2026年4月 4日 (土曜日)

ファンキー&硬派なヤングである

ラリー・ヤングのオルガン。オルガンによるモーダルなフレーズ、オルガンによる「シーツ・オブ・サウンド」、オルガンによるエモーショナルな展開、確かに「オルガンのコルトレーン」と呼ばれるのが、実に良く判る。

ジャズ・オルガンの基準、ジミー・スミスのオルガンとは全く異なる。つまり、それまでのジャズ・オルガンのスタンダード、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」なのだ。

Larry Young『Heaven On Earth』(写真左)。1968年2月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Byard Lancaster (as), Herbert Morgan (ts), George Benson (g), Eddie Gladden (ds), Althea Young (vo)。ジャズ・オルガンの革命児、ラリー・ヤングのブルーノート第5弾目のリーダー作。

それまでのジャズ・オルガンのスタンダード、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」のラリー・ヤング。このアルバムでは「憑きものが取れた様に」ファンキー・ジャズ路線のポップなアルバムに変身。冒頭曲など、しばらく、聴いていても、オルガンを弾いているのかが判らないくらいなのだ。

その冒頭曲「The Infant」から、ブーガルー色満載のファンキー・チューン炸裂。思わず、ルー・ドナルドソンのリーダー作かと思ったくらい。出てくるアルト・サックスが全く純ジャズっぽくないので、これはいったい誰のリーダー作だ。このオルガンは誰だ。という感じになる。
 

Larry-youngheaven-on-earth

 
この冒頭曲を聴き進めて行くと、かなり攻撃的な尖ったオルガン・ソロが出てくる。これはいままでのオルガニストに無い音で、ファンキー・チューンでこの尖り具合は無いだろう、ということで、やっと、このオルガンは、ラリー・ヤングだと気がつく次第。ファンキー・ジャズをやってる割に、かなり攻撃的で尖ったオルガンなので、これでは踊れないぞ、と思わず苦笑い(笑)。

ヤングのオルガンに続く、若きジョージ・ベンソンのギターも負けずに、攻撃的で尖っていて思わず苦笑い。それでも、ファンキー・ジャズよろしく、ファンキーなフレーズを叩き出してくるので、思わず吹き出してしまう。でも、ベンソンの演奏レベルは高い。ベンソンは真剣に攻撃的で尖ったファンキー・フレーズを集中して弾いている。

2曲目「The Cradle」に至っては、確かに曲想はファンキー・ジャズだが、ヤングのオルガンは、更に攻撃的に尖って、ストイックなフレーズを弾きまくる。もう、これはファンキー・ジャズの弾き回しでは無い。純ジャズの弾き回し。ダンサフルの蔭も形も無い(笑)。

ラリー・ヤングがファンキー・ジャズに身をやつしたと揶揄されがちな、この盤であるが、1曲目の前半のブーガルー色満載の部分だけ我慢すれば、あとは、ファンキー・ジャズのリズム&ビートとフレーズ展開に乗ってはいるが、そこに出てくるヤングの、ベンソンのパフォーマンスは純ジャズそのもの。

ファンキー・ジャズのリズム&ビートとフレーズ展開に乗った、硬派で尖ったメインストリーム・ジャズと捉えれば、この盤はなかなか面白い内容だということに気がつく。加えて、この盤のジャケット・デザインと、ラストのボーカル曲の存在が、この盤の評価を下げているんだろうな。まあ、これは仕方がない。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2026年2月 2日 (月曜日)

ファーマーのハッピーな好盤です

2月に入って、そろそろ「立春」。暦の上では「これ以上寒くなることはない」。冬来たりなば、春遠からじ、というが、まだまだ寒さ、冷えは続く2月。ジャズ盤の鑑賞は、暖房のしっかり入った部屋で、冬寒の外の風景を見ながらの、ちょっと内省的な鑑賞スタイルになったりする。

Art farmer Quintet『The Time and the Place』(写真左)。1967年2月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。もともとライブ・アルバムとして扱われていたが、実際にはスタジオで録音され、観客の拍手やざわめきはオーバーダビングされた「擬似ライヴ盤」。確かに、観客の拍手などは人工的な感じがする。

決して、有名盤でも無いし、エヴァーグリーンな名盤でも無い。それでも、この盤は、ソウルフルでハッピーな演奏が特徴のファンキー・ジャズの好盤だと僕は思う。演奏自体がシンプルなハードバップ〜ファンキー・ジャズで占められていて、それでいて、懐古趣味的雰囲気は全く無い。どちらかといえば、1967年という録音年の先、1970年代のハードバップを志向している様な雰囲気で、古さは全く感じ無い。
 

