2024年6月21日 (金曜日)

”マルの考える” ピアノ・トリオ

漆黒ブルージーな、黒い情感のレジェンド・ピアニスト、マル・ウォルドロン。初期の「マル4部作」を聴くことで、マルの個性の基本部分が理解できる。そんな、マルの個性を理解する上で”便利”な「マル4部作」。今日は、そんな4部作のラスト盤を取り上げる。

Mal Waldron『Mal/4; Trio』(写真左)。1958年9月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Addison Farmer (b), Kenny Dennis (ds)。サブタイトルに「Trio」と付いているだけあって、この盤はマルのトリオ演奏のみを収録した、マルのリーダー作。プレスティッジにしては珍しく、単一日のセッションの収録である。

思い起こせば、「マル4部作」の最初、『Mal-1』では、マルの作曲とアレンジの才にスポットが当てられ、続く『Mal/2』『Mal/3; Sound』も同一傾向のプロデュースに加えて、バッキング能力の高さにスポットが当てられ、『Mal/2』ではジョン・コルトレーン、『Mal/3; Sound』ではアート・ファーマーのフロント・パフォーマンスが見事に前面に押し出されて、マルのバッキング能力の高さが聴いて取れた。

で、やっと『Mal/4; Trio』で、マルのピアニストとしての個性にスポットが当てられた。ただ、不思議なのはパーソネル。プレスティッジの録音なので、ベースとドラムについては、もう少し、名の通った、人気ジャズマンを連れてきても良さそうなのに、かなり地味どころを引っ張ってきている。おそらく、マルの希望だったような気がする。
 

Mal-waldronmal4-trio

 
しかし、このベースとドラムが地味なお陰で、この盤は、マルのピアノの個性がとても良く判る内容になっているのだから、何が幸いするか判らない。この盤のベースとドラムは、ほぼリズム&ビートを正確に着実にマルに供給するだけの役割に徹していて、丁々発止とした、トリオとしてのインタープレイが展開される訳ではない。逆に、だからこそ、マルのピアノの個性だけが突出して把握できる。

但し、この盤では、マルのピアノはまだ「大人しめ」。アルバム内容については、ジャズマンの意向にほぼお任せのプレスティッジでの録音なので、マルも好きに出来ただろうに、まだ聴き手に合わせて、聴かせるトリオ演奏に軸足を残している。

それでも、マルのピアノの個性である「黒い情感と適度なラフさ」は良く判るから、聴いていて面白い。思いっ切り硬質で力感溢れるタッチ、歯切れの良いアドリブ・フレーズ、叩く様なコンピング、ブルージーなブロックコード。硬質なタッチの底に黒いブルージーな雰囲気と哀愁感が漂い、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。

「流麗さ」や「ロマンティシズム」は皆無。ダンディズム溢れ、そこはかとなく哀愁感漂う、硬派で純ジャズな、いわゆる「マルの考えるピアノ・トリオの演奏」が展開されているところが、この『Mal/4; Trio』の特徴だろう。
 
 

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2024年6月20日 (木曜日)

マルの「伴奏の能力」の高さ

マル・ウォルドロン(Mal Waldron)は、漆黒ブルージーな、黒い情感のレジェンド・ピアニスト。2002年12月に逝去しているので、逝去後、既に20年以上が経過したことになる。もう、そんなになるのか。

マルのピアノは個性的。硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルのピアノの特徴。

一方、マルは曲作りとアレンジの才にも優れる。特にアレンジの才に優れ、マルの初期のリーダー作の中に、『Mal-1』『Mal/2』『Mal/3: Sound』『Mal/4: Trio』という4部作があるのだが、この4部作、マルの曲作りとアレンジの才にスポットを当てたリーダー作になる。どうも、マルって、ピアニストとしての個性よりも、曲作りとアレンジの才を評価されていたきらいがある。

Mal Waldron『Mal/3: Sound』(写真左)。1958年1月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Art Farmer (tp), Eric Dixon (fl), Calo Scott (cello), Julian Euell (b), Elvin Jones (ds), Elaine Waldron (vo, tracks 4 & 5)。アート・ファーマーのトランペットがメインの、ワン・ホーン・カルテットに、フルートとチェロと女性ボーカルが入った7人編成。ボーカルのエレイン・ウォルドロンは、マルの細君。

