2024年8月 8日 (木曜日)

ディメオラの異色の秀作です。

振り返ってみれば、アル・ディ・メオラ(Al Di Meola・以降「ディメオラ」)は、超絶技巧なクロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向のギタリストで、その演奏スタイルは変わらないのだが、リーダー作の「音の志向」については、定期的に変化している。常に「バリバリ弾きまくっている」訳ではない。

Al Di Meola『Cielo e Terra』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (ac-g, Synclavier-g), Airto Moreira (perc, tracks: 1, 3, 7, 9)。ディメオラのソロと、ディメオラとパーカッション担当のアイアート・もレイラとのデュオの二本立て。基本は「ディメオラのストレンジなギター・ソロ」の世界。ちなみに、邦題は「天地創造」。思わず「何じゃこりゃ」な邦題です(笑)。

アコギとギター・シンセサイザーを弾き分けながら、多重録音で紡がれる、幽玄でフォーキーでネイチャーで、少しエスニックな音世界。クロスオーバー&フュージョンというよりは、現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」な雰囲気が濃厚。

超絶技巧なテクニックは相変わらずだが、しっかり自己抑制を効かせていること、そして、アコギを活用することで、その高速弾き回しテクニックが耳につかない。逆に、たっぷりエコーの効いた多重録音が良い効果を生んでいて、透明度の高いピッキング音と併せて、演奏全体に絶妙の幽玄感や浮遊感を醸し出している。

1970年代の「スパニッシュ・フレーバーな超絶技巧なエレギ」はマンネリ気味だったので、1980年代に入って、演奏の「音志向」をガラッと変えたディメオラ。そんなイメチェン・ディメオラの第2弾。
 

Al-di-meolacielo-e-terra

 
前作は「テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合」だったが、今回は再びガラッと変わって、幽玄でフォーキーでネイチャーで、少しエスニックな音志向」なアルバムに仕上がっている。

ディメオラの超絶技巧が良い方向に出ている。アコギとギター・シンセのシンプルな音が、多重録音を通じて、流麗で切れ味の良い音世界を現出している。

スムース・ジャズとも取れるが、スムース・ジャズの様に、聴き心地優先ではない。かなり硬派で切れ味の良い速弾きフレーズは、流れる様な流麗さで、深いエコーを湛えた幽玄でフォーキーな、そして、どこかエスニックな、不思議な雰囲気を醸し出している。

フレーズはどれも切れ味良く流麗で幽玄。ディメオラ独特の、ディメオラしか出せないフレーズ&ピッキングの数々に、聴き手に迎合しない、ディメオラのアーティストとしての矜持を感じる。

このディメオラの1980年代の「音志向の劇的変化」については、「停滞期の音」という酷評もあるが、僕は「聴き手に迎合せず、自分が表現したい音をリーダー作を通して世に問う」という、超絶技巧でラテン・フレイバーなエンターティナーから、自らが表現したい音の表現者、への変革だと解釈しているので、僕はこの『Cielo e Terra』には好感を覚えます。

クロスオーバー&フュージョン全盛期の音の余韻が残っていた時代に聴いた感覚より、現代の静的なスピリチュアル・ジャズを経験した「今」に聴いた感覚の方が優っていて、僕は、この『Cielo e Terra』は、ディメオラの異色の秀作、と解釈しています。
 
 

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2024年7月30日 (火曜日)

ディメオラの新境地開拓な盤

1982年に、それまでの活動を総括したライヴ盤『Tour De Force』を出したアル・ディ・メオラ(以降「ディメオラ」と略)。内容的には、それまでに聴いたことのあるディメオラてんこ盛りで、ディメオラ者には実に楽しめる、ディメオラ乳門盤の様な内容だった。しかし、その音世界には「マンネリ」の雰囲気が漂っていたのは否めない。

Al Di Meola『Scenario』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g, g-syn, mandocello, tom tom, Hawaiian chordophone, Fairlight CMI, ds), Jan Hammer (key, Fairlight CMI, Roland drum machine, Moog bass, ac-p), Will Alexander (Fairlight CMI programming), Tony Levin (stick bass, on track:8), Phil Collins (ds, on track: 3), Bill Bruford (Simmons electronic drums, on track: 8)。

動機は判らないが、突如、ディメオラがコンピュータによる打ち込みサウンドを完全に前面に押し出した企画盤。それまでの「速弾きギターソロ」や「リズム隊の強烈なリズム&ビート」はほとんど聴かれないが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗った、ディメオラとヤン・ハマーの不思議なコラボの音世界が広がる。

