ジョーヘンは申し分ないのだが.....
ジョー・ヘンダーソンは、5枚目のリーダー作『Mode for Joe』(1966年1月27日録音)で、ブルーノート・レーベルを離れる。まだ、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがプロデュースの実務を直接、取っていた時期にも関わらず、である。他の大手レーベルのオファーが金銭的にかなり魅力的だったのだろうか。とにかく、ヘンダーソンは、まずは、マイルストーン・レーベルに移籍する。
Joe Henderson『The Kicker』(写真左)。1967年8月10日と9月27日の録音。マイルストーン・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Grachan Moncur III (tb), Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Louis Hayes (ds)。リーダーのヘンダーソンのテナー、ローレンスのトランペット、モンカーのトロンボーンがフロント3管のセクステット編成。プロデューサーは、オリン・キープニュース。
前作『Mode for Joe』のセプテット編成から、ハッチャーソンのヴァイブを抜いて、ヘンダーソンのテナーとロンのベース以外の4人は異なるメンバーに交代したセクステット編成。基本的にはハッチャーソンのヴァイブを抜いただけだが、出て来る「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度は、ブルーノート時代の諸リーダー作と比較すると、はっきり言って「落ちている」。
演奏者毎に「ジョーヘン流モード」の理解度にばらつきがあり、当然、楽器ごとの「ジョーヘン流のモード」に対する適応度にもばらつきがある。この「ばらつき」が「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度のレベルを落としている。加えて、ブルーノートの様な、本録音に先だった「充実したリハーサル」が不足しているのか、演奏自体が全体的に荒い。
リーダーのジョー・ヘンダーソンの「ジョーヘン流モード」の吹奏は申し分ないのだから、実に惜しい内容の6枚目のリーダー作になる。加えて、「ジョーヘン流モード」は硬派なモード・ジャズなのだが、甘いメロディーが 人気のハードバップの名曲「Nardis」、ボサノバの名曲「O Amor Em Paz (Once I Loved)」を選曲しているが、この2曲はどうにもモード奏法にあまりフィットしない曲の様で、この2曲の演奏には違和感が漂っている。
ジョーヘンのテナーについては申し分ないのだが、他の録音に参加したジャズマンの人選、アルバム・コンセプトにフィットする演奏曲の選曲、この2点について十分なプロデュースが出来なかった分、前作の名盤『Mode for Joe』の内容よりも一段、内容が落ちるところが実に残念なアルバムである。録音もジャケ・デザインもイマイチで、このアルバムは、逆説的に、ジャズにおけるプロデュースの重要性を我々に再認識させてくれる。
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