2026年6月21日 (日曜日)

ジャス喫茶で流したい・327

ブルーノート4300番台の後半のアルバムなので、過度な期待をせずに、恐らく、べったべたのソウル・じゃずか、新主流派のパフォーマンスを推し進めた、限りなく自由度の高い、ほぼフリー・ジャズか、と予想して聴いたのだが、いやはや、ビックリ。冒頭の「At the Source: Ashes & Rust/Eucalyptus/Obsidian」を聴いて、これは、と思わず身を乗り出した。

Bobby Hutcherson『Head On』(写真左)。1971年7月1ー3日、ロサンゼルスの「Poppi Recording Studios」での録音。ブルーノートの4376番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。米国のジャズ・ヴィブラフォン奏者であるボビー・ハッチャーソンが、1971年に録音した、当時の独創的なニュー・ジャズの一枚。メインストリームな展開に、フリー、アヴァンギャルドな展開が見え隠れする、トータル・ジャズである。

Bobby Hutcherson (vib, marimba), Todd Cochran (p, arr), Oscar Brashear (tp, flh), George Bohanon, Louis Spears (tb), Willie Ruff (French horn), Fred Jackson, Jr. (piccolo), Harold Land (ts, fl), Delbert Hill, Charles Owens, Herman Riley, Ernie Watts (reeds), William Henderson (el-p), Reggie Johnson, James Leary III (b), Leon "Ndugu" Chancler, Nesbert "Stix" Hooper, Woody Theus (ds), Warren Bryant (congas, bongos), Donald Smith (vo)。
 

Bobby-hutchersonhead-on

 
1960年代の新主流派的なアプローチから一歩踏み出し、アフロ・スピリチュアル、フリー・ジャズ、クラシカルな現代音楽の要素を融合させた、非常に尖った内容の「異色かつ野心的な傑作」である。いわゆる1970年代、チック・コリアやキース・ジャレットらが推進した、コンテンポラリーなメインストリーム志向の硬派な純ジャズと同じ音の響きが、音の輝きが充満している。

アルバムには、1960年代に無い、新しいモダン・ジャズの響きが満ち満ちている。映画音楽のようでもあり、クラシカルで前衛的なインプロヴィゼーション、混沌としたフリー・ジャズの色合いが濃厚ディープな展開、ソリッドなリズムと特異なアフロ・キューバン調のビートが絡み合うスピリチュアル・ジャズ。洗練された耽美な響きの中に、鋭い緊張感が走る、1970年代のモード・ジャズ。

東海岸のジャズの、限りなく自由度の高い、マイルス&マイルス門下生を中心とする、エレクトリック前提のクロスオーバーな音世界と、西海岸ジャズから引き継がれた洗練されたキャッチーな展開が融合した、1970年代の先端を行く、コンテンポラリーなメインストリーム志向の硬派な純ジャズの萌芽がこのアルバムに溢れている。ブルーノートの4300番台の後半という位置づけで、ちょっとばかし「損をしている」隠れ名盤である。
 
 

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『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2026年6月15日 (月曜日)

BNの超異端なソウル音楽です

これはもはや「ジャズ」と呼ぶにはちょっと憚られるアルバムである。ドナルドソンがエレクトリック・アルトサックス(Varitone)を導入、ファンキーなグルーヴに幽玄な女性コーラスを融合させた、ブルーノート4300番台の異色盤である。ジミー・ブリッグスがアレンジを手掛け、3人組の女性ボーカル・グループ「エッセンス」のスピリチュアルでメロウなコーラスが全編にフィーチャーされている。

Lou Donaldson『Cosmos』(写真左)。1971年7月16日、「Van Gelder Studio」での録音。ブルーノートの4370番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (varitone as), Ed Williams (tp), Leon Spencer (org), Melvin Sparks (g), Jerry Jemmott (el-b), Idris Muhammad (ds), Ray Armando (congas), Mildred Brown, Rosalyn Brown, Naomi Thomas (vo)。

