2026年4月 8日 (水曜日)

悪くは無い” CTIのハバード盤”

CTIレーベルからリリースされた、フレディ・ハバードのの5枚目のスタジオ録音盤である。パーソネルを見ると、純ジャズ畑はら、テナー・サックスのジュニア・クック、エレピでジョージ・ケイブルス、エレベでロン・カーターが参加。他のメンバーは、馴染みのない名前ばかりなので、恐らく、当時の腕利きスタジオ・ミュージシャンを調達したのではないだろうか。

Freddie Hubbard『Keep Your Soul Together』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Junior Cook (ts), George Cables (el-p), Aurell Ray (g), Kent Brinkley (b), Ron Carter (el-b), Ralph Penland (ds), Juno Lewis (perc)。ジャケットがあまりに俗っぽくて敬遠したくなるが、この盤につまっているのは、意外と硬派なクロスオーバー・ジャズ。

この盤では、冒頭の「Brigitte」と2曲目「Keep Your Soul Together」で、抑制されたハバードのトランペットが聴ける。テクニック最高のハバード、そんなハバードが抑制されたトランペットを吹くとき、その時のハバードは「無敵」である。彼の持つ個性のひとつ「歌心」が、抑制されたトランペットの前面に押し出てくる。そして、彼の高いテクニックが、この「歌心」の為に発揮される。無敵である。
 

Freddie-hubbardkeep-your-soul-together  

 
しかし、3曲目の「Spirits of Trane」で、コルトレーンばりにバリバリ吹きまくるクックと、シーツ・オブ・サウンドよろしくエレピを弾きまくるケイブルスを目の当たりにしたハバードは、思わず「目立ちたがり」な面がグイグイ出てきて、高テクニックを最大限に発揮して、クックとケイブルスを撃沈するトランペットをペラペラと吹きまくり出す。こうなると、ハバードのトランペットは「耳に付く」。

ラストの「Destiny's Children」は、初期のエレ・マイルスをポップにファンキーに判り易くした様な演奏で、クロスオーバー志向のファンキーなイージーリスニング・ジャズといった面持ち。R&B志向のリズム&ビートは採用していないので、この演奏はあくまで「ファンキー・ジャズ」の域は出ていない。ハバードは、なぜか吹きまくっていて、ちょっとウザく、吹きすぎなのが惜しい。

内容的には、旧来からの純ジャズのファンにも、新しいクロスオーバー・ジャズのファンにも、両方に受ける様なアレンジとプロデュースがみえみえで、クックとケイブルスの好演、エレベのロンの頑張りがちょっと霞んでいるところが惜しいアルバムである。とにかく、良くも悪くも、ハバードのトランペットが「目立つ」アルバム。しかし、悪くはない。
 
 

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2026年3月 4日 (水曜日)

CTIフュージョンのプロトタイプ

1971年の録音でありながら、クロスオーバーを飛び越えて、フュージョン志向のCTIサウンド。イージーリスニング志向のオーケストラ入りの「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズである。メインのバンドは、錚々たるメンバーが大集合。名前だけ見たら、メインストリームな純ジャズをやるのか、なんて思っちゃう(笑)。

Freddie Hubbard『First Light』(写真左)。1971年9月14–16日の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), Richard Wyands (p), George Benson (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Airto Moreira (perc), Phil Kraus (vib), Hubert Laws (fl), Don Sebesky (arr)。以上がメインのバンド。ここに、オーケストラがバックに入る。

フレディ・ハバードのトランペットがフロント一管。緩やかなフレーズで全編を流している。無難に吹き上げてはいるが、テクニック的にイマイチのところも少しあって、聴き心地は良いが、ここにハバードを置いた意味があまり判らないのは残念。ハバードは、バイタルにバリバリ吹きまくる姿が良く似合う。
 

Freddie-hubbardfirst-light  

 
ピアノにワイアンド、ギターにベンソン、ベースにロン、ドラムのディジョネット、パーカッションにアイアートと錚々たるバックを配しているのだが、それが感じられないのが惜しい。それぞれの一流ジャズマンの個性が全く感じられないアレンジ&プロデュースはちょっと勿体ない気がする。