ディメオラの繰り出すフレーズはエスニック。それまでのキャッチフレーズだった「スパニッシュ」なフレーズを飛び越して、エスニックな香り濃厚なフレーズをガンガンに繰り出す。その妖しく幽玄な不思議なマイナーフレーズが、打ち込みによるクールで無機質なリズム&ビートに乗って映えに映える。
 

Al-di-meolascenario

 
ヤン・ハマーのフェアライトCMI中心の、ちょっと捻れた、妖しくも幽玄なエスニック・フレーズがこの盤の全体の雰囲気を支配している。打ち込みによるリズム&ビートは、当時の英国のプログレッシヴ・ロック志向で、純粋なフュージョン・ジャズとは、全くテイストの異なった、唯一無二なもの。そこかしこに英国プログレッシヴ・ロックのテイストを感じる。

そんなヤン・ハマーの妖しくも幽玄なエスニック・フレーズと打ち込みリズム&ビートに乗って、ディメオラが、ギター・シンセを駆使して、エスニックなフレーズを弾きまくる。ギター・シンセを活用しているので、その楽器の性格上、従来のディメオラの高速速弾きは叶わないが、ギター・シンセの音の特性を活かした、魅惑的で妖艶なエスニック・フレーズを振り撒いている。ここでのディメオラの弾き回しはさすがで、説得力と聴き応えのあるギターをしっかりと聴かせてくれる。

テクノ・フュージョン・ジャズとでも形容したら、ちょっとシックリくる音世界。ディメオラのギター・シンセは、あくまでジャズに軸足があり、今回のパートナーである、ヤン・ハマーのフェアライトCMIは、英国のプログレッシヴ・ロック志向で、テクノなジャズロックなフレーズが実にユニーク。

テクノ・ミュージックと、英国プログレと、フュージョン・ジャズの融合。基本のフレーズは「エスニック」。ディメオラが考える「スムース・ジャズ」として捉えても面白い内容。優れた一人の音楽家としてのディメオラの矜持を感じる、ディメオラにしか創り得ない、ディメオラ独自の音世界。意外とこの企画盤、聴き応えがあります。
 
 

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2024年3月24日 (日曜日)

『Elegant Gypsy & More Live』

1976年、ソロ活動に入り、初リーダー作をリリース。以降、クロスオーバー&フュージョン・シーンのど真ん中で活躍を続けている、超絶技巧ジャズ・ギタリストの人気者、アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラ)。

意外とディメオラのライヴ盤は少なく、1週間ほど前にご紹介した、1982年2月4日、フィラデルフィアの「Tower Theatre」でのライヴ演奏を収録、1982年リリースの『Tour De Force』(左をクリック)が初ライヴ盤で、最近になってライヴ音源が3〜4枚リリースされたが、1990年代までは、この『Tour De Force』が唯一の正式リリースされたライヴ盤だった。

Al Di Meola『Elegant Gypsy & More Live』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g),Evan Garr (vln), Phil Magallanes, Philippe Saisse (key), Elias Tona (b), Luis Alicea (ds), Gumbi Ortiz (perc)。2017年『Elegant Gypsy - 40th Anniversary-US Tour』の一部を収録したライブ盤。

収録曲を見渡すと「Race With Devil On Spanish Highway」「Flight Over Rio」「Midnight Tango」等、ディメオラのキャリア初期の自作曲や、1970年代のチックの名曲「Señor Mouse」のカヴァー、そして、1970年代のロック界最高のバンド、レッド・ツェッペリンの「Black Dog」をカヴァーしているので、てっきり、1970年代の終わりか、1980年代前半のライヴ音源の発掘盤かと思ったら、2017年のツアーでのライヴ音源とのことで、ちょっとビックリしている。

収録曲を年代順でまとめると、『Elegant Gypsy』(1977) から3曲、『Casino』(1978) から2曲、『Kiss My Axe』(1991) から1曲、『Elysium』(2015) から2曲、そこにカヴァー2曲(「Señor Mouse」と「Black Dog」)を加えた全10曲となる。こうやって見ると、アルバム・タイトルはちょっと語弊があるなあ、と思ってしまう(笑)。
 