録音、リリースされた1971年という時代においては、このアルバムは、ブルーノートの「その時代時代の」正統派ジャズを追いかけてきたジャズ者(ジャズ・マニア)の方々からすると、相当に面食らったであろう、従来のメンストリーム系のジャズから大きくかけ離れた、ここまできたら、ジャズ・ファンク志向のソウル・ミュージックとしたほうが落ち着きが良い。
 

Lou-donaldsoncosmos

 
この演奏を「ソウル・ジャズ」とするには無理がある。確かにバックの伴奏はジャズ・ファンク志向の優れたものではあるが、3人組の女性ボーカル・グループ「エッセンス」のスピリチュアルでメロウなコーラスがあまりに前面に出ている、そして、このコーラスがどう聞いても、ジャズ・コーラスには聴こえない(笑)。R&B志向のソウル・コーラスである。ブルーノートの1500番台から4300番台の諸作の中で、ここまで、ジャズからかけ離れた音作りをした盤は無い。

当時の最先端ポップス・R&Bのカバーを中心としつつ、宇宙的(Cosmos)かつ、サイケデリックでスピリチュアルな浮遊感(女声コーラスとバリトーン・アルトサックスが担っている)をミックスした内容は後のフュージョン・ジャズ後期のブラコン・フュージョンに繋がる音作りではあるが、当時としては、ジャズという切り口から見れば、完全に「異端」な内容ではある。ジャズ・ファンク〜ソウル・ジャズとして聴いたら違和感満載(笑)。

ジャズ・ファンク志向のソウル・ミュージックとして聴くと、すんなりと腹落ちする。音楽的に「悪い」音楽ではない。ストレート・アヘッドなジャズを「ジャズ」とするなら、このアルバムは「ジャズじゃない」。でも、1990年代以降のレア・グルーヴやアシッド・ジャズ、さらにはヒップホップにおけるサンプリングの切り口から聴けば、1970年代前半ならではのジャズ・ファンクの好盤となるから面白い。
 
 

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2026年6月11日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・325

コルトレーン時代のような4ビートのアヴァンギャルド・ジャズにとどまらず、ジーン・パーラが一部でエレクトリック・ベースを導入、ボサノヴァ調のリズムとファンキーなベースラインが融合し、後のスピリチュアルなジャズ・ファンクの先駆けとも言えるキャッチーなサウンドが興味深い。

Elvin Jones『Genesis』(写真左)。1971年2月12日、Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ での録音。ブルーノートの4369番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell, Dave Liebman (ts, ss), Frank Foster (ts, fl, cl), Gene Perla (b)。エルヴィンの1970年代前半のマルチ・リード編成の幕開けを告げた、記念碑的なアルバム。

このところの十八番である「ピアノレス・クインテット」。ピアノ(コード楽器)を排除し、3人の強力なサックス奏者とベース、ドラムという編成を採用。これにより、独自の「空間的な広がり」と自由度の高いインプロが展開されている。ここにきて、マルチ・リードのフロント編成に落ち着いた模様。マルチ・リードのフロント管によって、コルトレーン色が一掃されるのだから、ジャズにおいて、演奏の編成も重要な要素なのが良く判る。
 

Elvin-jonesgenesis  

 
ハード・バップの力強さを残しつつ、70年代特有のスピリチュアル・ジャズやジャズ・ファンクの要素も内包した、当時として先駆的な「ポスト・バップ」な音世界。エルヴィンの複雑に絡み合うポリリズム(多重リズム)と激しいドラムロールが、バンド・パフォーマンスを極限までドライヴさせているのが印象的。ジーン・パーラのファンキーなベースワークも聴きどころ満載。

フランク・フォスター、デイヴ・リーブマン、ジョー・ファレルの3本テナーが基本の、重厚な3管フロントのブロウが強力だが、フォスターが持ち替えるアルト・フルート、アルト・クラリネット、ファレルとリーブマンのソプラノ・サックスが、色彩豊かなアンサンブルを生み出しているところも注目である。

