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2026年8月 3日 (月曜日)

アビー・グリーンのCTI好盤です

当時はアビー・グリーンとは何者かも知らなかった。ただただ、印象的なジャケと収録曲、そして、CTIレーベルのアルバムというだけで、購入したアルバムだったが、聴いてみて、意外と「当たり」だったのを今でも覚えている。

Urbie Green with Grover Washington, Jr. and the David Matthews Big Band『Señor Blues』(写真左)。1977年6月の録音。CTIの7079番。ちなみにパーソネルは、下記の通り。当時ベテランのジャズ・トロンボーン奏者アービー・グリーンのリーダー作。グローバー・ワシントン・ジュニアとデイヴィッド・マシューズ・ビッグバンドとの共演がフィーチャーされている。

Urbie Green (tb), Grover Washington, Jr. (ts, ss), David Matthews (el-p, arr), John Scofield (el-g), Harvie Swartz (b), Jim Madison (ds), Sue Evans (perc) 以下はブラス・セクションで、Burt Collins, Joe Shepley (tp, flh), Sam Burtis (tb), Tony Price (tuba), Fred Griffin (French horn), Frank Vicari (ts), David Tofani (ss, fl), Kenny Berger (bs, b-cl)。

マシューズによる、優れたダイナミックなアレンジのもと、アービー・グリーンの円熟したトロンボーン・サウンドに加え、ワシントン・ジュニアの熱いサックス・ソロや、当時新進気鋭だったギタリストのジョン・スコフィールドらのプレイが耳を引く、大編成の迫力とクロスオーバーならではの疾走感・ファンク感が絶妙にマッチした演奏内容。リーダーのアビー・グリーンのトロンボーンは、美しい音色と印象的なテクニックを披露していて、なかなか聴き応えがある。
 

Urbie-greensenor-blues

 
冒頭の「Captain Marvel」は、チック作の疾走感あふれるジャズ・フュージョンの名曲カヴァー。続く「You Are So Beautiful」は、ジョー・コッカーの歌唱が印象的だった、メロウで美しいバラード。グリーンのエモーショナルなトロンボーンが光る。3曲目「Ysabel's Table Dance」は、ミンガス作『Tijuana Moods』収録曲のカヴァー。エキゾチックなグルーヴが心地良い。

4曲目「Señor Blues」はシルヴァーのファンキー・ジャズの名曲。ワシントンJr,のサックスが炸裂する。5曲目「I'm In You」はピーター・フランプトンのロックのヒット曲のカヴァー。ファンキーなフュージョン・ジャズへ見事にアレンジ。そして、ラストの「I Wish」は、スティーヴィー・ワンダーの名曲。ファンキーで迫力あるカヴァー。

このミツバチの大写しのジャケットと、ジャズ・スタンダードだけでなく、ロック、ソウル、ポップスなどのヒット曲を積極的に取り上げてカヴァーした、ちょっと節操の無い収録曲に引かれて、手にしたCTI盤である。

しかし、今の耳で聴き直してみると、クロスオーバー&フュージョンの好盤というよりは、当時のメインストリーム志向のコンテンポラリー・ジャズとして、なかなか硬派でジャズな内容に、思わず聴き耳を立ててしまった。好盤です。
 
 

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2026年6月25日 (木曜日)

D・バードの考えるエレジャズ

ハードバップ時代のバップ・トランペットの名手、ドナルド・バードの「1970年代のドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ」がこの盤に詰まっている。ジャズ・ファンクの傑作とする向きもあるが、アフロセントリックで漆黒のグルーヴがあまりに個性的で、アフリカン・ネイティヴな音志向がかなり強く出ているので、単に「ジャズ・ファンク」とするにはちょっと抵抗がある。