アレンジはドン・セベスキー。後のフュージョン・ジャズにおけるオーケストラ・アレンジを先取りしているのはさすがだが、今の耳で聴くと、やはり「古い」。イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズなんで、やはり、もう少し、ジャジーに攻めて欲しかったのが正直なところ。

聴き流し&ながら聴きには良い感じに、ハバードの緩やかで伸びやかなフレーズが全編に渡って充満している。ソフト&メロウというか、スイートなイージーリスニング志向のCTIフュージョンのプロトタイプ的位置づけのサウンド。ちょっと辛口にはなったが、1970年代のイージーリスニング志向のフュージョン・ジャズとして、内容的には及第点。
 
 

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2025年7月25日 (金曜日)

”The Cookers” の夜・その2

「Volume 1」では、客演のリー・モーガンが元気溌剌。一応、この”The Cookers”、ハバード名義だが、この「Volume 1」に限って言えば、モーガン名義にしても良いくらい、モーガン絶好調。完全にハバードを凌駕していた。2曲目「Walkin'」は、なんとハバード不在。ボサ・ロック「Pensativa」では、ちょっと違和感が漂う。

Freddie Hubbard『The Night Of The Cookers Volume 2』(写真左)。1965年4月10日、NYブルックリンの「Club La Marchal」でのライヴ録音。ブルーノートの4208番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Pete La Roca (ds), Big Black (congas)。

一昨日、ご紹介した「The Cookers” の夜・その1」(左をクリック)の続編。「Volume 1」では、モーガン絶好調で、ハバードは「軒を貸して母屋乗っ取られる」恰好になった、ハバード名義のライヴ盤ながら、あまりにモーガンが目立ちすぎ。ハバードのレギュラーバンドのライヴに、モーガンが客演した恰好だったのに、である。

それでは、この「Volume 2」はどうか。収録曲は「Jodo」と「Breaking Point」の2曲のみ。収録時間は、どちらも20分を越える長尺ライヴ音源。しかも、どちらもハバードのオリジナル曲。パーソネルは「Volume 1」と同じ。演奏トレンドは「モード・ジャズ」。速いリズム&ビートで、モーダルに疾走するハバードが記録されている。
 

The-night-of-the-cookers-vol-2

 
ここでのハバードは「決まっている」。どうも、ハバードはモーダルな演奏が得意なのかな、と感じる。テクニックが途方も無く抜群なので、様々な演奏トレンドに適応する「器用さ」があるのだが、モード以外の演奏トレンドでは、モードほどに吹きまくることは無い。それは「The Cookers” の夜・その1」を聴けば、ボサ・ロックや、こってこてハードバップな演奏では、モーガンに比べると、やや精彩を欠くのは否めない。

マイルスはハバードのトランペットを評して「奴にあるのはテクニックだけだ」。確かに、モード・ジャズはテクニックが無いと対応出来ない演奏トレンドなのは判る。当然、モード・ジャズをやらせたら、ハバードは無敵だ。他のトランペッターの追従を許さない。フリー・ジャズも無敵。高度なテクニックを駆使して、フリーキーなフレーズを連発する。

逆に、他の演奏トレンドは、テクニックだけでかわすことは出来なくて、歌心とか、ファンクネスとか、ジャズにおける「サムシング」が必要になる。その辺りが、意外とハバードの弱点なのかもしれないなあ、とこのライヴ盤2枚を聴いて思った次第。

「Volume 2」でのハバードは無敵である。モーガンも凄く鯔背なトランペットを吹いているが、ハバードはテクニックの限りを尽くして、モーダルなフレーズを連発し、バンド全体のモーダルな雰囲気を牽引する。どちらが上、という訳では無いが、ハバードはモーダルな演奏に「からきし強い」ということが、この「Volume 2」を聴いて判るかと思う。ハバードの「ハバードらしさ」を聴くには、この「Volume 2」でしょう。
 
 

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2025年7月23日 (水曜日)

”The Cookers” の夜・その1

フレディ・ハバードとリー・モーガン、二大トランペッターの共演という触れ込みだが、実質的には当時のフレディ・ハバードが率いていたレギュラー・バンドに、リー・モーガンが客演したもの。当時のライヴ・セッションの様子をそのまま、ライヴ録音したという、ちょっと荒削りな感じのライヴ盤。