プレスティッジ・レーベルの傍系「New Jazz」からのリリース。トランペットのワン・ホーン・カルテットに、フルートとチェロ、そしてボーカルが入っている。1958年というハードバップ全盛期に、このユニークな楽器編成は、明らかに、マルのアレンジの才能にスポットを当てている、と感じる。収録曲全5曲中、4曲がマルの自作曲なので、マルの作曲の才能にもスポットを当てているみたいで、サブタイトルに「Sound」とあるので、マル・サウンドを愛でる、というプロデュース方針の盤なんだろうな、と想像できる。
 

Mal-waldronmal3-sound  

 
確かに、全編に渡って、マルの優れたアレンジの賜物、フロントを張るファーマーのトランペットと、ディクソンのフルートが前面に押し出され、引き立っている。バンド・サウンド全体のアレンジも良いし、フロントのバックに回った、リズム・セクションとしての、マルのピアノのバッキングのテクニックの上手さもある。そして、ポリリズミックなダイナミズム溢れるドラマー、エルヴィンのクールに煽るようなドラミングが「キモ」になっている。

そして、チェロの響きが良い隠し味になっていて、演奏全体の響きが「斬新」に響く瞬間がある。これは、明らかにアレンジの工夫だろう。特に、女性ボーカルの入った曲に、チェロが効果的に響く。逆に、ボーカルの入っていない曲では、トランペットやフルートの音のダイナミックさに押されて、あまり目立たない。

それより、女性ボーカル入りの曲で感心したのは、マルのピアノとエルヴィンのドラムの伴奏テクニックの見事さ。女性ボーカル自体は取り立てて優れてはいない、普通レベルのボーカルなんだが、伴奏に回ったマルのピアノのバッキングの妙と、エルヴィンの繊細なドラミングによる、アクセント良好なリズム&ビートの供給。

こうやって聴いていると、マルはアレンジの才能は確かにあるが、それを上回る、フロント楽器やボーカルに対する「伴奏の能力」の高さが、強く印象に残る。

このリーダー作を聴いて思うのは、マルはやはり「ピアニスト」なんだな、ということ。確かに作曲とアレンジの才もあるが、そんなに他を凌駕するほど突出したものでは無いと思う。

しかし、このリーダー作を聴くと、マルのバッキング、伴奏のテクニックの素晴らしさが突出している。早逝の天才女性ボーカリスト、ビリー・ホリデイの最後の伴奏ピアニストだったことは伊達では無い。
 
 

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2024年4月22日 (月曜日)

伝説ベース、ロンの初リーダー作

ジャズ演奏におけるベースの役割は大きい。まず、演奏全体の曲のボトムをしっかり支える。次に、曲のルート音をしっかり押さえて、曲全体の調性を整える。そして、リズム隊として、ドラムとピアノと共同で、曲のリズム&ビートを供給する。

「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第」というが、ベースもドラマーと同様に、ジャズ演奏における役割は大きい。「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもベーシスト次第」と言っても過言ではない。

ベースはフロント楽器の演奏のバックで、ベースは音程を出せる楽器なので、低音域のルート音をガッチリ押さえ、フレーズで演奏全体のボトムをしっかり支えることが出来る。ベースは低音域の音程、フレーズでリズム&ビートを供給する。ドラムはアタック音でリズム&ビートを供給する。

Ron Carter『Where?』(写真左)。1961年6月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, cello), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Mal Waldron (p), George Duvivier (b), Charlie Persip (ds)。モダン・ベーシストのレジェンド、ロン・カーターの初リーダー作である。

ロンが初リーダー作で選んだジャズは「エリック・ドルフィー」。エリック・ドルフィーの唯一無二のモード・ジャズをロンのベースが支え、曲全体の調整を整える役割を担う。それが、ロンの選んだ、自らの初リーダー作のコンセプト。
 

Ron-carterwhere

 
ドルフィーの高速捻れまくりエモーショナルな、かっ飛んだ唯一無二のフレーズの洪水な演奏の「低音域のルート音」をガッチリ押さえ、ドルフィーの個性出まくりのフレーズの「ボトム」をしっかり支える。そして、ロン独特のベースのフレーズでリズム&ビートを供給する。

ドルフィーの高速フレーズに対応するため、アコースティック・ベースを、別のベーシスト、デュビビエにお願いして、ロン自身はアコースティック・ベースをチェロに持ち替えて、高速速弾きな、低音域の音程、フレーズでリズム&ビートを供給し、演奏全体の曲のボトムをしっかり支える。