Donald Byrd『Ethiopian Knights』(写真左)。ブルーノートの4380番。録音日は、1971年8月25日が「The Emperor」と「Jamie」 (#1–2)、1971年8月26日が「The Little Rasti」 (#3)。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Thurman Green (tb), Harold Land (ts), Bobby Hutcherson (vib), Joe Sample (org), Bill Henderson III (el-p), Don Peake (g), Greg Poree (g: tracks 1 & 2), David T. Walker (g: track 3), Wilton Felder (el-b), Ed Greene (ds), Bobbye Porter Hall (congas, tambourine)。

冒頭の「The Emperor」のリズム&ビートの扱いとキーボードの音色は、どこか「ヘッドハンターズ以前のハンコックのエレ・ファンク」を想記するし、トランペットのパフォーマンスは「端正なマイルスっぽい」。ただ、リズム&ビートの扱いが、ハンコックやマイルスよりも、アフリカン・ネイティヴ色が強く出ていて、このアフリカン・ネイティヴ色が強く出たことで、このアルバムは、ドナルド・バードのオリジナルな位置づけをキープしている。
 

Donald-byrdethiopian-knights

 
均一ビートなところは、なんとかく「初期のウエザー・リポート」っぽくもある。ここでテナーがブイブイ出てきたら、と思うんだが、そこがドナルド・バードの巧妙なところ、新主流派ヴァイブの第一人者、ボビー・ハッチャーソンをフィーチャーするのだから、ドナルド・バードの深慮遠謀は相当なものである。

ドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ。平易で聴き易く判り易い。ハンコックのエレ・ジャズ初期やマイルスのエレジャズは、テナーやトラペット、ピアノなどが、どこか捻れたところがって、従来に無い音の変化や音色のユニーク度が高いのだが、このドナルド・バードの考えるエレ・ジャズは、楽器の活用の仕方、音の響きや展開が、とにかくシンプルで判り易い。

2曲目の「Jamie」に至っては、もうこの演奏内容は、後のフュージョン・ジャズを地で行っている様な演奏で、トランペットはまるで、チャック・マンジョーネ(笑)。ファンクネスを希薄にした、リフレインなビートは、まるでプログレッシヴ・ロックみたい(笑)。フュージョン・ジャズにおけるバラード演奏の代表的演奏としても、違和感のない演奏である。

面白い内容のアルバム。このアルバムの翌年に『Black Byrd』を録音することを鑑みると、この盤は、「1970年代のドナルド・バードが考えるエレ・ジャズ」の最初の第一歩を記したアルバムなんだろう。リズム&ビート、楽器の取り扱い方&音色など、当時のジャズ界で先進的だったバンド・サウンドを十分に研究しているなあ、と感じる、真面目実直なドナルド・バードの考えるエレ・ジャズである。コマーシャル性が皆無なところも、このアルバムに対する好感度は高い。
 
 

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2026年6月24日 (水曜日)

美しき女性ジャズ・ファンクです

1960年代終盤、大手レコード会社の傘下に入ったブルーノートは、いわゆる、売らんが為の「明らかに聴き手に迎合した、売れ筋を意識した、ライトで聴き易いジャズ」の制作に舵を切る。イージーリスニング志向の「ファンキー&ソウル・ジャズ」、そして「軽快で優しいジャズ・ファンク」なアルバムを制作する。そんな中の、イージーリスニング志向の「ファンキー&ソウル・ジャズ」ど真ん中なアルバム。

Bobbi Humphrey『Flute-In』(写真左)。1971年9月30日、10月1日の録音。ブルーノートの4379番。ちなみにパーソネルは、Bobbi Humphrey (fl), Lee Morgan (tp), Billy Harper (ts), George Devens (vib, marimba, perc), Hank Jones, Frank Owens (p, el-p), Gene Bertoncini (g), George Duvivier (b), Gordon Edwards (el-b), Jimmy Johnson, Idris Muhammad (ds), Ray Armando (conga)。

