2026年4月10日 (金曜日)

再聴 ”サンフランシスコのモンク”

最近、音楽のサブスク・サイトでも、クラシック・ジャズ、特に、ハードバップの名盤・好盤のリマスターがどんどん出てきている。聴いてみると、ほとんどが音質、音の分離、音の輪郭などが改善されていて、アルバムによっては、全く違ったイメージに感じてしまうリマスターもあるくらい。なので、ハードバップの名盤・好盤のリマスター盤が出たら、積極的に聴くことにしている。

Thelonious Monk『Thelonious Alone in San Francisco』(写真左)。1959年10月の録音。リヴァーサイド・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p) のみ。アルバム・タイトルどおり、ジャズ・ピアノの高僧、セロニアス・モンクのソロ・ピアノ集である。ジャケット・デザインもお洒落な「モンク名盤」の一枚。

同じリヴァーサイド・レコードから、先行してリリースされたソロ・アルバム『Thelonious Himself』があるのだが、凛とした雰囲気漂い、「寄らば切るぞ」というような、強いテンションを張った、清冽な雰囲気漂う孤高の世界だった。決して、初心者向けでは無い。しかし、このソロ盤が一番、モンクの個性と特徴を表していて、この盤を繰り返し聴くことが、モンクを理解する一番の近道だったように思う。
 

Monk_san_francisco_3

 
しかし、である。このソロ・アルバムのモンクは「聴きやすい」。モンクのユニークな音の飛び方、音の重ね方、フレーズの「間」などが、凄く判り易くなっている。クラシック・ピアノをやっている人が理解しやすい、というか、西洋音楽の対極にある様なモンクのピアノが、このソロ盤では、西洋音楽の基本にかなり近づいている。これは、恐らく、モンクの意向だと思われるのだが、どういった心境の変化なのか。

僕はこのモンクのソロ盤を聴いて、モンクは普通のピアノも弾けるんだ、と驚いた。つまり、モンクはピアニストとしての基本をしっかり身につけていた、ということになる。それを前提にして、あのモンクのユニークな音の飛び方、音の重ね方、フレーズの「間」などがあるのだと。

モンクは奇人・変人なピアニストでは無い。モンクは、スタンダードなピアニストであり、ピアノの基本がしっかりあって、その上で、ニークな音の飛び方、音の重ね方、フレーズの「間」などを実現する天才である。この盤は、モンクのピアニストとしての基本部分がしっかりしていることを教えてくれる、暖かくて、優しくて、ほのぼのとしていて、ジャズ者初心者に対しても、モンクのソロ・ピアノ入門盤として適している所以である。
 
 

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2026年2月23日 (月曜日)

逆説的な ”モンクの個性” の表出

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。今回も、「この一曲を」では無く、「このアルバムを」で、セロニアス・モンクのピアノの個性を聴き直している。

Thelonious Monk『Brilliant Corners』(写真左)。1956年10月9日・16日、12月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p, celesta), Sonny Rollins (ts), Ernie Henry (as), Clark Terry (tp), Oscar Pettiford (b, 1–3), Paul Chambers (b,track:5), Max Roach (ds)。

この盤も「この1曲」ではなく「この盤」だろう。確かに、モンクのピアノを体験したいなら、この『Brilliant Corners』は最適の一枚かもしれない。まず、全編に渡って、モンクの独特のフレーズと間、がとても判り易い形で演奏され、録音されている。文句の摩訶不思議な音の飛び方をするフレーズがクッキリ浮かび上がる、摩訶不思議な「間」が実感出来る。確かに、この番、モンクの唯一無二の独特のフレーズの弾き回しと間がガッチリ体験出来る。
 

Brilliant_corners_1

 
しかも、パーソネルを見れば判るか、共演しているジャズマンは皆、一流どころ。そんな一流どころのジャズマン達が、文句のモンクの独特のフレーズと間に完全にはついていけず、戸惑い、萎え、心を立ち直らせながら再チャレンジする。あのロリンズだって青息吐息、必死のパッチである。如何に、モンクの才能が叩き出すフレーズと間が、ユニークで唯一無二で、他の追従を許さないか、が凄く良く判る内容になっているのだ。