この『Genesis』で「マルチ・リードによるピアノレス・クインテット」という独自のフォーマットを確立したエルヴィン。ここにきて、「コルトレーン・クァルテットの影」からの完全な自立を果たしたように感じる。エルヴィン印のポスト・バップの方向性の大本がこのアルバムにある。ここから、エルヴィンのポスト・バップの快進撃が始まる。
 
 

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2026年6月10日 (水曜日)

絶望を癒やす瞑想ジャズの聖典

夫君であった巨匠ジョン・コルトレーンの逝去(1967年)という深い喪失感のなか、アリスが東洋思想やヒンドゥー教の導師スワミ・サッチダーナンダ(Swami Satchidananda)との出会いを通じて、自らの精神的救済と覚醒を音楽へと昇華させた、「アリスの考えるスピリチュアル・ジャズ」の最初の成果である。

Alice Coltrane『Journey in Satchidananda』(写真左)。1970年7月4日(track :5)、NYの「Village Gate」でのライブ録音。1970年11月8日(track :1ー4)、ニューヨーク州ディックスヒルズにあるコルトレーンの自宅スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

1970年11月8日(track :1ー4)は、Alice Coltrane (harp, p), Pharoah Sanders (ss, perc), Cecil McBee (b), Rashied Ali (ds), Tulsi Sen Gupta (tanpura), Majid Shabazz (bells, tambourine)。
1970年7月4日(track :5)は、Alice Coltrane (harp), Pharoah Sanders (ss, perc), Charlie Haden (b), Rashied Ali (ds), Vishnu Wood (oud)。

アリス・コルトレーンの4枚目のリーダー作。1970年代のスピリチュアル・ジャズの傑作である。1960年代後半、夫君であった、ジョン・コルトレーンが標榜したスピリチュアル・ジャズ。それは、未整理、未成熟、直感的な類の演奏成果で、どうにもこうにも評価しにくい代物であった。
 

Alice-coltranejourney-in-satchidananda

 
しかし、このアリスの『Journey in Satchidananda』は違う。モーダルなジャズとスピリチュアルなジャズを融合し、理路整然としたスピリチュアル・ジャズを成立させている。しかも、しっかりとアレンジされ、しっかりとリハーサルを積んでいるんであろう、非常に整理された聴き易いスピリチュアル・ジャズに昇華されている。

従来のモダン・ジャズの音世界に、瞑想的(メディテーティブ)なドローン・ミュージック、インド音楽、アフリカや中東の民族音楽要素を融合させた、独自の宇宙的音響空間を構築しているところがこの盤の「肝」である。そして、アリスの大々的な、きらびやかで流麗なハープの導入もこの盤の個性。

そして、インドの伝統弦楽器「タンブーラ」が放つ個性的な持続音が、聴き手を深い瞑想状態へと誘うミニマルな土台を作っている。そして、ファラオ・サンダースのむせび泣くような、かつ包容力のあるソプラノ・サックスがエモーショナルな息吹を吹き込んでいる。

本作は、アリスが絶望から立ち直るための精神的ドキュメンタリーであり、ジャズとインド古典音楽の理想的な融合を果たした記念碑的作品。全編通じて、どこか明日を感じさせる様な「明るさ」が印象深い。ジャズとインド音楽の「真の融合」がこのアルバムの中に息づいている。スピリチュアル・ジャズの傑作の一枚。
 
 

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2026年5月26日 (火曜日)

スタイグのスピリチュアルな音

ジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法と、ヘヴィでファンキーなグルーヴが融合した、スタイグのキャリアを代表する傑作の一枚。コルトレーンが標榜した、エモーショナルでフリーキーな吹奏による「スピリチュアル」なジャズを踏襲した雰囲気の「スタイグの考えるスピリチュアル・ジャズ」の音世界が、この盤に蔓延している。

