2025年5月17日 (土曜日)

バードのポップなソウル・ジャズ

ドナルド・バードは「機を見て敏なる」変化するトランペッター。ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース。1960年前後、ハードバップが成熟して、ジャズの多様化の時代に移行する際、いち早く、ファンキー・ジャズに手を染める。

モード・ジャズにもチャレンジして、硬派な純ジャズ志向トランペッターとして名をあげたと思ったら、ソウル・ジャズにどっぷりハマっていく。そんな1964年のドナルド・バード。コッテこての「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」のリーダー作を連発していく。

Donald Byrd『Up with Donald Byrd』(写真左)。1964年の10月6日、11月2日、12月16日の録音。 大手のVerveレーベルからのリリースながら、録音場所は「Van Gelder Studios」。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Jimmy Heath (ts, tracks 2–5), Stanley Turrentine (ts, tracks 7 & 8), Herbie Hancock (p), Kenny Burrell (g), Bob Cranshaw (b, tracks 1–6), Ron Carter (b, tracks 7–9), Grady Tate (ds), Candido Camero (perc, tracks 7 & 8), The Donald Byrd Singers なる女性ボーカル隊が付く。

録音場所といい、パーソネルを見渡すと、セッションの参加メンバーは、ごっそりと当時のブルーノート・レーベルから借りてきた様な、一流人気ジャズマンが名を連ねている。前半の1–6曲目のアレンジは、当時の人気アレンジャー「クラウス・オガーマン」。さすが、大手のジャズ・レーベルのヴァーヴ。金に糸目はつけない、ゴージャスなアルバム制作である。
 

Donald-byrdup-with-donald-byrd

 
さすが大手のジャズ・レーベルのヴァーヴ、このアルバム、ドナルド・バードのコッテこての「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」を捉えているのだが、とにかく、ポップで俗っぽい。つまりは、ジャズのアーティスティックな面は横に置いて、確実に「一般ウケ」する「売れる」音作りをしている。プロデューサーは誰か、と見たら、のちのフュージョン・ジャズの仕掛け人の代表格「クリード・テイラー」だった。

とにかく、コッテこてファンキーな、聴きやすい「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」。ドナルド・バードのトランペットは、モードも交えて、意外と正統派なトランペットを吹いているんだが、ピアノのハンコック、ギターのバレルなどは、徹底的にソウル・ジャズ志向濃厚なフレーズをこれでもかと連発している。キャンディドのパーカッションが、ファンキー度、ソウルフル度をさらに濃厚にする。

The Donald Byrd Singers なる女性ボーカル隊のコーラスが出てくると、一気に「俗っぽさ」が濃厚になる。この濃厚となる「俗っぽさ」をどう聴くかで、この盤の評価は変わるだろう。但し、その時代の響きを忠実に記録しているので、この音はこの音で意味のあるものではある。頭ごなしに否定するものでもないだろう。

ドナルド・バードの「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」。ブルーノート・レーベルでは、しっかり純ジャズの要素を押さえていて、意外とアーティスティックな雰囲気が漂うソウル・ジャズに仕上がっているのだが、この大手のヴァーヴ・レーベルでは、明らかに「売らんがため」の「一般ウケ」するアレンジが施されていて、ポップで俗っぽいソウル・ジャズになっているのが面白い。

ながら聴きに向いた、イージーリスニング・ジャズ志向の「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」だろう。真剣に対峙して聴き込む類の盤ではないが、何かし「ながら」の邪魔にならない、ポップで心地良いソウル・ジャズとして、さりげなく聴き流すには良好な盤ではある。
 
 

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2025年5月 6日 (火曜日)

もう一つのバレル&スミス盤

漆黒ブルージー&アーバンなバップ・ギタリスト、ケニー・バレル。バレルは人気のジャズ・ギタリストで、かなりの数のリーダー作を残している。その中で、バレルのリーダー作には「企画盤」が多い。人気ジャズマンとの共演あり、人気作曲者の楽曲に特化したトリビュートあり、特に大手のレーベルにおいて「企画盤」の制作が多い。