米国のジャズ・フルート奏者ボビー・ハンフリーのデビュー・アルバム。当時21歳だった彼女の瑞々しくファンキーなフルートプレイが堪能できる、ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの好盤。音の作りが、「明らかに聴き手に迎合した、売れ筋を意識した、ライトで聴き易いジャズ」であり、イージーリスニング志向の「ファンキー&ソウル・ジャズ」である。
 

Bobbi-humphreyflutein

 
彼女の才能を見出したトランペット奏者のリー・モーガンをはじめ、テナーサックスのビリー・ハーパー、ピアノに、ハンク・ジョーンズ、ドラムは、イドリス・ムハマッドといった、ハードバップ時代からの名手ばかり、豪華なメンバーがバックを固めている。ジョージ・バトラーがプロデュース、ウェイド・マーカスが編曲を担当し、70年代ブルーノートの新しいサウンドがこのアルバムに溢れている。

アルバムの内容としては、それぞれの楽曲のスタイルに合わせて「アコースティック主体の正統派ジャズ・チーム」と「エレクトリックを取り入れたファンク・チーム」の2つのセッションに分かれている。ビル・ウィザースの「Ain't No Sunshine」やキャロル・キングの「It's Too Late」、スペイン・ハーレムなどのポップス/ソウルの名曲を軽快なジャズファンク・スタイルでカバーしているところも、ブルーノートの4300番台らしい内容。

「Ain't No Sunshine」は、ビル・ウィザースが同1971年に放った大ヒットソウル曲のカバー。ハンク・ジョーンズの美しいピアノと、イドリス・ムハマッドの重厚なドラムをバックに、哀愁漂うフルートのメロディが際立つ名演。「It's Too Late」は、キャロル・キングの名盤『つづれおり』に収録されたポップス史に残る名曲のカバー。ゴードン・エドワーズのエレキベースが効いた、軽快でグルーヴィな16ビート・ジャズファンクに仕上がっている。
 
 

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2026年6月23日 (火曜日)

CTIレーベル”とびきりの珍盤”

「CTI-1000シリーズ」。CTIレコードがA&Mレコードの傘下から完全に独立した1970年、独自のカタログとして短期間だけ展開されたカタログ上、たった5枚しか無いが、ジャズの枠にとらわれない、CTIの総帥婦絵御デューサーのクリード・テイラーの実験精神が垣間見えるシリーズ。その異色のシリーズを語る上で、この盤は外せない。

Dave Frishberg『Oklahoma Toad』(写真左)。1970年の作品。ちなみにパーソネルは、Dave Frishberg (clavinet, p, org, el-p, vo, arr), Al Cohn (ts), Sol Schlinger (bs), Gernett Brown (tb), Bill Berry (tp, flh), Stuart Scharf (g), Russell George (b), Herbie Lovelle (ds)。米国のジャズ・ピアニストでありシンガーソングライター(SSW)のデイヴ・フリッシュバーグが1970年に発表したソロ・デビュー・アルバム。

もともと裏方として楽曲提供をしていたデイヴ・フリッシュバーグが、自分の歌を吹き込もうとしたことがきっかけ。当初は、ポップス、フォーク、サイケデリック、ソフトロックなどの要素をブレンドしたSSWのポップ・フォーク路線の音。その音源を持ち込まれたCTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラーが「リミックスとオーバーダブ」を条件に発売を許可。ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオでホーン・セクションなどが強調され、ほんのりとジャジーな雰囲気が付加された。
 

Dave-frishbergoklahoma-toad  

 
それでも、このアルバムはどう聴いてもジャズでは無い。4ビートでも演奏の雰囲気はフォーク、もしくはカントリー&ウェスタン(C&W)だったりするから、ジャズとして聴こうとすると相当に戸惑う。確かに、ホーン・セクションの存在がジャズっぽさを醸し出してはいるが、それはアレンジとしてのジャズの雰囲気。パフォーマンスとしてのジャズの雰囲気ではないので、このアルバムはジャズとして聴くと、倚子から転がり落ちる(笑)。