モンクの孤高の個性と、それに追従出来ない一流ジャズマン達。そんなパフォーマンスを記録することで、モンクの孤高の個性を表現する、そんな内容のアルバムである。決して、名曲名演による名盤ではない、ということ。モンク自身のパフォーマンスは素晴らしい。しかしこの盤は、モンクの孤高の個性が、それに追従できない一流ジャズマンのパフォーマンスによって、更なる証明がなされる、逆説的なモンクのリーダー作であり、名盤である。

ということで、演奏を表面だけ聴くと、この盤ってなんや、と訝しく思うのは実は正しい。モンクの孤高の個性に追従出来る一流ミュージシャンとしては、テナーのチャーリー・ラウズがいるし、ベースのジョン・オーレがいるし、ドラムのフランキー・ダンロップがいる。これらのサイドマンとの優れた共演はモンクの名盤だし、モンクの孤高の個性を堪能したければ、ソロ・ピアノ盤を選べば良い。ただし、モンクの孤高の個性を愛でる入門盤としては、この『Brilliant Corners』は推薦できる。
 
 

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2026年2月20日 (金曜日)

『Waltz for Debby』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴である。ということで、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。と昨日、書いた。そして、このアルバムがその最たるもの。

Bill Evans『Waltz for Debby』(写真左)。1961年6月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)。NYの老舗ライヴハウス、ヴィレッジ・ヴァンバードでのライヴ録音。兄弟盤に『Sunday at the Village Vanguard』がある。演奏は、存命中のスコット・ラフェロを含めた「伝説のトリオ」である。

このライヴ盤の、レココレの言うこの1曲がタイトル曲の「Waltz for Debby」。この耽美的で流麗でスローなワルツ曲が、ビル・エヴァンスというピアニストの個性と特徴を表している、としているが、これはちょっとなあ。実は、ビルのディスコグラフィーを見渡すと、このライヴ盤だけが、異質な響きを宿している盤だと判る。
 

Bill-evanswaltz-for-debby

 
もともと、ビル・エヴァンスは「バップ・ピアニスト」。「明確なタッチのバップなピアノ」が持ち味で、「耽美的でリリカルで静的なピアノ」が持ち味では無い。この盤での「耽美的でリリカルで静的」な響きが溢れる演奏でも、エヴァンスのタッチは明確で鋭い。決して、響きを重視した耽美的なタッチでは無い。つまり「Waltz for Debby」の一曲だけで、ビルのピアノの個性と特徴を結論付けると、間違ったビルのピアノに対する印象を持ってしまうことになる。

このライヴ盤は、マイルスの下で「ものにした」モード奏法を、バラード曲、スローな曲に限定して、この「伝説のトリオ」で実現した唯一のライヴの記録だと理解している。スローな曲調でのモーダルな演奏とインタープレイ。その最高の成果がこのライヴ盤にある。そして、その基本のビルのピアノは「バップ・ピアノ」。決して「耽美的でリリカルで静的」なピアノでは無い。

『Waltz for Debby』については、エヴァンスのピアノの「耽美的でリリカルで静的」な面がクローズアップされた特異な企画盤とした方が「座りが良い」。つまり、エヴァンスのピアノの個性と特徴の半分を体感したに過ぎない。せめて、ビルのホームグラウンドである「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴ盤の諸作を聴いてもらいたい。
 
 

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2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2025年11月27日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・140

1980年のリリースの、Alberta Hunter『Amtrak Blues』を突然、思いだして、45年振りの再聴。ブルースとジャズが融合した、独特の個性的なボーカル。ブルースの泥臭さをジャズが中和している感じ。唄いっぷりは堂々としていて迫力満点だが、耳に優しく心に心地よく響く。素晴らしいボーカル。そして、このアルバータ・ハンターの他のアルバムを物色していて、この盤に行き当たった。

