2024年9月 7日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・28

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや2年。やっと第1巻の終わりに差し掛かってきた。

Lee Morgan『The Sidewinder』(写真左)。1963年12月21日の録音。ブルーノートの4157番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。リリース当時、ビルボード・チャートで最高25位を記録し、ブルーノート・レーベル空前のヒット盤となった。ジャズ史上においても、屈指のヒット盤である。

この盤も、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。なんせ、冒頭のタイトル曲「The Sidewinder」が、8ビート・ジャズで格好良いのなんのって。この曲が、8ビートを取り入れた「ジャズロック」の走りで、「実はブルースなんだが、8ビートに乗っているので、スピード感溢れる切れの良いブルースに仕上がった」という逸話を知ったのは、ジャズを聴き始めて10年くらい経ってから。

ただ、この盤、冒頭の「The Sidewinder」が、8ビートのジャズロックなブルースだからといって、全編、ジャズロックのオンパレードかと思いきや、それが違うのだからややこしい。この盤の評論にも「この盤は、いち早くロックのリズムを取り入れ、それに成功したジャズ盤」と堂々と書いているものもあるが、これって、2局目以降の演奏を聴かずに書いたとしか思えない。
 

Thesidewinder_1

 
ジャズ者初心者にとって、この盤を全編8ビートの「ジャズロック」が満載だと勘違いすると、この盤は辛い。2局目以降は、2曲目以降、4ビートの曲もあるし、6拍子の曲もあって、様々なリズム・アプローチを試みたハードバップ盤の様相で、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」と言える。

加えて、トランペットのモーガン、テナーのジョーヘン、共にアドリブ展開は「モード」を基本として、吹きまくっている。それぞれ、モーガンなりのモード展開、ジョーヘンなりのモード展開で、疾走感溢れるアドリブ・フレーズを吹きまくっていて、それまでのコードがメインのハードバップとは、音やフレーズの響きが全く異なる。当時としては、新鮮な響きを宿した、新しいハードバップとして捉えられていたのではなかろうか。

よって、この盤、キャッチャーでポップな、冒頭のジャズロック曲「The Sidewinder」に惑わされがちだが、ジャズ者初心者の入門盤としては、ちょっと難易度が高いと思う。

逆に、ジャズを聴き始めて、ジャズに興味が湧いて、様々なスタイルのジャズを聴いてみたいと思った時に、様々なビートに乗った、聴きやすい「モード・ジャズ」を体験するには最適の盤だと思う。特に、8ビートに乗った「モード・ジャズ」は、聴いていて「モード」をとても理解し易いと僕は思う。

ジャズロックを始めとした「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」として、この盤は内容充実であり、そういう切り口でこの盤は、ジャズの「超名盤」だと言える。ゆめゆめ、ジャズロック曲「The Sidewinder」が入っているから「超名盤」だとは解釈しないで欲しい。それだけ、この盤、ジャズロック曲「The Sidewinder」以外が充実しているのだ。
 
 

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2023年9月11日 (月曜日)

ジャズロック志向にロックオン

ハードバップ時代に、彗星の如く現れたトランペットの若き天才、リー・モーガン。1956年、初リーダー作『Indeed!』でデビューしたのが、なんと弱冠18歳。そしてこの初リーダー作が素晴らしい出来。以来、人気トランペッターとして第一線を走ってきたモーガン。1960年代の「ジャズの多様化」の時代は、22歳〜31歳の若手だが、彼のプレイは既に成熟し完成されていた。

Lee Morgan『The Rumproller』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4199番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Ronnie Mathews (p), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモーガンのトランペットとジョーヘンのウネウネ捻れモードのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

編成はオーソドックス。奇をてらったところが無いのはモーガンのリーダー作の良いところ。録音年は1965年。ジャズは多様化の時代のピーク。前作『Search for the New Land』で、モーガン流のモード・ジャズを確立した訳だが、今回の『The Rumproller』は、前々作『The Sidewinder』の内容に戻している。
 

Lee-morganthe-rumproller

 
冒頭のタイトル曲「The Rumproller」は、怒濤のジャズ・ロック。大ヒット曲「The Sidewinder」に比肩するファンキーでロックな出来。以降、モード有り、ラテン〜ボッサ有り、リリカルなミュートによるバラード有り、とバラエティーに富んだ内容に仕上がっている。この辺も大ヒット盤『The Sidewinder』を踏襲している。