オーバーダブには、名うてのジャズ・ミュージシャンが付き合ってはいるが、もともと、フリッシュバーグの書く楽曲が、フォーク、C&W、ソフトロック向けのテイストなので、ジャジーなオーバーダブを施しても、なかなか、アルバム全体の音作りが、クロスオーバー・ジャズ風になっていないところがこのアルバムの面白いところでもあり、弱点でもある。つまり、フリッシュバーグの書く曲の個性によって、クリード・テイラーの思惑が外された恰好になっている。

ただ、このアルバムは、CTIレーベルからのリリースであり、「カエルの大写しのジャケット」と相まって、ジャズ者の、特に、クロスオーバー・ジャズ好きのジャズ者の方々は大いに興味を持つのではないだろうか。どんな内容のアルバムなんだろう、そんな興味を持つ向きに、事前に予備知識として入れておいた方が、このアルバムを正しく鑑賞出来るであろうという老婆心から、この記事をまとめさせてもらった。とにかく、CTIレーベル最大の珍盤である。
 
 

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2026年6月22日 (月曜日)

CTI 1000 seriesの珍盤の一枚

CTIレコードがA&Mレコードの傘下から完全に独立した1970年、独自のカタログとして短期間だけ展開された「1000シリーズ」。カタログ上、たった5枚しか無いが、ジャズの枠にとらわれない、CTIの総帥婦絵御デューサーのクリード・テイラーの実験精神が垣間見えるシリーズ。CTIレーベルの音作りの個性の源の一つがこのシリーズに潜んでいる。

『Flow』(写真左)。1969年12月17,18日と1970年1月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Don Felder (g), John Winter (p, el-p, org, ss, ts, harmonica, fl), Chuck Newcomb (b,vo), Mike Barnett (ds), Angel Allende, Ed Shaughnessy, Johnny Pacheco (tabla, congas, cowbell)。米国のジャズ・ロック/サイケデリック・ロックバンドであるFlow(フロウ)が1970年に発表した唯一のセルフタイトル・アルバム。

このアルバムは、ジャズ界の伝説的なエンジニアであるルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオ「Van Gelder Studio」で録音されている。これも珍しいこと。ロックバンドの音を、ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音している。しかも、ジャズの録音手法をそのまま持ち込んだため、メンバー全員がスタジオで同時に演奏する「一発録り」に近い形でレコーディングしている。特に、リズム・セクションの音が極めてスリリングでタイトに録音されている。
 

Flow

 
後のウエストコースト・ロックの雄「イーグルス」の名ギタリスト、ドン・フェルダーが、初期に組んでいたバンドとして有名。本作では彼のルーツである、ジャズやファンキーなロックギターのプレイを存分に聴くことができる。ロックギターというより、クロスオーバー・ジャズなギターである。

CTIレーベルの全カタログの中でも稀少な「歌入りのロック・サウンド」を展開した異色かつ貴重な作品。クロスオーバー・ジャズの即興演奏をベースに、ソウル、ファンク、サイケデリック・ロック、シンガーソングライター(SSW)的なフォークの要素等が融合している。どこか、プログレッシブ・ロックに通ずるところもあり、本当の意味での「融合(フュージョン)音楽」である。

淡く浮遊感のあるボーカルと、ファンキーなグルーヴが絡み合う独特のサウンドが特徴。CTIレコードの強力なバックアップにより、以下の豪華なジャズ/ラテン・ミュージシャンがパーカッション(タブラ、コンガ、カウベル)などがゲスト参加、ジャズ・ロック/サイケデリック・ロックなバンドでありながらも、極めて洗練されたアドリブやファンキーなラテングルーヴが同居する独特のサウンドが成立している。
 
 

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2026年6月21日 (日曜日)