Jeremy Steig『Wayfaring Stranger』(写真)。1970年2月11日、NYの「A&R Studios」での録音。ブルーノートの4354番。ちなみにパーソネルは、Jeremy Steig (fl), Eddie Gómez (b), Sam Brown (g :track 3), Don Alias (ds, perc :tracks 1–4)。ジャズ・フルートの鬼才、ジェレミー・スタイグの6枚目のリーダー作になる。ピアノやキーボードをあえて排除した「コードレス」な変則カルテット編成。

スタイグは、フルートを吹きながら同時に声を出す「ハミング奏法(マルチフォニック)」や、激しいタンギング、オーバードライブ気味のブレス音など、特殊奏法を駆使している。クラシック的な美しさとは無縁な、ロックやブルースにも通じる野生的なトーンが特徴。この野性的なトーンが、スピリチュアルな雰囲気を増幅している。

スタイグのジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法での、フリーキーでスピリチュアルな展開を阻害しない、ピアノやキーボードをあえて排除した「コードレス」な変則カルテット編成。そして、フルートの「避けられない音の細さ」を阻害しないフルート一本のフロント。管楽器などを入れたフロント複数管編成にしたら、フルートの細い音が飛んでしまう。
 

Jeremy-steigwayfaring-stranger  

 
LP時代のA面の「In The Beginning」「Mint Tea」「Wayfaring Stranger」の3曲は、スタイグの考えるフリーキーでスピリチュアルなジャズ・ファンクと伝統の再解釈(アメリカの伝統的なフォーク・民謡を、スタイグ独自の視点で再解釈を。そして、LP時代のB面、「Waves」「All Is One」「Space」の3曲は、エディ・ゴメスとの濃密な対話。このアルバムは、緻密に分けられた2つの表情を持っていることが分かる。

エディ・ゴメスのベース、ドン・アライアスのドラム&パーカッションのリズム&ビートが凄まじい。この2人のリズム隊があるからこそ、ふろんとのスタイグは安心して、フリー&スピリチュアルな、ジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法でのフルートを吹きまくることができる。

また、本作ではスタイグのフルートが何層にも重なって聴こえる場面があるが、これは当時の最先端技術であるマルチ・トラック(多重録音)を活用し、彼自身が演奏を重ねて独特のサイケデリックな音響空間を作り出している。管楽器とフロントを分け合うと、フルートの音が負ける。といって、フルート一本だと如何にもフロントの音が細くなる。その難点をこのフツーとの多重録音でカバーしている。

そういう意味で、この盤は、ブルーノートの4300番台には珍しい、純ジャズ志向の、当時のトレンディな演奏形態であるフリー&スピリチュアル・ジャズを志向したプロデュース&アレンジがしっかりとなされた、メインストリーム志向の純ジャズなアルバムに仕上がっている。
 
 

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2026年5月18日 (月曜日)

「ジャッキー&ロイ」の異色作

ジャッキー&ロイは、ジャス・ボーカルのデュオ。スインギーで軽快でポップなスタイルがメイン。しかし、このアルバムは、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルな演奏、ボーカルを基本とした「ポスト・バップ」な、実にジャズとして、アーティステックな内容を追求した、デュオ・ボーカルのアルバムになっている。これは、他にほどんと類を見ない。

Jackie Cain & Roy Kral『A Wilder Alias』(写真左)。1973年12月の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie Cain (vo), Roy Kral (vo, el-p arr), Roy Pennington (vib), Joe Farrell (ts, ss), Hubert Laws (fl), Harvie Swartz (b), Steve Gadd (ds)。いわゆる「ジャッキー&ロイ」の異色作である。

最もアヴァンギャルドで実験的な「異色作」。エレクトリック・ジャズをベースとしたスピリチュアル・ジャズ、そして、プログレッシヴなクロスオーバー・ジャズをベースとしたジャズ・ボーカルのチャレンジしている。加えて、米国ジャズっぽくない、欧州ジャズにも通じる浮遊感のある心地よいサウンドが耳に新しい。
 