Kenny Burrell & Jimmy Smith『Blue Bash』(写真左)。1963年7月16, 25–26日の録音。Verveレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Jimmy Smith (org), Vince Gambella (g, tracks 1 & 7), Milt Hinton (b, tracks 2–4 & 6), George Duvivier (b, track 5), Bill English (ds, track 5), Mel Lewis (ds, tracks 2–4 & 6)。

漆黒ブルージー&アーバンなバップ・ギタリスト、ケニー・バレルと、ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスとの共演。ジミー・スミスは自己主張が強く、ダイナミックで豪快な弾き回しで、共演者をものともしない、唯我独尊なところがあるのだが、バレルとの相性は良かった様で、以前に『Home Cookin'』や『Midnight Special』(Blue Note, 1961年)、この2枚の名盤を残している。
 

Kenny-burrell-jimmy-smithblue-bash

 
そんなブルーノートでの良き共演の感覚のまま、大手のヴァーヴに移って、このバレルとスミスの二人は再び共演を果たした。大手ヴァーヴなので、アルバムの音の傾向は「売れるファンキー・ジャズ」。ジャズのマニアだけでなく、一般の音楽好きにも訴求する、小粋でお洒落で聴き応えのある「売れるファンキー・ジャズ」を目指しての音志向である。

大手レーベルの、そんな商業ジャズ志向のニーズに、バレルとスミスは堅実に応えている。バレルはスミスの、スミスはバレルの、お互いの音をしっかり聴きながら、お互いの音を引き立てる。そんな大人の職人芸的なパフォーマンスを繰り広げていて、良い感じの、ギターとオルガンがお互いを主役として引き立てあった、大人でブルージーでアーバンなファンキー・ジャズを展開している。

「売れるファンキー・ジャズ」を目指す上で、スミスのオルガンが、バレルのギターの個性である「漆黒ブルージー&アーバン」に合わせたところが、この盤の聴きどころ。伴奏上手のバレルのギター、伴奏上手のスミスのオルガンが聴けるところが、実に味わい深い。ブルーノートの共演の諸作と比肩する、なかなか小粋な内容の、バレルとスミスの共演盤である。
 
 

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2025年4月29日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・283

グラント・グリーン(Grant Green)。1979年1月31日、NYで、ジョージ・ベンソンのブリージン・ラウンジでの演奏会に出席していた際、車内で心臓発作を起こし倒れ、そのまま、帰らぬ人となった。43歳であった。

しかし、グリーンの逝去時の1979年から、ブルーノートの「お蔵入り」音源から、グリーンの未発表音源のリリースが始まる。なんと、1979年から2006年まで、全部で10枚もの未発表音源リーダー作が、発掘リリースされている。

Grant Green『Matador』(写真左)。1964年5月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。録音当時は「お蔵入り」未リリース。1979年、日本のキングレコードからブルーノートの未発表音源として、発掘リリースされた。

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが、ハードバップ&ファンキー&ソウルなジャズとして成熟した、絶妙なバップ・ギターが堪能できる逸品である。

まず、パーソネルを見て「唸る」。当時のコルトレーンの伝説のカルテットからピアノのマッコイ・タイナー、ドラムのエルヴィン・ジョーンズを借りてきている。そして、ベースには、柔軟な職人ベーシスト、ボブ・クランショウが座る。

このリズム・セクションの存在感が凄い。そして、このリズム・セクションをバックに、グリーンのギターがワン・フロントのカルテット編成。これ、どんな演奏になってるのか、聴く前から不安になる(笑)。
 

Grant-greenmatador

 
冒頭のタイトル曲、グリーンのオリジナル曲「Matador」から、そんな不安は杞憂に終わる。11分弱の長尺の演奏だが、これがまあ、凄まじい内容で、グリーンのギターの個性が、クッキリてんこ盛り。魅惑的な反復フレーズ、熱気溢れるミッドテンポなアドリブ展開。

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターに相対する様に、タイナーの流麗でダイナミックなピアノが後に続く。そして、バッキングに徹するエルヴィンのポリリズミックなドラミングは、演奏のファンキー度合いを増幅し、クランショウの堅実ベースが、演奏の「底」をガッチリと支えている。

