Charles Mingus『Mingus Three』(写真左)。1957年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Hampton Hawes (p), Dannie Richmond (ds, tambourine (overdubbed))。米国西海岸からニューヨークへやってきたホーズが、ミンガスとたまたま出会って、リッチモンドを誘って録音した音源だそうだ。

「怒れるベーシスト」ミンガスは、大型のコンボやビッグバンドで演奏することが多く、ピアノ・トリオで録音するのは珍しい。トリオ演奏でのミンガスといえば、デューク・エリントンとマックス・ローチとの『Money Jungle』くらいしか思い浮かばない。逆にホーズはトリオでの演奏が多く、トリオ演奏でその個性と実力を発揮するタイプである。

全7曲中、2曲がミンガス作、1曲がホーズ作、他はスタンダード曲。ミンガス&ホーズ作の曲も良い感じだが、スタンダード曲のアレンジが、実にミンガスらしいもので感心する。
 

Charles-mingusmingus-three

 
他のスタンダードのアレンジとは、一風趣きが異なって、かなり聴き応えがある。音楽監督な役割が得意なミンガスの面目躍如。かなり「ノって」いたのだろう、ミンガスのベース・ソロも躍動感溢れ、変幻自在な重低音をブンブン響かせて絶好調である。

ホーズが何時になくバリバリ、バップなピアノを弾きまくっている。当時、西海岸では、洒落たアーバンな弾き回しのトリオ盤を出していた頃なので、このバリバリなバップらしい、カッ飛んだ弾きっぷりにはビックリ。しかし、このバリバリなバップ・ピアノがホーズの本質なんだろう。とてものびのびと弾きこなしている。タッチも切れ味が良く、ホーズも絶好調だ。

リッチモンドのドラムも硬軟自在で、ミンガスとホーズに追従する。タンバリンをオーバーダブしたりして、リッチモンドも絶好調。

発売65周年を記念して、貴重な未発表音源を収録したデラックス・エディションで、CDリイシューされて、そのタイミングで20年振りに聴き直した『Mingus Three』。その素晴らしい出来に思わずビックリ。名盤はいつ聴いてもやはり名盤だなあ、と感心することしきり、である。
 
 

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2021年10月22日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・8

ミンガス・ミュージック。雰囲気的になんだか難解な印象で、しかもバリバリ硬派な純ジャズ。時々、フリー・ジャズ的な雰囲気も時々不意を突くように入る。不協和音前提のユニゾン&ハーモニーは十八番中の十八番。振り返れば、実にジャズらしいジャズのひとつだと思うんだが、ジャズを聴き始めた頃は、このミンガス・ミュージックは実に「敷居が高い」。

Charles Mingus『Pithecanthropus Erectus』(写真左)。邦題『直立猿人』。1956年1月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Jackie McLean (as), J. R. Monterose (ts), Mal Waldron (p), Willie Jones (ds)。マクリーンのアルト・サックスとモンテローズのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成。ミンガス・ミュージックの最初の成果である。

この盤、ジャズ者初心者向けの名盤紹介に必ずと言って良い位、このタイトルが挙がるのだが、内容的には決して易しく無い。基本的に難解。ジャズの基本である即興演奏とジャズ演奏の自由度の高さ、ジャズの表現力の高さ、に着目したミンガス・ミュージックで、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。
 

Pithecanthropus-erectus-mingus

 
アレンジが優れているのだろう、クインテット編成でビッグバンドの様な分厚い音。不安な気持ちを増幅させる様な不協和音の取り扱い。メンバーそれぞれのアドリブ演奏の自由度が高く、演奏スペースが広い。それでいて、テーマ部は整然とした、強烈に統制が取れたユニゾン&ハーモニー。そして、演奏全体の統制は、骨太でソリッドで強靱なミンガスのベースが執り行う。ミンガスのベースがあってこそ成立する「ミンガス・ミュージック」の極意がこの盤に詰まっている。

ジャズの表現力の高さは「A Foggy Day」で確認出来る。この曲はサンフランシスコのフェリー乗り場に向かうまでの霧の深い日の車のクラクション、警報の音、二日酔いの気怠さ等々、自らが感じた霧深き日の雰囲気を演奏で表現している、とミンガスはジャケ裏のライナーノーツで語る。この「表現力の高さ」は、このクインテット編成のメンバーそれぞれの力量に負うところが多い。それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮している。