Alberta Hunter With Lovie Austin's Blues Serenaders『Chicago - The Living Legends』(写真左)。1961年9月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Alberta Hunter (vo), Darnell Howard (cl), Jimmy Archey (tb), Lovie Austin (p), Pops Foster (b), Jasper Taylor (ds)。伝説の女性ブルース・シンガー、アルバータ・ハンターのピアニストのロヴィー・オースチンと共演した名作。

まずは、アルバータ・ハンターの歌声である。根っこはブルース。ブルースの泥臭さをディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズに乗せて整える、そんな感じのハンターの歌唱はジャジーであり、説得力がある、そして、とにかく上手い。「St. Louis Blues」「Downhearted Blues」「You Better Change」といった曲で最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。
 

Chicago-the-living-legends

 
そして、1961年の録音にも関わらず、演奏全体の雰囲気は、ディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズ志向。このオースティンの「ブルース・セレナーダーズ」(トロンボーンのジミー・アーキー、クラリネットのダーネル・ハワード、ベースのポップス・フォスター、ドラマーのジャスパー・テイラーを含む五重奏団)の演奏、これが良い。やはり、このジャズの音が、ジャズの原風景なんだろうな、と改めて納得する。

このオースティンの「ブルース・セレナーダーズ」の演奏、ハンターのボーカル曲では、簡潔なソロ・パフォーマンスのスペースがあって、ここで瞬間芸的なアドリブ・パフォーマンスを披露する。これが見事。そして、「Sweet Georgia Brown」「C-Jam Blues」「Gallion Stomp」の3曲が、「ブルース・セレナーダーズ」単独のインスト・ナンバーであり、このインスト・パフォーマンスが、ディキシーランド&ニューオリンズ・ジャズ志向のハードバップという感じで、これも見事。

ピアニストのロビー・オースティンにとって、20年ぶりのレコーディングだった。彼女は当時74歳近くで、シカゴのダンススクールでピアニストとして働いていた。アルバータ・ハンターは、1954年に看護師になるために音楽界を引退し、その間、2週間前に一度しかレコーディングしていなかった。そんな二人が奇跡の邂逅を果たしてのこのライヴ録音、そして、この優れたパフォーマンス。ジャズって凄いなあ、と思う瞬間である。
 
 

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2025年7月27日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・290

クリフォード・ジョーダンのテナー・サックス、ソニー・レッドのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。ピアノが、トミー・フラナガンとロニー・マシューズで分担している。ベースはアート・デイヴィス、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ。パーソネルを見渡すと、ハードバップ全盛期の「強者」ジャズマンが大集合。

Clifford Jordan & Sonny Red『A Story Tale』(写真左)。1961年2月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Riversideレーベルの傍系「Jazzland」からのリリース。Clifford Jordan (ts), Sonny Red (as), Tommy Flanagan (p, tracks 1-5), Ronnie Mathews (p, tracks 6-8), Art Davis (b), Elvin Jones (ds)。

実に硬派なハードバップの演奏の数々。適度なテンション、芯の入った骨太な2管フロントのユニゾン&ハーモニー、そして、自由度、イマジネーション溢れるアドリブ展開。ジョーダンもレッドも唄う様に流麗なサックスを吹き上げていく。ガツンと根性の入った、ダンディズム溢れるテナー&アルト。
 

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レッドのアルト・サックス。基本はチャーリー・パーカーのバップ・サックス。そこに流麗さと切れ味の良いファンクネスを加味した、レッド・オリジナルなアルト・サックスが気持ち良い。コルトレーンの様でコルトレーンでは無い、ゴツゴツゴリゴリ骨太で男気タップリなジョーダンのテナー・サックス。若干マイナーな存在だった、レッドとジョーダンのサックスが存分に楽しめる。

バックのリズム・セクションも良い味を出している。ピアノのフラナガンとマシューズ、どちらも強いタッチで、バリバリ「バップ」なピアノを、フロント2管に負けじと、ガンガン弾きまくる。そして、デイヴィスの新しい響きが芳しいベースライン、そして、これまた新しい響きのエルヴィンのポリリズミックなバップ・トラミング。このリズム・セクションの叩き出すリズム&ビートは、フロントのレッドとジョーダンのサックス2管に、ばっちりフィットする。