Freddie Hubbard『The Night Of The Cookers Volume 1』(写真左)。1965年4月10日、NYブルックリンの「Club La Marchal」でのライヴ録音。ブルーノートの4207番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Freddie Hubbard (tp #1), James Spaulding (as, fl), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Pete La Roca (ds), Big Black (congas)。

ラテンフィーリングなボサ・ロック「Pensativa」、エキゾチックな趣が溶け込んだ「Walkin'」の、どちらも収録時間20分程度という、長尺の演奏が2曲のみ収録されている。2曲目のマイルスの名演で知られる「Walkin'」では、このライヴ盤の名義はハバードながら、トランペットについてはリー・モーガンだけ、という、ブルーノートにしては、ちょっと乱暴な編集になっている。
 

Freddie-hubbardthe-night-of-the-cookers-  

 
この「Volume 1」では、客演のリー・モーガンが元気溌剌、鯔背炸裂。一応、このライヴ盤、ハバード名義だが、この「Volume 1」に限って言えば、モーガン名義にしても良いくらい、モーガン絶好調。完全にハバードを凌駕している。2曲目「Walkin'」はハバード不在やし・・・。モーガンはそれぞれの曲で、それぞれの曲想に合ったトランペットをバリバリ吹き分ける。ハバードは我が道を往く、で、ボサ・ロック「Pensativa」では、ちょっと違和感が漂う。

面白いのは、ジェームズ・スポルディングのアルト・サックスで、その過激な吹きっぷりは、モーダルなフレーズではあるが、フリーに片足を突っ込んだ様な、ややアブストラクトで、かなり過激な展開。しかし、ドラムのピート・ラロッカが、猛烈に叩きまくり応戦しながら、絶対にジャジーなビートをしっかりキープして、スポルディングが、フリーやアブストラクトに傾くことを絶対に許さないところが、これまた面白い。

何かをしっかり表現しよう、しっかり表現するにはライヴ録音が良い、という、何かをしっかり記録しようという、高邁な録音方針があった感じでは無い。それでも、このライヴ記録されているセッションは、演奏トレンドは基本は「モード」、そのモードをそれまでのハードバップな演奏と「ハイブリッド」にかませた様な演奏内容は、録音年1965年ならではのユニークな内容。当時、日常に行われていたライヴの雰囲気を追体験するには恰好の一番です。
 
 

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2024年10月19日 (土曜日)

僕なりの超名盤研究・34

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。

ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Maiden Voyage』を聴かせてもらって、フュージョン・ジャズのアルバムも良かったが、特に、純ジャズの2枚については、いたく感動したのを覚えている。

そして、友人の家からの帰り道、久保田高司「モダン・ジャズ・レコード・コレクション」を買い求めて、ジャズ盤コレクションの道に足を踏み入れた。ハービー・ハンコックについては、FMレコパルの記事でその名前は知っていたので、まずはハンコックのアルバムの収集を始めた。

そこで、まず最初に手にしたのが、Herbie Hancockの『V.S.O.P.』。アコ・ハンコックとエレ・ハンコックの2つの側面をLP1枚ずつにまとめた名盤なのだが、僕はこの「アコースティックな純ジャズ」の演奏が実に気に入った。

このアコ・ハンコックのユニットは「V.S.O.P.」=「Very Special Onetime Performance」と命名された。ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演の折、ハービー・ハンコックがマイルスの黄金クインテットを再現することで、マイルスのカムバックを促す予定が、直前で肝心のマイルスがドタキャン。仕方なく、フレディ・ハバードを迎えて結成したこのV.S.O.P.クインテット。本来一1回きりの結成のはずが、予想外の好評に継続して活動することになる。

V.S.O.P.『Tempest in the Colosseum』(写真)。邦題は『熱狂のコロシアム』。1977年7月23日、東京の田園コロシアムでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard (tp), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。伝説の「V.S.O.P.」ユニットである。
 
Vsoptempest-in-the-colosseum  
 
V.S.O.P.名義のアルバムは、他に2枚、V.S.O.P.『The Quintet』(1977年7月録音)、V.S.O.P.『Live Under the Sky』(1979年7月26日、27日録音) があるが、この『Tempest in the Colosseum』の出来が一番良い。USAツアーの後の日本公演だけに、メンバーそれぞれの演奏もこなれて、十分なリハーサルを積んだ状態になっているようで、この日本公演のライヴ録音の内容は秀逸である。