この頃のモーガンは「ジャズ多様化の時代」の中で、どの方向に自らの音志向を持っていこうと、いろいろ迷っていた時代だったのではなかろうか。そして、この『The Rumproller』で、ジャズ・ロックをベースに定め、ジャズ・ロック志向の演奏の中で、モーダルなアドリブや、こってこてハードバップなフレーズなど、ジャズ・トランペットの演奏トレンドや演奏志向を展開する、そういう方向に舵を定めたのでは、と感じている。

話題としては「Desert Moonlight」、我々日本人にとってはお馴染みの童謡「月の沙漠」のジャズ化が2曲目にある。なかなかのアレンジで、日本の童謡を上手くジャズ化している。こういう器用さもモーガンの良き個性。次作『The Gigolo』以降、ジャズロックをベースとした演奏志向を追求〜深化していく。モーガンの鯔背なトランペットが映えに映える。
 
 

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2023年7月11日 (火曜日)

モーガンのモード・ジャズ 『Search For The New Land』

リー・モーガンも「進化の人」だった。デビュー当時は、バリバリのハード・バッパーだったが、ジャズ・メッセンジャーズへの参加を経て、ファンキー・ジャズに手を染める。そこから、ジャズ・ロックにも適応。ジャズの大衆音楽化に多大な貢献をしたかと思いきや、1960年代半ばには、アーティステック志向のジャズ、モード・ジャズにチャレンジする。

モーガンのトランペットのテクニックは相当に高いものがあり、様々なジャズの演奏スタイルやトレンドに確実に適応している。それだけ高い演奏テクニックを持っている訳だが、モーガンの優れているところは、様々なジャズの演奏スタイルやトレンドに適応する際、絶対に物真似では無い、必ず、モーガンのオリジナリティーを発揮しているところ。

Lee Morgan『Search For The New Land』(写真左)。1964年2月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Grant Green (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。モーガンのトランペット、ショーターのテナーがフロント2管、グリーンのぱっきぱきファンキーなギターが入ってのセクステット編成。

ピアノにハンコック、ベースにワークマン、ドラムスにヒギンスの、これって、どう見たって「新主流派」志向のリズム・セクション。そう言えば、テナーのショーターがいる。でも、ギターはグリーン、トランペットはモーガンで、この2人はファンキー・ジャズ志向。どんなジャズが展開されるのか、聴くまでは全く予想もつかない布陣である。

冒頭のタイトル曲「Search for the New Land」を聴くと、あれれ、と思う。ブルースかと思いきや、これ、モード曲。1950年代後半のハードバップな響きと、1960年代前半のモーダルな響きが混在した、面白い雰囲気のモード・ジャズが展開される。
 

Lee-morgansearch-for-the-new-land

 
ブルースっぽい展開の部分は、グリーンのぱっきぱきファンキーなギターがスケール一発のハードバップな響きのアドリブをかまし、モーダルな展開の部分は、ハンコックがこってこてモーダルなフレーズでガンガンに攻める。

そして、主役のモーガンとフロント管の相棒ショーターは、ブルースっぽい展開の部分とモーダルな展開の部分の両方に対応する。それでも、ワークマンのベースとヒギンスのドラムののリズム&ビートは「モーダルな響き」を基本としているので、演奏全体はモード・ジャズの体をしている。

それにしても、モーガンのモーダルな吹奏は見事なもので、1950年代のハードバップ時代の響きを宿しながら、フレーズは絶対的に「モード」。

1950年代後半のジャズと1960年代前半のジャズが混ざってる、モーガン独特のモード演奏が実にユニークで聴き応えがある。そして、ショーターがこの「モーガンのモード」に合わせて、テナーを吹いているところがこれまたユニーク。サイドマンとしてのショーターの凄みを聴いた思いがする。

他の曲も、この冒頭の「モーガンのモード」に合わせたモーダルな展開をメインとした演奏で、明らかに1950年代のハードバップとは一線を画する、これからのジャズのメインのトレンドを聴く様で、思わず姿勢を正して聴き込んでしまう。決して、リラックスして聴ける4ビートな演奏では無いのだが、ジャズの持つアーティスティックな面を堪能出来る好盤だと思う。

タイトルを直訳すると「新たな地を求めて」。とても示唆に富んだタイトルだと思う。こういう、当時の時代の先端を行くモーダルな演奏を記録しているブルーノートは、やはり優れたジャズ・レーベルだったと思う。「ブルーノートを聴けば、ジャズの歴史が判る」。至極名言である。
 
