バードのポップなソウル・ジャズ
ドナルド・バードは「機を見て敏なる」変化するトランペッター。ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース。1960年前後、ハードバップが成熟して、ジャズの多様化の時代に移行する際、いち早く、ファンキー・ジャズに手を染める。
モード・ジャズにもチャレンジして、硬派な純ジャズ志向トランペッターとして名をあげたと思ったら、ソウル・ジャズにどっぷりハマっていく。そんな1964年のドナルド・バード。コッテこての「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」のリーダー作を連発していく。
Donald Byrd『Up with Donald Byrd』(写真左)。1964年の10月6日、11月2日、12月16日の録音。 大手のVerveレーベルからのリリースながら、録音場所は「Van Gelder Studios」。
ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Jimmy Heath (ts, tracks 2–5), Stanley Turrentine (ts, tracks 7 & 8), Herbie Hancock (p), Kenny Burrell (g), Bob Cranshaw (b, tracks 1–6), Ron Carter (b, tracks 7–9), Grady Tate (ds), Candido Camero (perc, tracks 7 & 8), The Donald Byrd Singers なる女性ボーカル隊が付く。
録音場所といい、パーソネルを見渡すと、セッションの参加メンバーは、ごっそりと当時のブルーノート・レーベルから借りてきた様な、一流人気ジャズマンが名を連ねている。前半の1–6曲目のアレンジは、当時の人気アレンジャー「クラウス・オガーマン」。さすが、大手のジャズ・レーベルのヴァーヴ。金に糸目はつけない、ゴージャスなアルバム制作である。
さすが大手のジャズ・レーベルのヴァーヴ、このアルバム、ドナルド・バードのコッテこての「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」を捉えているのだが、とにかく、ポップで俗っぽい。つまりは、ジャズのアーティスティックな面は横に置いて、確実に「一般ウケ」する「売れる」音作りをしている。プロデューサーは誰か、と見たら、のちのフュージョン・ジャズの仕掛け人の代表格「クリード・テイラー」だった。
とにかく、コッテこてファンキーな、聴きやすい「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」。ドナルド・バードのトランペットは、モードも交えて、意外と正統派なトランペットを吹いているんだが、ピアノのハンコック、ギターのバレルなどは、徹底的にソウル・ジャズ志向濃厚なフレーズをこれでもかと連発している。キャンディドのパーカッションが、ファンキー度、ソウルフル度をさらに濃厚にする。
The Donald Byrd Singers なる女性ボーカル隊のコーラスが出てくると、一気に「俗っぽさ」が濃厚になる。この濃厚となる「俗っぽさ」をどう聴くかで、この盤の評価は変わるだろう。但し、その時代の響きを忠実に記録しているので、この音はこの音で意味のあるものではある。頭ごなしに否定するものでもないだろう。
ドナルド・バードの「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」。ブルーノート・レーベルでは、しっかり純ジャズの要素を押さえていて、意外とアーティスティックな雰囲気が漂うソウル・ジャズに仕上がっているのだが、この大手のヴァーヴ・レーベルでは、明らかに「売らんがため」の「一般ウケ」するアレンジが施されていて、ポップで俗っぽいソウル・ジャズになっているのが面白い。
ながら聴きに向いた、イージーリスニング・ジャズ志向の「R&Bテイストを交えたソウル・ジャズ」だろう。真剣に対峙して聴き込む類の盤ではないが、何かし「ながら」の邪魔にならない、ポップで心地良いソウル・ジャズとして、さりげなく聴き流すには良好な盤ではある。
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