2025年10月28日 (火曜日)

ソウルフルなジャズ・オルガン

ライトでポップで小洒落たソウル・ジャズである。こってこてジャジーな雰囲気は無く、どちらかと言えば、イージーリスニング志向、クロスオーバー・ジャズ志向の聴き易く、判り易いソウル・ジャズである。こってこてファンキーに、バンバン前へ出るオルガンでは無く、アンサンブルの中で、ソウル・ジャズ志向のオルガンをさり気なく響かせる様な、グループ・サウンズ重視のオルガンである。

Reuben Wilson『On Broadway』(写真左)。1968年10月4日の録音。ブルーノートの4295番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Trevor Lawrence (ts), Malcolm Riddick (g), Tommy Derrick (ds)。1960年代のブルーノートが送り出した最後のオルガン奏者、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のオルガン奏者、ルーベン・ウィルソンのデビュー盤。

ダンサブルかつファンキー&ソウルフルなプレイが身上のオルガンである。ジャズ色濃厚のテンション高く切れ味の良い純ジャズ志向なオルガンとは正反対の、ライトでポップで適度に緩く明るいオルガン。深刻感は全く無い。あっけらかんとした、小洒落たフレーズが心地良く、聴き流して心地良い、この時代特有の、一般聴衆にもしっかり訴求する判り易いオルガンである。
 

Reuben-wilsonon-broadway

 
パーソネルを見渡しても、それまでのハードバップからジャズの多様化まで、いわゆる1950年代から1960年代前半までのハードバップ時代に活躍したメンバーの名前は無い。メンバーそれぞれ、ソウル・ジャズ志向、それもR&Bの音の色づけに長けたメンバーで構成されているみたいで、例えば、サックスのトレヴァー・ローレンスはマーヴィン・ゲイとの共演などで、ソウル・ミュージックの世界ではお馴染みのサックス奏者である。

タイトル曲「On Broadway」は、ドゥーワップ・グループ、ドリフターズの大ヒット曲で、後にジョージ・ベンソンがリバイバル・ヒットさせたソウルフルな名曲。この名曲を、ライトにポップに、聴き易く判り易いアレンジで、ソウルフルに演奏していく。さりげなくソウルフルに響く、ウィルソンの軽快なオルガンが良い感じで鳴っている。

ルーベン・ウィルソンは、ソウル・ジャズ志向が色濃いオルガン奏者。米国オクラホマ州で1935年4月に生まれる・2023年5月、ニューヨークで肺癌のため88歳で逝去している。リーダー作は生涯で20枚以上、活動時期は、1968年から2011年まで、43年と長かった。しかし、我が国ではマイナーな存在に甘んじている。しかし、この初リーダー作は、小粋で良く出来たソウルフルなオルガン・ジャズ盤。良いアルバムだと思います。
 
 

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2025年10月24日 (金曜日)

オルガン好きには堪らない好盤

ブルーノートの4200番台のアルバムの「落ち穂拾い」を進めている。まだ、当ブログに記事として上がっていないアルバムを順に聴き直し、その記事化を進めている。そして、4200番台コンプリートまで、あと6枚というところまで、こぎ着けた。しかし、4200番台は後半、終わりあたりでは、ブルーノートらしからぬ、売上大前提のアルバムもあったりして、気が抜けない。しかし、この盤は違う。

Lonnie Smith『Think!』(写真左)。1968年7月23日の録音。ブルーノートの4290番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Lee Morgan (tp), David Newman (ts, fl), Melvin Sparks (g), Marion Booker Jr. (ds), Norberto Apellaniz, Willie Bivens (conga :tracks 2 & 5), Henry "Pucho" Brown (timbales :tracks 2 & 5)。ロニー・スミスのブルーノート・レーベルからリリースした2枚目のリーダー作になる。

よく整った内容のオルガン・ジャズ。ファンキー・ジャズとソウル・ジャズの間を取った様な、「いいとこ取り」のアレンジ、音作りで、これが成功している。ファンキーに偏ると「古さ」を感じさせ、ソウルに偏ると「俗っぽさ」が前に出る。その「悪いところ」を、ファンキーとソウルの間を取って、モーダルな展開の味付けをすることで、アーティスティックな側面を補強する。なかなか、良く出来た音作りである。
 