Jackie-cain-roy-krala-wilder-alias   

 
そして、最大の特徴は、「声」を楽器として扱った、歌詞のない世界。実際の「歌詞」があるのは2曲目の「Niki's Song」のみ。それ以外の楽曲はすべて歌詞を持たない「スキャット(ワードレス・ヴォーカル)」で歌われている。この「声」を楽器として扱う「スキャット」で、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルなフレーズを唄い上げていく。

バック・バンドの演奏もふるっている。まず、ガッドのドラミングに耳を奪われる。正確無比でファンキーなドラムブレイク、さらに変拍子やラテンビートへの適応は素晴らしいの一言。限りなく自由度の高いモーダルな、ファレルのサックスとロウズのフルートが、ジャッキー&ロイのスキャットとスリリングに絡み合い、絶妙なインタープレイを繰り広げる。これがまあ「聴いたことがない」インプロの響き。「声」の楽器があまりにユニーク。

このアルバムの名義は「Jackie & Roy」という親しみやすいユニット名ではなく、あえて「Jackie Cain & Roy Kral」と本名をフルネームでクレジットした点も含め、これまでのポップなイメージを離れて、アーティステックな内容を追求したシリアスなアルバムを作る、という二人の強い意志と矜持を感じる。
 
 

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2026年5月 8日 (金曜日)

サンタナとアリスとのコラボ

この作品は、サンタナがインドの導師シュリ・チンモイに師事し「デヴァディップ(Devadip)」という霊名を受けた時期に制作されている。ジョン・コルトレーンの妻であり、自らも優れたピアニスト・ハープ奏者であるアリス(霊名トゥリヤ)との共演は、サンタナのキャリアにおいて最も瞑想的で、ジャズの即興演奏に深く踏み込んだものとなっている。

Carlos Santana,Alice Coltrane『Illuminations』(写真)。邦題「啓示」。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。スピリチュアル・ロックの雄、カルロス・サンタナと、スピリチュアル・ジャズの歌姫、アリス・コルトレーンとのコラボレーション盤である。

Alice Coltrane (p, harp, Wurlitzer electric organ), Carlos Santana (el-g), Dave Holland, James Bond (b), Jack DeJohnette (ds, perc), Tom Coster (el-p, Hammond B-3 organ), Jules Broussard (ss, alto-fl), Phil Brown (tanpura), Armando Peraza (ds, congas), Phil Ford (tablas)。ここに、アリス・コルトレーンがアレンジ&指揮を担当するストリングス・セクションがバックに入る。

アリスによる壮大なストリングス・アレンジとハープ、サンタナの官能的なギターが溶け合い、東洋的な響きと宇宙的な広がりを持っている。アルバムは、シュリ・チンモイによる短いモノローグから始まり、瞑想的な前半から激しい即興演奏の後半へと展開する。そう、この冒頭の「Guru Sri Chinmoy Aphorism(スリ・チンモイの教え」の1分11秒に怯んではいけない(笑)。
 

Carlos-santanaalice-coltraneillumination

 
オーケストラによる「静」。前半の「Angel of Air」や「Angel of Water」では、アリスが編曲・指揮した壮大なストリングス・オーケストラが導入されている。サンタナのギターは音数が極めて少なく、フィードバック音やサステインを活かしたアンビエントな響きで、背景のハープや弦楽器と溶け合っている。

フリージャズの「動」。 中盤の「Angel of Sunlight」は約14分に及ぶ大作で、ジャック・ディジョネットの激しいドラミングとデイヴ・ホランドのベースが牽引する、ジョン・コルトレーン後期のスタイルに近いアグレッシブなフリージャズを展開されていて見事。