ライヴアルバムとしての編集も良好で、この『Tempest in the Colosseum』が一番ライヴらしい、臨場感溢れる録音〜編集をしている。演奏自体も変に編集することなく、トニー・ウィリアムスの多彩なポリリズムが凄まじい長尺のドラムソロや、ロン・カーターのブヨンブヨンとしているが、高度なアプローチが素晴らしい長尺のベースソロも、しっかり余すことなく収録されているみたいで、ライヴそのものを追体験できる感じの内容が秀逸。

演奏自体も内容は非常に優れていて、この「V.S.O.P.」の演奏が、ノスタルジックな「昔の名前で出ています」風に、1960年代中盤〜後半の演奏をなぞった「懐メロ」な演奏になっていないところが良い。この演奏メンバー5人の強い矜持を感じる。当時として、モードの新しい響きがそこかしこに見え隠れし、この5人のメンバーは、マイルス後も鍛錬怠りなく、確実にモード・ジャズを深化させていたことを物語る。

収録されたどの曲も内容のある良い演奏だが、特にラストのハバード作「Red Clay」が格好良い。ジャズ・ロック風のテーマに対して、インプロビゼーション部になると、メンバー全員が「モード奏法」で襲いかかる。凄い迫力、凄いテンション、そして、印象あるフレーズの連発。

このライヴ盤は、1970年代後半の純ジャズが、どれだけ高度なレベルで維持されていたか、ということが如実に理解できる内容になっている。この「V.S.O.P.」ユニットが切っ掛けとなって、純ジャズが「復古」し始める。

この「V.S.O.P.」ユニットは、純ジャズ復古のムーブメントの「最初の第一歩」となった伝説にユニットである。このユニットの演奏には、現代につながる「新しい」モード・ジャズの要素が散りばめられている。名盤である。
 
 

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   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

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2023年8月27日 (日曜日)

ハバードのブルーノート最終作 『Blue Spirits』

ハイテクニックな伝説のトランペッターのフレディ・ハバード。22歳の若さで初リーダー作『Open Sesame』をリリースして以来、ブルーノート・レーベルには、鍛えられ、教えられ、一流のトランペッターに成長させてもらったのでは、と思っている。特に、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンには本当に世話になっただろう。

ハバードはテクニックが抜群に優れているがゆえ、どんなジャズでも、どんなスタイルでも吹き切ってしまう。いわゆる「器用貧乏」なところがあって、何でも出来るよ〜、というアプローチが見え隠れするところを、ライオンがグッと手綱を引いて、時にファンキー・ジャズ、時に、モード・ジャズの名盤をハバードに残させた。

また、ハバードには「目立ちたがり屋」なところがあって、先輩ジャズマンとのセッションでは前へ前へ出て、自分の凄さをアピールしようと頑張りすぎるところがある。逆に、仲の良い同輩や後輩ジャズマンとのセッションでは、一歩引いて、同輩・後輩を前に出させて、ハイテクニックなトラペットでしっかりサポートする「男気」ある振る舞いをするところもある。

ライオンは、こういったハバードの長所・短所をしっかり把握して、時にはセッションのメンバーの人選に工夫を凝らしたり、ハバードをしっかりコントロール出来る、リーダー肌の先輩ジャズマンを充てたり、ハバードのテクニックが映える選曲をしたり、とにかく、ハバードが持っている才能を良い方向に発揮出来るよう、様々なプロデュースをしていたように思う。

Freddie Hubbard『Blue Spirits』(写真左)。ブルーノートの4196番。フレディ・ハバードのブルーノートでの最終作である。ブルーノートとしては珍しく、3つのセッションから成る。
 

Freddie-hubbardblue-spirits

 
1965年2月19日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Clifford Jarvis (ds), Big Black (congas), Kiane Zawadi (euphonium)。

1965年2月26日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), James Spaulding (as, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Pete LaRoca (ds), Kiane Zawadi (euphonium)。

1966年3月5日のセッションは、Freddie Hubbard (tp), Joe Henderson (ts), Hosea Taylor (as, bassoon), Herbie Hancock (p, harpsichord), Reggie Workman (b), Elvin Jones (ds)。