Lonnie-smiththink

 
オルガン・ジャズだから、ファンキー&ソウルフルで、俗っぽいジャズなんだろう、という先入観は捨てた方が良い。このロニー・スミスの『Think!』は、ジャズとして、メインストリーム志向であり、温故知新なアレンジを優先して、正統派な、そして、意外と硬派なオルガン・ジャズを展開している。これが、1968年という時代、そして、大手リバティー社に買収された以降のブルーノートからのリリースだというから、二度びっくりである。

ただ、モーガンのトランペット、ニューマンのテナー、スパークスのギターの3フロント楽器のクインテット編成なので、音的にはグループ・サウンズ優先。3フロント楽器にもふんだんにソロ・パフォーマンスのスペースを与え、伴奏に徹するロニー・スミスは、実は「伴奏上手」なのが良く判る。聴いていると判るが、3フロント楽器は、それぞれ、気持ちよさそうに、ソロ・パフォーマンスを繰り広げている。ロニー・スミスが「伴奏上手」だからだろう。

当時のアレサ・フランクリンのヒット曲「Think」をカヴァーしていたり(タイトル曲ですね)、「The Call Of The Wild」の様な躍動的なファンキー・ラテン・チューンや「「Slouchin'」の様な、ムーディーでラテン・テイストのソウル・ジャズがあったり、売れ線を狙った選曲もあるが、どれもが、メインストリーム志向で、温故知新で良好なアレンジを施して、正統派で硬派なオルガン・ジャズとなっているので、全く気にならない。オルガン・ジャズの好盤です。
 
 

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2025年10月 6日 (月曜日)

聴いて楽しいオルガン・ジャズ

このジョン・パットン盤については、一言で言うと「ポップで明るく聴き易い」オルガン・ジャズ。ラウンジ志向とまではいかないが、とにかく聴き易い。アーティスティックな刺激が少ない、と言っても良いか。そして、当時のトレンドだった、R&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」がなされている。

Big John Patton『That Certain Feeling』(写真左)。1968年3月8日の録音。ブルーノートの4281番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Junior Cook (ts), Jimmy Ponder (g), Clifford Jarvis (ds)。フロントがジュニア・クックの1管、ギター入りのオルガン・カルテットである。ベースはジョン・パットンのオルガンが代行している。

この盤から、プロデューサーが、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンから、フランシス・ウルフに代わっている。ジャズをアートとして捉え、硬派でメインストリーム志向のモダン・ジャズを標榜していたライオンから、その時代のトレンドを踏まえ、大衆受けする、判り易いモダン・ジャズを目指すウルフへの交代。
 

Big-john-pattonthat-certain-feeling

 
フロント1管、ギター入りのオルガン・カルテットだが、ギターが、これまでのグラント・グリーンからジミー・ポンダーに代わっている。パキパキ硬派なファンキー・ギターから、ポップでソウルフルな親し易いギターへの変更。これが、暖かく優しく判り易いポップなジョン・パットンのオルガンに、ばっちりフィットしているのだ。

演奏の基本は、ファンキー・ジャズ。ファンクネスが優しく、時にR&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」が効果的になされたファンキー・ジャズ。なので、どっぷりソウル・ジャズなオルガンと比べると、ジョン・パットンのオルガンは、ポップで軽快で暖かくてクール。そして、これがジョン・パットンのオルガンの個性であることに、このアルバムを全編、聴き終えて納得する。

大衆に訴求し、大衆にウケるオルガン・ジャズ。ジョン・パットンと新プロデューサーのウルフは、がっちり組んで、そんなオルガン・ジャズを目指した。その最初の成果がこのアルバムだろう。決して、ジャズ史に一石を投じるような、アーティスティックばりばりなアルバムでは無いが、聴き易く判り易い、聴いて楽しい、ファンキー&ソウルフルなオルガン・ジャズ盤として、気軽に聴くに適した好盤だと思う。
 
 

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2025年9月27日 (土曜日)

