2025年5月13日 (火曜日)

スピリチュアルなジョーヘン盤

なんだか、複雑でやっつけな収録曲の構成で、これが、ジャズの一流レーベルであるマイルストーンからリリースされているのが意外。プロデュースはあの「オリン・キープニュース」。このスタジオ録音とライヴ録音のちゃんぽん、パーソネルもガラッと違う2つのセッションを混ぜこぜにしたのか、理解に苦しむ。

Joe Henderson『In Pursuit of Blackness』(写真左)。1971年、マイルストーン・レーベルからのリリース。1971年5月12日(#1, 3, 5)、NYのDecca Studiosでの録音。1970年9月25–26日(#2, 4)、L.A.ハモサビーチのLighthouse Caféでのライヴ録音。リーダーは、テナーのジョー・ヘンダーソン(略して「ジョーヘン」)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

1970年9月25–26日のライヴ録音が、Joe Henderson (ts), Woody Shaw (tp), George Cables (el-p), Ron McClure (b), Lenny White (ds), Tony Waters (congas)。

1971年5月12日のスタジオ録音が、Joe Henderson (ts), Curtis Fuller (tb), Pete Yellin (as, fl, b-cl), George Cables (el-p), Stanley Clarke (b), Lenny White (ds), Tony Waters (congas)。

1970年9月25–26日(#2, 4)、L.A.ハモサビーチのLighthouse Caféでのライヴ音源は、Joe Henderson Quintet『At The Lighthouse』と『Jazz Patterns』があるが、2曲目「Invitation」は『Jazz Patterns』(1982年リリース)の1曲目との重複音源だが、この盤のリリース時点では初出。4曲目「Gazelle」は、この盤だけの収録で初出。
 

Joe-hendersonin-pursuit-of-blackness

 
しかし、ジョーヘンならではのモード・ジャズは、確立されていた感があって、この盤のスタジオ録音にも、ライゔ録音にも、ブレのない、迷いのない、ジョーヘンならではのモード・ジャズが、自信たっぷりに展開されている。

まず、1970年9月25–26日のライヴ録音では、フロント管のジョーヘンのテナーと、ショウのトランペットの相性が抜群なのが良く判る。1971年5月12日のスタジオ録音では、フロント管を担う、ハードバップ時代のトロンボーンの名手フラーが、ジョーヘンならではのモード・ジャズに完全適応しているのにビックリ。

そして、2つのセッション共通の、ケイブルスの端整なエレピが素晴らしく、レニー・ホワイトのドラミングもモーダルに叩きまくっていて素晴らしい。1971年5月12日のスタジオ録音には、ベースにスタンリー・クラークがベースに入っていて、これがまた、スピリチュアルなベースラインを弾きこなしていて素晴らしい。

この2つのセッションのちゃんぽん盤は、タイトルから何となく雰囲気を感じ取れる「スピリチュアル・ジャズ」な内容がメインと聴いた。この盤は、ジョーヘンならではのモード・ジャズをベースとした「スピリチュアル・ジャズ」と解釈している。

収録されている2つのセッションのどの曲も、テクニック優秀、熱気が溢れ、モーダルでスピリチュアルな雰囲気が横溢する、レベルの高い演奏が展開されている。ジョーヘンのスピリチュアル・ジャズ」な好盤です。
 
 

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2025年5月 9日 (金曜日)

”At ライトハウス” の未発表音源

 一昨日に続いて、ジョー・ヘンダーソン(略して「ジョーヘン」)のアルバムの聴き直し。2025年5月7日 (水) のブログでご紹介した「1970年ジョーヘンの好ライヴ盤」。LP時代の初でのタイトルが『If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem』。CDリイシュー時のタイトルが『At The Lighthouse』。

その時代のジャズのトレンドにピッタリ合致した、電気楽器入り、電気楽器を有効活用した、モーダルなジャズが展開されている好ライブ盤だったが、確か、未発表音源を集めた別アルバムがあったことを、ふと思い出した。

Joe Henderson Quintet『Jazz Patterns』(写真左)。1970年9月24–26日、米国L.A.、Hermosa Beachの「Lighthouse Café」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Woody Shaw (flh, tp), George Cables (el-p), Ron McClure (b), Lenny White (ds), Tony Waters (congas)。テナーのジョーヘンがリーダーの、クインテット編成+コンガ。