パーソネルに一貫性が無いが、やっているジャズは「ジャズ・ロック志向」。ベッタベタなウケ狙いのジャズ・ロックでは無く、そこはブルーノート、「Corny(陳腐な)」なジャズロックは回避して、ファンキー志向のジャズロック、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロックを「格調高く」やっているのはさすが。

ただ、肝腎のハバードが、どの志向の、どのテイストのジャズロックで行くか、迷っている風でもあり、メンバーを取っ替え引っ替え、演奏の志向、スタイルも取っ替え引っ替え、大凡3種類やっている。ただ、一貫しているのは「メインストリームな純ジャズ志向のジャズロック」はしっかり根っこにあるので、アルバム全体の統一感はしっかり維持されている。さすが、ブルーノートである。

内容的にもチャレンジブルで、大衆受けをする俗っぽい8ビートのジャズロックは横に置いておいて、ファンクネスは全ての演奏の統一の味付けに使いつつ、モダンで硬派な8ビートの下、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロック、ハードバップなジャズロックを志向している。

ジャズロックに手を染め始めた頃のハバードが記録されている、聴いていて意外と面白いハバード盤。ハバードはこの盤を最後にブルーノートからアトランティックに移籍する。メインストリーム志向のブルーノートのハバードは過去のものとなり、途方も無くハイテクニックな持ち主がゆえ、イケイケではっちゃけた、何でもござれのハイテクニックなトランペッターとして弾けていく。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年7月28日 (金曜日)

過渡期のフレディ・ハバードです

フレディ・ハバードは、そのテクニックは卓越したものがあるのだが、如何せん、吹きすぎる盤が多い。メンバーによるのだが、自分から見て後輩のメンバーばかりの時は、アニキ風を吹かせるのか、後輩に花を持たせて、自分は抑制の効いた、余裕あるブロウを展開する。これは良い。優れたテクニックの持ち主でありながら、抑制の効いた、余裕あるブロウを披露するハバードは凄みすらある。

逆に、メンバーが同年代から先輩になる時は、とにかく目立ちたいのか、吹きに吹きまくる。「俺は凄いんだぞ」と言わんばかりに、ハバードの持つ卓越したテクニックを最大限に発揮して、五月蠅いくらいに吹きまくる。他のメンバーとのバランスや対比など、全くお構い無し。これは困る。優れたテクニックが、悪い印象に作用して、ただ五月蠅いトラペットになったりするのは困る。

Freddie Hubbard『High Blues Pressure』(写真左)。1967年11月13日の録音。アトランティック・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), James Spaulding (as, fl), Bennie Maupin (ts, fl), Herbie Lewis (b), Roman "Dog" Broadus (conga)、ここまでは全曲参加なんだが、Weldon Irvine (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2-6), Freddie Waits (ds, tracks 1-3), Louis Hayes (ds, tracks 4-6), Howard Johnson (bs, tuba, tracks 2-6), Kiane Zawadi (tb, euphonium, tracks 2-6)。

前作『Backlash』で転身したジャズロック路線を踏襲したアルバムになる。しかし、面白いのは曲が進むにつれて、ジャズロック色は薄れていって、後半は「新伝承派」のモード・ジャズになっている。ハバードのトランペットにはジャズロックが合うんだがなあ。この盤の時点では、まだハバードには迷いがあったように感じる。意外とハバードは他のジャズマンからの評価を気にするタイプだったのかもしれない。
 

Freddie-hubbardhigh-blues-pressure

 
前半のジャズロック志向の演奏は実に良い。ハバードのトランペットには8ビートが良い。卓越した速いフレーズう吹きまくるに、速い8ビートがちょうど良い。そして、ジャズロックの十八番である「テーマのユニゾン&ハーモニー」では、抑制が効いて余裕あるハバードの吹きっぷりが実に良い響き。やっぱり、ハバードのトランペットには「ジャズロック」が良く似合う。

後半のモード・ジャズも良い演奏なんだが、ジャズロックのハバードに比べて、ハバードの悪い癖、驚異的なテクニックで吹きすぎるハバードが目立ちに目立つので、折角のハバードの優秀テクニックのトランペットが、ちょっと五月蠅く響く。しかも録音年は1967年。モード・ジャズは最初の成熟期を迎えていて、ハバードのモード・ジャズには「新しい発見」は無いのが惜しい。

