2026年5月10日 (日曜日)

ジャズ・ファンクを走るファレル

CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたジョー・ファレル。よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目が『Penny Arcade』。そして、CTI第5作目である。より骨太でロック色の強いフュージョン・サウンドへの傾倒が色濃い、ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクの好盤である。

Joe Farrell『Upon This Rock』(写真左)。1973年10月, 1974年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl), Joe Beck (g), Herb Bushler (b), Jimmy Madison (ds)。ゲストに、Steve Gadd (ds, on "I Won't Be Back"), Herbie Hancock (p, on "I Won't Be Back"), Don Alias (conga, on "I Won't Be Back")。全4曲で構成され、ジャズの即興性とロックのダイナミズムが高度に融合したクロスオーバー・ジャズである。

1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の三作品は、ギターにジョー・ベックを入れてかなりファンク色の強い演奏をしている。その2作目である。この作品の実質的な「共同リーダー」とも称されるギタリスト、ジョー・ベックの存在感が非常に大きいのが特徴。ジョー・ベックのファンキー・エレギを抜きにして、この盤は語れない。
 

Joe-farrellupon-this-rock

 
1曲目「Weathervane」は、挨拶代わりの1曲。ファレルとジョー・ベックによる高速のユニゾン・フレーズが印象的な、マハヴィシュヌ・オーケストラを彷彿とさせる緊張感あふれるジャズ・ロック。3曲目のタイトル曲「Upon This Rock」が、強烈な、このアルバムのハイライト。強靱なドラム・ブレイクで幕が開き、ファレルの力強いテナー・サックスとジョー・ベックの歪んだギターのユニゾン&インタープレイが凄まじい。

2曲目の「I Won't Be Back」だけが、他の3曲と雰囲気、音が違う。それもそのはず、この曲については、前作『Penny Arcade』と同じセッションで録音された曲。ハービー・ハンコックとスティーヴ・ガッドが参加しており、ラテン調の軽快なリズムに乗せた優雅なファレルのフルート・ソロが楽しめる。後のフュージョン・サウンドを先取りした様な、アーバンでメロウでファンキーなサウンドは意外と癖になる。

ラストの「Seven Seas」は、ジャズ・ファンク・チューン。ファレルのテナーもベックのエレギも、どっぷりジャズ・ファンク。ファンキーな路線へと舵を切ったファレルの最終到達点の様な演奏。全4曲を聴いて、ファレルの目指したもの、それは、ジャズとロックの融合によるクロスーオーバーなジャズ・ファンク。これはこれで、ちゃんとした成果を上げていると僕は思う。
 
 

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2026年4月 8日 (水曜日)

悪くは無い” CTIのハバード盤”

CTIレーベルからリリースされた、フレディ・ハバードのの5枚目のスタジオ録音盤である。パーソネルを見ると、純ジャズ畑はら、テナー・サックスのジュニア・クック、エレピでジョージ・ケイブルス、エレベでロン・カーターが参加。他のメンバーは、馴染みのない名前ばかりなので、恐らく、当時の腕利きスタジオ・ミュージシャンを調達したのではないだろうか。

Freddie Hubbard『Keep Your Soul Together』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Junior Cook (ts), George Cables (el-p), Aurell Ray (g), Kent Brinkley (b), Ron Carter (el-b), Ralph Penland (ds), Juno Lewis (perc)。ジャケットがあまりに俗っぽくて敬遠したくなるが、この盤につまっているのは、意外と硬派なクロスオーバー・ジャズ。

この盤では、冒頭の「Brigitte」と2曲目「Keep Your Soul Together」で、抑制されたハバードのトランペットが聴ける。テクニック最高のハバード、そんなハバードが抑制されたトランペットを吹くとき、その時のハバードは「無敵」である。彼の持つ個性のひとつ「歌心」が、抑制されたトランペットの前面に押し出てくる。そして、彼の高いテクニックが、この「歌心」の為に発揮される。無敵である。
 