ポップな旋律、キャッチャーなメロディーはほぼ皆無。この盤は硬派で取っ付き難くはあるが、内容的には「良質のハードバップ」演奏が詰まっている。ストイックでその高度な内容はアーティスティックですらある。そういう意味でこの盤、初心者は要注意。ジャズを聴き始めて、即興演奏の妙とアドリブの優劣が判ってから、腰を据えて聴くことをお勧めする。
 
 
 

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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
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2021年8月 1日 (日曜日)

ミンガス・バンドを聴き直す。

Charlis Mingus(チャールズ・ミンガス)の創り出す音が好きだ。もともとは骨太でソリッドなレジェンド級のベーシスト。加えて、コンポーザーでもあり、バンドのリーダーでもある。ミンガスの創り出す音は「ミンガス・ミュージック」と名付けられ、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。

特に、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方とベース・ラインに独特のものがあって、どのアルバムもしばらく聴いていると「あ〜、これはミンガスやな」と判るくらいの強烈な個性である。ミンガスのベースの音は、これまた独特の響きがあって、演奏の中のベースの音を聴くだけで、「このベースってミンガスやな」と判るくらいである。

Charlis Mingus『Mingus In Europe, Vol.1』(写真)。1964年4月26日、西ドイツ(当時)でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Dannie Richmond (ds)。エリック・ドルフィーとクリフォード・ジョーダンが2管フロントのクインテット編成。
 

Mingus-in-europe-vol

 
リズム・セクションは、ミンガスのベースに、バイヤードのピアノ、リッチモンドのドラムで、このリズム・セクションをとってみても、強力かつ唯一無二。そこに、フロント2管、アルトの早逝の鬼才、ドルフィーに、骨太なモーダル・テナーのジョーダンが絡む。振り返って見れば、素晴らしくユニークで強力なクインテットだったことが良く判る。

この盤のライヴ演奏については「とにかく聴いて欲しい」の一言。ミンガス率いる強力リズム隊の強烈なリズム&ビートに乗って、鬼才ドルフィーのアルトが嘶き、フルートが空を舞い、バスクラがファンキーでアーバンな妖しい低音を振り撒く。ジョーダンのテナーが疾走し、モーダルなフレーズを叩き出す。とにかく、バンド全体の疾走感と自由度が半端ない。

ミンガス・バンドはどの時代のアルバムを聴いても、ミンガス・ミュージック独特の音が必ず存在し、ミンガス独特のベースラインが存在していて、その唯一無二な個性は填まったら「とことん癖になる」。特に、ミンガス・バンド在籍時のドルフィーはユニークで素晴らしいの一言。久し振りにミンガス・ミュージックの一端に触れた訳だが、久し振りに、とことん、ミンガス・ミュージックを聴き込みたいと思い始めた。
 
 
 
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2021年7月22日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・214

各老舗のジャズ・レーベルには「こんなジャズマンいたんや」と思う、知る人ぞ知る玄人好みのジャズマンがいる。最近、サヴォイ・レーベルについては、カタログを眺めながら、これは、と感じる盤を順番に楽しみながら聴き直しているのだが、サヴォイ・レーベルでの「知る人ぞ知る玄人好みのジャズマン」の1人が「レッド・ノーヴォ」。

改めて、レッド・ノーヴォ(Red Norvo)は、米国イリノイ州の出身、1908年の生まれ。スイング期に活躍、ビ・バップ期には40歳を過ぎて、この時点で中堅のジャズマンということになる。但し、リーダー作はハードバップ期に集中していて、幾つかのレーベルになかなかの秀作を残している。1960年代に入って、リーダー作はほとんど途絶え、1999年4月に鬼籍に入っている。

Red Norvo Trio『Move!』(写真左)。1951年の録音。サヴォイ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Red Norvo (via), Tal Farlow (g), Charles Mingus (b)。当時として先進的な、ドラムレス、ピアノレスのトリオ編成。録音担当は(マスタリングのみかも)、ルディ・ヴァン・ゲルダー、プロデューサーはオジー・カディナ。録音も良好、内容的にも、ビ・バップを抜けて、ハードバップ風の演奏になっている。
 