 

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2022年7月19日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・14

Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)は、僕の大好きなバンドの一つ。ドラマーのアート・ブレイキーが主宰するバンドで、1955年に旗揚げ、1990年にリーダーのブレイキーが亡くなるまでの、35年間の長きに渡って、第一線で活躍した。ジャズ・メッセンジャーズは、有望新人の登竜門的なバンドで、35年の活動期間の間に、相当数の一流ジャズマンを輩出している。

そんなジャズ・メッセンジャーズも旗揚げから、3年ほどは鳴かず飛ばず。しかし、Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b) の優秀なメンバーに恵まれ、ブルーノートの4003番『Moanin'』(1958年10月30日の録音)で復活の狼煙を上げる。この時のバンド・メンバーは、メッセンジャーズ史上、最強の部類に入る。

『Art Blakey et les Jazz-Messengers au club St. Germain, Vols. 1-3』(写真)。1958年12月21日、仏パリの「サンジェルマン」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blaakey (ds), Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b)。メッセンジャーズ史上、最強のラインナップ。復活の狼煙、伝説の名盤『Moanin'』の録音の約2ヶ月後のパフォーマンス。この「僕なりのジャズ超名盤研究」の書き下ろしの為に、久し振りに聴き直してみた。
 

At-club-st-germain

 
邦題『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』。LP時代に3枚のアルバムに分けて発売され、CDリイシュー時もその構成は踏襲されたが、出来れば、3枚一気に聴き通して欲しい。ここでのメッセンジャーズの演奏は最高に近い。ライヴ録音でありながら、エネルギッシュで迫力満点の演奏でありながら、ミスもほどんど無い。伝説の名盤『Moanin'』の名演の数々が霞むくらいだ。

メンバーそれぞれが、力量確かな一流ジャズマンなので、それぞれの演奏のバランスが抜群。それぞれのソロ演奏については、結構、時間をかけているのだが、内容が良いので「長い」と感じ無い。そして、メンバーそれぞれが、お互いのソロ演奏をよく聴き、よく理解していて、ソロをバトンタッチしていく際、繋がりがとても良く、独りよがりな展開にならない。3枚のライヴ盤、全12曲、捨て曲無し。どの演奏も「ファンキー・ジャズ」の代表的名演である。

ファンキー・ジャズ、ここに極まれリ、って感じの演奏の数々に思わず、じっくり聴き込んでしまいます。欧州でのモダン・ジャズの人気については、このライヴ盤の客席の掛け声など、熱い雰囲気が伝わってきて、熱狂的なものがあったことが判ります。ヘイゼル・スコット(Hazel Scott)が、ティモンズのソロの途中に感極まって「おお、神よ、憐れみを!(Oh Lord have mercy !)」と叫んだところなど、バッチリと録音されていて、その熱狂度合いを肌で感じることが出来ます。
 
 

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2021年5月17日 (月曜日)

チャレンジし進歩するモーガン

モーガンは「鯔背な」トランペッター。フレーズの終わりを「キュッ」と捻り上げる様な癖が「鯔背」。ファンキー・トランペットの代表的存在とされる向きもあるが、それはちょっと違うだろう。モーガンは、1972年2月19日、33歳で、彼の内縁の妻ヘレンに撃たれてこの世を去るまで、「チャレンジし進歩する」トランペッターだった。

Lee Morgan『lee-way』(写真左)。1960年4月28日の録音。ブルーノートの4034番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。モーガンのトランペットとマクリーンのアルト・サックスが2管フロントのクインテット編成。リズム・セクションは、ジャズ・メッセンジャーズから、ブレイキーのドラムとティモンズのピアノが参戦。ベースは先進的なポルチェンがチョイスされている。

モーガンは、1958年2月に、硬派なファンキー・ジャズ盤『Candy』を残して、一旦、ブルーノートを離れる。その後、Vee-Jayレーベルから、『Here's Lee Morgan』『The Young Lions』『Expoobident』の Vee-Jay3部作をリリースする。この3部作の内容を確認すると、演奏全体の雰囲気が、明るいメリハリの効いたファンキーなハードバップから、ちょっとモードに傾いた、新主流派な思索的でクールな雰囲気に変わっている。
 