Freddie-hubbardkeep-your-soul-together  

 
しかし、3曲目の「Spirits of Trane」で、コルトレーンばりにバリバリ吹きまくるクックと、シーツ・オブ・サウンドよろしくエレピを弾きまくるケイブルスを目の当たりにしたハバードは、思わず「目立ちたがり」な面がグイグイ出てきて、高テクニックを最大限に発揮して、クックとケイブルスを撃沈するトランペットをペラペラと吹きまくり出す。こうなると、ハバードのトランペットは「耳に付く」。

ラストの「Destiny's Children」は、初期のエレ・マイルスをポップにファンキーに判り易くした様な演奏で、クロスオーバー志向のファンキーなイージーリスニング・ジャズといった面持ち。R&B志向のリズム&ビートは採用していないので、この演奏はあくまで「ファンキー・ジャズ」の域は出ていない。ハバードは、なぜか吹きまくっていて、ちょっとウザく、吹きすぎなのが惜しい。

内容的には、旧来からの純ジャズのファンにも、新しいクロスオーバー・ジャズのファンにも、両方に受ける様なアレンジとプロデュースがみえみえで、クックとケイブルスの好演、エレベのロンの頑張りがちょっと霞んでいるところが惜しいアルバムである。とにかく、良くも悪くも、ハバードのトランペットが「目立つ」アルバム。しかし、悪くはない。
 
 

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2026年4月 5日 (日曜日)

『Rainbow Seeker』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲」を「この一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。

特に、この記事は、純ジャズばかりでなく、和ジャズ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤・好盤にも言及しているところが良い。特に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、なかなか説得力のあるアルバムを選んでいるので、好感度良好である。

クロスオーバー&フュージョンの世界では、超絶技巧、テクニック優先、音の雰囲気優先なので、なかなかミュージシャン本人の個性まで及ぶことはなかなか無いんだが、それでも、中には、その人の演奏を30秒ほど聴いたら、それと判る、コッテコテの個性の持ち主は結構いたりする。

クルセイダーズのキーボード奏者ジョー・サンプルなんかは、コッテコテの個性の持ち主である。凄い時は、ピアノのフレーズ5秒ほど聴いただけで、なかなか判り難い時でも30秒ほど聴けば、そのフレーズを弾いているキーボーティストは「ジョー・サンプル」だと判るくらい、コッテコテの個性の持ち主である。

Joe Sample『Rainbow Seeker』(写真左)。1978年の作品。邦題『虹の楽園』。ちなみにパーソネルは以下の通り。なんだか、クロスオーバー&フュージョン畑の名うてのミュージシャンがズラリである。

Joe Sample (p, el-p, key), Robert Popwell (b), Stix Hooper (ds, perc), Ray Parker (g), Dean Parks (g), Billy Rogers (g), David T. Walker (g), Paulinho DaCosta (perc), Garnett Brown (tb), Ernie Watts (sax, fl, piccolo), Fred Jackson (sax), William Green (sax, fl, piccolo), Robert O. Bryant (tp), Jay Daversa (tp), Steven Madaio (tp) 等々。
 

Rainbow_seeker_2

 
ジョー・サンプルのキーボーディストとしての才能がギッシリ詰まった傑作盤である。響きの良い小粋なエレピと、明朗でリリカルなアコピが、そこはかとなくファンキーな香りを漂わせながら、キラキラ輝く様に乱舞している。フレーズの弾き回し方が実に個性的で、ジョー・サンプルにしか出せない音が満載である。

健康的で明朗な音で、アーバンな雰囲気色濃く、ファンクネスがクールにお洒落に織り込まれているところが個性的。速いフレーズが、コロコロと涼しく転がる様に弾き回していく様は、ジョー・サンプルならでは。

レココレの特集では「この曲」としてあがっている、4曲目の「Melodies Of Love」。確かに、この1曲にジョー・サンプルのキーボーティストの特徴が溢れている。

決して、目を見張るようなテクニックでは無いのだが、ちょっとファンキーな香りが芳しい、明朗でリリカルなアコピが凄い。テクニックでは二の次、音の響きと印象的な旋律でガッツリ聴かせるとでもいおうか、いかにも、ジョー・サンプルらしい美意識が、バッチリと表現されている。