Al-di-meolaelegant-gypsy-more-live

 
どの曲もアレンジがしっかりしている。クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロックという路線をしっかり守って、ソフト&メロウに流されず、といって、ガンガンに耳につく、ハードなロック志向に陥ることなく、現代のスマートな「クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロック」といったアレンジが良い感じ。

特に、レッド・ツェッペリンの「Black Dog」のカヴァーにはビックリした。どうやってアレンジするのか、と思って聴いたら、プラントのボーカルをバイオリンに担わせて、ディメオラはペイジのギターをディメオラ風にデフォルメして、原曲の雰囲気を損なわず、しっかりと現代のスマートな「クロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ロック」風にまとめているのには感心した。

全編に渡り、ディメオラのギターを聴くと、確かに、1970年代から1980年代前半のディメオラの若かりし頃の「切れ味良くとんがって」バリバリ超絶技巧に弾き回す、鬼気迫る雰囲気ではない。

ディメオラは1954年生まれ。このライヴ盤の録音時は63歳。このライヴ盤全般に渡って、超絶技巧ではあるが、年齢による円熟味が滲み出る様な、余裕ある超絶技巧で円滑かつ流麗な弾き回しは、確かにこのディメオラは、最近のディメオラのパフォーマンスなんだろう、と納得する。

優れたアレンジに乗って、唄うが如く、流れるが如く、弾き進めるディメオラ。バンド全体の演奏レベルも上々、現代のディメオラを感じ確認出来る、素晴らしい内容のライヴ盤だと思います。
 
 

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2024年3月17日 (日曜日)

凄まじいディメオラの初ライヴ盤

久しぶりに「アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラ)」である。最たる超絶技巧ジャズ・ギタリスト。1974年にチック・コリア率いる「リターン・トゥ・フォーエヴァー」に参加、そして、リターン・トゥ・フォーエヴァーが 1976年に事実上の解散。ディメオラはソロ活動に入り、1976年に初リーダー作をリリース。以降、クロスオーバー&フュージョン・シーンのど真ん中で活躍を続けている。

Al Di Meola『Tour De Force』(写真左)。1982年2月4日、フィラデルフィアの「Tower Theatre」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g), Jan Hammer (key), Victor Godsey (key), Philippe Saisse (additional key), Anthony Jackson (el-b), Steve Gadd (ds, perc), Mingo Lewis (perc), Sammy Figueroa (additional perc)。ディメオラ、初のライヴ・アルバムになる。

収録曲が魅力。「Elegant Gypsy Suite」「Egyptian Danza」「Race with Devil on Spanish Highway」といった、1970年台のディメオラのリーダー作の中からの人気曲、そして「Nena」は新曲、加えて、キーボードでバンドに参加しているヤン・ハマー作の2曲「Advantage」と「Cruisin」。どれもが良曲揃いで、ディメオラのラテン志向の超絶技巧ギターが映えに映える。
 

Al-di-meolatour-de-force

 
というか、ディメオラはもちろん、バンドに参加したメンバー全員が超絶技巧のテクニックを駆使して、かっ飛んだ、疾走感&爽快感抜群の、適度に尖ったクロスオーバー&フュージョン・ジャズを聴かせてくれる。凄く密度のある、凄まじいテクニック、凄まじいインプロの嵐。お互いがお互いに挑みかかるインタープレイの応酬。これがジャズかいな、と思うが、これもジャズ。これだけ尖ったハイテクニックのインプロは、ロックにも見当たらない。

バックのリズム隊も凄い。フロントがディメオラなので、相当な力量を備えたリズム隊でないと、太刀打ちできず、吹っ飛ばされてしまう懸念があるのだが、このメンバーは大丈夫。ガッドの縦ノリ・ドラム、ジャクソンのブンブン・エレベ、ハマーの攻撃的な切れ味の良いエレピ&シンセ。バックのリズム隊が束になって、最たる超絶技巧ジャズ・ギタリスト、ディメオラを支え、時に対峙する。この緊張感がたまらない。

LP時代のライヴ盤なので、収録曲がちょっと少ないのと、全体の収録時間が短いのが不満と言えば不満かな。この日のライヴ音源のコンプリート盤を出して欲しいですね。それほど、収録されたライヴの内容は凄まじく素晴らしい。屈指のクロスオーバー&フュージョン志向のジャズ・ギターが主役のライヴ盤です。クロスオーバー&フュージョン者の方々には是非、お勧めの好ライヴ盤です。
 
 

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2023年12月14日 (木曜日)