マル・ウォルドロンが、ロンにしっかりと寄り添う様に、哀愁感溢れるピアノを弾きまくる。ロンのベースと共同で、高速フレーズで演奏全体のボトムをしっかり支える。そして、マルのピアノ、パーシップのドラムと共同で、曲のリズム&ビートを供給する。ドルフィーの唯一無二のモード・ジャズに、ピッタリと寄り添う、一期一会のリズム・セクション。

このドルフィーの「高速捻れまくりエモーショナルな、かっ飛んだ唯一無二のフレーズの洪水な演奏」に追従し、鼓舞し、ガッチリ支える一期一会のリズム・セクションに恵まれたからこそ、この盤におけるドルフィーの快演がある。

ピックアップでベース音を増幅した時代は、ピッチが合っていない、音がボワンボワンで締まりがない、など、低評価がつきまとった時期もあったが、ベースが生音でピッチをきっちり合わせたロンのベースは、やはり優れている。ロンのベースが絶妙にリズム・セクションを牽引し、ドルフィーがそんな相性バッチリのリズム&ビートに乗って疾走する。

「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもベーシスト次第」ということを改めて教えてくれる、ロンの初リーダー作である。
 
 

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2022年12月26日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・20

ジャズ盤には、我が国のジャズ者だけにウケて、他国では全く知られていない盤が結構ある。例えば、ブルーノートの「女性の足元ジャケ」で有名な、Sonny Clark『Cool Struttin'』がそうで、我が国のジャズ者の方々の中では知らぬ者はいない位の人気盤だが、本場米国では全く知られていない。そもそも、リーダーのピアニスト、ソニー・クラーク自体がマイナーな存在。

このエピソードはジャズ雑誌で読んで、最初は「眉唾」と思っていたのだが、実際に米国にビジネス出張に行った折、先方のキーマンの1人が大のジャズ好きで、通訳を通して色々な話をさせて貰ったのだが、確かに、Sonny Clark『Cool Struttin'』については「?」だった。そして、Mal Waldron『Left Alone』もそうだった。しかし、その後、彼もこの2枚を聴いたらしく、「どちらも、なかなか良いハードバップ盤だ、ありがとう」という電子メールが届いたのを覚えている。

Mal Waldron『Left Alone』(写真左)。1959年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jackie McLean (as :track 1のみ), Julian Euell (b), Al Dreares (ds)。マル・ウォルドロンのビリー・ホリディ追悼盤。基本はピアノのマルがリーダーのトリオ。1曲目の「Left Alone」のみ、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが客演している。

我が国ではこのマルの『Left Alone』は大人気盤で、ジャズ初心者向けのジャズ名盤紹介には必ずといっていいほど、この盤のタイトル名が上がってくる。しかし、である。それぞれの評論文を読むと、1曲目のタイトル曲「Left Alone」の「泣きのマクリーン」だけが絶賛されていて、この1曲だけで名盤扱いされているフシがある。確かにマクリーンのアルト・サックスは情感溢れ力強く、聴き応えのあるブロウなのだが、この盤のリーダーはマルであり、マルはピアニストである。

まず、この有名なタイトル曲「Left Alone」では、伴奏上手なマルのピアノが堪能出来る。なるほど、かの伝説の女性ジャズ・ボーカリスト、ビリー・ホリディがマルを伴奏者に指名したのが良く判る。情感を込めて唄う様にアルト・サックスを奏でるマクリーンに対して、絶妙なバッキングで応えるマル。この「伴奏のマル」は聴きもの。
 

Mal_left_alone_1

 
2曲目以降はマルがリーダーのピアノ・トリオの演奏になる。2曲目の「Catwalk」は名演だろう。なぜか、ジュリアン・ユールのベースとマルのピアノの絡みが良い感じなのだ。アル・ドリアースのドラムはあまり目立たないのだが。そうそう、「Catwalk」は曲自体も良い感じ。マルの作曲能力の高さを感じる。

が、である。3曲目の「You Don't Know What Love Is」から「Minor Pulsation」、演奏ラストの「Airegin」まで、内容的に悪くは無いんだが、なんだか演奏が重い。もう少し溌剌と、もう少し躍動感があっても良いと思うのだが、どうも良くない。この盤については、ベースとドラムのリズム隊のパフォーマンスに物足りなさを感じるのだが、このリズム隊がマルのピアノに上手く反応出来ていないというか、マルのピアノについていっていないのが惜しい。