コンポーザー&アレンジャーとしての魅力も満載。収録された曲はすべてオリジナル。収録された曲という曲はどれもが良い曲であり、良いアレンジが施されていて、印象的な、しかも判り易く親しみ旋律が満載。「良い曲やな〜」と思いながら聴き惚れていると、あっという間に収録曲全8曲が終わってしまう。

ジョー・サンプルの「この一枚」は、この『Rainbow Seeker』(虹の楽園)。クロスオーバー&フュージョンのキーボードでしょ、と甘く見るなかれ。上品で小粋、そこはかと無くファンキーの香り漂う、明朗で印象的な旋律が満載で、とにかく聴き易く、とにかく美しい。
 
 

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2026年4月 1日 (水曜日)

ガボール・ザボのCTI第2弾

ガボール・ザボは、1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議な響きと不思議なフレーズを持ったギター。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gabor Szabo『Rambler』(写真左)。1973年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Bob James (p, org, syn), Mike Wofford (el-p), Wolfgang Melz (b), Bobby Morin (ds), Unknown (perc)。

タイトル邦題「放浪者」をテーマに、ストーリー性を持たせた内容の企画盤。ボブ・ジェームスが「音楽スーパーバイザー」を担った、クロスオーバー志向のエレ・ジャズ。CTIレーベルにおけるグルーヴィーでメロウな、クロスオーバー志向のソウル・ジャズと形容してもよい、ユニークな内容のCTI盤。

欧州の、東欧のローカルな響きが耳新しい、哀愁感を強く帯びた、テクニック優秀なジャズ・ギターが相変わらず炸裂している、CTIレーベルでの第2弾である。
 
Gabor-szaborambler  
 
アルバム全体の雰囲気は、ポップで流麗な、ちょっと、イージーリスニング志向を意識した音作りになっている。フュージョンの様な「ソフト&メロウ」まではいかないまでも、メロウな雰囲気の静かな曲は、フュージョンの先駆けと言えるのではないか。

それでも、ザボのギターは、個性的な、国籍不明、ジャンル不明な、硬質でロックっぽい、ちょっと「ヘタウマ」なギターのままで、ただ、弾き紡ぐフレーズは、判り易く、チャッチーで明るい哀愁感をまとった、ポップなフレーズに変化している。これは明らかに、CTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラーの志向ではないだろうか。

タイトでグルーヴィーなリズムセクションとザボ節のギターが絡み合うジャズ・ファンクな、冒頭のタイトル曲「Rambler」、ジプシー・ギターの神様、ジャンゴ・ラインハルトに捧げた「Reinhardt」を中心に、メロウな曲を効果的に挟んだ、メリハリのある収録曲の構成が意外と填まっている。

ポップ化が進んだガボール・ザボのクロスオーバー・サウンド。ここでも、ボブ・ジェームスのアレンジと、音楽スーパーバイザーとしての役割が好要素として効いている。
 
 

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2026年3月30日 (月曜日)

ブラジルとクロスーバーの融合

アイアート・モレイラは、ブラジル出身のドラマ−&パーカッション奏者。1941年8月5日生まれ。未だ現役である。ャズシンガーのフローラ・プリムと結婚しており、娘のダイアナ・モレイラも歌手。

1960年代後半にブラジルのアンサンブル、クアルテート・ノヴォのメンバーとして名を馳せる。その後、米国に移住し、マイルス・デイヴィス、リターン・トゥ・フォーエヴァー、ウェザー・リポート、サンタナらと、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのシーンで活躍した。

Airto Moreira『Fingers』(写真左)。1973年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (ds, perc, vo), Hugo Fattoruso (key, harmonica, vo), David Amaro (ac-g, el-g), Ringo Thielmann (b, vo), Jorge Osvaldo Fattoruso (ds, vo), Flora Purim (perc, vo)。CTIレーベルでのデビュー盤『Free』(1972年)に続く、CTIレーベルでの第2弾リーダー作になる。

内容的には、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズ。アルバムを覆う、躍動的でテンションの高い「サンバ・グルーヴ」が特徴的。「純ジャズ命」の硬派なジャズ者の方々からすると、全く認めたくない内容のブラジリアン・クロスオーバー。とても、ブラジル&南米色の強い、いかにもアイアートの音志向らしいアルバムである。人気のサンバ曲「Tombo In 7/4」のオリジナルの収録盤としてお馴染みの1枚である。
 