この冒頭の「Matador」の演奏だけでも、うへっ、これは凄いなんだが、続く2曲目の「My Favorite Things」の演奏はこれまた凄い。コルトレーンの十八番の名曲だが、このグリーンの「My Favorite Things」を聴いていると、ハードバップ&ファンキー&ソウル・ジャズとして聴いた時、コルトレーンの演奏より、このグリーンの演奏の方が、曲想を良く掴んでいて優れている、と感じるくらいに凄い。

以上の2曲だけでも、この盤は名盤だと思うし、3曲目「Green Jeans」から「Bedouin」、CDのみのボートラ、ラストの「Wives and Lovers」まで、グリーンの成熟したギターの個性を、最優先に楽しむべき演奏が詰まっている。

当時のコルトレーンの伝説のカルテットからピアノのマッコイ・タイナー、ドラムのエルヴィン・ジョーンズを借りてきているからといって、当盤とコルトレーンの諸作と比較するのは「野暮」というものだろう。

ワン・フロント楽器の志向が全く異なるのだから、比較しても仕方がない。もしかしたら、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、そんな「野暮」な比較を嫌ったが故の「お蔵入り」だったのかもしれない。

ジャケはウォーホールのイラスト。これがまた良い。この盤、グラント・グリーンの「ハードバップ&ファンキー&ソウルなジャズとして成熟」を心ゆくまで単横できる名盤と言って良いだろう。
 
 

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2025年3月29日 (土曜日)

ブルーノートの専属ピアニスト

レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノート創立の1939年以降、ジャズの潮流が変わりつつある1968年までにリリースされたアルバムから、ブルーノートらしい「内容と音と響き」、そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第18位」。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、当然、以下の2つの編成に分かれる。

1963年10月31日の録音(#3, 6)が、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日(#1. 2. 4. 5)の録音が、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

ここでは、ブルーノートらしい「内容と音と響き」という切り口で、この『Song for My Father』を聴き直したのだが、このアルバムでは、ホレス・シルヴァーの「新しいファンキー・ジャズ」が存分に楽しめる。

ホレス・シルヴァーは、ブルーノート・レーベルの「ハウス・ピアニスト」。デビュー作『New Faces New Sounds (Introducing the Horace Silver Trio)』から、1980年リリースの『Silver 'n Strings Play the Music of the Spheres』まで、全リーダー作の37枚中26枚、約7割をブルーノートからリリースしている。
 

Songformyfather_1

 
シルヴァーの活動期のほとんどをブルーノートの「ハウス・ピアニスト」として君臨した訳で、ブルーノートのファンキー・ピアノは、シルヴァーのピアノが筆頭。1952年の録音から1978年の録音まで、シルヴァーのファンキー・ピアノの進化と変遷、バリエーションの全てが、ブルーノートのリーダー作を聴くことで把握することが出来る。

特に、1964年のセッションでは、シルヴァーのファンキー・ジャズの成熟を感じることが出来る。ポップでメジャーな雰囲気で開放感のあるファンキー・ジャズで、いわゆる「聴かせる」ファンキー・ジャズである。そして、その「聴かせる」ファンキー・ジャズの筆頭が、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」。

一度聴いたら忘れない、とてもキャッチャーでポップで躍動感溢れるテーマが格好良い。この曲は「売れた」。ちなみに、このタイトル曲「Song For My Father」は、シルヴァーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が、シルヴァーの父君そのものである。

ブルーノートは、ハウス・ミュージシャンに対して、彼らが望む、彼らがチャレンジするジャズを認めて、それを全面的に支援し、彼らの進化と変遷、バリエーションを実現する、ハウス・ミュージシャン・ファーストなレーベルだった。

そして、ハウス・ミュージシャンは、その恩義に報いる為、ブルーノートの収入の為にヒット曲を供給する。ホレス・シルヴァーをはじめとして、リー・モーガン然り、ジミー・スミス然り、アート・ブレイキー然り。つまりは、ブルーノートはジャズマン・ファーストなレーベル。だからこそ、1500番台から4000番台、4100番台、4200番台と、数々の名盤が好盤が生まれたのだ。
 
 

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2025年3月18日 (火曜日)

ラムゼイのトーキョー・ライヴ

アーゴ&カデット・レコードを再認識している。こってこてファンクネス漂う、ソウル・ジャズ、ジャズロックを聴きたくなって選盤に迷ったら、アーゴ&カデットの諸作を選盤すれば良い、とまで思う様になった。それほどまでに、アーゴ&カデットのアルバムの制作志向は「ファンキー・ソウル・ジャズロック」で統一されている。