Art-farmer-quintetthe-time-and-the-place

 
ジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」と、さすが、ハードバップの多様化を経ての1960年代後半の録音。バラエティーに富んだ曲想、演奏志向で、聴き手として、とても良い変化を付けた演奏の数々が「イケてます」。

フロントの相棒のヒースのテナーも趣味良く快調、ピアノのウォルトンが率いる、ブッカーのベース、ローカーのドラムの1960年代ハードバップ志向のリズム・セクションも、シャープで小粋なリズム&ビートを供給する。このリズム・セクションの叩き出すリズム&ビートも懐古趣味のかけらもない。1960年代後半のトレンドど真ん中のリズム&ビートが洒落てます。

ジャズ盤紹介には、まず上がって来ないアルバムで、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさが、このアルバムの評価を下げているようですが、アート・ファーマー・カルテット自体の演奏としては良好なもので、ジャズ者初心者からベテランまで、どのレベルのジャズ者の方々も、それぞれの感覚で楽しめる好盤だと思います。
 
 

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2026年1月23日 (金曜日)

ソウル志向のシルヴァー・ジャズ『That Healin' Feelin'』

このジャケをみたら、ほとんどの人が「ビビる」だろう。どう見ても、ジャズのアルバムのジャケとは思えない(笑)。この奇妙な恰好をして写っているのは、ホレス・シルヴァー本人。「THE UNITED STATES OF MIND」という思想に入れ込んでいた時期のシルヴァー本人。内容的には、決して「危ない」「怪しい」類の音楽では無いのでご安心を。

Horace Silver Quintet『That Healin' Feelin'』(写真左)。1970年4月8日と6月18日の録音。ブルーノートの4352番。サブタイトルが「The United States of Mind Phase 1」。当時、シルヴァーが入れ込んでいた思想の名称がサブタイトルにあるので、スピリチュアルな側面もあるのか、と警戒するが、これが全く無い(笑)。

それでも、後に『The United States of Mind』としてCDにまとめられた3部作アルバムの最初のもの。ファンキー・ジャズ一本槍のホレス・シルヴァーが、ソウル・ミュージックに一番接近したアルバムの一枚である。

ちなみにパーソネルは、4月8日の録音が、Horace Silver (p, el-p), Randy Brecker (tp, flh), George Coleman (ts), Bob Cranshaw (el-b), Mickey Roker (ds), Andy Bey (vo, 2-5)。6月18日の録音が、Horace Silver (p, el-p), Randy Brecker (tp, flh), Houston Person (ts), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds), Gail Nelson (vo, 6), Jackie Verdell (vo, 7–9)。
 

Horace-silver-quintetthat-healin-feelin

 
基本は、シルヴァー印のファンキー・ジャズ。しかし、この盤で「耳を引く」のが、シルヴァーのエレクトリック・ピアノ。シルヴァーの弾くエレピが凄く良い。シルヴァー印のファンキー・ジャズにピッタリのエレピの音、エレピの弾きっぷり。このシルヴァーの弾くエレピが、このアルバムの「キモ」になっている。

このアルバムでは、大々的にボーカルの導入に踏み切っている。3人のボーカリストが分担して、ボーカルを担当しているが、そうなると、このアルバムは「R&B」志向のソウル・ジャズになるのか、と思いきや、そうはならない。あくまで、ソウル・ミュージック志向の、シルヴァー印のファンキー・ジャズ。

大胆なボーカルの導入とエレピの導入で「ソウル・ミュージック志向」を実現している。演奏の基本は、その時その時のシルヴァー印のファンキー・ジャズ。それが証拠に、ソウル・ミュージック志向の割に、粘るファンクネスはライト。ライト仕様のソウル・ミュージック志向なのが、このアルバムの個性であり、シルヴァー印のファンキー・ジャズのバリエーションである。

へんちくりんな恰好をしてジャケに収まっているシルヴァーだが、このアルバムでの音は、ボーカルを抜けば、とても硬派でアーティスティックな、シルヴァー印のファンキー・ジャズである。モード・ジャズにも、ソウル・ジャズにも柔軟に適応し、自らのファンキー・ジャズに昇華させている。ジャケに惑わされずに手にすれば、1970年当時のシルヴァー印のファンキー・ジャズの最前線が体感できる。そんな好盤である。
 
 

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2025年12月29日 (月曜日)