テクニックが優秀なので、優れたジャズロックも出来るし、優れたモード・ジャズも出来る。俺は何でも素晴らしい演奏が出来るんだ、という自信がちょっと裏目に出た盤。アルバム全体の印象がちょっと散漫になっている分、この盤は損をしている。ジャズロック志向に専念するかどうか、少し迷っている「過渡期」的な内容ではある。

それでも、ジャズロックの部分は、ハバードの特質が100%活かされていて良い出来。前作『Backlash』と併せて、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」ということを証明したハバードのリーダー作である。しかし、アトランティック・レーベルのプロデューサーって何をしてたのかなあ。ハバードに「おんぶに抱っこ」な印象で、全くもって勿体ない盤である。
 
 

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2023年7月 4日 (火曜日)

全てのスタイルを吹くハバード

フレディ・ハバードのリーダー作の聴き直しを再開した。ハバードのトランペットはとにかく「上手い」。途方も無く上手いのだが、その上手さを前面に押し出す「癖」がある。とにかく、どんなセッションでも途方も無いテクニックを駆使して、前へ前へ出る。テクニックについても、とにかく速いフレーズを吹きまくる。時には「五月蠅く」感じるほど。

以前、そんなハバードのリーダー作を聴き直していて、とにかく耳が疲れた。上手いのだが、リーダー作それぞれを聴いていて、どうにも個性とコンセプトが定着しない。様々なスタイル、トレンドの吹奏を披露するのだが、確かに上手い。凄く上手い。歌心もあるんだが、情緒に欠けるというのか、侘び寂びに欠けるというのか、演奏の行間が無いというのか、凄いテクニックだけが耳に残るだけの吹奏に耳が疲れた。

しかし、ほぼ全てのリーダー作を聴かないと、彼のトランペットの個性を断定することは出来ない、というか、リーダー諸作を中途半端に聴き終えるのは失礼というもんだ。ということで、ハバードのリーダー作の聴き直しを再開した。

Freddie Hubbard『Breaking Point!』(写真左)。1964年5月7日の録音。ブルーノートの4172番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Ronnie Mathews (p), Eddie Khan (b), Joe Chambers (ds)。

ハバードのトランペット、スポルディングのアルト・サックスが2管フロントのクインテット編成。ハバードと同じ年頃の、かなりの若手の、どちらかと言えば、マイナーな存在のジャズマンで固められている。恐らく、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの深慮遠謀だろう。

こういうメンバー構成でのセッションの場合、ハバードは前へ前へ出ようとはせず、周りの音に気を配りつつ、しっかりとグループサウンズ優先の、余裕ある、実に素晴らしい吹奏を聴かせてくれる傾向が強い。
 

Freddie-hubbardbreaking-point

 
この盤でも、1人で前へ前へ出ようとはせず、グループサウンズを維持する中で、途方も無いテクニック溢れる吹奏を聴かせている。ハバードの吹奏の「質」という面では、この盤は申し分無い、素晴らしい演奏家としてのパフォーマンスを聴かせてくれている。

演奏内容は、というと、一言で言うと「1964年時点でのアーティステック志向のジャズのショーケース」の様な内容。オーネット・コールマンに影響を受けた様なフリー・ジャズあり、コルトレーンの様なフリー・ジャズ&モード・ジャズあり、ジャズ・メッセンジャーズの様なモード・ジャズあり。

アルバム全体としては「前衛的」な雰囲気が濃厚なのだが、どこか従来のハードバップの雰囲気を残して、全面的に「前衛的」に展開するのを自制しているかの様な、ちょっと中途半端な内容。フリーに走り切ること無く、モードに振り切ること無く、そこはかとなく、ハードバップの雰囲気を残して、全ての聴き手に訴求しようとする。何とも、隔靴掻痒の感がする。

しかし、そんなバラエティーに富んだ内容で、テクニック的にも全てのスタイル、トレンドを水準以上に吹き切るのは難しいと思うんだが、ハバードはいとも容易く、全てのスタイル、トレンドに精通しているが如く、水準以上に吹き切っている。さすが、ではある。