1970年9月24~26日、ジョーヘンとウディ・ショウとが共演した、米国西海岸、L.A.ハモサビーチの名門クラブ、ザ・ライトハウスでの未発表ライヴ音源集。1982年に初出の時は、ほとんど粗悪品なものだったらしいが、その音源が『If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem』の未発表音源と判明し、しっかりとしたパッケージで再発された。
 

Joe-henderson-quintetjazz-patterns

 
未発表音源とはいえ、内容的には決して、正式盤に落ちこぼれたイマイチな内容ではなく、正式盤に採用された音源と比べても、全く引けを取らない、優れた、その時代のジャズのトレンドにピッタリ合致した、電気楽器入り、電気楽器を有効活用した、モーダルなジャズが展開されている。もしかしたら、正式版の音源よりも、一部、優れた内容をしているものもある位だ。

この未発表音源盤は是非とも、正式盤と合わせて聴いてもらいたい。フロント2管を形成する、ジョーヘンのモーダルなウネウネ・テナー絶好調、ウディ・ショウのストレートで切れ味の良いモーダルなトランペット絶好調。そして、ジョージ・ケイブルスのモーダルなエレピ(フェンダー・ローズ)絶好調。コンガ入りのリズム隊も絶好調。

かなり重厚で自由に富んだモード・ジャズでありながら、どこか軽快で軽妙なところがあって、深刻にならない、1970年のジョーヘンの、ポスト・バップのモーダルな極上のパフォーマンスが、この未発表音源盤にもぎっしりと詰まっている。

ジョーヘンのテナーとショウのトランペットのフロント2管は、モーダルな展開をやらせたら「無敵」。二人の「モード」の相性の良さがビンビンに伝わってくる極上のパフォーマンスに惚れ惚れする。
 
 

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2025年5月 7日 (水曜日)

1970年ジョーヘンの好ライヴ盤

1970年のジョー・ヘンダーソン(以下「ジョーヘン」)のライヴ盤。LPでの初出のタイトルが『If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem』(写真左)、リイシュー時、曲順をちょっと変え、トラックを追加したCDのタイトルが『At The Lighthouse』(写真右)。

ちょっと紛らわしいのだが、どちらも、米国西海岸のロスアンゼルス近郊のハモサビーチにある有名ジャズ・カフェ「ライトハウス」でのライヴ録音になる。ここでは、LPでの初出時の収録曲を基に話を進めたい。

Joe Henderson Quintet『If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem』(写真左)。1970年9月24–26日、米国L.A.、Hermosa Beachの「Lighthouse Café」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Woody Shaw (flh, tp), George Cables (el-p), Ron McClure (b), Lenny White (ds), Tony Waters (congas)。テナーのジョーヘンがリーダーの、クインテット編成+コンガ。

1970年、ジャズは「大衆化」の波に取り残され、マニア化の一途を辿り出す。電気楽器を上手く活用したクロスオーバー・ジャズ〜ジャズ・ファンクがトレンド化した頃。このライヴ盤もその時代のジャズのトレンドにピッタリ合致した、電気楽器入り、電気楽器を有効活用した、モーダルなジャズが展開されている。

フロント2管を形成する、ジョーヘンのモーダルなウネウネ・テナー絶好調、ウディ・ショウのストレートで切れ味の良いモーダルなトランペット絶好調。そして、ジョージ・ケイブルスのモーダルなエレピ(フェンダー・ローズ)絶好調。1970年のジョーヘン・クインテットの好ライヴ盤である。
 

Joe-hendersonquintetif-youre-not-part-of

 
コンガ入りのリズム隊も絶好調。細かくリズムを刻むレニー・ホワイトのドラムが、ジョーヘンとショウのモーダルなパフォーマンスを効果的に鼓舞する。さすがライヴ盤で、ジョーヘンのモーダルなアドリブも、ショウのモーダルなアドリブも熱量があって、ダイナミック。ほんと、自然体のモード・ジャズといった体が実に良い。

選曲も良く、LP時代で考えると、LP収録の全5曲中(1曲は「Closing Theme」なので割愛)、ブルーノート時代の『Page One』から1曲、『Mode for Joe』から2曲、有名スタンダードから1曲、タイトルの自作曲1曲、を採り上げている。