ナット極上ファンキー・ジャズ

兄キャノンボール・アダレイのバンドにトランペット担当として所属していた、弟ナット・アダレイ。兄の影に隠れた様なイメージで、彼のトランペットはなかなか正当に評価されていない。しかし、である。ナットは、ソウル・ジャズの立役者の1人。ファンキー・ジャズについても、兄のキャノンボールと共に、ファンキー・ジャズの普及に貢献している。

Nat Adderley『Naturally!』(写真左)。1961年6月20日、7月19日の録音。ちなみにパーソネルは、1961年6月20日の録音が、Nat Adderley (cor), Joe Zawinul (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。1961年7月19日の録音が、Nat Adderley (cor), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。

ナット・アダレイがリーダーの素敵なファンキー・ジャズ盤である。2つのセッションに分かれて、パーソネルも異なるのだが、不思議なことに、違和感は無く、統一感がある。東海岸のメンバーで固められてはいるが、まるで、ウエストコースト・ジャズの様な、聴かせるアレンジで、流麗で聴き応え十分、味のあるファンキー・ジャズが展開されている。

まず、ナットのコルネットが良い。コルネットの音のエッジがラウンドした、ちょっとくすんだ様な音が、そこはかとなくファンキー&ブルージーな雰囲気を漂わせ、全体的にゆったり大らかな吹奏が、洒落たファンキー・ジャズ志向のサウンドの中で映えに映える。ワンホーン・カルテットなので、そんなナットのコルネットのサウンドが良く判る。
 
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2つのセッションはどちらも良い演奏。6月20日のセッションの方が、ナットの馴染みのメンバーでの演奏でオリジナル志向。カルテット全体が伸び伸びとポジティヴに演奏を重ねている雰囲気。やや荒削りの様に感じるが、それは勢いという言葉に代えて、バンド独特のファンキーなグルーヴを醸し出している。

7月19日の録音は、マイルス・バンドにも所属したハードバッパーの一流どころがリズム・セクションを務めている分、予定調和なファンキー・ジャズが展開されていて、流麗で洒落た演奏で安心感はあるが、スタンダード志向の演奏ということもあって、ちょっと手練感漂う演奏。良く出来た演奏ではあり、聴き心地は抜群。

ただ、ナットのコルネットが、2つのセッションを束ね、統一感を醸し出していて、2つのセッションのカップリングだからという違和感は無い。流麗で聴き応え十分、味のあるファンキー・ジャズがアルバム全体に展開されている。

この盤、聴けば聴くほど、極上のファンキー・ジャズ、ファンキー・ジャズの完成形のひとつと言っても良い位の内容だと僕は思うんだが、この盤は今まで地味な位置に甘んじている。

恐らく、兄キャノンボールの影に隠れた存在という印象と、ジャズ盤紹介本にあがらない、そして、なかなか、CDリイシューがされなかった、という負の要素が重なったのが原因なんだろう。しかし、聴けば聴くほど思う。この盤、ファンキー・ジャズの秀作として良いのではないか、と。
 
 

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2025年10月28日 (火曜日)

ソウルフルなジャズ・オルガン『On Broadway』

ライトでポップで小洒落たソウル・ジャズである。こってこてジャジーな雰囲気は無く、どちらかと言えば、イージーリスニング志向、クロスオーバー・ジャズ志向の聴き易く、判り易いソウル・ジャズである。こってこてファンキーに、バンバン前へ出るオルガンでは無く、アンサンブルの中で、ソウル・ジャズ志向のオルガンをさり気なく響かせる様な、グループ・サウンズ重視のオルガンである。

Reuben Wilson『On Broadway』(写真左)。1968年10月4日の録音。ブルーノートの4295番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Trevor Lawrence (ts), Malcolm Riddick (g), Tommy Derrick (ds)。1960年代のブルーノートが送り出した最後のオルガン奏者、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のオルガン奏者、ルーベン・ウィルソンのデビュー盤。

ダンサブルかつファンキー&ソウルフルなプレイが身上のオルガンである。ジャズ色濃厚のテンション高く切れ味の良い純ジャズ志向なオルガンとは正反対の、ライトでポップで適度に緩く明るいオルガン。深刻感は全く無い。あっけらかんとした、小洒落たフレーズが心地良く、聴き流して心地良い、この時代特有の、一般聴衆にもしっかり訴求する判り易いオルガンである。
 

Reuben-wilsonon-broadway

 
パーソネルを見渡しても、それまでのハードバップからジャズの多様化まで、いわゆる1950年代から1960年代前半までのハードバップ時代に活躍したメンバーの名前は無い。メンバーそれぞれ、ソウル・ジャズ志向、それもR&Bの音の色づけに長けたメンバーで構成されているみたいで、例えば、サックスのトレヴァー・ローレンスはマーヴィン・ゲイとの共演などで、ソウル・ミュージックの世界ではお馴染みのサックス奏者である。