1968年のシルヴァーの好盤です

パーソネルの違いはあるが、2セッションを通じて、しっかりとした統一感があるのは、さすがにホレス・シルヴァー御大。素晴らしいリーダー・シップを発揮している。この盤の音世界は、ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ。時代は「ソウル・ジャズ全盛」なのだが、シルヴァーは「ブレない」。シルヴァーはあくまで「ファンキー・ジャズ」。

Horace Silver『Serenade to a Soul Sister』(写真左)。1968年2月23日、3月29日の録音。ブルーノートの4277番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Charles Tolliver (tp) は、2月23日と3月29日と共通。残りの3人が録音日によって変わる。2月23日が、Stanley Turrentine (ts), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds)。3月29日が、Bennie Maupin (ts), John Williams (b), Billy Cobham (ds)。

8ビートのエレクトリックなファンキー・ジャズあり、ノリの良い正統派ファンキー・ジャズあり、新主流派モーダルなファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズっぽくなるところもあるが、収録されたどの演奏も根っこは「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」。言い換えると、1968年の「シルヴァーが考えるファンキー・ジャズ」が、ぎっしり詰まっている。
 

Horace-silverserenade-to-a-soul-sister

 
しかし、パーソネルを見渡すと、モーダルなトランペッターのチャールズ・トリヴァー、漆黒な「どファンキー」テナーのスタンリー・タレンタイン、そして、ドラムに、モーダルなドラミングが得意なミッキー・ローカー、後のマシンガン・ファンキー・ドラミングのビリー・コブハム等々、おおよそ、ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズをやるメンバーでは無い。しかし、このメンバーが、1968年の「シルヴァーが考えるファンキー・ジャズ」を完璧にやるのだから堪らない。

「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」とは言っても、1950年代を振り返った「懐古趣味」なファンキー・ジャズでは無い。1968年時点の最先端のモダン・ジャズの音を踏まえて反映した、その時代の最先端の「ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズ」をパーフォーマンスしていることろが素晴らしい。さすが、レジェンド級のジャズマンが違う。

ラストの「Next Time I Fall in Love」は、シルヴァーにしては珍しいピアノ・トリオによる小粋なバラード。底に流れるファンクネスに、シルヴァーの矜持を感じる。「Mr.ファンキー・ジャズ」なホレス・シルヴァーの好盤。ジャズ紹介本やジャズのアルバム紹介などは、そのタイトルが上がらない、しかも、ホレス・シルヴァーの代表盤にも、まず、上がらない盤だが、僕は、この盤の内容については一目置いている。いつの時代にも「ブレない」シルヴァーは頼もしい。
 
 

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2025年9月22日 (月曜日)

大衆受け狙いのウィルソン盤

大手リバティーの傘下に入って以降、当時のブルーノートとして、純ジャズ度、モダン・ジャズ度は落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする、という範疇に入るアルバムではあるが、このアルバムは、徹底して、音志向からアレンジまで、大衆受け狙いのファンキー&ソウル・ジャズを追求している。

Jack Wilson『Easterly Winds』(写真左)。1967年9月22日の録音。ブルーノートの4270番。ちなみにパーソネルは、Jack Wilson (p), Lee Morgan (tp), Garnett Brown (tb), Jackie McLean (as), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。全6曲中、3曲目「A Time for Love」のみトリオ演奏。他5曲は、フロント3管、ピアノ・トリオがリズム隊のセクステット編成の演奏。

ジャック・ウィルソンのブルーノートでの最初のアルバムである『Something Personal』とは対照的。彼のレーベルデビューが「西海岸の明るい光の中、アーバンで爽快なジャズ」だった。

それに対し、この『Easterly Winds』は、聴けばすぐに魅力を感じる、ファンクネスを湛えたフロント管の響きが芳しい、ファンキー&ソウル・ジャズで埋め尽くされている。どうして、こんなにも変わるの、とも思うし、音志向に対して、柔軟性が高い、とも思う。

クラブ・ジャズ好きの皆さんの愛聴盤で、確かに判り易い「恰好良い」ジャズがこれでもか、と展開される。ソウルフルでダンサフル。演奏志向は明らかに「ソウル・ジャズ」。アート志向よりもポップ志向が大きく勝る音作り。