そして、ラストのトラックには、マルが最晩年のビリー・ホリデイの伴奏者だったこともあってか、ビリー・ホリディの思い出についての「マルの語り」が収録されている。マルがとうとうとビリーについての思い出を語っているのだが、当然、英語で語っているので、ほとんど何を語っているのかが判らない。日本盤についても「対訳」が付いている訳でも無い。LP時代、この盤を入手して初めて聴いた時、このラストの「マルの語り」が出てきた時はビックリした(笑)。

このMal Waldron『Left Alone』について、名盤扱いされているのは、冒頭のタイトル曲「Left Alone」でのジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、いわゆる「泣きのマクリーン」の素晴らしさだけがその理由で、マルの名盤、名演については他に沢山ある。

確かに、冒頭の「Left Alone」については、「泣きのマクリーン」の素晴らしさ故、ジャズ者であれば一度は聴いておく必要はあるかとは思う。しかし、2曲目以降については、決して、マルの代表的なパフォーマンスでは無いことを考慮しておく必要がある。ちょっと「こまったちゃん」な盤である。
 
 

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2022年4月29日 (金曜日)

マルの西ドイツでの好ライヴ盤

久々に、マル・ウォルドロンのリーダー作を聴き直している。彼のリーダー作の音源については、現在、結構な数が出ていて、まだ聴いたことが無いリーダー作も結構あることに気がついた。なんでかなあ、と思わず「思案投げ首」である。

しばらく、マルのリーダー作を追ってはいなかったので、その間に、音源のサブスクサイト中心に、今まで廃盤になっていた音源が結構な数、リイシューされたようなのだ。よい機会なので、マルのリーダー作でまだ、このブログで記事になっていないリーダー作をチョイスして聴き直している。

Mal Waldron『A Touch of the Blues』(写真)。1972年5月6日、西ドイツ(当時)のニュルンベルクでの「East-West Jazz Festival」におけるライヴ録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Allen Blairman (ds)。

収録曲は3曲。LPが前提の収録時間で、長尺のライヴ音源が3曲。1曲目の「Here, There And Everywhere」が、11分17秒、2曲目の「The Search」が、10分28秒。ここまでが、LP時代のA面。3曲目の「A Touch Of The Blues」が、16分22秒で、この1曲で、LP時代のB面を占める。
 

Mal-waldrona-touch-of-the-blues

 
収録曲の全てが、マルのオリジナル。1曲目の「Here, There And Everywhere」が、レノン&マッカートニーの名曲のカヴァーか、と思いきや、マルのオリジナルです。かの有名な静的でロマンティシズム溢れるフレーズが出てくるか、あのバラード曲をマルがどう料理するか、と思って構えて聴いていたら、思いっ切り肩すかしを食らいます(笑)。

しかし、この「Here, There And Everywhere」、マルのピアノの個性が全開の展開。タッチは深く、それでいて流麗。右手の奏でるフレーズの基本はマイナーでブルージー。その左手は印象的な重低音のビートを叩き続ける。マルのオリジナル曲ということを踏まえて聴くと、実に聴き応えのある白熱のパフォーマンスで、思わず集中して聴き込んでしまう。

ベースのジミー・ウッズ、ドラムのアレン・ブレアマンも米国出身、マルと併せて「オール米国」のトリオが、西ドイツで、ガンガンに欧州ジャズ志向のモード・ジャズを演奏しまくる。確かに、マルのピアノは「黒い情念」と形容されるが、ファンクネスは希薄。トリオとしても、出てくるリズム&ビートは「ストレートで切れ味が良い」。決して「粘る」ことは無い。

マルの個性は異国である欧州の地で、その個性をさらに輝かせる様だ。特に、ライヴにその傾向は顕著に出る様で、この西ドイツでのライブ音源を聴けば、それが良く判る。資料を見たら、2020年7月に初CD化、とある。僕はこの盤、LP時代には聴いたことが無かったので、知らなかった訳だ。今回、音源のサブスク・サイトで出会えて良かった。マルの好ライヴ盤である。
 
 

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2021年6月16日 (水曜日)

1981年の硬派な純ジャズ

ネットの音楽サブスク・サイトを徘徊していて、久し振りに「Mal Waldron(マル・ウォルドロン)」の名前に出くわした。僕はジャズ者初心者の頃から、この人のピアノが意外と好きで、振り返ってみると、マルのリーダー作を結構、所有していたりするから面白い。やはり、ジャズ・ピアニストは「個性派」の方が僕は好きかな。