Ramsey Lewis『Live In Tokyo』(写真左)。1968年9月、東京大手町サンケイホールでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ramsey Lewis (p), Cleveland Eaton (b), Maurice White (ds)。今は無き日本のジャズの聖地であったサンケイ・ホールで収録されたラムゼイ・トリオのライヴ盤。当時、日本限定発売だったそう。

こってこてのソウル・ジャズ&ジャズロックである。冒頭、ラムゼイ・ルイスの代表曲「The 'In' Crowd」から、もうノリノリ。ファンクネス濃厚、強烈なオフビート、思わず体が横揺れし、足でビートを取り始める。実に黒くてダンサフルなリズム&ビート。アドリブは、歌うが如くソウルフルなフレーズの嵐。
 

Ramsey-lewislive-in-tokyo

 
この東京でのライヴ録音のリズム隊、ドラムには、のちにアース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)を結成するモーリス・ホワイト。ベースには、長くラムゼイを支えたクリーブランド・イートン。このリズム隊のリズム&ビートのファンクネスが強烈。そこに、これまたソウルフルでファンクなラムゼイのピアノが乗ってくるのだ。もはや、ジャズロックなピアノ・トリオの饗宴である。

ファンキーに入りながら、徐々にテンポアップ、ベースとドラムもそれに追従して熱い熱い展開に上り詰めていく。ソウルフルでジャズ・ファンクなアドリブ・フレーズを叩き出しながら、もう演奏はホット&ノリノリ。お馴染みのヒット曲に加えて、ホレス・シルヴァー曲のカヴァー「Song For My Father」、来日を記念してでの新曲なのか「Soul Ginza」など、ファンキー&ソウルフルな好曲のオンパレード。

観客の拍手がライヴらしい熱気を作って、サンケイホールの雰囲気も良好ノリノリ。ヒットを連発してた時期のライヴ演奏なので、とても馬力のあるファンクネスだだ漏れのソウルフルなピアノ・トリオの演奏がこれでもか、というほどに展開されるのには、とことん圧倒される。
 
 

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2025年3月17日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 108

ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。1960年代の終わり〜1970年代の作品は、アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化。

Ahmad Jamal『Emerald City Nights: Live at The Penthouse 1963-1964』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Richard Evans (b), Chuck Lampkin (ds)。1963年-1964年のシアトル「ペントハウス・ジャズ・クラブ」で収録された未発表音源がCD2枚組でリリース。

1960年代前半のジャマルのピアノが堪能出来る。「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選したシンプルな弾き回しから、シンプルな弾き回しつつ、メリハリを強くつけた奏法に変化しつつあるジャマルをしっかりと捉えている。1950年代のラウンジ・ピアノっぽい雰囲気から、ダイナミックでファンキーなジャズ・ピアノに変化している。

そんなダイナミックでファンキーなシンプルな弾き回しの中で、巧妙に「間」を活かして「タメ」を作った、独特のフレーズが印象的。ゆったりしたフレーズも、速いフレーズも、巧妙な「間」と「タメ」が特徴のフレーズで、ジャマルはガンガン、バップなピアノを弾き回す。
 

Ahmad-jamal-emerald-city-nights 
加えて、選曲とアレンジが秀逸。ジャマルの巧妙な「間」と「タメ」が特徴のバップ・ピアノは、自由の高いモードに展開することが無いので、演奏が進むにつれ、マンネリに陥り易いのだが、そうはならない。これって、よく聴いてみると、まずはマンネリ防止の「考え抜かれた」な選曲。

そして、その曲を活かしつつ、ジャマルのピアノの弾き回しを映えさせるアレンジが秀逸。意外と気付かないのだが、意識して聴くと、その巧妙さに舌を巻く。このトリオのライヴ演奏、全10曲で、1時間30分に及ぶのだが、全く空きがこない。というか、聞き始めるとあっという間に時間が過ぎる。

また、これらの録音はバランスが良く、粒たちの良い、ライヴ感溢れる音。ジャマルのピアノがどのように機能するかが明瞭に判別でき、バックのリズム隊の効果的サポートとジャマルを盛り立てるリズム&ビートもクッキリ活き活きと耳に飛び込んでくる。テンポが速くても「耳障り」な雰囲気は感じられず、バラード演奏は染み入る様な「音の伸び」。