ジャス喫茶で流したい・327

ブルーノート4300番台の後半のアルバムなので、過度な期待をせずに、恐らく、べったべたのソウル・じゃずか、新主流派のパフォーマンスを推し進めた、限りなく自由度の高い、ほぼフリー・ジャズか、と予想して聴いたのだが、いやはや、ビックリ。冒頭の「At the Source: Ashes & Rust/Eucalyptus/Obsidian」を聴いて、これは、と思わず身を乗り出した。

Bobby Hutcherson『Head On』(写真左)。1971年7月1ー3日、ロサンゼルスの「Poppi Recording Studios」での録音。ブルーノートの4376番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。米国のジャズ・ヴィブラフォン奏者であるボビー・ハッチャーソンが、1971年に録音した、当時の独創的なニュー・ジャズの一枚。メインストリームな展開に、フリー、アヴァンギャルドな展開が見え隠れする、トータル・ジャズである。

Bobby Hutcherson (vib, marimba), Todd Cochran (p, arr), Oscar Brashear (tp, flh), George Bohanon, Louis Spears (tb), Willie Ruff (French horn), Fred Jackson, Jr. (piccolo), Harold Land (ts, fl), Delbert Hill, Charles Owens, Herman Riley, Ernie Watts (reeds), William Henderson (el-p), Reggie Johnson, James Leary III (b), Leon "Ndugu" Chancler, Nesbert "Stix" Hooper, Woody Theus (ds), Warren Bryant (congas, bongos), Donald Smith (vo)。
 

Bobby-hutchersonhead-on

 
1960年代の新主流派的なアプローチから一歩踏み出し、アフロ・スピリチュアル、フリー・ジャズ、クラシカルな現代音楽の要素を融合させた、非常に尖った内容の「異色かつ野心的な傑作」である。いわゆる1970年代、チック・コリアやキース・ジャレットらが推進した、コンテンポラリーなメインストリーム志向の硬派な純ジャズと同じ音の響きが、音の輝きが充満している。

アルバムには、1960年代に無い、新しいモダン・ジャズの響きが満ち満ちている。映画音楽のようでもあり、クラシカルで前衛的なインプロヴィゼーション、混沌としたフリー・ジャズの色合いが濃厚ディープな展開、ソリッドなリズムと特異なアフロ・キューバン調のビートが絡み合うスピリチュアル・ジャズ。洗練された耽美な響きの中に、鋭い緊張感が走る、1970年代のモード・ジャズ。

東海岸のジャズの、限りなく自由度の高い、マイルス&マイルス門下生を中心とする、エレクトリック前提のクロスオーバーな音世界と、西海岸ジャズから引き継がれた洗練されたキャッチーな展開が融合した、1970年代の先端を行く、コンテンポラリーなメインストリーム志向の硬派な純ジャズの萌芽がこのアルバムに溢れている。ブルーノートの4300番台の後半という位置づけで、ちょっとばかし「損をしている」隠れ名盤である。
 
 

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2026年6月20日 (土曜日)

鍵盤二人が煽る漆黒グルーヴ

リチャード・アーノルド・“グルーヴ”・ホームズ (1931年5月2日 - 1991年6月29日)は、ハードバップやソウル・ジャズのジャンルで演奏した、米国のジャズ・オルガン奏者。彼はパシフィック・ジャズ、プレスティッジ、グルーヴ・マーチャント、ミューズのために多くのアルバムを録音している。が、わが国ではかなりマイナーな存在。僕はこのブルーノート盤で出会うまでは、全く知らない存在だった。

Richard Groove Holmes『Comin' On Home』(写真左)。1971年5月19日、 Van Gelder Studioでの録音。ブルーノートの4372番。ちなみにパーソネルは、Richard Groove Holmes (org), Weldon Irvine (el-p), Gerald Hubbard (g), Jerry Jemmott, Chuck Rainey (el-b), Darryl Washington (ds), Ray Armando (congas)。