マル・ウォルドロンはピアニスト。タッチは深く、それでいて流麗。右手の奏でるフレーズの基本はマイナーでブルージー。その左手は印象的な重低音のビートを叩き続ける。つけられたニックネームが「黒い情念」。右手のマイナーフレーズ+左手の重低音ビートが「黒い情念」の核。

Mal Waldron『What it Is』(写真左)。1981年11月15日の録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Clifford Jordan (ts), Cecil McBee (b), Dannie Richmond (ds)。1981年の録音なので、フュージョン・ジャズの大流行の後半真っ只中の録音。しかし、パーソネルを見渡せば判る。曲者揃いの硬派なメインストリーム・ジャズである。
 

What-it-is-mal-waldron

 
収録曲は3曲。中身は硬派なモード中心の純ジャズ。クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスのフロント1管、ワンホーン・カルテットな編成。何時になく、ジョーダンのテナーが好調である。その好調なモーダルなテナーをフロントに、マルのピアノが絶妙な伴奏を付けている。

マルの右手のタッチは硬質、左手は叩き付ける様なパーカッシヴなブロックコードなので音が派手。下手するとフロントのパフォーマンスの邪魔をしかねないのだが、マルは絶妙の間合いでフロントのテナーをサポートし鼓舞する。マクビーのベースも、リッチモンドのドラムもそんなマルに追従し、マルを支える。癖はあるが、なかなか高度な伴奏をクールに展開するリズム隊である。

パッキパキの硬派なモード中心の純ジャズ。1981年というフュージョン・ジャズの全盛後期、こんな硬派過ぎる内容、Enjaレーベルのメインエリアである欧州でしかウケなかったろうなあ。実はこの盤、僕は今回初めて聴きました。ちょっと調べてみたら「日本初CD化」だそうです。なるほど、LP時代は時期的にこの盤は知らなかっただろうな。
 
 
 

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  ・Santana『Inner Secrets』1978

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  ・イエスの原点となるアルバム

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2021年6月14日 (月曜日)

マルのソロ盤『All Alone』です

唐突であるが、ジャズ・ピアニストって、やっぱり個性がハッキリしていた方が面白い、と思うのだ。21世紀に入ってから、特にその傾向が強くなっていると感じるのだが、出てくる有望な新人ピアニストは「総合力で勝負するタイプ」が多くなった。

この総合力で勝負するタイプって、一聴して直ぐ判る様な強烈な個性が無い分、ピアニスト個人の判別は難しい。しかし、テクニック、歌心、バッキングなど、ピアニストの総合力で勝負するタイプである。このタイプ、数が多いと皆、同じに聴こえてくるから始末が悪い。

逆に、個性的なスタイルや奏法を「ウリ」にするタイプは、聴けば「あ〜あの人や」と判る位の強烈な個性で、例えば、バド・パウエルやビル・エヴァンス、マッコイ・タイナーなど、1950年代のレジェンド級のピアニストは皆、強烈な個性の持ち主である。

Mal Waldron『All Alone』(写真左)。1966年3月1日、イタリアのミラノでの録音。Mal Waldron (p) のソロ・ピアノ盤になる。1968年度 スイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 銀賞を受賞している好盤(この頃のイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞は信頼できる)。
 

All-alone
 

ソロ・ピアノって、そのジャズ・ピアニストの個性がハッキリ判る演奏フォーマットで、特に、個性的なスタイルや奏法を「ウリ」にするタイプについては、このソロ・ピアノの演奏を聴けば、個性が強烈な場合はワン・フレーズ聴けば、通常は1曲レベル、3〜4分聴けば、おおよそ、このソロ・ピアノは誰のピアノかが判る。

このマル・ウォルドロンのソロ・ピアノ盤、聴けば直ぐにマルのピアノだということが良く判る。思いっ切り硬質で力感溢れるタッチ、歯切れの良いアドリブ・フレーズ、叩く様なコンピング、ブルージーなブロックコード。そして、演奏全体に漂う哀愁感。

冒頭のタイトル曲「All Alone(オール・アローン〜映画「マンハッタンの哀愁」より)」を聴くだけで、このピアノの主は「マル・ウォルドロン」だと判る位、その個性が強い。マルのピアノには、最近の有望な新人ピアニストによくある「流麗さ」や「ロマンティシズム」は皆無。ダンディズム溢れ「哀愁感漂う」、硬派で純ジャズなピアノがマルのピアノの個性である。