このライヴ音源は、1963年から1968年までジム・ウィルクがホストを務める KING-FMの番組に生放送された一連の音源の中から発見されたもの。他にも色々とありそうで、現在、情報収集中。もっと聴きたい、もっと感じたい、そんな気にさせる、秀逸なジャマル・トリオのライヴ音源です。
 
 

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2025年3月 9日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 107

「いつの時代も、我が国と米国で、大きく評価が異なるミュージシャンって結構存在する。特に、我が国でジャズが一般的になりつつあった、1960年代後半から1970年代にかけて、我が国では不当な評価に甘んじたジャズマンが結構いた(もちろん、その逆もあったのだが・・・)」と書いたが、今回、ご紹介するピアニストも、そんな「一流と目されるジャズ・ピアニストの中で、我が国と米国で、その評価が大きく異なるピアニスト」の一人である。

Les McCann『Les McCann Ltd. in San Francisco』(写真左)。1960年12月のライヴ録音。1961年、パシフィック・ジャズ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Ron Jefferson (ds)。屈指のソウルフル・ジャズ・ピアニスト、レス・マッキャンのサンフランシスコ・ジャズ ワークショップでのライヴ録音。

レス・マッキャン初期の作品。3枚目のリーダー作。初期の作品なので、マッキャンはアコピだけを弾いている。アコピだけのシンプルなトリオ演奏なので、マッキャンのピアノの個性の根本が良く判る。基本はソウル・ジャズ。ファンキー・ジャズよりも、コッテコテ黒くて、グルーヴ感濃厚。ゴスペル・フィーリングに根ざしたソウルフルでジャジーなフレーズが個性的。
 

Les-mccann-ltd-in-san-francisco

 
マッキャンはうなり声を上げながらノリノリの演奏。基本的な内容は、短いソウル・ジャズなピアノ・ナンバーがメインで、演奏を彩るグルーヴには教会(ゴスペル)の要素がタップリ注入されている。「Come On & Get That Church」「We'll See Yaw'll After While, Ya Heah」「I Am In Love」「Big Jim」「Oh Them Golden Gates」など、好曲、好演が目白押し。

ベーシストのハービー・ルイス、ドラマーのロン・ジェファーソンのリズム隊も、マッキャンのゴスペル・フィーリングに根ざしたソウルフルでジャジーなピアノを効果的にサポートし、ソウルフルなリズム&ビートで、マッキャンのソウル。ジャズ・ピアノを鼓舞する。このリズム隊も意外と聴きもの。

マッキャンとルイス+ジェファーソンのリズム隊が、ブルース、ゴスペル、ポップスを同等に効果的に取り込み、初期のハード・バップとソウル・ジャズのスタイルに、如何にシームレスに織り込んでいるか、がとても良く判る、ソウル・ジャズなピアノ・トリオの最高のパフォーマンスの一つがこのライヴ盤に記録されている。ソウルフルなピアノ・トリオの代表的名盤の一枚として、取り上げたいと思う。
 
 

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2025年2月24日 (月曜日)

アーシーでソウルなブライアント

レイ・ブライアント(Ray Bryant)のピアノは、ハードバップの時代から、ファンクネスを湛えたブルージーなピアノが個性だったが、ハードバップ時代を越えて、1960年代の「ハードバップ多様化の時代」に入ると、ファンキー色に加えて、ソウル色の濃い、いわゆる「ソウル・ジャズ」志向の弾き回しがメインになっていった。そのきっかけが、アーゴ/カデット・レーベルへの移籍だろう。

Ray Bryant『Lonesome Traveler』(写真左)。1966年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Snooky Young (tp), Clark Terry (tp, flh), Jimmy Rowser (b, tracks 2, 4, 5 & 8-9), Richard Davis (b, tracks 1, 3 & 6), Freddie Waits (ds)。アーゴ/カデット・レーベルからリリースしたブライアントのリーダー作、全7作中の2枚目。

このリーダー作も、前作『Gotta Travel On』同様、ブライアントのピアノの個性とアーゴ/カデット・レーベルの音志向とがバッチリ合った、「ファンキー&ソウルフル」な内容になっている。