この盤のハバードを聴いて感じるのは、ジャズ・トランペットの「プレイヤー」としては超一流。モダン・ジャズの「クリエイター」としては「発展途上」ということ。演奏家としては全く申し分無い、歴史に名を残すほどのハイ・テクニックの持ち主なのだが、ジャズ盤を制作する上でのリーダーとしての、クリエイターとしての素養についてはやや欠ける、と感じる。

ショーケース的な内容で、自らの持つ途方も無く素晴らしいテクニックを惜しげも無く披露するより、どれかのスタイルに絞って、ハバードなりに、そのスタイルを追求し極める位のチャレンジをしても良かったのでは無いか。ハバードだったら、どのスタイルに絞ろうが、かなり優れた成果を残せたと思うのだ。この「1964年時点でのアーティステック志向のジャズのショーケース」の様な盤を聴いて、そんな思いを改めて持った次第。

この盤は、ハバードのジャズ・トランペットの「プレイヤー」として素晴らしさを愛でる盤だろう。
 
 
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2023年4月13日 (木曜日)

フレディ・ハバードのお蔵入り盤

ブルーノート・レーベルの有名なアルバムのカタログに、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台がある。ブルーノートは几帳面なレーベルで、それぞれの「番台」のカタログで空き番や飛び番が無い。

それぞれの「番台」で、ちゃんと100枚、アルバムがアサインさている。しかし、理由が明確では無い、アルバムの内容の出来は良いのに、何故か「お蔵入り」になったアルバムがある。これが実に不思議な存在なのだ。

Freddie Hubbard『Here to Stay』(写真左)。1962年12月27日の録音。ブルーノートの4135番だが、録音当時は未リリース。1976年になって、ようやくリリースされている(写真右)。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーのハバードのトランペットと、ショーターのテナーがフロント2管のクインテット編成。

この盤は先にご紹介した、理由が明確では無い、アルバムの内容の出来は良いのに、何故か「お蔵入り」になったアルバムの1枚である。カタログ番号もアサインされ、アルバム・ジャケットも決定され、ほぼ全てを仕上げながら、当時リリースされなかった盤。

パーソネルを見渡せば、当時所属していた、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの親分のドラムを、マイルスの1950年代の黄金のクインテットのドラマー、フィリー・ジョーに代えたクインテット編成。ハバード以下のメンバーは、当時の新主流派の主要メンバー。それではこの盤の演奏の志向は「新主流派=モード・ジャズ」かと思いきや、従来の手慣れたハードバップの演奏が展開されるから、ちょっと肩すかしを食らう。
 

Freddie-hubbardhere-to-stay

 
フィリージョーに遠慮した訳でもないのだろうが、このハードバップの音はちょっと違和感が伴う。1950年代のハードバップの名演の数々の様に「熱く」ない。というか、悠然としていてクール。まるで、モード・ジャズを演奏する雰囲気とマナーで、ハードバップを振り返って演奏している感じがするのだ。

収録された楽曲も取り立てて共通項は無く、ジャム・セッションの時の様な「その時に思いついた様な」選曲。しかしながら、スタンダード曲の選曲は良い感じ。が、これらのスタンダード曲はモードで演奏して欲しかったなあ、と感じる。ハードバップ風に演奏しても良い感じなんだが、このメンバーではモードでの演奏を聴きたかった思いがする。

しかし、この「モード・ジャズを演奏する雰囲気とマナーで、ハードバップを振り返って演奏している感じ」でも、超有名スタンダード曲の「Body and Soul」は名演に値する。ハバードのクールな吹きっぷり、ショーターの新鮮なアドリブライン、ウォルトンのクールで小粋に揺らぐピアノ。1960年代の「ジャズの多様化」の時代に、新しい響きを宿したハードバップな演奏と解釈。

1962年当時、ジャズの多様化の時代、そして、この盤のメンバーの大半は新主流派でモーダルなジャズが得意。そんな時代とメンバーでハードバップをやったから、判り難いというか、理解し難いというか、当時のジャズの演奏トレンドに乗った個性が際立たないというか、恐らく、聴き手に強く訴求しないのでは、とブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは判断したのかもしれない。

それでも、メンバー個々のパフォーマンスは水準をはるか超えている。これだったら、モード・ジャズをやれば良かったのになあ、と思う。アルフレッド・ライオンもそう思ったのでは無いか。やっぱり、皆、フィリージョーに遠慮したのかなあ(笑)。
 
 

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