この瞑想的な「静」と、フリージャズ的な「動」の対比が鮮明なのが、この盤の個性だろう。ウーリッツァー・オルガンの音色も特徴的。アリス・コルトレーンがピアノやハープだけでなく、歪んだ音色のオルガンを弾くことで、宇宙的な広がりを加えている。サンタナのエレギは、「弾かない」勇気とロングサステイン、クリーンと歪みの使い分け、フィードバックを「楽器」として操り、スピリチュアルな「叫び」を表現する。

当時の商業的な成功には恵まれなかったが、現在では「スピリチュアル・ジャズの隠れた名盤」として高く評価されている。サンタナの2面性、ラテン・ロックとスピリチュアル・ロック、このスピリチュアル・ロックの個性が、アリス・コルトレーン独特のスピリチュアル・ジャズと融合して、唯一無二の、他に類を見ない、ロックとジャズが融合した「スピリチュアル・ジャズ」を生み出している。
 
 

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2026年5月 7日 (木曜日)

アリスのスピリチュアルを見直す

アリス・コルトレーンが、インパルスからワーナー・ブラザース・レコードへ移籍した第一弾として1976年に発表した、スピリチュアル・ジャズの金字塔的作品である。オーケストラからトリオまで多彩な編成で、アリス・コルトレーン独自のスピリチュアル・ジャズを創出している。

Alice Coltrane『Eternity』(写真左)。邦題「永遠なる愛」。1975年8月13日〜10月15日の録音。ちなみにパーソネルは、核となるリズム・セクションは、Alice Coltrane (org, harp, el-p, tambura), Charlie Haden (b), Ben Riley (ds), Armando Peraza (congas)。主なゲストは、Hubert Laws (fl), Jerome Richardson(ss, alto-fl, Ernie Watts (english-horn), Oscar Brashear (tp), George Bohanon(tb)など。

演奏のアレンジが彼女独特なところがあって、スピリチュアル・ジャズとは言っても、精神性を楽器の吹き上げ、嘶きに託すような、一種、社会性を孕んだ、フリー・ジャズの延長線上のスピリチュアル・ジャズではなく、精神面を前面に押し出した、精神性を楽器それぞれの響きに託す、そんな一種、宗教性を孕んだ、限りなく自由度の高いモード・ジャズの延長線上にある、精神性の高いスピリチュアル・ジャズである。

振り返ってみると、アリスの様な精神性、宗教性の高いスピリチュアル・ジャズは、他に無かった様な気がする。

音の傾向からすると、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」に親和性が高いが、アリスのスピリチュアル・ジャズは、ブラック・ミュージックの音要素が濃い。ECMのスピリチュアル・ジャズは、欧州のレーベルだけ合って、ブラック・ミュージックの音要素は皆無。音の裏に潜む宗教性についても、アリスはあくまで「米国」、ECMはあくまで「欧州」である。
 

Alice-coltraneeternity

 
このアルバムには、そんなアリス・コルトレーン印のスピリチュアル・ジャズの代表的演奏がギッシリ詰まっている。亡き夫ジョン・コルトレーンへの愛を捧げた作品とされ、ハープ、オルガン、さらにはインドの伝統楽器やストリングスを駆使した壮大なサウンドが特徴。ハープやオルガンを演奏するだけでなく、管弦楽団を含む大規模な編成を指揮した野心作で、アレンジも演奏もそのレベルは高く、アリスのスピリチュアル・ジャズの代表作の一枚と言って良いと思う。

印象的な曲としては、4曲目の「Om Supreme」では、6人の男女混声合唱団が加わり、ヒンドゥー教の聖歌(バジャン)をテーマにした幻想的なサウンドを創出、ラストの6曲目「Spring Rounds」は、ストラヴィンスキーの『春の祭典』を引用した曲で、大規模なブラス・セクションとストリングス(バイオリン、ヴィオラ、チェロなど計12名以上)が導入されていて、壮大なスピリチュアル・ジャズが展開されている。