とにかく、ファンキーでソウルフルでゴスペルチックなブライアントのピアノが映えに映える、そんなアレンジが心地良い。加えて、この盤の演奏は基本的に「アーシー」。このアーシーな雰囲気が、ソウルフルな音志向を増幅している。
 

Lonesome_traveler 

 
有名スタンダード曲の、2曲目「Round Midnight」、4曲目「Willow Weep for Me」なども、アレンジは完璧に、ファンキー・ジャズを超えて、アーシーで「ソウル・ジャズ」志向のアレンジでバリバリ弾きまくっている。こんなに強烈オフビートでノリノリの「Round Midnight」や「Willow Weep for Me」は聴いたことが無い。この有名スタンダード曲の演奏で、腰が左右に揺れるとは思わなかった(笑)。

冒頭の「Lonesome Traveler」、8曲目のブライアントの有名自作曲「Cubano Chant」も、切れ味良く、小気味よい、ソウルフルな弾き回しが印象的だし、ラストの「Brother This 'N' Sister That」などは、どっぷりソウルフルで、もはや、これは、アーシーな「ゴスペル」なジャズである。

前作『Gotta Travel On』同様、ほとんどの曲のフロントにトランペット2本が加わるが、これは、曲の持つ主旋律をはっきり浮き立たせる為だけの役割で、特筆すべきものは無い。無くても良いよな、なんて思う。これは、明らかにオーバー・プロデュース。

このブライアント盤は、アーシーでソウルフルな弾き回しが特徴的な好盤。収録された曲自体もアーシー で ファンキー な佳曲ばかりで、ファンキー&ソウルフルなジャズがお気に入りのジャズ者の方々にはたまらない内容です。アーシーでソウルなブライアントのピアノ。僕は大好きです。
 
 

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2025年2月23日 (日曜日)

ハンクの「ソウルフルなピアノ」

アーゴ&カデット・レーベルの諸作には、レーベル・サウンドによる「統一感」がある。ちょっと癖の強い、ソウルフルな雰囲気濃厚なもの、ファンクネス濃厚なもの、どっぷりブルージーな歌心満点なもの、いわゆる「強めのファンキー&ソウルフルな音志向に統一されている。その「統一感」は見事なものである。

Hank Jones『Here's Love』(写真左)。1963年10月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Kenny Burrell (g), Milt Hinton (b), Elvin Jones (ds)。ギターがフロントのカルテット編成。

いぶし銀なバップ・ピアニストのレジェンド、ハンク・ジョーンズのリーダー作。バックを固めるのは、漆黒ブルージー&アーバン・ギターのケニー・バレル。ベースは「ジャッジ」の愛称でも知られる、ジャズ・ベース界の重鎮ミルト・ヒントン。ドラムはハンクの弟、バップ・ドラムを叩かせても一流のエルヴィン・ジョーンズ。

いぶし銀なバップ・ピアニスト、ハンク・ジョーンズの、ダイナミックで流麗、そこはかとなくファンクネス漂う典雅なバップ・ピアノが、アーゴ&カデット・レーベルの音志向と交わると、どんなバップ・ピアノに変身するのか。このハンクのリーダー作は、そんな興味にしっかりと応えてくれている。

内容的には、1963年10月初演の、メレディス・ウイルソンのミュージカル「Here's Love」を基に製作された企画盤。このミュージカルの楽曲を基にした、ギターがフロントのカルテット演奏なんだが、ハードバップというよりは、そこはかとなくソウルフル。ミュージカルの楽曲の流麗さを活かして、ちょっとファンクネスを漂わせ、端正でソウルフルな展開が実にお洒落。
 

Hank-jonesheres-love

 
そんなソウルフルな展開を牽引するのが、リーダーのハンク・ジョーンズのピアノ。ハードバップでファンキーな、バリバリな弾き回しを、ちょっとファンクネスを漂わせ、端正でソウルフルで、ちょっと小粋な弾き回しに変えて、アルバム全体の雰囲気を「ファンキー&ソウルフル」に整える。このハンクの弾き回しの「変化」はさすがである。ハンクの持つテクニックの高さを再認識する。