Leeway
 

今回の『lee-way』は、再びブルーノートに戻って、Vee-Jay3部作の内容をそのまま踏襲した、モードに傾いた、新主流派な思索的でクールな内容のパフォーマンスを展開している。この盤にはもはや「ファンキー・トランペッター」のモーガンはいない。抑制が効いて、ちょっと大人しいプレイに聴こえるが、実は喜々として、バリバリ吹きまくっている。今回は完全に、マクリーン「置いてきぼり」である。

モードに傾いた、新主流派な思索的でクールな内容にチャレンジしているので、フレージングやアドリブ展開の吹き回しとかが、以前と明らかに変わってきている。これがモーガンの「既定路線」なのは、ブレイキーのサポートが揺るぎないこと、ティモンズのファンキー・ピアノも、モーガンの新しい志向に追従していることからも良く判る。

そして、その志向が「正解」なのも、ポルチェンのモーダルなベースのサポートを聴いても良く判る。バンド全体がしっかりと「モーガンの新しい演奏志向」をサポートしている。モーガンって、意外とその時その時のジャズの演奏の「流行」というのを意識している。考えるトランペッターであったことは、この辺りのアルバムを聴くと良く判る。
 
 
 

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2021年2月 1日 (月曜日)

都会の夜を連想させるモーガン盤

リー・モーガンのブルーノート1500番台に立ち戻っている。当ブログでまだ記事にしていない好盤の「落ち穂拾い」である。1538番のモーガンのデビュー盤『Indeed!』から、1500番台のモーガンの単独リーダー作、コ・リーダー作を併せて全8枚。この盤が最後の1500番台のリー・モーガンのリーダー作になる。

Lee Morgan『City Lights』(写真左)。ブルーノートの1575番。1957年8月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), George Coleman (ts, as), Ray Bryant (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。モーガンのトランペット、フラーのトロンボーン、コールマンのサックスのフロント3管のセクステット(6重奏団)構成。

録音時、フロント3管のモーガンは弱冠19歳。フラーは23歳、コールマンは22歳。リズム・セクションのピアノ担当ブライアントは26歳、ベースのチェンバースは22歳、ドラムのテイラーは28歳。フロント3管の平均年齢は21歳。リズム・セクションの平均年齢25歳。若手で固めたセクステットだが、フロント3管はあまりに若い。若さに任せて、バリバリのアドリブ合戦が繰り広げられるのか、と思いきや、それが違う。
 
 
City-light  
 
 
タイトルが「City Lights(街の灯り)」。この盤は、当時の米国東海岸では珍しい、アーバンでアダルトにアレンジされた「大人のファンキー・ジャズ」である。フロント3管の平均年齢21歳で、この「大都会の夜、それも深夜」をイメージさせる、大人のブロウを聴かせてくれるとは。バリバリのアドリブ合戦どころか、アダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズな内容にちょっとビックリする。

収録曲を見れば、ベニー・ゴルソンの曲が5曲中3曲を占める。この盤、ゴルソンが作曲だけで無くアレンジでも参加していたらしく、なるほど、フロント3管のユニゾン&ハーモニーは、あからさまでは無いが「ゴルソン・ハーモニー」の香りがする。そう、このゴルソンのアレンジが「都会の灯り」の雰囲気を濃厚に醸し出しているのだ。

全編に渡って「大人」で「都会の夜」の雰囲気漂う音世界が心地良く流れていく。抑制の美とアレンジの妙。そんなゴルソンのアレンジの意図を理解し、的確に表現していく若手の3管フロント。その力量は計り知れないものがある。とりわけ、弱冠19歳、最若手のリーダー、モーガンのトランペットの「抑制の美」がこの盤の最大の聴きどころ。「都会の夜」を連想させる企画盤として良好の内容。好盤です。
 
 
 
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2021年1月30日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・198

このところ、リー・モーガンに凝っている。特に晩年のモーガンについては、今回、聴き直して、その内容を見直したところがある。そして、今一度、リー・モーガンのブルーノート1500番台に立ち戻る。当ブログでまだ記事にしていない好盤の「落ち穂拾い」である。

Lee Morgan『The Cooker』(写真左)。1957年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Pepper Adams (bs), Bobby Timmons (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。聴き所は2つ。1つは、ペッパー・アダムスのバリトン・サックス(バリサク)の参加。そして、もうひとつは、ザ・ファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの参加。

改めて、リー・モーガンのトランペット、ペッパー・アダムスのバリサクのフロント2管のクインテット構成。このトランペットとバリサクのフロント2管がこの盤の特徴。切れ味良く、ブリリアント、そして力感溢れるモーガンのトランペットだからこそ、存在感抜群のモーガンのトランペットだからこそ、この盤の2管フロントが映えるのだ。