このマルのソロ盤、当時の日本のレコード会社の制作と聞く。1960年代の日本のレコード会社の企画盤って、結構、優秀な内容が多い。1970年代以降の「売らんがため」では無い、良いジャズのアルバムを制作するという、純粋にアーティスティックな「志」の下で制作された雰囲気が強く漂う。ジャケ・デザインも優秀。好盤です。
 
 
 

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2019年8月19日 (月曜日)

ウォルドロンの黒い情念 『Black Glory』 & 『Plays the Blues』

Enja(エンヤ)・レーベルの看板ピアニストは数人いるが、僕が一番、衝撃を受けたピアニストは「マル・ウォルドロン(Mal Waldron)」。タッチは深く、それでいて流麗。右手の奏でるフレーズの基本はマイナーでブルージー。その左手は印象的な重低音のビートを叩き続ける。つけられたニックネームが「黒い情念」。右手のマイナーフレーズ+左手の重低音ビートが「黒い情念」の核。

ENJA2004番の Mal Waldron『Black Glory』(写真左)と、ENJA2002番の Mal Waldron『Plays the Blues』(写真左)。この2枚は、どちらも、1971年6月29日、ドイツはミュンヘンの「Domicile」でのライブ録音。1971年に2枚のLP盤に分けてリリースされている。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Pierre Favre (ds)。

ウォルドロンとウッデは米国ジャズマンの欧州移住組。ファヴレはスイス出身のドラマー。いかにも欧州レーベルらしいパーソネル。ピアノ・トリオ構成であるが、冒頭から出てくるウォルドロンの左手、そして、ウッデのアコベ。それぞれの奏でる重低音が、このピアノ・トリオは「耳当たりの良い、カクテル・ピアノなトリオ演奏」では全く無いことを予兆させる。この重低音のお陰で、聴く方にも嫌が応にも緊張感が高まる。
 
 
Live-at-the-domicile
 
 
ウォルドロンのピアノは、現代音楽を想起させる、ちょっと取っ付き難い、硬い頑強なピアノ。底に流れるブルージーな雰囲気が、明確に「ジャズ」を感じさせてくれる。そして、左手の重低音ビートが独特の個性。少なくとも、スタンダード曲を耳当たり良く聴かせてくれる「カクテル・ピアノなトリオ演奏」では絶対に無いことを、ウォルドロンのピアノ・タッチを聴いて確信する。
 
このウォルドロンの左手の重低音ビートとの相性抜群なのが、ウッデの思いっ切り太くてブンブン響くアコースティック・ベース。この2人の奏でる重低音が、このトリオ演奏を唯一無二のものにしている。そんな中、ドラムのピエール・ファーヴルは「健闘」している。一生懸命叩いている。決して耳障りでは無い。演奏全体の雰囲気はブルージーではあるがファンクネスは希薄。欧州ジャズらしい、切れ味と重心の低い響きに満ちたトリオ演奏である。
 
もともとEnjaレーベルを立ち上げたホルストとマティアスは、このウォルドロンのアルバムを自分達の手で作りたいと考えて、レーベルを立ち上げたとか。その念願が叶った最初の成果がこの『Black Glory』。聴けばそのホルストとマティアスの想いがよく理解出来る。このウォルドロンのピアノ・トリオは唯一無二。確かに、絶対に記録に残しておきたい、と強く思わせてくれる強烈な個性である。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2018年9月28日 (金曜日)

ウォルドロンのソロ・ピアノ 『All Alone』

ジャズにおいて、ソロ・ピアノはそれを弾くピアニストの個性が凄く良く判る。もともと、ジャズの楽器演奏というのは個性の塊である。同じ楽器で他のミュージシャンと同じ音、同じスタイルというのは、まず無い。エバンス派とかパウエル派とか、祖となるピアニストのスタイルを踏襲していても、どこかで他と違う個性を追求していたりする。

ソロ・ピアノは、個性の強いピアニストほど面白くなる。個性が強くなればなるほど、その個性がビンビンに伝わってくるのだ。テクニック、端正さ、流麗さなど総合力で勝負するピアニストのソロ・ピアノは基本的にあまり面白く無い。総合力で勝負するピアニストのソロ・ピアノは、皆、同じに聴こえるのだ。そういう意味で、コッテコテ個性の強いピアニストのソロ・ピアノが絶対に面白い。