ただ、単に俗っぽいイージーリスニング・ジャズに陥らなかったのは、モーガンのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、ガーネット・ブラウンのトロンボーンの響きが、しっかりとハードバップしていて、ファンキー&ソウル・ジャズな演奏全体をしっかりと引き締めている。
 

Jack-wilsoneasterly-winds

 
そして、ウィルソンのピアノが、俗っぽい、イージーな受け狙いのソウルフルな展開に陥らないよう、しっかりコントロールされていたからだろう。アルバム全編に渡って、しっかりセルフ・コントロールされたソウルフルな響きのピアノが聴ける。
 
ウィルソンのピアノの個性は、3曲目の「A Time for Love」、フロント管がお休み+ピアノ・トリオのみ演奏で、このトリオ演奏で、良く判る。演奏の音志向としては、基本はファンキー・ジャズ・ピアノ。そんなファンキーなジャズ・ピアノで、上品にソウルフルに唄い上げていく様はソウルジャズ志向のピアノ。

5曲目「Nirvanna」は、らしくないアヴァンギャルドな雰囲気の演奏ではあるが、フレーズの展開は聴きやすいレベルの穏やかさ。圧倒的にアバンギャルドに展開することは無い。どこまでも、聴き手にダイレクトに訴求することを主眼としているのが良く判る。

ジャズロック調から、ソウル・ジャズ志向、ファンキー・ジャズ志向、アバンギャルド・ジャズ志向など、かなりバラエティーに富んだ内容のアルバムだが、充実した好調フロント3管の「賜物」で、しっかりとした統一感が維持されているところはプロデュースのお陰か.。

そう言えば、このアルバムのプロデュースは、デューク・ピアソン。ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは既に引退している。このウィルソンのアルバム、プロデューサーがライオンだったら、どんなアルバムに仕上がっていただろうか。

それほどまでに、このアルバムは、徹底して大衆受け狙いなアルバム作りをしている、それまでのブルーノートには無かったアルバム内容である。
 
 

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2025年9月18日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・297

当時のブルーノートとして、大手リバティーの傘下に入り、純ジャズ度、モダン・ジャズ度を落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする、という範疇に入るアルバムではあるが、内容は濃く、純ジャズとしても、ファンキー・ジャズとしても、ラテン・ジャズとしても、ジャズロックとしても、大衆にしっかり訴求する正統派ジャズ・アルバムである。

Duke Pearson『The Right Touch』(写真左)。1967年9月13日の録音。ブルーノートの4267番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), Garnett Brown (tb), James Spaulding, Jerry Dodgion (as, fl), Stanley Turrentine (ts), Duke Pearson (p, arr), Gene Taylor (b), Grady Tate (ds)。

デューク・ピアソンの10枚目のリーダー作。フロント5管、ピアノ・トリオがリズム・セクションのオクテット編成。デューク・ピアソンのアレンジが冴える、当時のブルーノート・オールスターズの大編成盤である。ピアニスト、作曲家、アレンジャーとしてのデューク・ピアソンの才能が最大限に発揮された1枚。プロデューサーは、フランシス・ウルフ。アルフレッド・ライオンでは無い。

冒頭の「Chili Peppers」は、ロンドンのクラブ・シーンでクラシックとなった名曲。ラテン・フレーバーが芳しいピアソンのピアノのリードで、バンド全体が、ダンサフルにジャズロックして、疾走する。ユニゾン&ハーモニーが印象的で、アレンジの優秀性を物語る。タレンタインのテナーは骨太でファンキー。フルートの音色はファンクネスを増幅する。グラディ・テイトのドラミングはファンクネスを撒き散らす。
 

Duke-pearsonthe-right-touch

 
続く「Make It Good」は、ピアソンのシンプルでシングル・タッチで「ライト・タッチ」な、個性的なピアノが心ゆくまで聴くことが出来る。演奏全体の落ち着いたアレンジが実に洒落ていて粋。

3曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera) 」は、ボサノバ・ジャズ志向のムード溢れる1曲。ピアソンのシンプルでシングル・タッチで「ライト・タッチ」なピアノ・ソロが抜群に良い雰囲気を醸し出している。ジーン・テイラーのベースが、演奏の「底」をがっちりキープしていて見事。

4曲目の「Los Malos Hombres」は、どこから切ってもラテン・ジャズ。見事なラテン調のアレンジで、演奏するジャズマンのテクニックと相まって、躍動感溢れる切れ味の良い、そして、ブルーノートらしい端正で完成度の高いラテン・ジャズが展開される。ハバードのトランペット大活躍。クラブ・ジャズでウケるのも納得の名演である。

5曲目「Scrap Iron」は、スローなブルース。泥臭くならず、どこか気品漂うところはアレンジの妙。ブルースと言えば「タレンタイン」。タレンタインのテナーが漆黒どっぷりファンキーに唄いまくる。そして、ラストの「Rotary」は、モーダルで即興性溢れる佳曲。フロント管の入れ替わり立ち替わりのアドリブが楽しい、スインギーな演奏。

全曲ピアソンの作曲&アレンジ。演奏はブルーノート・オールスターズ。リハーサルをしっかり積んだであろう、端正で破綻の無い、ダイナミックで躍動感溢れる演奏が素晴らしい。ブルーノート4200番台の名盤の1枚です。
 
 

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2025年9月13日 (土曜日)

ソウル・ジャズなピアノ・トリオ

ブルーノートというレーベルは、いつの時代も懐が深い。1967年という時代でも、硬派な純ジャズ志向のモード・ジャズや、フリー・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズ、があれば、大衆にアピールするファンキー・ジャズ、ジャズロック、そして、ソウル・ジャズにもしっかり対応していたりする。つまり、その時代時代でのジャズ演奏のトレンドをしっかりと把握し、いち早く録音していたレーベルである。

The Three Sounds『Live at the Lighthouse』(写真左)。1967年6月9–10日、カリフォルニアのライトハウス・クラブでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p, org), Andrew Simpkins (b), Donald Bailey (ds)。ブルーノート・レーベルが企画した、お抱えピアノ・トリオのスリー・サウンズの、ライムライトからのカムバック後、初のライヴ録音である。

スリー・サウンズは、もともとはファンキー・ジャズをベースとしたピアノ・トリオ。テクニックとアレンジが優秀なので、ファンクネスが前面に出ず、メインストリーム志向のトリオ演奏が印象的なピアノ・トリオだった。そして、ブルーノートでは、『It Just Got To Be』(1960年12月13–14日の録音)で、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換の記録を残している。
 

The-three-soundslive-at-the-lighthouse

 
で、このライヴ盤に記録されているサウンドは、明らかに「ソウル・ジャズ」である。ファンキー・ジャズより「ポップなアレンジ」を施したジャズで、ファンクネスは濃厚、R&Bの音要素も反映した、ダンサフルでオフビートの効いたジャズ。これを、テクニック豊か、アレンジ優秀なスリー・サウンズが、大盛り上がりで、ガンガンに演奏を進めて行く。

アーシーな渋い渋いジャズ・ファンクの「Still I'm Sad」、ブルース・フィーリングが心に沁みる「Summertime」、ソウル・ジャズの味付けが粋な「Blues March」、ボートラの恩恵のソウルフルな「C Jam Blues」、当時、あちらこちらでカヴァーされていたポップスソング「Sunny」など、好演につぐ公園を収録した臨場感溢れる初のライヴ・アルバムである。

ソウル・ジャズのアルバムは、どうしても大衆に訴求すべく、ラウンジ・ジャズっぽく、果てはイージーリスニング・ミュージックに陥ったりする傾向があるのだが、このスリー・サウンズのライヴ盤は違う。このライヴ盤、我が国ではほとんど見向きされていないのだが、とてもジャズしている、ソウル・ジャズの好盤だと思う。さすが、ブルーノートと、ブルーノートの懐の深さを再認識した。
 
 

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2025年9月12日 (金曜日)