本作は一言で言うと「重心の低いファンキーなベース・ラインと、彼のトレードマークである重量感のあるオルガンがエレピと絡み合う、ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの好盤」。アルバムは大きく分けて冒頭「Groovin' For Mr. G」、 3曲目「Mr. Clean」、4曲目「Down Home Funk」の「強力なオリジナル・ジャズファンク」と、2曲目「Theme From Love Story(ある愛の詩)」、6曲目「Wave」、ラスト7曲目「This Here」の「センスが光る時代を反映したカバー曲」の2つの軸で構成されている。
 

Richard-groove-holmescomin-on-home

 
ホームズのオルガンは、足鍵盤による重低音ベースラインと、ハモンドオルガン特有のファンキーなフレージングで全体を牽引。アービンのエレピ(フェンダー・ローズ)は全面参加。ファンキーながらも、どこかクールで浮遊感のあるモダンな質感をアルバムに注入している。ジェモットとレイニーのエレベは骨太なベースで演奏の底を支え、ワシントンのドラムとアルマンドのコンガは躍動感溢れるビートを叩き出している。

冒頭の「Groovin' For Mr. G」では、冒頭の太いベースラインとパーカッションの絡みから鳥肌もの。ホームズのオルガンがこれでもかとドライブする様を聴いていると、思わず下半身が前後に動き出す。べっちゃべちゃラウンジ風のフランシス・レイ作曲の世界的ヒット映画テーマ「Theme From Love Story」を、チャック・レイニーの歌うようなベースとホームズのソウルフルなアプローチが原曲の哀愁をファンキーに塗り替える。

このホームズの唯一のブルーノート盤。マイナーな存在に甘んじているが、ブルーノートの洗練されたプロデュース・ワークと、当時台頭しつつあったニュー・ソウル/ファンクの泥臭さが、説妙なバランスで融合しているところが「聴きどころ」。オルガンとエレピが「ぶつかり合う編成」自体がユニークで、のちのアシッド・ジャズやレア・グルーヴのDJたちによって再評価されている。確かにこの盤の持つ「漆黒なグルーヴ感」は癖になる。
 
 

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2026年6月19日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・326

聴いてみて、意外とコンテンポラリーな、メインストリーム志向のエレ・ジャズしているのに気がつく。1970年当時のコンテンポラリーな純ジャズと評価しても良い、硬派でストレートアヘッドな内容。当時のジャズ〜クロスオーバー界のトッププレイヤー達のパフォーマンスなので、内容的にもテクニック的にもレベルは高い。今回、聴き直しである。

J & K『Stonebone』(写真左)。1969年9月の録音。A&M 3000 seriesのSP-3027番。日本限定のリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock, Bob James, Ross Tompkins (key), George Benson (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds)。当時のジャズ〜クロスオーバー界のトッププレイヤーが集結した超豪華なオールスター編成。

音作り的に見ると、「CTIサウンド(クロスオーバー/ジャズ・ファンク)」のまさにプロトタイプとなった、当時として先進的なサウンドが耳を引く。クロスオーバー・ジャズの良いところをベースに、キャッチーなフレーズ、印象的なアドリブと、ジャズ寄りのアレンジとパフォーマンスで、CTIらしいサウンドを確立している。
 

J-kstonebone

 
そんなCTIサウンドの中で、J & Kのトロンボーンが素晴らしいパフォーマンスを披露する。J.J.ジョンソンは左チャンネルで、完璧なピッチと驚異的なスピードの16分音符フレーズを繰り出す。:カイ・ウィンディングは右チャンネルで、エフェクター(マイクの加工など)を実験的に導入したような、ザラついた太いトーンを繰り出す。ユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブソロ。いずれも両者、見事なアグレッシブ・トロンボーンである。