タイトル曲「On Broadway」は、ドゥーワップ・グループ、ドリフターズの大ヒット曲で、後にジョージ・ベンソンがリバイバル・ヒットさせたソウルフルな名曲。この名曲を、ライトにポップに、聴き易く判り易いアレンジで、ソウルフルに演奏していく。さりげなくソウルフルに響く、ウィルソンの軽快なオルガンが良い感じで鳴っている。

ルーベン・ウィルソンは、ソウル・ジャズ志向が色濃いオルガン奏者。米国オクラホマ州で1935年4月に生まれる・2023年5月、ニューヨークで肺癌のため88歳で逝去している。リーダー作は生涯で20枚以上、活動時期は、1968年から2011年まで、43年と長かった。しかし、我が国ではマイナーな存在に甘んじている。しかし、この初リーダー作は、小粋で良く出来たソウルフルなオルガン・ジャズ盤。良いアルバムだと思います。
 
 

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2025年10月24日 (金曜日)

オルガン好きには堪らない好盤『Think!』

ブルーノートの4200番台のアルバムの「落ち穂拾い」を進めている。まだ、当ブログに記事として上がっていないアルバムを順に聴き直し、その記事化を進めている。そして、4200番台コンプリートまで、あと6枚というところまで、こぎ着けた。しかし、4200番台は後半、終わりあたりでは、ブルーノートらしからぬ、売上大前提のアルバムもあったりして、気が抜けない。しかし、この盤は違う。

Lonnie Smith『Think!』(写真左)。1968年7月23日の録音。ブルーノートの4290番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Lee Morgan (tp), David Newman (ts, fl), Melvin Sparks (g), Marion Booker Jr. (ds), Norberto Apellaniz, Willie Bivens (conga :tracks 2 & 5), Henry "Pucho" Brown (timbales :tracks 2 & 5)。ロニー・スミスのブルーノート・レーベルからリリースした2枚目のリーダー作になる。

よく整った内容のオルガン・ジャズ。ファンキー・ジャズとソウル・ジャズの間を取った様な、「いいとこ取り」のアレンジ、音作りで、これが成功している。ファンキーに偏ると「古さ」を感じさせ、ソウルに偏ると「俗っぽさ」が前に出る。その「悪いところ」を、ファンキーとソウルの間を取って、モーダルな展開の味付けをすることで、アーティスティックな側面を補強する。なかなか、良く出来た音作りである。
 

Lonnie-smiththink

 
オルガン・ジャズだから、ファンキー&ソウルフルで、俗っぽいジャズなんだろう、という先入観は捨てた方が良い。このロニー・スミスの『Think!』は、ジャズとして、メインストリーム志向であり、温故知新なアレンジを優先して、正統派な、そして、意外と硬派なオルガン・ジャズを展開している。これが、1968年という時代、そして、大手リバティー社に買収された以降のブルーノートからのリリースだというから、二度びっくりである。

ただ、モーガンのトランペット、ニューマンのテナー、スパークスのギターの3フロント楽器のクインテット編成なので、音的にはグループ・サウンズ優先。3フロント楽器にもふんだんにソロ・パフォーマンスのスペースを与え、伴奏に徹するロニー・スミスは、実は「伴奏上手」なのが良く判る。聴いていると判るが、3フロント楽器は、それぞれ、気持ちよさそうに、ソロ・パフォーマンスを繰り広げている。ロニー・スミスが「伴奏上手」だからだろう。

当時のアレサ・フランクリンのヒット曲「Think」をカヴァーしていたり(タイトル曲ですね)、「The Call Of The Wild」の様な躍動的なファンキー・ラテン・チューンや「「Slouchin'」の様な、ムーディーでラテン・テイストのソウル・ジャズがあったり、売れ線を狙った選曲もあるが、どれもが、メインストリーム志向で、温故知新で良好なアレンジを施して、正統派で硬派なオルガン・ジャズとなっているので、全く気にならない。オルガン・ジャズの好盤です。
 
 

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2025年10月 6日 (月曜日)

聴いて楽しいオルガン・ジャズ

このジョン・パットン盤については、一言で言うと「ポップで明るく聴き易い」オルガン・ジャズ。ラウンジ志向とまではいかないが、とにかく聴き易い。アーティスティックな刺激が少ない、と言っても良いか。そして、当時のトレンドだった、R&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」がなされている。