Airto-moreirafingers

 
キーボード、ベース、ドラム&パーカッションといった、リズム・セクションは、ウルグアイのフュージョン・グループOPAのメンバーを連れてきている。米国ジャズマンが演奏するブラジリアン・ミュージックより、違和感無く、自然に溶け込んでいる様に思わず納得する。サンバのリズムやフレーズの適合がとてもスムーズで違和感が無い。

当然、リズム&ビートは、リーダーのアイアート・モレイラがリードしていて、特にアイアートのドラミングは特徴的。ブラジル・ミュージック的ドラミングとでも形容しようか。じっくりと聴き耳を立てて聴いてみると、その個性とユニークさが良く判る。このアイアートのドラミングが、アルバム全体のブラジリアン・クロスーバーな雰囲気を牽引している。

ギターのデヴィッド・アマロは、米国カリフォルニア州出身のギタリストだが、まるでブラジル生まれのようにギターを演奏する希有な存在。ジャズ、ロック、ブラジル音楽を融合させたサウンドとスタイルを確立したギタリストの1人であり、この盤でも、アマロのギターが要所要所で効いている。

3曲目の「メリー・ゴーランド」とか5曲目の「パラナ」などは、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズの名演。ブラジリアン・ミュージックと、クロスオーバー・ジャズが良い方向で融合していて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、その内容は聴きどころ満載。とても、CTIレーベルらしいアルバムでもある。
 
 

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2026年3月26日 (木曜日)

この盤にも”一本取られた感”満載

ランディ・ウエストン(Randy Weston)は、ニューヨーク出身のピアニスト。1926年生まれ、2018年9月、92歳で鬼籍に入っている。デューク・エリントンやセロニアス・モンクの影響を色濃く感じるタッチの強さと不思議なフレーズの飛び方。そして、作曲の才にもつながる美しいメロディーラインが個性の、硬派なバップ・ピアニストだった。

Randy Weston『Blue Moses』(写真左)。1972年3ー4月の録音。ちなみにパーソンネルは、Randy Weston (el-p), Freddie Hubbard (tp), Grover Washington, Jr. (ts), Hubert Laws (fl),David Horowitz (syn), Ron Carter, Vishnu Bill Wood (b), Billy Cobham (ds), Phil Kraus, Airto Moreira, Azzedin Weston (perc), Madame Meddah (vo), Don Sebesky (arr, cond)。ここに、重厚なブラス・セクションが加わる。

CTIレコード、ドン・セベスキーのアレンジ、クリード・テイラーのプロデュース、そして、ビッグバンド・サウンド。これは、もう甘々のゴージャスなビッグバンド仕様のフュージョンだろう、と高をくくっても仕方の無い組合せ。それが、である。冒頭の長尺の「Ifrane」を聴けば「あら、ビックリ」。硬派な正統派なエレクトロニック・ビッグサウンドが炸裂する。うへ〜とひれ伏してしまう(笑)。
 

Randy-westonblue-moses

 
まず、硬派なバップ・ピアニストだったウェストンのエレピが良い味を出している。コンテンポラリーなエレクトリック・ジャズな雰囲気を色濃くしているのは、このウェストンのエレピの音色。よく聴くと、確かに、バップなピアノのマナーで、エレピを弾き倒しているのが判る。さすがウェストン、エレピを弾く時も、自分の弾き方の個性を全く失っていない。

そして、ハバードがトランペットをド派手に吹きまくる。目立ちたがり屋の真骨頂(笑)。しかし、そんなハバードを凌駕する、ど迫力でドライブ感抜群、力感溢れる硬派で正統派なテナーを吹きまくるのが、グローヴァー・ワシントン・ジュニアその人。最初、聴いていて、誰だ、この凄いテナーを吹きまくるのは、と思ってパーソネルを見たら、ワシントン・ジュニア。あのフュージョン・テナーの第一人者のワシントン・ジュニア。やはり、素性確かなテナー・マンだったのだ。