耽美的、リリカル、繊細さが「ウリ」の、ちょっとでも「線が細い」トランペットだと、バリサクのボワッとした、ブリブリした重低音に負けて、音がどこかへ行ってしまう危険性がある。
 
 
The-cooker
 
 
が、このモーガンの存在感溢れる、切れ味の良い中高音だと、バリサクの音色との「好対照」が映える。加えて、モーガンのハイテクニックのトランペットにユニゾン&ハーモニーで追従するアダムスのバリサクの演奏テクニックも特筆に値する。

バックのリズム・セクションも好調。こってこてファンキーなピアニスト、ティモンズが弾きまくる。ブルーノートはリハーサルにもギャラを払うほど、本番の演奏の精度は高い。しっかりと端正で整った演奏の中で、ファンキーに弾きまくるティモンズは「整っている」。

ファンキーだからといって、俗っぽいところは無い。整った躍動感溢れるファンキー・ピアノ。これが、トラペット+バリサクのフロント2管にバッチリ合っている。ポルチェンのベースとフィリージョーのドラムも何時になく「ファンキー」なリズム&ビートを叩き出す。

実は僕、この盤、昔から大好きな一枚なんです。特に、この盤でバリサクの魅力に取り憑かれました。ジャケットのモーガンの横顔のアップも格好良い。ブルーノート・レーベルならではの好盤です。
 
 
 

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2021年1月29日 (金曜日)

ジャケを見て、ギョッとする。

ジャケットを見れば「ギョッ」とする。おおよそ、ジャズのアルバムとは思えない。1960年代後半のサイケデリック系ポップスか、ラブ&ピース系のソフトロックのアルバムではないかと思ってしまう。でも、これって、歴としたブルーノート・レーベルのアルバムなのだ。

1965年、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンはブルーノートを米リバティー社に売却、1967年引退した。ライオンの手を離れたブルーノートは、ジャケット・デザインなど、外に見える部分ではあるが、大手レコード会社の趣味の悪い、大衆向けのデザインやタイポグラフィーを採用していった。もはやジャケットを見ただけでは「ブルーノート・レーベル」盤だということが判断出来なくなった(笑)。

Lee Morgan『Caramba!』(写真)。1968年5月3日の録音。ブルーノートの4289番。プロデューサーはフランシス・ウルフ。アルフレッド・ライオンでは無い。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds), Cal Massey (arr)。モーガン&モーピンの2管フロントのクインテット編成。
 
 
Caramba_20210129195601   
 
 
このジャケットを見れば、まあ、内容的には俗っぽいソウル・ジャズか、サイケデリックなジャズ・ファンクだろうなあ、と思うのだが、パーソネルを見れば、このメンバーでソウル・ジャズやジャズ・ファンクをやるはずが無いよなあ、とも思う。ということで、聴いてみると・・・・。さすがはリー・モーガン。俗っぽいジャズに身をやつすことは無かった。

冒頭の「Caramba」は、モーガンお得意の、硬派でポップなジャズ・ロック。「The Sidewinder」でお馴染みのジャズ・ロックの後は、いきなりポップではあるが、モーダルなジャズにガラッと様変わり。モーガンのトランペットは溌剌とモーダルなフレーズを連発、モウピンのテナーもお得意のモード奏法で硬派なフレーズを吹き上げる。

シダー・ウォルトン率いるリズム・セクションも好演。不思議とモーガンならではの響きがそこかしこに感じられて、気がつけば、リー・モーガンならではの「モード・ジャズ」のオンパレード。しかし、ジャケットとアルバムの内容とこれだけかけ離れた盤も珍しい。アルバムのリリース当時、モーガンはどう思っただろう。
 
 
 

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2021年1月28日 (木曜日)

モーガン最後の公式セッション 『The Last Session』

当ブログの朝のツイート「今日のスタート」で、リー・モーガン(Lee Morgan)の聴き直し、それも、急逝直前の遺作から順に遡って聴き直している。モーガンが内縁の妻に撃たれて急逝したのは、1972年2月19日(享年34歳)。ジャズは、クロスオーバー・ジャズとモーダルなジャズが主流だった時期。モーガンが果敢に新しいジャズのトレンドに挑んでいった姿が涙を誘う。