Big John Patton『That Certain Feeling』(写真左)。1968年3月8日の録音。ブルーノートの4281番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Junior Cook (ts), Jimmy Ponder (g), Clifford Jarvis (ds)。フロントがジュニア・クックの1管、ギター入りのオルガン・カルテットである。ベースはジョン・パットンのオルガンが代行している。

この盤から、プロデューサーが、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンから、フランシス・ウルフに代わっている。ジャズをアートとして捉え、硬派でメインストリーム志向のモダン・ジャズを標榜していたライオンから、その時代のトレンドを踏まえ、大衆受けする、判り易いモダン・ジャズを目指すウルフへの交代。
 

Big-john-pattonthat-certain-feeling

 
フロント1管、ギター入りのオルガン・カルテットだが、ギターが、これまでのグラント・グリーンからジミー・ポンダーに代わっている。パキパキ硬派なファンキー・ギターから、ポップでソウルフルな親し易いギターへの変更。これが、暖かく優しく判り易いポップなジョン・パットンのオルガンに、ばっちりフィットしているのだ。

演奏の基本は、ファンキー・ジャズ。ファンクネスが優しく、時にR&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」が効果的になされたファンキー・ジャズ。なので、どっぷりソウル・ジャズなオルガンと比べると、ジョン・パットンのオルガンは、ポップで軽快で暖かくてクール。そして、これがジョン・パットンのオルガンの個性であることに、このアルバムを全編、聴き終えて納得する。

大衆に訴求し、大衆にウケるオルガン・ジャズ。ジョン・パットンと新プロデューサーのウルフは、がっちり組んで、そんなオルガン・ジャズを目指した。その最初の成果がこのアルバムだろう。決して、ジャズ史に一石を投じるような、アーティスティックばりばりなアルバムでは無いが、聴き易く判り易い、聴いて楽しい、ファンキー&ソウルフルなオルガン・ジャズ盤として、気軽に聴くに適した好盤だと思う。
 
 

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2025年9月27日 (土曜日)

1968年のシルヴァーの好盤です『Serenade to a Soul Sister』

パーソネルの違いはあるが、2セッションを通じて、しっかりとした統一感があるのは、さすがにホレス・シルヴァー御大。素晴らしいリーダー・シップを発揮している。この盤の音世界は、ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ。時代は「ソウル・ジャズ全盛」なのだが、シルヴァーは「ブレない」。シルヴァーはあくまで「ファンキー・ジャズ」。

Horace Silver『Serenade to a Soul Sister』(写真左)。1968年2月23日、3月29日の録音。ブルーノートの4277番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Charles Tolliver (tp) は、2月23日と3月29日と共通。残りの3人が録音日によって変わる。2月23日が、Stanley Turrentine (ts), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。3月29日が、Bennie Maupin (ts), John Williams (b), Billy Cobham (ds)。

8ビートのエレクトリックなファンキー・ジャズあり、ノリの良い正統派ファンキー・ジャズあり、新主流派モーダルなファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズっぽくなるところもあるが、収録されたどの演奏も根っこは「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」。言い換えると、1968年の「シルヴァーが考えるファンキー・ジャズ」が、ぎっしり詰まっている。
 

Horace-silverserenade-to-a-soul-sister

 
しかし、パーソネルを見渡すと、モーダルなトランペッターのチャールズ・トリヴァー、漆黒な「どファンキー」テナーのスタンリー・タレンタイン、そして、ドラムに、モーダルなドラミングが得意なミッキー・ローカー、後のマシンガン・ファンキー・ドラミングのビリー・コブハム等々、おおよそ、ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズをやるメンバーでは無い。しかし、このメンバーが、1968年の「シルヴァーが考えるファンキー・ジャズ」を完璧にやるのだから堪らない。

「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」とは言っても、1950年代を振り返った「懐古趣味」なファンキー・ジャズでは無い。1968年時点の最先端のモダン・ジャズの音を踏まえて反映した、その時代の最先端の「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」をパーフォーマンスしていることろが素晴らしい。さすが、レジェンド級のジャズマンが違う。

ラストの「Next Time I Fall in Love」は、シルヴァーにしては珍しいピアノ・トリオによる小粋なバラード。底に流れるファンクネスに、シルヴァーの矜持を感じる。「Mr.ファンキー・ジャズ」なホレス・シルヴァーの好盤。ジャズ紹介本やジャズのアルバム紹介などは、そのタイトルが上がらない、しかも、ホレス・シルヴァーの代表盤にも、まず、上がらない盤だが、僕は、この盤の内容については一目置いている。いつの時代にも「ブレない」シルヴァーは頼もしい。
 
 

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