Move

 
まず、リーダーのレッド・ノーヴォの品のある、硬質な音ではあるが流麗なヴァイブの弾き回しに耳を奪われる。ファンクネスをドップリ振り撒くのでは無く、スッキリとしたファンクネスを仄かに漂わせながらの、品のある弾きっぷりは聴き応えがある。さすが、スイング期に活躍しただけはある。アドリブ・フレーズはどれもが「スインギー」。

サイドマンの2人のパフォーマンスも素晴らしい。タル・ファーロウのギターは先鋭的。かなり硬質なピッキングでプレグレッシヴに、アグレッシヴに弾きまくる。旋律の弾き回しも素晴らしいが、ドラムレスな分、リズム楽器としてのファーロウのバッキングも見事。チャールズ・ミンガスのベースも骨太でソリッドで、その存在感は頼もしい限り。

LPサイズ単品でのCDリイシューがしばらく途絶えて、入手が難しい時期が続いたが、最近では、音楽のサブスク・サイトなどで、この『Move!』の音源を含んだ『The Savoy Sessions: The Red Norvo Trio』(写真右)がアップされていて(CDでもリリースされている)、やっと気軽に聴くことが出来る環境になった。
 
 
 
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2021年2月27日 (土曜日)

ブレーメンのミンガス 1975年

ブレーメンのミンガス、昨日の続きである。1964年、主力のエリック・ドルフィーが抜けて以来、しばらくの間、ミンガス・バンドは勢いを徐々に失う。時期的にポップスやロックの時代になったのに合わせて、ジャズがポピュラー音楽の中でマイナーな存在に落ちていった時期でもあったので、ストレート・アヘッドなジャズを旨とするミンガス・バンドとしては辛い時期だったと思う。

しかし、1974年の夏以降、テナー・サックスのジョージ・アダムス(George Adams), ピアノのDon Pullen(ドン・ピューレン)が加入して、ドルフィーを加えていた時代以来、久方ぶりに超強力メンバーをそろえたクインテット編成が成立。ドルフィーとはまた違った、ポジティブでスピリチュアルなアダムスのテナーが強力で、多弁で重量感のあるピューレンのピアノと相まって、極上のミンガス・ミュージックを再現している。

『Charles Mingus @ Bremen 1964 & 1975』(写真左)。チャールズ・ミンガス 1964年と1975年のブレーメン公演のライヴ音源。CD4枚組でのリリース。

CD1とCD2が「1964年4月16日、Sendesaal Radio Bremen’s Studio」での音源。CD3とCD4が「1975年7月9日 Post-Aula Auditorium Recorded by Radio Bremen」の音源。オリジナル・テープからリマスタリングした初の公式リリースである。
 
Charles-mingus-bremen-1975  
 
今日は、CD3とCD4、1975年7月9日の録音分について語りたい。ちなみにパーソネルは、Jack Walrath (tp), George Adams (ts, vo), Don Pullen (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (ds)。先にご紹介した、テナーにアダムス、ピアノにピューレンを加えたクインテット編成。トランペットのジャック・ウォラスはそこそこリーダー作も出しているベテランだが、我が国ではほとんど無名。しかし、アダムスとの2管フロントは強力。

アダムスのテナーがエネルギッシュで、ストレートで切れ味良く、スピリチュアルなブロウが、ミンガス・ミュージックにピッタリ。ウォラスのトランペットも同傾向で、この2管フロントの迫力は凄まじいばかり。

ミンガスは強力な2管フロントを得て、安心して充実したうねる様な、鋼の様な、重低音ベースを弾き続ける。このミンガスのベースの迫力も凄まじいばかり。ピューレンの多弁で重量感のあるピアノとリッチモンドの覇気溢れるポリリズミックなドラミングが、これまた2管フロントを支え鼓舞していく。

演奏の適度なテンションとグループ・サウンドとしてのまとまりの面を踏まえると、演奏の充実度は1964年に勝るとも劣らない。ミンガスはこの録音の4年後、1979年1月5日に56歳の若さで逝去する。しかし、この1975年のクインテットの輝きは永遠に音源として残っている。
 
 

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