J.J.が都会的なら、カイはブルージーで泥臭く、野生的なトロンボーン・ソロで楽曲を煽りまくる。そのバックでの、ハンコックのサイケデリックなローズが尖って、ベンソンの切れの良いカッティングがファンキーなリズムを刻みまくる。ロンのアンプの低音を限界まで強調したような、地響きのような図太い低音フレーズと、テイトのジャストのタイミングで正確無比、かつ非常に重いファンク・ビートを叩き出すドラミングがバンド全体を牽引する。

提携解消などの事情が絡んだ結果、米国での発売が急遽キャンセル、結果的に日本だけでひっそりとリリースされる形になったそうで、これだけの名盤的な内容なのに、「激レア盤」となってしまったのは非常に惜しい。なぜ、状況が改善された折に、正式にリリースされなかったのか。これだけの濃い内容を誇っているだけ「大いなる謎」である。
 
 

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2026年6月18日 (木曜日)

J&KのCTIクロスオーバーな盤

米国のジャズ・トロンボーン奏者であるJ・J・ジョンソン(J. J. Johnson)とカイ・ウィンディング(Kai Winding)の黄金コンビ(通称 J & K)。1950年代からジャズ界屈指のトロンボーン・デュオとして名を馳せた彼らが、1960年代末期のポップスやボサノヴァの要素を取り入れた、CTI謹製のクロスオーバ−&フュージョン盤である。

J & K『Betwixt & Between』(写真左)。A&M 3000 seriesのSP-3016番。1968年10ー12月, 1969年1月の録音。ちなみにパーソネルは、以下のとおり。ここに、ストリングスがバックに入る。

J. J. Johnson, Kai Winding (tb, arr), Marvin Stamm (flh0, Tony Studd (b-tb), Paul Ingraham (French horn), Herbie Hancock (p), Charles Covington (org), Roger Kellaway (clavinet, arr), Joe Beck, Eric Gale, Stuart Scharf (g), Chuck Domanico, Russell George, Chuck Rainey (el-b), Ron Carter (b), Leo Morris, Denny Seiwell (ds), Airto Moreira (ds, finger cymbals), Warren Smith (tambourine)。

なかなか面白いチャレンジブルな内容。一言で言うと「バロック(クラシック)」と「ポップ・ジャズ」の融合。ポップスやボサノヴァのカバー曲の合間に、バッハのコラールやプロコフィエフなどのクラシック(バロック調)の短い間奏(インタールード)が挿入されている。

この間奏部分はブラス・クインテット(金管五重奏)とギターによって演奏され、曲同士をシームレスに繋ぐコラージュのような役割を果たしている。全10曲、「ブラジリアン」から「旬のポップス」から「ファンキーな実験作」の合間に「クラシック(バッハ)」の要素がコラージュのようにはめ込まれている、トータル・アルバムの様な作りが実にユニーク。
 

J-kbetwixt-between  

 
冒頭の「Casa Forte/Bach Chorale #237」を聴くと、この盤の面白さが判る。いきなり、ストリングス入りのイージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズといった面持ちで、まあこんなもんか、と思いながら聴いていると、J & Kのトロンボーンのユニゾン&ハーモニーをメインとするアレンジが小粋でハイレベルで、思わず、身を乗り出したりする。

この1曲目の「Casa Forte/Bach Chorale #237」は、ブラジルの偉大な音楽家エドゥ・ロボ(Edu Lobo)が作曲した、本作を代表するアフロ・ブラジリアン・ナンバー「Casa Forte」から、曲の終盤から流れるように「バッハのコラール第237番」へと繋がるという、ブラジル音楽とバロック音楽のコラボ・アレンジが施されていて、実にユニーク。

3曲目は「Little Drummer Boy」は、クリスマス・キャロルとして世界的に有名な名曲を、モダン・ジャズの解釈でカバーしている。ここでも、トロンボーンのウォームなトーンが活きた、どこかドリーミーで遊び心のあるアレンジが小粋。エレクトリックなクロスオーバーなバックの演奏もCTIっぽくて恰好良い。