但し、ハンクのピアノのファンキー&ソウルフルは、「どっぷり」なものではない。流麗で典雅な、シンプルでジャジーな弾き回しで、ハンク独特の、ハンク仕様のファンキー&ソウル・ジャズになっているところが、ハンクが超一流の証。ハンクのピアノの個性の弾き回しの中で、ファンキー&ソウルフルなピアノを追求する。これぞ「プロの技」である。

ケニー・バレルのギターは長いソロを取らないが、小粋でソウルフルなフレーズを弾きまくる。明らかに、ソウルフルなハンクのピアノに呼応している。ソウルフルなハンクのピアノとバレルのギター。そして、その「ソウルフル」は、流麗で典雅な、シンプルでジャジー。

アーゴ&カデット・レーベルの音志向に沿いながらも、自らの個性を全面的に活かす。そんなアーゴ&カデット・レーベルの音志向の中で、自分の個性をしっかりと押し出す、そんなプロフェショナルな「技」を聴くことができる。そんなハンクの好盤である。

しかし、このジャケット・デザインは無いよな〜。ジャズ者の皆さん、決してこのジャケに引かずに、このハンクのリーダー作をお楽しみ下さい(笑)。
 
 

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2025年2月20日 (木曜日)

カデットのブライアント・トリオ

アーゴ/カデット・レーベルの諸作を順に聴き進めていると、面白いことに気が付く。

ハードバップ時代にバリバリ第一線で活躍した、ごりごりハードバップなピアニストが、アーゴ/カデット・レーベルからリーダー作をリリースすると、皆、押し並べて、アーゴ/カデット・レーベルの音志向に適応して、「ファンキー&ソウルフル」なピアノとアレンジがベースのリーダー作に仕上げる。これって、アーゴ/カデット・レーベルの「プロデュース力」の賜物なんだろう。

Ray Bryant Trio『Gotta Travel On』(写真左)。1966年2月17–18日の録音。Argo/Cadetレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Walter Booker (b), Freddie Waits (ds), Snooky Young (tp, tracks 2, 5, 6 & 9), Clark Terry (tp, flh, tracks 2, 5, 6 & 9)。レイ・ブライアントのピアノ・トリオがメインで、4曲にトランペットがフロント管として入っている。

こってこてファンキー&ソウルフルなバップ・ピアニスト、レイ・ブライアントのアーゴ/カデット・レーベル移籍後の最初のリーダー作。レイ・ブライアンとは、もともとハードバップ時代から、ファンクネス濃厚なバップ・ピアノを身上としていたのだが、1960年代に入ってからは、ソウルフルな音志向が強くなる。そこに、1960年代半ば、「ファンキー&ソウルフル」な、アーゴ/カデット・レーベルへの移籍があって、このリーダー作をリリースしている。
 

Ray-bryant-triogotta-travel-on

 
冒頭のタイトル曲「Gotta Travel On」が良い。この曲、レイ・ブライアントのソロの大名盤『Alone at Montreux』の冒頭でも、ガツンと一発かましているのだが、当盤が初演。タッチは硬質で重量感があって、とにかく、こってこてファンキー&ソウルフル、そして、ゴスペルチック。僕の好みの音志向の一つの「ど真ん中」なので、何度、繰り返し聴いても、この曲は全く飽きない。

2曲目のブライアントの自作曲「Erewhon」以降、ブライアントのピアノが、重厚かつ強靭な弾き回しで次々と、ファンキー&ソウルフルでキャッチャーなフレーズを連発して、爽快感抜群。R&B的響き、ゴスペル的響きも見え隠れして、いかにも「アーゴ/カデット・レーベルの音世界」満載、といった感じがとても良い感じ。

曲によってフロントにトランペット2本が加わるが、これは、曲の持つ主旋律をはっきり浮き立たせる為だけの役割みたいで、特筆すべきものは無い。無くても良いよな、なんて思っている。これは、オーバー・プロデュースだろう。

レイ・ブライアントのピアノの個性にバッチリ合った、アーゴ/カデット・レーベルの音世界。録音も良く、ブライアントの重厚かつ強靭な弾き回しもしっかり捉えられていて良好。ピアノ・トリオの演奏で統一されていないのが残念だが、レイ・ブライアントの名盤の一枚です。
 
 

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