どこか、全体にアフリカンな響きが漂う、正当派なビッグバンド仕様のクロスオーバー・コンテンポラリー・ジャズ。この盤は一年前、初めて聴いて「目から鱗」。わが国では相当マイナーな存在だが、恐らく、この盤、CTI盤だからだろう。昨日も書いたが、この盤も、1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。ほんと、CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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2026年3月22日 (日曜日)

ガボール・ザボのCTI第一弾

Gabor Szabo(ガボール・ザボ)のギター。ガボール・ザボって1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議なギターである。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。どう聴いても「ジャジー」では無いギター。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて、ガボール・ザボのギターをあからさまに「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gábor Szabó『Mizrab』(写真左)。1972年12月の録音。CTI 6026番。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Hubert Laws (fl, piccolo), Bob James (el-p, arr, cond), Ron Carter (b, arco-b), Billy Cobham (ds, on trak;1,3), Jack DeJohnette (ds, on2,4,5), Ralph MacDonald (perc)以上が主要バンドメンバー。そして、バックにオーケストラが入る。

アレンジと指揮を「クロスオーバー&フュージョン・ジャズの仕掛け人」ボブ・ジェームスが担当している。このボブ・ジェームスのアレンジ、ちょっとミステリアスで、エキゾチックなアレンジが、見事にザボの「ジプシー・ギター」を前面に押し出している。
 

Gabor-szabomizrab

 
CTIレコードからの第一弾。さすが、CTIの総帥プロデューサー、クリード・テイラー。イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズの中で、優れたアレンジをベースに、ガボール・ザボのジプシー特有のフィーリング溢れる、怪しげで哀愁たっぷりの摩訶不思議なギターを印象付け、映えに映えさせる。ボブ・ジェームスのアレンジと指揮のたまもの。

インパルス時代は、どうにも、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱えず、時には、レノン&マッカートニーの「イエスタディ」のカバーなどをさせて、完全に、プロデュースの迷走状態。不思議な内容のギター・アルバムは多々制作したが、どれも決め手に欠ける、未完成のものだった印象は拭えなかった。

しかし、このCTIレコード第一弾のは、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱い、ザボのギターの個性と特徴をしっかりと前面に押し出すことに成功している。

この盤には、ザボのギターの個性と特徴がアルバム全体に渡って、散りばめられている。ジプシーと言えば「欧州」の響き。適正にアレンジされたオーケストラと、ザボのギターとの相性が良いことも見抜いてのプロデュースは見事である。
 
 

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2026年3月10日 (火曜日)

アーティステックなCTI盤です。

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの中心となったレーベル。総帥プロデューサー、クリード・テイラーの下、意欲的&挑戦的なニュー・ジャズから、硬派でメインストリームなクロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズまで、1970年代のジャズのトレンドを網羅したレーベルである。

Hubert Laws『Live At Carnegie Hall』(写真左)。1973年1月12日の録音。CTI 6025番。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl), Bob James (el-p), Gene Bertoncini (g), Ron Carter (b), Billy Cobham, Freddie Waits (ds), Dave Friedman (vib), Dave Miller (bassoon), Don Sebesky (arr)。ジャズ・フルート奏者の雄、ヒューバート・ロウズのカーネギー・ホールでのライヴである。

カーネギー・ホールでのライヴということを意識したのだろうか。アカデミックかつ、アーティスティックなクロスオーバー・ジャズが展開される。これがCTIレーベルからリリースされたサウンドか、と初めて聞いた時は、LPのレーベルを秘密の喫茶店のレコードプレイヤーまで見に行ったくらいだ。

CTIレーベルは、時々、こんな硬派でメインストリームな、内容のあるクロスオーバー・ジャズをリリースする。この盤もそうで、ヒューバート・ロウズという、ジャズ・フルートの代表格の演奏が前面に押し出され、アーティスティックなアレンジに乗ったクロスオーバー・ジャズが展開される。
 
Hubert-lawslive-at-carnegie-hall
 
演奏曲からしてアーティスティック。チック・コリアの「Windows」とジェイムス・テイラーの「Fire and Rain」のメドレー、そしてバッハの「パッサカリア ハ短調」。ジャズとクラシックの間を効果的に行き来するジャズ・フルート奏者、ヒューバート・ロウズの個性と特徴が良く判る演奏曲のチョイスである。