Lee Morgan『The Last Session』(写真左)。1971年9月17–18日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Grachan Moncur III (tb), Bobbi Humphrey (fl), Billy Harper (ts, alto-fl), Harold Mabern -(ac-p, el-p), Reggie Workman (b, perc), Jymie Merritt (b), Freddie Waits (ds, recorder)。フロント4管のセプテット(7重奏団)編成。

モーガン、急逝の5ヶ月前のセッションの記録。最後の公式セッションになる。メンバーは、当時のブルーノート御用達のメンバーをメインに固めた「手練の面々」。メンバーの志向としては、モーダルなジャズを志向するメンバーが多くを占めている。積極的な電気楽器の導入もあって、クロスオーバー・ジャズの影響も垣間見える。
   
  
The-last-session-lee-morgan   
  
 
モーガンのトランペットが、モード・ジャズに完全適応している様子が窺える。それまでのスタジオ録音は、ところどころ、ファンキー・ジャズへの未練や、ソウル・ジャズへの浮気心が見え隠れして、ちょっと散漫なイメージが付きまとっていたが、この盤では、それが吹っ切れた様に、モード・ジャズ一色に染まっている。

そんなモーダルなジャズをベースに、エレクトリック・サウンドの積極導入、スピリチュアルなアドリブ展開、黒人解放運動からの影響、そして、ネイティヴな民族音楽の要素の反映など、従来のスタイルから明らかに進化したモーガンの音楽を聴くことが出来る。この時期、こんなモーダルなジャズの音世界は他に無い。明らかにモーガンならではの音世界である。

当時の、新しいモーガンの進化した音世界が形になったアルバムだと思う。ここから更に進化したモーガンが聴けるはずだったのだが、このセッションの5ヶ月後、内縁の妻に撃たれて急逝する。実に残念である。

最後に、ノーマン・シーフ撮影によるジャケが実に格好良い。本当に「鯔背で小粋で格好良い」トランペッターだった。
 
 
 

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2021年1月23日 (土曜日)

整然と整ったモブレー=モーガン

ブルーノート・レーベルのアルバムは「ジャケット・デザイン」の面でも優れたものを多く残している。この盤も例に漏れず、実に粋なアルバム・ジャケットである。セッションを録音したであろうオープンリール・テープを運ぶキャリング・ケースをあしらったデザイン。そして、それにそぐった絶妙なロゴタイプ。

Hank Mobley & Lee Morgan『Peckin' Time』(写真左)。1958年2月9日の録音。ブルーノートの1574番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。双頭リーダーのハンク・モブレーのテナー、リー・モーガンのトランペットがフロント2管のクインテット構成。整然と整った躍動感溢れるスッキリとした演奏で、ジャズの良さがギッシリ詰まった盤。

共演者が同年代若しくは年下の時のモブレーは好調だ。ケリーのピアノもご機嫌。モーガンのペットも溌剌。アルバム全体を通して、モブレーのリーダー作の中で、一番、内容が整った盤ではないか。もともと、モブレーとモーガンの相性は良く、この2人の2管コンビには外れが無い。その2人が絶好調なこの盤。アレンジも良好、フロント2管のバランスも良くて、ほんと整った内容に惚れ惚れする。
 
 
Peckin-time  
 
 
特に、唯一のスタンダード、3曲目の「Speak Low」はアレンジも良好、フロント2管が朗々と鳴り響いて、とても素敵な演奏に仕上がっている。ほんと、この盤ではモブレーがテナーを伸び伸びと吹いている。伸び伸びと吹く分、テクニックにも良い影響を与えていて、ミスの無い流麗なアドリブ・フレーズは特筆すべきもの。もしかしたら、この盤、総合的に見て、ハンク・モブレーの一番出来の盤かもしれない。

バックのリズム・セクションの活躍も見逃せない。もともと、モブレーとベースのポール・チェンバースも相性が良い。そして、ハッピー・スインガーでそこはかとなくブルージーなウィントン・ケリーのピアノが、モブレー=モーガンのフロント2管のスピード感とバッチリ合っていて、演奏全体のスピード感の供給に貢献、そして、パーシップのドラムが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと「締めて」いる。

ブルーノート・レーベルのアルバムの中でも、ジャズの即興演奏でありがちな「破綻」が全く無い。スリリングな演奏を好む向きには、ちょっと物足りないかも。しかし、フロント2管の抑制がほどよく効いたバリバリな吹きまくりと、バックのリズム隊の躍動感と疾走感。アーティステックな側面を強く感じる、素敵なハードバップ盤である。
 
 
 

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