本作が録音された1975年から1976年にかけて、アリスは生涯最大の転換期を迎えており、「俗世を離れ、ヒンドゥー教の修行者(スワミ)として生きる」という啓示のもと、宗教家として「出家」を果たしている。この宗教家としての「出家」が、今までのフリー・ジャズ的展開の中に潜んでいた「宗教性」が、より具体的で崇高な「祈り」の形として表出した結果が、このアルバムに色濃く反映されている様に思う。

今まで、どうも、ジョン・コルトレーンと演奏を共にしていた頃のスピリチュアル・ジャズの印象が、自分の頭の中に色濃く残っていて、今まで、アリスのスピリチュアル・ジャズはちょっと敬遠していたのだが、今回、このアルバムをひょんなことから聴いてみて、最初の印象が「これ、プログレッシヴ・ロックに近いやん」。

精神性、宗教性が色濃く、基本的にブラック・ミュージックとジャズに軸足をしっかり残してはいるが、基本的に統制の取れた、しっかりとコントロールされたスピリチュアル・ジャズだと思う。
 
 

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2026年5月 6日 (水曜日)

スピリチュアル+ブラジリアン

ブルーノートの4300番台のアルバムらしいアルバムである。ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアニストだったデューク・ピアソンが、突如、ボサノヴァとコーラス・アンサンブルが融合を融合した、摩訶不思議な、ポップでスピリチュアルなリーダー作をリリースしている。

Duke Pearson『How Insensitive』(写真左)。1969年4月11,14日、5月5日の録音。ブルーノートの4344番。ちなみにパーソネルは以下の通り。ピアニストであり、プロデューサーとして後期ブルーノートを支えたピアソンが、スピリチュアル・ジャズとブラジリアン・ジャズへの傾倒を反映させた作品。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) は、 Duke Pearson (p, el-p, arr), Al Gafa (g), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Airto Moreira (perc), Andy Bey (lead vo), The New York Group Singers' Big Band。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)は、Duke Pearson (p, el-p, arr), Bebeto Jose Souza (b), Dorio Ferreira (g, perc), Flora Purim (lead vo),

初リリース時、LP時代の収録曲は、収録曲は、A面がコーラスを主体としたスピリチュアル・ジャズ、B面がブラジリアン・ジャズという構成に分かれている。どういう意図でこういう収録形態になったのか、思わず首を捻ってしまう。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) では、17名の男女混声合唱団(ニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンド)を起用し、幻想的で透明感のある、スピリチュアルなサウンドを作り上げている。
 

Duke-pearsonhow-insensitive  

 
冒頭の「Stella by Starlight」がその最たる例で、出だしは、ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノソロが、ハードップ時代の良き雰囲気を醸し出すが、いきなり17名の男女混声合唱団のコーラスが出てきて、はっきり言って「戸惑う」。バックのピアソンのバップ・ピアノがとても良いフレーズを叩き出しているので余計に、である。

この「17名の男女混声合唱団」のコーラスが、ファンキー&ソウルフルではあるが、コーラスの雰囲気は「ポップ」。上質でポップな混声合唱には、どこか敬虔な響きが漂って、ところどころゴスペルチックで、まるでポップな賛美歌を聴いている様な面持ち。しかし、この「17名の男女混声合唱団」のコーラスの必然性が全く理解できない。

ポップなゴスペルチックな男女混成合唱がメインなのか、リーダーのピアソンを始めとする純ジャズにポップなゴスペルチックな男女混成合唱が彩りを添えているのか、聴き方の力点の置き方が難しいアルバムになっている。賛美歌的な響き、ゴスペルチックな響きを前面のに押し出し、スピリチュアル・ジャズの側面を前面に押し出そうとしているのは理解出来るのだが。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)では、7曲目の「Sandalia Dela」のコッテコテのボサノバ・ジャズには、更に「戸惑う」。フローラ・プリムのボサノバチックな歌唱が前面に押し出されている。8曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera)」以降「Tears (Razao De Viva)」「Lamento」もゴスペル・ジャズ。

ピアソンのファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノをメインとするジャジーな演奏に、ポップでファンキーでゴスペルチックな「17名の男女混声合唱団」のコーラスが絡む、意外とスピリチュアル・ジャズ的側面は軽くてポップな、摩訶不思議な雰囲気のスピリチュアル&ボサノバ・ジャズとして良いのでは、と思う。ピアソンのピアノだけ取りあげれば、これはこれで申し分無いんだけどなあ。
 
 

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2026年5月 5日 (火曜日)

ボーカル入りのハッチャーソン

ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。モーダルであり、フリーであり、アーティステックである。ハッチャーソンは意外と硬派なミュージシャンで、この「新主流派のジャズ・ヴァイブ」のスタイルを生涯貫き通した。が、このアルバムで、とんでもない寄り道をする。

Bobby Hutcherson『Now!』(写真左)。1969年10月3日 (#2–3)、11月5日(#1, 4–5) の録音。ちなみにパーソネルは、以下のとおり。2004年のCDリイシュー時、1977年8月13日の録音がボートラとして4曲追加されているが、今回は、オリジナルの5曲に絞ってのみ、この記事をまとめている。

1969年10月3日 (#2–3)は、Bobby Hutcherson (vib, marimba), Harold Land (ts), Kenny Barron (p), Wally Richardson (g), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Candido Camero (congas), Gene McDaniels (lead vocals), Hilda Harris, Albertine M. Robinson, Christine Spencer (backing vocals)。

1969年11月5日(#1, 4–5) はBobby Hutcherson (vib), Harold Land (ts), Stanley Cowell (p, el-p), Wally Richardson (g), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Candido Camero (congas, bongo), Gene McDaniels (lead vocals), Eileen Gilbert, Christine Spencer, Maeretha Stewart (backing vocals)。

このアルバムの最大の特徴は、ハッチャーソンのリーダー作として初めてボーカル(合唱)を全面的に取り入れたこと。というか、それまでの「新主流派」ヴァイブの雄、モード&フリーなヴァイブを誇ったハッチャーソンが、いきなりボーカルを取り入れた。
 

Bobby-hutchersonnow

 
それは、冒頭の「Slow Change」の出だしから始まる。いきなり、男性ボーカルが、それも、ソウルフルな、R&Bなボーカルが入って、ゴスペルな女声コーラスがバックで唄う。

しかし、バックの演奏はと耳を傾けると、ハッチャーソンのヴァイブ以下、ハロルド・ランドのテナーなど、かなり硬派は新主流派ジャズをやっている。モード、時々フリーなアドリブ部の展開は水準以上の優れた演奏。

それを思うと、そもそも、このアルバムにボーカルが必要だったのか、と思ってしまう。歌詞の内容は、社会的メッセージがメインで、当時のアフリカ系アメリカ人の権利意識や精神的連帯を反映していて、かなり直接的なアジテーションで、ジャズには向かないと僕は思う。

ボーカルが入ったお陰で、当時、流行中のスピリチュアル・ジャズな雰囲気や、サイケデリック・ジャズな音要素が吹かされてはいるが、ここまで、場違いなボーカルを充てられると、このアルバムをどう聴いてよいのかが判らなくなる。ただ、ラテン・パーカッションやファンキーな要素を融合させた「レア・グルーヴ」的な側面も持っているので、そちらの方面に興味が強いジャズ者の方々には興味深い内容になるだろう。

ただ4曲目の「The Creators」だけは、ハロルド・ランドのテナーとハッチャーソンのヴァイブ、スタンリー・カウエルのエレピが大活躍、モーダルでスピリチュアルな整然とした即興演奏的な展開で、ゴスペルチックな呪術的な女性コーラスと相まって、スピリチュアルなモード・ジャズの演奏として、抜群の成果を上げている。この1曲だけは聴き逃せない。
 
 

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