Mal Waldron『All Alone』(写真左)。「黒い情念」と形容される個性派ピアニスト、マル・ウォルドロンのソロ・ピアノ盤である。1966年3月1日、イタリアはミラノでのソロ・パフォーマンスの記録。「1968年度 スイングジャーナル ジャズ・ディスク大賞 銀賞」を受賞した好盤である。ピアノを弾くマルの写真をあしらったジャケットも渋い。
 

All_alone

 
この盤、マルの個性が満載である。低音を活かした左手。重心が低く、しっかりとしたタッチでピアノの重低音部をガーン、ゴーンと響かせる。この重低音が推進エンジンとなって、強くて深いタッチの右手がメロディを奏でる。強くて深いタッチでありながら、よく回る右手。ピアノ・ソロ全体に重心が低く、音の粒立ちが太くて切れている。

右手のフレーズは「哀愁が色濃く漂うエレジーな音感」。そこはかとなく哀しさが漂い、それでいて強くて深いタッチが、弾き進めるメロディを明確にする。輪郭クッキリな右手のフレーズ。左手のブロックコードは重低音。ピアノの低いキーを積極的に活用する、他のピアニストには無い、思いっきり個性的な左手。右手のフレーズは哀愁感漂うコードを渡り歩く。

マイナーで不思議な響きを持つ、東ヨーロッパやイスラムを想起させる独特のキーで展開されるモーダルな曲もなかなか魅力的。ブルースに頼らない、マル独特の感性と音感をもって、このピアノ・ソロは展開される。哀愁感は強いがタッチが明快で、感情に流されることは無い。優雅さや滑らかさとは全く無縁。骨太で雄々しい、ダンディズム溢れるソロ・ピアノである。 
 
 
 
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2018年3月25日 (日曜日)

ECMの音の迷宮の奥は深い Mal Waldron『The Call』

ジャズ盤を聴くのに、ガイド役として、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用することは大変大切なことではある。しかし、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介される盤は、それぞれ結構似通っている。記事を担当した評論家の手抜きなのか、はたまた、編集に携わった編集者の陰謀なのか、確かにジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されるジャズ盤は「聴く価値あり」だが、「聴く価値あり」のジャズ盤はそれだけではない。

ジャズ盤を聴き進めて行くと、このジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用する方法がどこかで行き詰まる。すると、自分で聴く価値のある盤を探すことが必要なのに気付く。やはり、ジャズ盤は自分の耳で聴いて、自分の耳で、自分にとっての「良し悪し」を判断することが一番大切なことに気付く。

Mal Waldron『The Call』(写真左)。1971年2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (el-p), Jimmy Jackson (org), Eberhard Weber (el-b), Fred Braceful (ds, perc)。ECM傘下のレーベル JAPOからのリリース。さすがECM系の録音。これは珍しい。骨太硬派のピアニスト、マル・ウォルドロンが全編エレピを弾いた作品である。
 

The_call_2

 
僕はこの盤の存在については、ECMレーベルのカタログを紐解いていて発見した。この盤について、その評論や感想が書かれたジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を見たことが無い。しかも、あの硬派で骨太な硬質ピアニスト、マル・ウォルドロンである。そんなマルが、こともあろうにエレピを全編に渡って弾きまくるのだ。許せない、と硬派のジャズ者の方々が憤慨して、この盤を亡きものにした感覚も判らなくは無い。

内容的には録音当時、ジャズ界の先端のトレンドのひとつだった「エレジャズ」。いわゆるジャズロックの雰囲気が大勢を占め、後半の途中あたりから、アブストラクト〜フリーな演奏が展開される。後半のアブストラクト〜フリーな演奏は納得できるが、欧州ジャズの環境下でのジャズロックはちょっとした驚き。しかし、それなりにまとまっていて今の耳にも十分に耐えます。特にマルのエレピについては合格点。エレピの特徴をよく掴んでいて、聴き応えがあります。

現代のスピリチュアル・ジャズファンクに直結するマルのエレピ。バックのオルガン=エレベ=ドラムのリズム・セクションも良好で、こんなアルバムあったんや〜感が強い。アルバム・ジャケットも当時のデザイン・センスからすると突出していて、こういうアルバムをリリースするって、ECM恐るべし、である。実はECMレーベルには、こういう異端なジャズ盤がゴロゴロしている。ECMの「音の迷宮」の奥は深い。
 
 
 
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