Al Di Meola『Flesh On Flesh』

12月、師走である。今のところ、今年は総じて暖かい冬。それでも、時々、冷える日が出てきた。天気が優れず、冷えた日は体にさわらぬよう、なるべく外出しない様にしている。部屋の中でストレッチなどしながら、ジャズを聴いている。

12月に暖かい室内で聴くジャズ。僕は結構フュージョン・ジャズを聴く。師走の慌ただしい雰囲気の中、流麗で聴き心地の良い、それでいて、しっかりジャズしているフュージョン盤を聴くことが多い。

Al Di Meola『Flesh On Flesh』(写真左)。2002年3-4月の録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g), Gonzalo Rubalcaba (key), Anthony Jackson (b), Gumbi Ortiz (per), Mario Parmisano (p, synth, marimba), Alejandro Santos (fl, b-fl), Jean Valdes, Guillermo Ruiz (as), Williams Polledo(tp), Ernie Adams(ds), Monserat(vo)。

しばらくの間、ラテン・フュージョンまっしぐらのディメオラ。もう超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンには戻らないだろうな、と思っていたら、なんと、この盤で戻ってきた。しかも、録音時、ディメオラは48歳。年齢的にも脂が乗り切った、ジャズマンとしてバリバリの中堅。実に味のある、余裕のあるクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンを引っ提げて戻ってきた。
 

Al-di-meolaflesh-on-flesh

 
ゴンサロ・ルバルカバがキーボードを担当、ベースにアンソニー・ジャクソンを起用。この辺りにディメオラの本気を感じる。超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンなので、当然、出てくる音は、超絶技巧が映える凝った曲とアレンジ、そして、ディメオラ独特のエキゾチック&エスニックなフレーズと響き。若きディメオラが戻ってきた様な演奏の数々。

冒頭の「Zona Desperata」を聴けば、それが良くわかる。ドラマチックで哀愁感濃厚で密度の高いクロスオーヴァー・ジャズ。続く2曲目「Innamorata」は、さらに哀愁感が増して、ディメオラらしい大掛かりな展開。いや〜、若き日のディメオラが成熟して帰ってきた様な音世界。

そして、ラストは「Senor Mouse」。チック・コリア率いる、第二期リターン・フォーエヴァー(RTF)の名曲である。ディメオラ、RTFは過去のもの、今は全く関わりがない、なんて言っていたのに、ここで「Senor Mouse」である。これが名演。ディメオラとしては、スタジオ録音では初出なのだが、余裕綽々の超絶技巧な弾き回しで、ディメオラのエレギが良い音を出している。

エレクトリックとアコースティックと両刀使いで、ディメオラのギターが映えに映える。久しぶりのディメオラの超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョン。

でもまあ、この妖艶なジャケットですから、そんな硬派でバリバリのギター・フュージョンが展開されているなんで、思いもしませんぜ(笑)。この妖艶なジャケットに惑わされずに、この盤を存分にお楽しみ下さい。
 
 

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    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2022年8月28日 (日曜日)

土曜日の「Super Guitar Trio」

1981年のリリースで、アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシアという3人のギタリストによる、アコースティック・ギター3本だけの演奏を収録したライヴ盤があった。

超絶技巧なフュージョン系ギタリスト二人と、超絶技巧なフラメンコ・ギターの雄、3人でのライヴ・パフォーマンス。この3人の名前を見ただけでも「フュージョン(融合)」な取り合わせを感じて、今の耳で聴いても、素晴らしいライヴ・パフォーマンスの記録である。

そのライヴの記録とは『Friday Night In San Francisco(邦題:スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !)』(写真右)。 超絶技巧の限りを尽くした、目眩くアコギの弾きまくり。それが1人では無く、3人がかりでやるのだから、そのパフォーマンスたるや、それはそれは、ど迫力で呆れるばかりのハイテクニックの嵐。

1981年と言えば「フュージョン・ジャズ」の全盛期のピーク。もともと、フュージョン・ジャズはギターが人気で、そのギターは超絶技巧、目眩く速弾きフレーズの弾きまくりが「目玉」。そんなフュージョン・ギターの最高峰の演奏が、この『スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !』であり、そんなライヴ盤が、フュージョン・ジャズの全盛期のピークにリリースされ、人気を博した。ジャズの歴史の中で、象徴的なライヴ盤だった様な気がする。