ルーさんの考えるソウル・ジャズ

Bogaloo(ブガルー)とは、1960年代のニューヨークで流行した、ラテン音楽とリズム・アンド・ブルース、ソウルが融合した音楽ジャンルであり、それに合わせて踊るブレイクダンスのことも指す(Wikipediaより抜粋)。特に、1960年代後半は、この「ラテン音楽」とジャズの融合がひとつのトレンドだったみたいで、ブルーノートでも、様々なイメージの「ラテン音楽」とジャズの融合音楽が録音されている。

Lou Donaldson『Alligator Bogaloo』(写真左)。1967年4月7日の録音。ブルーノートの4263番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Melvin Lastie (cor), Lonnie Smith (org), George Benson (g), Leo Morris (ds)。アーゴ/カデットからブルーノートに復帰して、R&Bやブガルーな要素を取り込んだ、「ルーさんの考えるソウル・ジャズ」を表したアルバム。

タイトルの「ブガルー」なジャズは、タイトル曲の「Alligator Bogaloo」の1曲のみ。ドナルドソンの回顧を借りると、このアルバムのセッションをやった時、1曲足らなかったらしい。そこで、やっつけで作ったのこの曲。恐らく、リフを作って、皆が演奏を始めたら、当時、流行の「ブガルー」がベースの演奏になったんだろう。これがヒット曲となるのだから、何が幸いするか判らない(笑)。
 

Lou-donaldsonalligator-bogaloo

 
他の演奏はしっかりジャズしている。基本はファンキー・ジャズ。フレーズが歌心満点で流麗でファンクネス適度などで、フレーズだけ聴いていると、ソウル・ジャズかな、とも思うんでが、バックのリズム&ビートが硬派にジャズしている。R&Bな奮起が仄かに漂う、ソウル・ジャズ志向のファンキー・ジャズといった、ちょっと不思議な音世界が、この盤に詰まっている。

R&Bな雰囲気を添加しているのは、ひとえにジョージ・ベンソンのギターの「切れの良い、R&Bなビート感溢れるカッティング」が効いている。そして、ロニー・スミスのオルガンも、そんなR&Bな雰囲気を増幅している。そして、ルーさんのアルト・サックスが、バップな吹奏控えめに、飄々とソウルフルに唄う様に響いているところが、意外とR&Bっぽいんですよね。

まだ、ソウル・ジャズ色は控えめ、ルーさん得意のファンキー・ジャズに、R&Bな雰囲気を添加した、他に無いユニークなファンキー・ジャズに仕上がっているところが面白い。この辺りの音世界が、もしかしたら「ルーさんの考えるソウル・ジャズ」なのかもしれない。タイトル曲の「Alligator Bogaloo」は突然変異だろう。
 
 

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2025年9月 3日 (水曜日)

ポップなファンキー・ジャズ盤

1966年はブルーノートがリバティ・レコードに買収された時代。ブルーノートにも、アルバム売り上げ第一という「商業主義」が押し寄せ、大衆に受けのわるい、フリーやスピリチュアルを追求するハードなジャズ盤のリリースは少なくなり、大衆受けする、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズ盤が多くリリースされる様になる。

Blue Mitchell『Boss Horn』(写真左)。1966年11月17日の録音。ブルーノートの4257番。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Jerry Dodgion (as, fl), Pepper Adams (bs), Julian Priester (tb), Chick Corea (p, 5–6), Cedar Walton (p, 1–4), Gene Taylor (b), Mickey Roker (ds), Duke Pearson (arr)。フロント5管、ピアノがメインのリズム・セクションの、オクテット編成(8人編成)。

内容的には、聴き易い、聴いて楽しい、ファンキー・ジャズ。アレンジ的には、ジャズロックあり、ソウル・ジャズあり、モード・ジャズあり。でも、演奏のトーンの根っこは「ファンキー・ジャズ」。フロント5管、ミッチェルのトランペット、クックのテナー・サックス、ダジォンのアルト・サックス、アダムスのバリサク、プリースターのトロンボーンのユニゾン&ハーモニーが効いて、ファンクネスが溢れている。
 