半分の3曲がブルーノート時代のジョーヘン好盤の2枚から選曲されているところが良い。ジョーヘン=ショウのフロント2管による、モーダルで個性的な展開の良いところが、このライヴ盤に詰まっているから堪らない。

かなり重厚で自由に富んだモード・ジャズでありながら、どこか軽快で軽妙なところがあって、深刻にならないのだが、これは、ケイブルスのエレピの存在が、演奏全体に良い影響を与えているからだと思う。

フェンダー・ローズの響きはモーダルな演奏に「よく似合う」。モーダルなジャズの深刻さ・難解さを緩和する様なケイブルスのローズの響き、ジョーヘンのモーダルなウネウネ・テナー、ショウのストレートで切れ味の良いモーダルなトランペットとが融合して、このライヴ盤を好盤としている。
 
 

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2024年12月27日 (金曜日)

続 ”ハードバップのジョーヘン”

1994年に先行リリースされた『Four』(昨日のブログ参照)と同一場所、同一日時での録音。つまり『Four』で選曲された曲以外の、残りの曲をピックアップしている。といって、『Four』で選曲されなかった残りの曲だから、演奏の内容は少しレベルが下がるのだろう、と思いきや、これが、先行の『Four』と同等、曲によっては、こちらの方が良いの、なかなか内容のある演奏がピックアップされている。

Joe Henderson『Straight, No Chaser』(写真左)。1968年4月21日の録音。1996年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。メリーランド州のボルチモアの「レフト・バンク」でのライヴ録音。1994年リリースのヴァーブ・レコードの発掘盤。

冒頭のタイトル曲、モンク作の「Straight, No Chaser」が圧巻。14分40秒という長尺の演奏で、うねうねモーダルな展開がメイン、時々ハードバップに転換する、ストレートでハードバップなジョーヘンの吹奏に、ハードバップでスインギーな、ケリー、ポルチェン、コブのリズム隊が対応、まるで、マイルス抜きのアコースティック・マイルス・バンドの如くの演奏が繰り広げられる。
 

Joe-hendersonstraight-no-chaser

 
3曲目の「What Is This Thing Called Love?」では、ハードバップでスインギーな、ケリー、ポルチェン、コブのリズム隊に引きずり込まれる様に、ジョーヘンのモーダルなテナーが、スインギーなハードバップなテナーに転換するところが、とてもユニークで面白い。やはり、この盤でも、スインギーでストレートでハードバップなテナーを吹きまくるジョーヘンが「聴きもの」である。

この盤でも、ケリーはアグレッシヴに、溌剌とケリー節を弾きまくる。ケリーは器用なピアニストで、フロント管のモーダルな展開にもしっかりついていく。モーダルについていくのではなくて、あくまでハードバップ・ピアノの語法の中で、健康優良児的なファンキーで明るいタッチで相対するという、ケリーならではのモード対応をしているところが面白い。

うねうねモーダルなテナーと、ストレートでハードバップなテナーの両刀使いのジョーヘン。そして、その両方に柔軟に対応する、ハードバップでスインギーな、ケリー、ポルチェン、コブのリズム隊。この好対象な組み合わせが「吉」と出た好盤です。先行リリースの同一メンバー、同一録音日の『Four』と併せて聴き通したいですね。しかし、この盤でもだが、ハードバップのジョーヘン、意外と聴き応えがある。
 
 

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2024年12月26日 (木曜日)

”ハードバップのジョーヘン” です

ジャズには、録音した時点では、即アルバム化してリリースされずに「お蔵入り」する音源が多々ある。そして、そんな「お蔵入り」音源が、後年、20〜30年経って、組織的に「発掘」され、リリースされることが、これまた「まま」ある。

そして、この発掘音源はどれもが、発掘のし甲斐のある、興味深い内容を持つものが多いから、絶対に無視できない。

Joe Henderson『Four』(写真)。1968年4月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。邦題は「フォア!~ライヴ・アット・レフト・バンク」。メリーランド州のボルチモアの「レフト・バンク」でのライヴ録音。1994年リリースのヴァーブ・レコードの発掘盤。

ウネウネ・モードの「モードの申し子」ジョー・ヘンダーソン(以降「ジョーヘン」と略)とライヴ音源である。バックのリズム・セクションに、ウィントン・ケリーのピアノ、ポール・チェンバースのベース、ジミー・コブのドラム。ジョーヘンのワンホーン・カルテットである。