ドン・セベスキーのアレンジが優れている。収録された難曲、ジャズの即興演奏とオーケストラの洗練さを融合させるのに難度の高い秀曲を、セベスキーは、ロウズのフルートの演奏表現をベースに、ジャズの即興演奏、ロックのリズム、オーケストラのテクスチャを効果的に融合させている。このアレンジが、ロウズのフルートを引き立て、アーティステックなクロスオーバー・ジャズを実現させている。

バックのミュージシャンの演奏も白眉。ロウズのフルート、セベスキーのアレンジを十分に理解し、極上のクロスオーバー・サウンドで、このアーティステックなクロスオーバー・ジャズを、更にその高みに引き上げている。

CTIレーベルなんて、甘々のフュージョン・ジャズばかりなんでしょ、なんて、聴かず嫌いで敬遠していると、1970年代ジャズのトレンドと特徴の半分を聴き逃すことになる。まあ、1970年代ジャズなんて、聴くに及ばず、とするなら、いざ仕方なし。でも、1970年代ジャズを理解する上で、CTIレーベルのカタログは避けて通れないと僕は思う。
 
 

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2026年2月28日 (土曜日)

ロンの”Yellow & Green”に思う

順調にCTIレーベルのカタログの記事化コンプリートに向けた、再聴き&初聴きを進めている。聴いていると感じるんだが、CTIレーベルって、クロスオーバー&フュージョンの老舗レーベル、フュージョンの権化レーベルとして、硬派なジャズ者の方々からは敬遠されているが、どうして、今の耳で聴くと、やっぱり「1970年代のジャズ」をしっかり記録した、優れたレーベルだと思うのだ。

Ron Carter『Yellow & Green』(写真左)。1976年5月の録音。CTIの6064番。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b, cowbell, tambourine), Kenny Barron (p :track 1, 5 & 6), Don Grolnick (p, el-p :track 2 & 4), Hugh McCracken (g, harmonica :tracks 1, 2, 4 & 5), Billy Cobham (ds :tracks 1, 2, 4 & 5), Ben Riley (ds :track 6), Dom Um Romão (per :tracks 2 & 5)。ベースのレジェンド、ロン・カーターのリーダー作。

内容については、簡単に言うと、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン盤。内容的に「ソフト&メロウ」というフュージョン・ジャズの雰囲気要素が入ってきている。ケニー・バロンが「アコースティック」鍵盤楽器担当、ドン・グロルニックは「エレクトリック」鍵盤楽器担当、どちらの演奏も、上質な1970年代半ばの、クロスオーバーからフュージョンへの移行期のしっかり記録されている。
 

Ron-carteryellow-green

 
特に、若きケニー・バロンがアコピを担当する楽曲は、1970年代の純ジャズ志向のコンテンポラリー・ジャズとして楽しむ事が出来る。ロンのベースとコブハムのドラムが醸し出す8ビートのジャジーなリズム&ビートに乗ったバロンのアコピは、意外と格別なジャジーな響きを宿している。ソフト&メロウなフュージョンの雰囲気を醸し出しているのは、グロルニックがエレピを担当している楽曲。グロルニックのエレピとマクラッケンのギターがソフト&メロウな響きを醸し出している。

このアコピとエレピのイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンな演奏の中で、ロンのアルコ弾き、旋律弾きがその雰囲気をちょっと壊している。ロンのベースの旋律弾きに耳がいくのは良いのだが、いかんせん、ベースの旋律弾きは単調で、かつ、この頃のロンのベースは少しピッチを外しているので、その単調さがより目立つ。即興パートでのベース・ソロはまだ我慢出来るんだが、曲のテーマ部のベースでの旋律弾きはちょっと疑問。

ジャズ者の間で、このロンの旋律弾きを問題視する向きが強くあって、この盤は評判は芳しく無い。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンで、意外と良好なのだが、ロンの旋律弾きがはいってくると、明らかに聞く側のテンションが落ちる。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンとして良好、ロンのベースの旋律弾きをどう聴くか、でこの盤の評価はぶれるだろう。良い雰囲気の盤なのになあ、惜しい。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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