今まで、ジャズ盤紹介本や、ジャズ雑誌のアルバム紹介にあがることのないアルバムだが、内容はピカイチ。正統派の硬派でダンディズム溢れるハードバップ志向の演奏が、これでもか、という感じで堪能出来る。アルバム・ジャケットもなかなかお洒落。正統派ハードバップの好盤としてお勧め。好盤です。
 
 

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2025年5月14日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 113

バリー・ハリス(Barry Harris)。米国のジャズ・ピアニスト。1929年12月15日、米国ミシガン州デトロイト生まれ。2021年12月8日逝去(享年91歳)。COVID-19パンデミックの中、ウイルスの合併症で逝去。

バリー・ハリスは「パウエル派」。バリー・ハリスは、バド・パウエルのスタイルを完璧に踏襲しつつ、パウエルの様に攻撃的では無く、ブルージーで優雅で優しいフレーズが特徴。パウエルより、フレーズは整っていて典雅。端正な弾き回しは爽快感抜群。

そんなフレーズをベースに「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニスト。スタイルは「バップ」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに転化した弾きっぷりで、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが特徴。

Barry Harris『Preminado』(写真左)。1960年12月21日と1961年1月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Joe Benjamin (b), Elvin Jones (ds)。3曲目の「I Should Care」だけ、バリー・ハリスのソロ・ピアノ演奏。その他は、バリー・ハリスのバップ・ピアノをメインとした、オーソドックスなピアノ・トリオ編成。

バップ・ピアニスト、バリー・ハリスのピアノの良いところがギッシリ詰まったトリオ盤である。とにかく、バリー・ハリスの弾きっぷりが見事。
 

Barry-harrispreminado  

 
「パウエル派」のマナーに則りながら、端正で整った、ブルージーで優雅で優しい、それでいて粒だちの良い弾き回しは「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニストの面目躍如。明快なタッチは爽快感抜群。

「優れた総合力そのもの」を個性とするピアノで弾き回すスタンダート曲は極上の響き。冒頭の「My Heart Stood Still」、4曲目の「There's No One But You」、6曲目「"It's the Talk of the Town」そして、ラストの「What Is This Thing Called Love?」。スタンダード曲を弾くバリー・ハリスのピアノは切れ味と爽快感抜群。これぞ「バップ・ピアノ」という歯切れの良い弾き回しで、よく唄っている。

バックのリズム隊。ベースのジョー・ベンジャミンは、スタジオ・ベーシストであるが、その弾き回しは堅実で重厚。特に、ベンジャミンのウォーキング・ベースはソリッドで粘りがあって良好。そして、ドラムはエルヴィン・ジョーンズ。鋼のように力強く粘りのある、ハードバップなドラミングを叩きまくる。それでいて、決して耳につかず、効果的に、バリー・ハリスのピアノを引き立て、強力に鼓舞しプッシュする。

優秀なピアノ・トリオ演奏は、フロント&バック両方をしっかり弾きまくるピアノはもちろんのこと、リズム&ビートを支える、ベースとドラムの力量と優れたサポートが必須なのだが、このバリー・ハリスの『Preminado』は、それらを全てを備えている。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚として取り上げたい。
 
 

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2025年3月15日 (土曜日)

リヴァーサイドのブレイキー・2

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey and the Jazz Messengers)。意外と人気が無いなあ、と感じる今日この頃。ネットの記事を眺めてみても、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを取り上げるブロガーが少ないなあ、と感じるのは僕だけだろうか。

ブルーノート時代の諸作はまだ良いのだが、その他のレーベルに記録されたジャズ・メッセンジャーズのアルバムについては実に地味。ジャズ・メッセンジャーズの諸作は、長い活動期間を通じて、駄作・駄盤の類は殆ど無いんですけどね。