ケリー、ポルチェン、コブのリズム隊はハードバップ期の最高のリズム隊の一つ。しかし、このライヴ録音は1968年。モード・ジャズが成熟期の第一段階に差し掛かった頃。こってこてハードバップなリズム隊に、ウネウネ・モードの「モードの申し子」ジョーヘンがワンホーン・フロント。どんなライヴ演奏になるのか興味津々である。
 

Joe-hendersonfour

 
聴くとこれがまあ、無理のない、自然に流れる様なハードバップな演奏が繰り広げられているのだから面白い。ジョーヘンは、モーダルな展開もするにはするが、バックのリズム隊が流れる様に自然なハードバップ志向のリズム&ビートを供給するもんだから、ジョーヘンも自然にハードバップな吹き回しで応酬している。これが実に良い雰囲気なのだから面白い。

ジョーヘンのハードバップな吹き回しについても、1950年代を席巻したハードバップ全盛期のフレーズをなぞったりはしない。モード・ジャズを自家薬籠中のものとした後の、新しい響きのハードバップな吹き回しになっている。これが、この盤のハードバップな演奏を新鮮な印象のものにしている。そこに、時々、ジョーヘン仕様のモーダルな吹き回しが入って、新鮮な印象をさらに印象的なものにしている。

リズム隊については、ケリー、ポルチェン、コブ、それぞれ、なかなか内容の濃い演奏を繰り広げている。とりわけ、ケリーのピアノが絶好調。1968年といえば、ケリーが鬼籍に入る3年前。しかも時代は、モード・ジャズが成熟期の第一段階に差し掛かった頃。

ケリーのハードバップなピアノはもう古い、と思いきや、溌剌とケリー節を弾きまくっている。ケリーのピアノは、健康優良児的なファンキーで明るいタッチ。しかし、その奥に見え隠れするブルージーな哀愁感が堪らないのだが、これが明快にバンバン出てくる。ケリー晩期のベスト・プレイかもしれない。

1968年4月のライヴ録音ながら、リリースは1994年。典型的な発掘音源であるが、この優れた興味深い内容は、発掘のし甲斐のある「発掘音源」だったと思う。こういう発掘音源はウエルカム。ハードバップのジョーヘン、意外と聴き応えがある。
 
 

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2024年11月26日 (火曜日)

ジョーヘンは申し分ないのだが.....

ジョー・ヘンダーソンは、5枚目のリーダー作『Mode for Joe』(1966年1月27日録音)で、ブルーノート・レーベルを離れる。まだ、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがプロデュースの実務を直接、取っていた時期にも関わらず、である。他の大手レーベルのオファーが金銭的にかなり魅力的だったのだろうか。とにかく、ヘンダーソンは、まずは、マイルストーン・レーベルに移籍する。

Joe Henderson『The Kicker』(写真左)。1967年8月10日と9月27日の録音。マイルストーン・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Grachan Moncur III (tb), Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Louis Hayes (ds)。リーダーのヘンダーソンのテナー、ローレンスのトランペット、モンカーのトロンボーンがフロント3管のセクステット編成。プロデューサーは、オリン・キープニュース。

前作『Mode for Joe』のセプテット編成から、ハッチャーソンのヴァイブを抜いて、ヘンダーソンのテナーとロンのベース以外の4人は異なるメンバーに交代したセクステット編成。基本的にはハッチャーソンのヴァイブを抜いただけだが、出て来る「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度は、ブルーノート時代の諸リーダー作と比較すると、はっきり言って「落ちている」。
 

Joe-hendersonthe-kicker

 
演奏者毎に「ジョーヘン流モード」の理解度にばらつきがあり、当然、楽器ごとの「ジョーヘン流のモード」に対する適応度にもばらつきがある。この「ばらつき」が「ジョーヘン流のモード」の内容の充実度のレベルを落としている。加えて、ブルーノートの様な、本録音に先だった「充実したリハーサル」が不足しているのか、演奏自体が全体的に荒い。

リーダーのジョー・ヘンダーソンの「ジョーヘン流モード」の吹奏は申し分ないのだから、実に惜しい内容の6枚目のリーダー作になる。加えて、「ジョーヘン流モード」は硬派なモード・ジャズなのだが、甘いメロディーが 人気のハードバップの名曲「Nardis」、ボサノバの名曲「O Amor Em Paz (Once I Loved)」を選曲しているが、この2曲はどうにもモード奏法にあまりフィットしない曲の様で、この2曲の演奏には違和感が漂っている。