Blue-mitchellboss-horn
 

1曲目「Millie」は、ピアソン作曲のジャズ・ロック。フレーズ的には、ハンコックの「ウォーター・メロンマン」を彷彿とさせる印象的なブレイクが特徴のジャズロック。2曲目「O Mama Enit」は、ミッチェル作曲のカリプソ・ナンバー。3曲目はスタンダード曲の「I Should Care」。ファンキーなアレンジが心地良い。4曲目「Rigor Mortez」は再び、ジャス・ロック。

5曲目「Tones for Joan's Bones」とラストの「Straight Up and Down」は、チック・コリア作のファンキー・モード・ジャズ。この2曲、チックの作であるが、これが実に内容に富んでいる。ファンキーな雰囲気を宿したモード・ジャズで、特に、チックのピアノのモーダルなアドリブ展開が「聴きもの」。アルバムの中で、この2曲が内容的に突出している。

アルバム全体に「聴き易さ」が前面に出ていて、ファンキー・ジャズ志向のイージーリスニング・ジャズと捉えても良い内容だが、演奏自体はしっかりとモダン・ジャズしていて、この点は「さすがブルーノート」と再認識させてくれる。この盤でも、ピアソンのアレンジがふるっていて、アルバム全体の雰囲気を、上質なモダン・ジャズとしているのか、このピアソンのアレンジによるところが大きい。
 
 

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2025年9月 2日 (火曜日)

タレンタインのショーケース

1964年2月、ビートルズが米国の地に上陸。ビートルズは米国ポップスの頂点に立ち、ビートルズに刺激されたロックが台頭。米国ポップス音楽の代表の1つだったジャズ人気は徐々に斜陽となる。その始まりが、1965年から66年辺り。フリーやスピリチュアルを追求するハードなジャズと、聴き手のニーズに合わせたポップなジャズと、二極分化が進んだ時代であった。

Stanley Turrentine『The Spoiler』(写真左)。1966年9月22日の録音。ブルーノートの4256番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Blue Mitchell (tp), Julian Priester (tb), James Spaulding (as, fl), Pepper Adams (bs), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Joseph Rivera (perc), )Duke Pearson (arr)。

漆黒ブルージーなテナー奏者、スタンリー・タレンタインがリーダーの、コンガ入りノネット編成(9人編成)。大所帯である。メンバーを見渡すと、当時のブルーノート・オールスターズと呼んで良いような、ブルーノートで活躍していたジャズマンがずらり。一流のジャズマン達の演奏なので、9人編成とは言え、しっかりと締まった演奏をしている。

内容的には、当時の流行のジャズの演奏トレンドを詰め込んだ「ごった煮」な内容。大人のロックあり、大人のファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズあり、当時の米国ポップスのジャズ・カヴァー(4曲目「Sunny」)、いわゆる、米国ポップスの人気曲のカヴァーありで、演奏自体は前述の様にしっかりしているのだが、曲の収録イメージは「ごった煮」。
 

Stanley-turrentinethe-spoiler

 
しかし、そんな「ごった煮」のアルバムを、タレンタインの個性的で漆黒ブルージーなテナーが、曲毎に一本筋を通している。このアルバム、当時のタレンタインのショーケースの様な感じに仕立て上げられていて、曲毎にジャズの演奏トレンドがコロコロ変わるのだが、違和感が伴わないのは、タレンタインのブレない漆黒ブルージーなテナーのお陰といって良いだろう。

ブルーノート・オールスターズと呼んで良いような豪華なバックではあるが、このアルバムでは、あくまで、タレンタインのテナーを引き立てる役に回っている。

が、このオールスターズのバッキングが見事。ピアソンのアレンジが優れているのだろう、様々なジャズの演奏トレンドに合わせたアレンジに乗って、オースルターズは伸び伸び演奏し、それぞれの個性を出しつつ、タレンタインのテナーを引き立てる。

全体にポップなジャズの味付けがされているので、俗っぽいと敬遠する向きもあるが、僕はそんなことは無いと思う。聴いて楽しいタレンタインのショーケース。ブルーノートの企画する「ショーケース」盤はいつも「一味違う」。
 
 

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