2018年5月19日 (土曜日)

米国ルーツ・ロックのデッド

ジャズの合間の耳休めには「米国ルーツ・ロック」が良い。1960年代終盤から1970年代、様々な米国ルーツ・ロックの好盤がリリースされた。米国ルーツ・ロックは、その名の通り、米国ルーツ・ミュージックの要素を取り込んだロックのこと。もちろん、ジャズも「米国ルーツ・ミュージック」のひとつ。

そういう面から、米国ルーツ・ミュージックは、ジャズの合間の耳休めにピッタリなのだ。このアルバムは、今を去ること約40年前、大学時代に聴いて「これは」と感心した、米国ルーツ・ロックなアルバムである。Grateful Dead『American Beauty』(写真左)。1970年のリリースになる。

タイトルが言い得て妙で、米国ルーツ・ミュージックの要素をふんだんに取り入れた「米国ルーツ・ロック」の好盤である。もともと「米国ルーツ・ロック」は大好きな私である。この盤に出会った時は、これはもう心はウキウキ、これは楽しい「米国ルーツ・ロック」の好盤。フォーク、カントリー、ブルース、そしてジャズ。米国ルーツ・ミュージックのおおよそがこの盤に詰め込まれている。
 

American_beauty

 
加えて、とってもリラックスしたロックである。後の「レイドバック」を先取りした様な、良い具合にリラックスしたロックである。決してダラダラはしていない。適度なテンションを張りつつも、どこか余裕のある演奏がとても素敵である。米国ルーツ・ミュージックの要素を大々的に取り入れたロックなので、これまでのデッドの音の個性であった「サイケ色」はほぼ前面的に払拭されている。

デッドのドラマー、ミッキー・ハート曰く「宇宙旅行から地上に帰って来て、土を耕して自分たちの足で踏ん張ったんだ」。言い得て妙ですね。この盤の底に漂っている「アーシー」な雰囲気を的確に言い当てています。そう、この盤のリズム&ビートはそこはかとなくアーシー。これが実に良い。聴いている耳に、このアーシーさが心地良く響く。

我が国では全くと言って良いほど、人気の無いグレイトフル・デッドですが、この『American Beauty』をメインとする「米国ルーツ・ロック」志向のアルバムは、聴きどころ満載、聴き応え満点の好盤揃いです。そうそう、「米国ルーツ・ロック」の好盤ですが、この盤ではアコースティック楽器の音がとても良いところが、隠れた「聴きどころ」です。お楽しみあれ。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月19日 (日曜日)

ユニークで多彩な個性的ロック

高校時代から大学時代、リアルタイムで体験していた。その音世界が気になって、その都度その都度、チャレンジするんだが、なかなか体に入らない。聴く度に「敗退」していたロック・バンドがある。グレイトフル・デッド(Grateful Dead)。1965年、米国西海岸で結成されたロック・バンド。スタイルはユニークで多彩。他のロック・バンドとは一線を画する存在。

1970年代後半、グレイトフル・デッドを聴く度に「ん〜、良く判らん」。それでも、その音をFMで耳にする度になぜか聴きたくなる。それで再びチャレンジするのだが「ん〜、良く判らん」の繰り返し。1980年代に入って、一旦はグレイトフル・デッドを諦めることになる。

さて、2001年だったと記憶する。グレイトフル・デッドのボックス盤がリリースされる。その名は『Golden Road』。rグレイトフル・デッドワーナー時代の全オリジナル・アルバムにDeadの真骨頂であるライヴ音源、未発表音源などをCD12枚に収めたボックス・セットである。このボックス盤を入手し、グレイトフル・デッドに再チャレンジ。今では、グレイトフル・デッドは、僕のお気に入りバンドのひとつになった。

僕はデッドを、大学時代最終年の1981年のアルバムから遡って聴くことが「マナー」である。1981年の作品、Grateful Dead『Reckoning』(写真)から遡って聴きなおすと、デッドの「ユニークで多彩」という個性が良く判るのだ(恐らく僕だけだけど)。1981年のロック&ポップスは「AOR」の時代。そんな中で、この盤はなかなかユニークな内容に仕上がっている。
 

Reckoning

 
バンド結成15周年を記念したライヴが収録されたライブ盤である。1980年の秋に行われたライヴを収録したもの。アコースティック・セットとエレクトリック・セットから構成され、サンフランシスコとニューヨークで計21回に渡って行われた。そのアコースティック・セットが収録されたのがこの『Reckoning』。

ライブ音源は「その時のデッドの個性」をダイレクトに体験できる。このアコースティック・セットの基本は米国ルーツ・ミュージック。カントリーやジャズ、ブルースなどの要素を取り込み、散りばめられている。主にブルーグラスやカントリー、ブルースなど米国ルーツ・ミュージックのカヴァーが演奏されていて、デッドの個性の基本が良く判る。

デッドの演奏の特徴は「暖かみがあり、ゆるくて心地良い」。演奏は精緻にカッチリ整った演奏では無い。逆に適度に緩くて心地良い。ジャズのアドリブ展開の様に、心地良い自由と緩く大らかな規律の中で、ほんわかソウルフルな歌唱と演奏が繰り広げられる。

このデッドの演奏の特徴である「暖かみがあり、ゆるくて心地良い」が、若き日には理解出来なかったのだ。聴く心に余裕と寛容さが無かったのだろう。2001年、ボックス盤を入手した時が43歳。人生も半ばを過ぎ、やっと聴く心に余裕と寛容さが備わって、やっとこさ、グレイトフル・デッドの個性が理解出来た次第。テンション高く尖っているばかりが人生では無いとデッドは教えてくれた。

 
 

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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