ジョーヘンのテナーについては申し分ないのだが、他の録音に参加したジャズマンの人選、アルバム・コンセプトにフィットする演奏曲の選曲、この2点について十分なプロデュースが出来なかった分、前作の名盤『Mode for Joe』の内容よりも一段、内容が落ちるところが実に残念なアルバムである。録音もジャケ・デザインもイマイチで、このアルバムは、逆説的に、ジャズにおけるプロデュースの重要性を我々に再認識させてくれる。
 
 

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2024年11月25日 (月曜日)

”ジョーヘン流モード” の充実形

ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)。愛称は「ジョーヘン」。若い頃から今に至るまで「ジョーヘン」で通している(笑)。1937年4月生まれ。2001年6月に惜しくも鬼籍に入る。64歳。早過ぎる逝去であった。初リーダー作が1963年、26歳の時だったから、ちょっと遅咲きのテナーマン。ハードバップ後期から頭角を現し、1960年代前半での初リーダー作ということで、ジョーヘンは、バリバリ、新主流派の範疇のテナーマンである。

Joe Henderson『Mode for Joe』(写真左)。1966年1月27日の録音。ブルーノートの4227番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Bobby Hutcherson (vib), Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。うねうねモーダルなテナーマン、ジョーヘンの5枚目のリーダー作になる。ジョーヘンのテナー、モーガンのペット、フラーのボーン、ハッチャーソンのヴァイブの4楽器がフロントのセプテット編成。

さすが、リーダー作も5枚目になると、ジョーヘン流のモード・ジャズも洗練されて、ほぼ確立された状態なのが、この盤を聴くと良く判る。モーダルなフレーズ独特の「ウネウネ」感。ウェイン・ショーターのそれと同じ感じではあるが、ジョーヘンの「ウネウネ」感は、ショーターのそれよりも整然としていて流麗。捻れそうで捻れないストレートな音での「ウネウネ」フレーズの連発。ジョーヘンのモーダルなフレーズは滑らか。フレーズの音が飛んだり跳ねたりしない。聴けばすぐに「ジョーヘン流のモード」と判る独特の個性。
 

Joe-hendersonmode-for-joe

 
ジョーヘンのテナー、モーガンのペット、フラーのボーン、ハッチャーソンのヴァイブの4楽器がフロントを張るが、楽器ごとの「ジョーヘン流のモード」に対する適応度の違いは無い。フロント楽器の全メンバーが「ジョーヘン流のモード」を理解し、自分のものとし、自分の個性の中で「ジョーヘン流のモード」を表現する。リハーサルにも十分にコストと時間をかけて、演奏の精度と内容を向上させる、ブルーノートならではの演奏の充実度。

特に、モーガンのトランペット、フラーのトロンボーンの、ほど良く抑制が効いた、思索的でクールでエモーショナルな吹奏が素晴らしい。そして、管楽器の吹奏にパーカッシヴに絡み、「ジョーヘン流の」モーダルなフレーズをより印象的にする、モーダルなヴァイブの響き。そして、ウォルトン=ロン=ジョーチェンのリズム隊が供給する「ジョーヘン流のモード」に適したリズム&ビート、そしてグルーヴは聴きもの。

このジョーヘンの5枚目のリーダー作には、「ジョーヘン流のモード」への完全適用の演奏がぎっしり詰まっている。しかも、演奏全体はしっかりと理路整然と整っている。「ジョーヘン流のモード」が、直感に頼ったり、その時の気分によったり、感情に左右されたり、ファジーなモード・ジャズで無いことがよく判る。さすがはブルーノート・レーベル。そんな「ジョーヘン流のモード」の充実形をしっかりと記録している。
 
 

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2023年8月13日 (日曜日)

ジョーヘンの完全モーダルな盤

ジョー・ヘンダーソン(以降、ジョーヘン)のテナーは、コルトレーンでもなければ、ロリンズでも無い。ストレートな吹奏はコルトレーンの影は引き摺っているものの、ジョーヘンのテナーの響きとフレーズは唯一無二。ジョーヘン独特のテナーである。

