多国籍な変則トリオの化学反応
ジャズ・ベースのチャーリー・ヘイデン。彼のベースは変幻自在。モード・ジャズ、フリー・ジャズ、は、もとより、ジャズの即興演奏をメインとした「ニュー・ジャズ」と、完全適応する演奏トレンド&フォーマットは多岐に渡る。しかし、面白いのは、ヘイデンは自分の奏法と音を、演奏トレンド&フォーマットによって、変えることは無い。
Charlie Haden, Jan Garbarek, Egberto Gismonti『Folk Songs』(写真左)。1979年11月、ノルウェー、オスロの「Talent Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Haden (b), Jan Garbarek (ss, ts), Egberto Gismonti (g, p)。ECMの1170番。ドラムレスの変則トリオ編成。ECMの「ニュー・ジャズ」である。
ジャズとワールド・ミュージックを融合させた即興演奏。4ビートがメインの、ハードバップでもなければ、モード・ジャズでも無い、非4ビートの即興演奏をメインとしたジャズ。僕はそれを「ニュー・ジャズ」と呼んでいる。この盤は、そんなECMの典型的なニュー・ジャズ。ECM独特の音世界の中、雰囲気のあるアンサンブルが満載。
ガルバルクのサックスがアルバム全体の「基本の音世界」を提示する。透明度の高い、力感溢れる、ストレートな「欧州サックス」。そこに、ジスモンチのギターとピアノが、ワールド・ミュージック的彩りを添える。
ガルバレクのサックスの音がアルバム全体に響き渡る。欧州のサックスの音そのもの。そこに、ジスモンチのアコギが入る。米国フォーキーなネイチャーなアコギの響き。少し、PMGでのパット・メセニーのアコギを彷彿とさせる。そして、ジスモンチの十八番、ブラジリアン・フレーバーなアコギの響き。ガルバレクがセットアップした欧州の響きをガラリと「ブラジル」に変える。
面白いのは、ジスモンチのピアノ。ジスモンチのピアノは、良い意味で「無国籍」な響き。欧州でもなければ、米国でもなければ、ブラジルでも無い。透明度の高い無垢な響きのピアノ。ジスモンチのピアノをバックにガルバレクがサックスを吹くと、そこは「欧州の音世界」にガラリと変わる。
そんなガルバレクとジスモンチの二人の即興演奏の「底」を、ヘイデンの骨太でソリッドで「思索的」なベースが支え、ジャズとワールド・ミュージックを融合させた即興演奏のど真ん中を、明確で切れ味の良いベース・ラインで貫く。ヘイデンのベースが、このセッションのリズム&ビートをコントロールし、ガルバレクとジスモンチのパフォーマンスを鼓舞し、さらなる高みのパフォーマンスを引き出している様に聴こえる。
ECMのアイヒヤーだから為し得た多国籍な変則トリオ。ドラムレスだからこそ、ヘイデンのベースの自由度が増し、それに呼応する様に、ガルバレクとジスモンチのパフォーマンスの自由度が更に高まっている。ECMマジックによる、3者の化学反応が堪能出来る。
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