そして、バックの演奏が、ファンキーなエレクトリック・クラヴィネットの導入や、トロンボーンの音をオクターブ変化させる「バリトーン(Varitone)」アンプリファイア(エフェクター)を使用するギターの音色など、1960年代末らしいサイケデリックな音と、それを包含するCTIレーベルらしい音の響きとグルーヴ感が見事に表現されていて、聴いていて、なかなかに楽しい。

そう意味で、この盤、いかにも、CTIレーベルらしいアルバムと言える。冒頭の一曲を聴くだけで、ああ、この盤は絶対に「A&M/CTI盤」だと確信する。それほど、A&M/CTIらしい音がアレンジがこの盤に詰まっている。この盤、意外や意外、なかなかのA&M/CTIの好盤の一枚でしょう。
 
 

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2026年6月16日 (火曜日)

ジャズ香るCTIポップ・ソウル

マルチ・女性ボーカリストのタミコ・ジョーンズのA&M/CTI盤。タミコ・ジョーンズは、1960年代初頭から1980年代にかけて活躍、ソウル、ジャズ、R&B、そして後年にはディスコなど、時代の潮流に合わせて多彩なジャンルを歌いこなしている。ハスキーでスモーキーな歌声が特徴で、ジャズ・ボーカルの洗練されたセンスと、ソウル・ミュージックの熱いエモーションを絶妙に併せ持った実力派シンガーである。

Tamiko Jones『I'll Be Anything For You』(写真左)。1968年6月4日、Sam Philips Recording Studiosでの、1968年9月17日、Van Gelder Studiosでの録音。A&M 3000 seriesのSP-3011番。ちなみにパーソネルは、Tamiko Jones (vo), Romeo Penque (sax), Eric Gale, David Spinozza (el-g), Richard Tee (p), Chuck Rainey (el-b), Bernard Purdie (ds), Warren Smith (perc)。

タミコ・ジョーンズのハスキーなボーカル、洗練されたジャズのエッセンス、そして極上のストリングスが融合した、ポップ&ソウルフルでクロスオーバーな、ジャズ・ボーカル盤。タミコのボーカルの特徴である、少しハスキーで色気のあるボーカルが全編にわたってフィーチャーされている。ジャズの都会的な洗練さと、サザン・ソウルのような泥臭いエモーションのどちらにも偏らない音世界が魅力。
 

Tamiko-jonesill-be-anything-for-you  

 
この盤で特筆べきは、CTIならではの、CTI色豊かな「豪華なオーケストレーション」。ドン・セベスキーやアーティ・バトラーがアレンジを担当し、大規模なストリングス・オーケストラ、ブラス、リード楽器が導入されているのだが、音の響き、重なり、流れ、どれをとっても「CTI」なのだ。他のレーベルには無い、CTIならではの、一聴すればすぐに、これは「CTIのオーケストラ・サウンドだ」とすぐに判るほどの、特徴のあるサウンド。

これが、他のクロスオーバーなボーカル盤とは一線を画する、CTIならではのクロスオーバー&フュージョン志向の音作りで、この盤は、1968年の録音なんだが、この1968年の時点で、CTIならではのクロスオーバー&フュージョン・サウンドが確立している。そして、このCTIならではのクロスオーバー&フュージョン・サウンドが意外とジャジー。CTIサウンドが、単なるイージーリスニング、単なるラウンジ・ミュージックの陥らないのは、このCTIサウンドのお陰。

本作は、ポップス&ソウルとジャズの垣根を取り払った、1960年代末のクロスオーバー・ジャズを代表するスタイリッシュな作品と言える。モータウンのようなキャッチーさがありつつ、ジャズ特有のブルージーな雰囲気、健康的なアダルトでアーバンな夜の雰囲気を保持しているのが特徴で、現代のレアグルーヴ、サンプリング・ソース、あるいはフリーソウルの視点からも再評価され続けている好盤である。
 
 

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