ブルーノート・レーベルに初リーダー作『Page One』を録音して以降、『Our Thing』『In 'n Out』とブルーノートに立て続けにリーダー作を録音した。が、モーダルなジョーヘンを聴くことは出来るが、唯一無二のジョーヘンならではのモード・テナーにはなりきっていなくて、「ちょっと捻れた」独特のモーダルなテナーは中途半端。恐らく、フロント管のパートナー、ジョーヘンの育ての親を自認していたケニー・ドーハムへの遠慮というか、ドーハムに合わせたところが中途半端なモード・テナーになった理由だろう。

Joe Henderson『Inner Urge』(写真左)。1964年11月30日の録音。ブルーノートの4189番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。4枚目のリーダー作にして、フロント管がジョーヘンのテナー1管の「ワンホーン・カルテット」。しかも、バックのリズム隊はバリバリ、モードに精通した強者のトリオ。

それまで、フロント管のパートナーだったケニー・ドーハムと分かれて、ジョーヘンのテナー1本でのカルテット演奏。しかも、バックを固めるのが、タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」。
 

Joe-hendersoninner-urge

 
ジョーヘンは、このリーダー作第4弾にして、ジョーヘンの完全モーダルな、ちょっと捻れた「ウネウネ」テナーが、思う存分、自由自在に疾走する。タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」との相性もバッチリ。演奏の精度と密度は相当に高く、ブルーノートのアルバムの中でもその内容の充実度は上位に位置する。

ジョーヘンのモーダルなテナーは、ウネウネの振れ幅が穏やかで、ハードバップなリズム&ビートに良く「乗る」。例えば、ウェイン・ショーターのモーダルなテナーの「ウネウネ度合い」は振れ幅が大きくて、慣れていないとちょっと聴くに辛いところがある。

が、ジョーヘンは違う。ジョーヘンのモーダルなテナーのフレーズは、ハードバップのマナーに則った、従来のモダン・ジャズの枠内に収まったモーダルな展開で、聴いていて取っ付き易く聴き易い。

このブルーノートでのリーダー作第4弾は、ジョーヘンのモーダルなテナーを的確に捉えている。ジョーヘンも自由に、吹きたい様に吹きまくっている様が良く判る。ハードバップの延長線上にあるジョーヘンのモーダルな展開は、難解と思われているモード・ジャズを、とても聴き易いものにしている。これが、ジョーヘンのモード・ジャズの、他のジャズマンに無い個性だろう。この盤は、ジョーヘンのモーダルなテナーを理解するのに最適な盤。ジャケも小粋で良い。
 
 

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2023年7月 8日 (土曜日)

モーダルなジョーヘン参上 『In 'N Out』

ブルーノート4100番台はモード・ジャズについても、様々なジャズマンが手掛ける、様々な表現形態のモード・ジャズを記録している。どれとして、同じ表現をしているジャズマンはいない。モードは表現の自由度がかなり高いと言われるが、この辺りは「至極納得」である。皆、それぞれの感性・感覚で、それぞれの個性的なモード・ジャズをやっている。

モード・ジャズというのは、かなりアーティステックで、聴いていても、ちょっと判り難い。音楽理論を学んだ経験のある人は「ははん」と、何となく理解出来るのだが、音楽理論に触れていない方には、説明されてもよく判らないところが本音だろう。ということで、モーダルなジャズって、当時もセールス的には厳しかったと思うのだが、ブルーノートはかなり積極的に、モード・ジャズの録音を残している。さすがである。

Joe Henderson『In 'N Out』(写真左)。1964年4月10日の録音。ブルーノートの4166番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Kenny Dorham (tp), McCoy Tyner (p), Richard Davis (b), Elvin Jones (ds)。ウネウネなモーダル・テナーのジョー・ヘンダーソン(以降、略してジョーヘン)とケニー・ドーハムのトラペットがフロント2管のクインテット編成。

この盤でのジョーヘン、基本はモード・ジャズでキメている。ピアノのタイナー、ベースのディヴィス、ドラムのエルヴィンは、コルトレーン仕込みのモード・ジャズの担い手なので、この盤、こってこてのモード・ジャズなんだろうなあ、と思うのだが、トランペットにドーハムがいるのがちょっと違和感。ドーハムってモード・ジャズ、イケたんでしたっけ、と思わず思ってしまう。
 