Art Blakey and The Jazz Messengers『kyoto』(写真左)。1964年2月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Wellington Blakey (vo, track 3 only))。1960年代の「伝説の3管フロント時代」のジャズ・メッセンジャーズである。

リヴァーサイド・レコードでの「3部作」のラスト。『Caravan』『Ugetsu』と来ての3枚目。1960年代の「伝説の3管フロント時代」。トランペットはフレディ・ハバード。この盤でのハバードは、『Caravan』『Ugetsu』と続く「ほど良く抑制されたハバード」。ほど良く抑制されたハバードは無敵である。この盤でも、ハバードは「抑制の美」を吹き上げる。
 

The-jazz-messengerskyoto

 
3曲目の「Wellington's Blues」が男性ボーカル入り。ジャズ・メッセンジャーズの演奏にボーカル入りは似合わない。LP時代で言うとA面のラスト(3曲目)。なぜここに男性ボーカル入りの楽曲を持ってきたのか。プロデュースの方針に疑問を感じる。このボーカル入り曲の存在で、この盤は損をしている印象は拭えない。

逆にLP時代のB面、CDでの4〜5曲目「Nihon Bash」〜「Kyoto」の演奏が充実している。1960年代の「伝説の3管フロント時代」のジャズ・メッセンジャーズの良さが横溢している。充実の3管フロント、鉄壁のブレイキー御大率いるリズム隊。ジャズ・メッセンジャーズ仕様のモード・ジャズがこれでもか、と展開される。

完璧充実のリヴァーサイドのジャズ・メッセンジャーズ。この『kyoto』で、突如、終焉を迎える。社長のビル・グラウアーが、1963年12月に突然の心臓発作で亡くなり、会社は1964年7月に自主破産を申請した為である。

しかし、ジャズ・メッセンジャーズの発展を記録したブルーノートの諸作と併せて、ジャズ・メッセジャーズの成熟を記録したリヴァーサイドの3部作は、ジャズ・メッセンジャーズにとっての貴重な記録である。
 
 

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2025年3月14日 (金曜日)

リヴァーサイドのブレイキー・1

しばらくの間、ちょっとご無沙汰していたのだが、久々に、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey and the Jazz Messengers)のアルバムの聴き直しを再開した。どの辺りからだったか。そうそう、1963年、リヴァーサイド・レコードへの録音を始めた頃からである。

Art Blakey and the Jazz Messengers『Caravan』(写真左)。1962年10月23–24日の録音。リヴァーサイド・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。1960年代の「伝説の3管フロント時代」のジャズ・メッセンジャーズである。

改めて、1960年代の「伝説の3管フロント時代」とは、フレディ・ハバードのトランペット、ウェイン・ショーターのテナー、カーティス・フラーのトロンボーンの3管フロントに、シダー・ウォルトンのピアノ、レジー・ウォークマンのベース、そして、リーダーのブレイキー御大のリズム隊のセクステット編成。

リヴァーサイドからの第一弾のアルバムなんだが、ブルーノート時代と内容は変わらない。充実の3管フロント、鉄壁のブレイキー御大率いるリズム隊。「伝説の3管フロント時代」のセクステットの基本は「モード」。ジャズ・メッセンジャーズ仕様のモード・ジャズがブワーッと展開される。3管フロントのユニゾン&ハーモニーが芳しく、3管フロントのソロ・パフォーマンスが凄まじい。
 

The-jazz-messengerscaravan

 
聴いていて面白いのは、ハバードのトランペット。ハバードは基本的に目立ちたがり屋なので、周りへの配慮は皆無、常にグイグイ前へ出てくるのだが、ブレイキー御大の下では、周りの音を聴き、演奏全体の展開を慮りながら、抑制された超絶技巧なトランペットを吹く。これが良い。実は、ほど良く抑制されたハバードは無敵である。恐らく、リーダーのブレイキー御大はそれを良く判っていて、ハバードを指導していたのだろうと思われる。