Al Di Meola, John McLaughlin, Paco De Lucia『Saturday Night in San Francisco』(写真左)。1980年12月6日、米国サンフランシスコのウォーフィールド劇場でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola, John McLaughlin, Paco De Lucia (g)。超絶技巧ギタリスト3人のライヴ・パフォーマンスの記録になる。
 

Saturday-night-in-san-francisco_1

 
先にご紹介した『Friday Night In San Francisco(邦題:スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !)』は、このライヴ盤が録音された前日のライヴ音源。録音場所は同じ「米国サンフランシスコのウォーフィールド劇場」。今回リリースされたライヴ音源は、既出の『スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !』の収録日の翌日、全く同じメンバー・会場でのライヴ録音の音源になる。

しかし、こんな音源が21世紀になって発掘されるとは驚きである。この6日の公演はこれまで録音されていないと思われていたのだが、アル・ディ・メオラ所有の16トラックのテープを見直し、12月6日の公演から未発表の8曲を見つけ出した、のこと。なんせ、12月5日の公演で演奏した当の本人達も、第二夜を演奏したことを覚えてなかったらしい。よく発掘したもんだ。

さて、内容的にはどうか、と聴けば、12月5日の『Friday Night In San Francisco』の伝説的パフォーマンスと勝るとも劣らない、素晴らしいパフォーマンスが展開されてるから、二度驚き、である。

曲のレベルも遜色無い。例えば、「金曜日版」の出だしが「Mediterranean Sundance」に対して、この「土曜日版」の出だしが「Splendido Sundance」と、全曲、同じハイレベルの楽曲が並んでいる。

特に、この「土曜日バージョン」は、3人それぞれのソロ・パフォーマンス、無伴奏のソロ曲が3曲、記録されている。しかし、3人のギター・テクニックの凄まじさたるや、感動を通り超して、呆れるほどの超絶技巧さ。しかも、歌心が溢れ、即興性の高いインタープレイは見事という他は無い。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
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2020年3月17日 (火曜日)

ビートルズ・カヴァー集の第2弾

ジャズの世界では、ビートルズのカヴァーは古くから、そう1960年代前半、ビートルズが世界で流行りだした頃からで、意外と早い。そういう意味では、ジャズって意外と「軽薄短小」だなあ、と思うんだが、しかも、そのアレンジたるや、初期の頃のものは酷いものが多くて、むやみに手を出そうものなら「火傷」をする。そう「火傷」をしてからでは遅い。後悔先に立たず、である(笑)。

今ではサブスクの音楽サイトで、チャレンジとして気軽に聴くことが出来るので、片っ端から聴ける。1960年代前半はアレンジがイマイチなんだが、1960年代半ばから熟れてきて、クロスオーバー・ジャズの先駆けの「イージーリスニング・ジャズ」の範疇で、優れたアレンジと演奏のビートルズ・カヴァーが出現した。1970年代以降は、逆にビートルズ・カヴァーは意外と難物なので、優れたアレンジで用意周到に取り組むべきものとなり、いわゆる「失敗作」はほとんど無くなったと思っている。

Al Di Meola『Across the Universe』(写真左)。今月リリースほやほや。超絶技巧ギタリスト、アル・ディ・メオラ(略して「ディメオラ」)がリーダーの、2013年リリースの『All Your Life』に続く、ビートルズ・カヴァー集の第2弾である。第一弾のカヴァー集でも、ビートルズのカヴァー集とは言え、あまりカヴァーされない曲を一ひねりも二捻りも加えたアレンジで取り上げていたが、この第2弾でも、おおよそ今まで、ジャズでカヴァーされたことの無いビートルズ曲を、これまた素晴らしいアレンジを施して披露している。
 
  
Across-the-universe-1   
 
 
1. Here Comes The Sun
2. Golden Slumbers Medley
3. Dear Prudence
4. Norwegian Wood
5. Mother Nature’s Son
6. Strawberry Fields Forever
7. Yesterday
8. Your Mother Should Know
9. Hey Jude
10. I’ll Follow The Sun
11. Julia
12. Till There Was You
13. Here, There And Everywhere
14. Octopus’s Garden
 
 
以上が収録曲なんだが「Dear Prudence」「Mother Nature’s Son」「Your Mother Should Know」「I’ll Follow The Sun」「Julia」「Till There Was You」など、ジャズでカヴァーされた前例を僕は知らない。「私がギターを弾く理由はビートルズがいたからです」と語るディメオラ。そう、ディメオラはビートルズが大好きなんだ。このカヴァーされない、カヴァーし難い楽曲を、超絶技巧なギターテクニックを駆使した、難度の高いアレンジで、クールにユニークにカヴァーしている。