Joe-hendersonin-n-out

 
ジョーヘンのモーダルなフレーズって、他の新主流派のフレーズとはちょっと雰囲気が違う。新主流派のモーダルなジャズは、マイルス仕込みとコルトレーン仕込みと、2つに大きく分かれると感じている。マイルス仕込みは、ハンコック、コリア、ショーター、ロン、トニーなど、マイルス・バンドの面々で、間と拡がりと緩急を活かしたモード。コルトレーン仕込みは、タイナー、エルヴィン、ハバード。シーツ・オブ・サウンドをベースとした、吹くまくり、弾きまくりのモード。

ジョーヘンのモードは、ウネウネと捻れて、あんまり起承転結の無い、いつまで続くんだ〜って感じの縦横に伸び縮みするフレーズが特徴。1曲きけば直ぐに判る。熱くなることは無い。どこまでもクールにウネウネ捻れて縦横に伸び縮みするモーダルなフレーズ。今の耳で聴くと、ちょっとレトロな雰囲気漂う、古き良き時代のモーダルなフレーズ。これが、ジョーヘン独特で唯一無二なのだ。

この『In 'N Out』、そんなジョーヘンのモーダルなフレーズが心ゆくまで楽しめる。そして、バップなトランペッター、ドーハムもしっかりモードに対応している。バップな響きで端正で明確なトランペットで「モーダルなフレーズ」を吹きまくっている。ドーハムのトランペットが端正な分、ウネウネ捻れて縦横に伸び縮みするジョーヘンのテナーとの対比がとても良いフロント2管である。

ジャケットも優秀。ブルーノートらしい「タイポグラフィ」が凄く良い。タイトルの「In 'N Out」の先頭の「i」の点の部分にジョーヘンの写真が小さくあしらわれていて、これがまた「粋」。良いジャケには良いジャズが宿る。そんな「格言」の典型的な例だろう。ジョーヘンのモーダルなジャズの好盤です。
 
 

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2021年1月24日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・136

このところ、ちょくちょくと、魅力的なリイシューが続いている。廃盤になって久しい好盤が、ネット時代の効果かもしれないが、全く知らないレーベルからリイシューされるのだ。それもCDショップなどを経由せず、ダイレクトにネット経由で入手出来る。21世紀に入った頃、ジャズの世界にもこんな「ネット時代」が来るなんて思いもしなかった。

Neil Swainson Quintet『49th Parallel』(写真左)。1988年の作品。ちなみにパーソネルは、Neil Swainson (b), Gary Williamson (p), Jerry Fuller (ds), Woody Shaw (tp), Joe Henderson (ts)。

実力派ベーシスト、ニール・スウェインソンの初リーダー作。ウッディ・ショウのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーのフロント2管のクインテット構成。1988年の作品だから、純ジャズ復古後の録音になる。

リーダーの「ニール・スウェインソン」は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州生まれ。70年代終わりにトロントに移住し、ョージ・シアリングのバッキング・ベーシストとして名をあげ、数々のレジェンドと共演、ダイアナ・クラール、ナンシー・ウィルソン、メル・トーメといったシンガーのバックも務めた実力派ベーシストだそう。僕は知らなかった。1955年生まれなので、現在65歳の大ベテラン。
 
 
49th-parallel  
 
 
この盤、もともとは1988年にConcordからリリースされたものの廃盤になって久しく、「幻の名盤」化していた音源とのこと。この盤を聴き通して感じるのだが、さすが、ウッディ・ショウのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーのフロント2管のパフォーマンスが群を抜いている。「幻の名盤」化していた音源、というのも納得の一枚である。

ウッディ・ショウにとって、スタジオ録音のパフォーマンスとしては最後期に位置づけられるもので、これがなかなか素晴らしい。この盤でのウッディ・ショウの演奏はとりわけブリリアントで、鋭いハイノートも難なく吹きこなしている。特にモーダルなフレーズは、ジョーヘンと共に、硬軟自在、緩急自在な骨太でダイナミックな展開が見事。

バックのリズム・セクションは、リーダーのスウェインソンのベースを含め、カナダ人の面々であるが,演奏自体は堅実。しっかりと「重量級の」フロント2人をサポートしている。

この盤、1988年にConcordからリリースされた時(写真右)も、今回のリリース時(写真左)もジャケット・デザインがイマイチなので、パッと見、この盤、内容的に大丈夫なのか、と思うのだが「大丈夫です」。
 
 
 

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  ・僕達は「タツロー」を聴き込んだ

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