そして、この盤では、ブレイキー御大のドラムの出番が多い。ブルーノート時代はアンサンブル中心だったが、このリヴァーサイド盤では、結構、長尺&短尺、様々なイメージのドラムソロも織り交ぜて、意外とブレイキー御大のドラミングがしっかりと前面に押し出されている。そういうプロデュースなんだろうが、それまでのブレイキー盤と比べて、ブレイキー御大のドラミングの個性と特徴が良く判る。

この盤に「これ一曲」を選ぶとすれば、やはりタイトル曲の「Caravan」だろう。最強力な3管フロントがカッコよくユニゾン&ハーモニーを奏で、ブレイキー御大のドラムがそんなフロントをモーダルに煽る。ウォルトンのピアノがモーダルな雰囲気の拍車をかけ、ウォークマンのベースが、バンド全体のベースラインを一手に引き受ける。モーダルで柔軟なソロの交歓に時間を忘れる。

ブレイキー御大のドラミングが「タクト代わり」。ブレイキー御大のドラミングで、様々なニュアンス、様々な表情のモード・ジャズが展開される様は見事という他ない。ブルーノートのジャズ・メッセンジャーズと比べて、全く引けを取らないリヴァーサイドのジャズ・メッセンジャーズがこの盤に詰まっている。
 
 

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2025年2月19日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 104

フレディ・レッド(Freddie Redd)。1928年5月、NY生まれ、2021年3月、92歳で没。1959年にニューヨークのリビング・シアターの演劇「The Connection」の出演と音楽の作曲を担当した事で、一躍名前を知られるようになったピアニスト。

典型的なバップ・ピアニストであるが、やや地味というか、目立たないタイプで、ジャズ・ピアノ好きが多い日本においても知名度は比較的低い。結構、渋めの小粋で端正なバップ・ピアノを弾くのだが、我が国では顧みられることは殆どない。でも、聴いてみると、意外と「いい感じ」なのだから面白い。やはり、ジャズは自分の耳で聴かないといけない音楽ジャンルである。

Freddie Redd Trio『San Francisco Suite』(写真左)。1957年10月2日の録音。Riversideレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Redd (p), George Tucker (b), Al Dreares (ds)。渋めの小粋で端正なバップ・ピアニスト、フレディ・レッドのトリオ盤である。

まず、この「ジャズトリオのためのサンフランシスコ組曲」と題されたアルバム、4曲がレッドの作曲である。そして、このレッドの自作曲のそれぞれの出来がとても良い。特に、冒頭のタイトル曲「San Francisco Suite」の出来を聴いて、レッドのバップ・ピアノの腕前はそこそこかもしれないが、作曲能力は素晴らしいものあるということを十分に再認識させてくれる。
 

Freddie-redd-triosan-francisco-suite

 
レッドの書く曲って、意外と明るさと躍動感に満ちた楽曲が多いのだが、この「San Francisco Suite」は出来がとても良い。レッドのピアニストとしての腕前はちょっとイマイチなんだが、このレッドの書く楽曲の優秀性、明るさ、楽しさ、躍動感が、そんなちょっとイマイチのピアノを聴いて楽しいものにしている。

そして、このレッドの書く楽曲の優秀性、明るさ、楽しさ、躍動感のお陰で、レッドの独特のアタック感や泥臭さが、良い意味で「映える」のだから、即興演奏が旨のジャズとは言え、やはり、演奏する楽曲の質というのも、ジャズの重要な要素なんだ、ということを再認識させてくれる。

フレディ・レッドの自作曲の4曲以外、あとの3曲はスタンダード曲。「Blue Hour」や「Minor Interlude」は、マイナー調の展開だが、どこか、明るさ、楽しさ、躍動感を湛えていて、レッドのスタンダード曲の解釈、アレンジが意外とユニークなことが良く判る。

良い楽曲が主役のピアノを引き立てる、そんな言葉がぴったりのレッドの『San Francisco Suite』。リズム隊もバップなリズム&ビートを堅実に叩き出して、レッドのバップ・ピアノをしっかりと支えている。

そう、「良い楽曲、良いリズム隊が主役のピアノをしっかり引き立てる」という点で、この盤は「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚として良いのではないでしょうか。
 
 

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