意外と簡単そうに聴こえるが、かなり難しいことを難なくやっている。超絶技巧ギタリストのディメオラの面目躍如である。現代ジャズ・ギターの最先端のテクニックを聴くにも、今までカヴァーされたことのないビートルズ曲を楽しむにも、絶好のカヴァーアルバムです。ちなみに、この盤のアルバム・ジャケットはジョン・レノンのアルバム『Rock 'n' Roll』を再現しています。小粋でお洒落ですね。
 
 
 

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【更新しました】2020.03.02
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.15
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップ『魔法の黄色い靴』
 

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2019年10月14日 (月曜日)

ディ・メオラのスペイン志向

ジャズとスペイン。意外と繋がりがある。マイルス・ディヴィスがモード・ジャズをやる時、好んで「スパニッシュ・キー」を使ったので、ジャズとスペインと間柄は強いと感じる。スペインでジャズが盛ん、という訳では無い。そういう傾向から、ジャズをやる時、スパニッシュな雰囲気の旋律を好んで使うジャズマンも沢山いる。

Al Di Meola『Elegant Gypsy』(写真左)。1976年12月〜1977年1月にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g), Paco de Lucía (g), Jan Hammer, Barry Miles (key), Anthony Jackson (b), Steve Gadd , Lenny White (ds), Mingo Lewis (syn, org, perc)。超絶技巧ギタリスト、アル・ディ・メオラの若き日の好盤である。

曲名を見渡せば、「Midnight Tango」「Mediterranean Sundance」「Race with Devil on Spanish Highway」「Elegant Gypsy Suite」など、スペインを彷彿とする曲名が目立つ。そう、このアルバム、アル・ディ・メオラのスパニッシュ志向な演奏がてんこ盛りなのだ。特に、フラメンコ・ギタリストの「パコ・デ・ルシア」が客演しているのが目を惹く。
 
 
Elegant-gypcy
 
 
パコ・デ・ルシアも超絶技巧なギタリストとして有名。「Mediterranean Sundance」など、超絶技巧なギタリストの共演は、その演奏内容は凄まじいばかりの速弾きテクニックの嵐。絶対に間違わない、そして、誰よりも高速に複雑なフレーズを弾きまくる。これはジャズというより、もはやアクロバットである(笑)。速弾きだけでは無く、その凄まじい速弾きに歌心が伴っているから凄い。

この盤は、チック・コリア率いる「リターン・トゥー・フォーエヴァー(RTF)」を辞した後の録音であるが、このコッテコテの「スパニッシュ志向」は、同じ志向のチックとは相性バッチリ。第2期RTFの2代目ギタリストとして有名を馳せたのは当然のこと。この盤では心ゆくまで「スパニッシュ志向」の演奏を追求している。

パコ・デ・ルシアとの共演した「Mediterranean Sundance」。このパコ・デ・ルシアとの共演、ここでのアコギ2本の絡みは、後にアル、パコ、ジョン・マクラフリンによる、いわゆる「スーパー・ギター・トリオ」が誕生する切っ掛けとなった。この「スーパー・ギター・トリオ」については、2007年1月25日のブログを参照されたい。凄い内容ですよ、これも。
 
 
 
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2017年2月 2日 (木曜日)

アコースティックのディメオラ。

日中の気温が上がらない寒い寒い昼下がり。空は鉛色、北風が吹き付ける昼下がり。そういう時は暖かい部屋の中で、コクのある珈琲をすすりながら、ジャズを聴くのが一番。それもギター、それもアコースティック・ギター。

アコースティック・ギターの音色はストイックで透明度が高い。冬の「身が切られるような寒さ」に通じる音の切れ味の良さ。冬にジャズ・アコギは良く似合う。ということで、冬にピッタリのジャズ・アコギの好盤を探す。

『Di Meola Plays Piazzolla』(写真左)。1996年のリリース。超絶技巧なエレギで一世を風靡したアル・ディ・メオラ(Al Di Meola)。そんなアル・ディ・メオラがアコギを弾きまくる。

しかも、タンゴの革命児、モダン・タンゴの父と言われる、アルゼンチン出身のBandoneon奏者&作曲家 Astor Piazzolla(アストル・ピアソラ)の名曲を弾きまくるという、凄い内容の企画盤。

ディ・メオラがタンゴを弾く。どんなタンゴになるんだ、と思いながら聴く。と、これが「絵に描いた様なタンゴ」な演奏にはならない。さすがはディ・メオラ。自ら迎合することは絶対に無い。
 

Di_meola_plays_piazzolla1

 

ピアソラ・トリビュートなアルバムながら、正統なタンゴ演奏にはならず、ピアソラの名曲の旋律の美しさを、ディ・メオラ独特のフュージョン・ジャズなフィーリングで弾きまくる。

エレギだと、あまりの超絶技巧な弾きっぷりに、ちょっとお腹いっぱいになってしまいがちなディ・メオラであるが、これがアコギになると、あ〜ら不思議。お腹にもたれることも無く、スッキリすんなり心地良く耳に響くのだ。ディ・メオラの超絶技巧さが良い方向に作用している。

そんなスッキリすんなり心地良く耳に響くアコギの音色に乗って、ピアソラの哀愁感溢れる名曲の旋律が駆け抜けていく。アコギの音色にタンゴの哀愁感が良く似合う。程良く抑制されたアコギの音色がタンゴの哀愁感を増幅させる。

ドラムは無い。ベースも無い。伴奏にピアノが入り、パーカッションがリズムを刻むのみ。バンドネオンの哀愁感溢れる音色が良いアクセント。基本的にディ・メオラのアコギがメイン。超絶技巧なディ・メオラのギターにはそれで十分。心地良い音の密度である。

 
 

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2016年3月21日 (月曜日)

ディ・メオラのビートルズ盤

ジャズは結構な数のビートルズのカバー盤を出している。ジャズの大衆音楽としての成熟時期に、ビートルズは英国から米国に上陸してきた。ビートルズの人気の勢いは凄まじいばかりであった。それに便乗するのが、大衆音楽のジャズとしての「手っ取り早い」対抗策だった。

しかし、ジャジーなマイナー調が基本のジャズに、あの当時、革新的なコード進行を持ったビートルズの楽曲とは相性があまり良く無かった様な気がする。大量に制作された、ジャズのビートルズのカバー盤は玉石混交としていた。というか、僕の耳には、優れたビートルズのカバー盤は数が少なかった。

ということで、逆に、ジャズを聴き始めてから、ジャズのビートルズのカバー盤をずっと気にしてきた。ジャズの優れたビートルズのカバー盤は無いか、ジャズとビートルズの相性は良いのか、悪いのか。

最近、このジャズのビートルズのカバー盤に感心した。Al Di Meola『All Your Life(A Tribute to the Beatles)』(写真左)。2013年のリリースなんだが、ちょっと「寝かせて」おいた。アルバムのライナーノーツにはこう記されている。「All guitars and percussion on this recording played by Al Di Meola」。
 

Al_di_meola_all_your_life

 
アル・ディ・メオラのソロ・パフォーマンス。アコースティック・ギターとパーカッションだけの、とってもシンプルな構成で、ジャズのビートルズのカバーが奏でられる。選曲も実にマニアックな選曲で好感が持てる。ビートルズのヒット曲をカバーする、という切り口には目をくれず、アコギで、ジャズのアレンジで弾くに適したビートルズの楽曲を堅実に選んでいる。

とにかくアレンジが優れている。カバーされた楽曲の特性を良く活かしつつ、ジャジーにアレンジされる。ビートルズの楽曲を知っていれば、当然、その「アレンジの妙」を感じることが出来て、大いに楽しめる。逆に、ビートルズの楽曲を知らなくても、純粋にジャズのアコギの好演として十分に楽しめる、そんな優れたアレンジである。

ここまで、ビートルズの楽曲をジャズにアレンジして、そのジャズメンの音に、作品になっている盤もなかなか無い。アル・ディ・メオラの個性はビートルズの楽曲の中でも健在で、ビートルズの楽曲の個性と共存している。恐らく、アル・ディ・メオラは、ビートルズについてかなり造詣が深いと思われる。このカバー盤を聴いていて、ビートルズへの敬愛がひしひしと伝わってくる。

良いアルバムです。冒頭の「In My Life」を聴いていて、グッと惹き込まれます。フレーズを聴けば、これはアル・ディ・メオラのギターであることが直ぐに判ります。久し振りに優れた「ジャズのビートルズのカバー盤」に出会った気がします。

 
 

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