2026年4月26日 (日曜日)

『Here’s Lee Morgan』再聴

2025年リマスターとのこと。確かに、楽器毎の解像度が上がり、楽器の音が生音に近い鮮度を保っている。そのお陰で、リー・モーガンのトランペットがとても魅力的に響いている。コンディションも良かったのだろう、モーガンのトランペットは絶好調。オープンにミュートにその妙技を存分に発揮している。

Lee Morgan『Here's Lee Morgan』(写真左)。1960年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Clifford Jordan (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。メンバーを見渡すと、この盤、絶対ええ音だしてるに決まってる、と確信する。ジャケットはちょっとレトロっぽくて平凡、これでちょっと損をしているが、内容は折り紙付き。

リマスターのお陰か、トランペットのブラスの響く音が、キラキラ輝くように耳に届いてくる。マウスピースと唇の間で漏れる音が聴こえてきそうなほど、生々しい。モーガンのミュート・トランペットを愛でることの出来る盤って、意外と少ないのだが、この盤ではモーガンのミュート・プレイをしっかりと確認出来る。
 

Heres_lee_morgan_2

 
それと、このリマスター盤では、クリフォード・ジョーダンのテナーが前面に出てきていて、ジョーダンのテナーの個性と特徴が露わになっている。少しフリーキーに、モーダルなフレーズをヴァイタルに吹きまくるジョーダン。ダンディズム溢れる雄々しきフレーズが魅力的。バラード・プレイも情感たっぷり。今までの音源では、この盤で、ジョーダンのテナーを気にしたことがなかったのだが、このリマスター盤で、大いに見なおした次第。

ケリーのピアノはクールに、ブレイキーのドラムは熱く、特に、モーガンとケリーとの絡みは相性抜群。ブレイキーの煽りもモーガンには心地良いと感じる様だ。ブレイキーが煽れば煽るだけ、モーガンは素敵なトランペットを吹き上げていく。そして、ベースのチェンバースは何時になく熱気溢れるベースラインを聴かせてくれる。こういうことが、この2025年リマスターでは、当たり前の様に聴くことが出来るのである。

この盤はモーガンのトランペットの魅力が最大限に発揮された傑作の一枚である。この2025年リマスターを聴いて、再認識した。この盤と『Expoobident』『The Young Lions』を僕は勝手にVee-Jay三部作と読んでいるが、いずれの盤でも、モーガンのトランペットは絶好調。『Expoobident』『The Young Lions』の最新リマスターを聴いてみたいものだ。
 
 

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2026年2月 2日 (月曜日)

ファーマーのハッピーな好盤です

2月に入って、そろそろ「立春」。暦の上では「これ以上寒くなることはない」。冬来たりなば、春遠からじ、というが、まだまだ寒さ、冷えは続く2月。ジャズ盤の鑑賞は、暖房のしっかり入った部屋で、冬寒の外の風景を見ながらの、ちょっと内省的な鑑賞スタイルになったりする。

Art farmer Quintet『The Time and the Place』(写真左)。1967年2月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。もともとライブ・アルバムとして扱われていたが、実際にはスタジオで録音され、観客の拍手やざわめきはオーバーダビングされた「擬似ライヴ盤」。確かに、観客の拍手などは人工的な感じがする。

決して、有名盤でも無いし、エヴァーグリーンな名盤でも無い。それでも、この盤は、ソウルフルでハッピーな演奏が特徴のファンキー・ジャズの好盤だと僕は思う。演奏自体がシンプルなハードバップ〜ファンキー・ジャズで占められていて、それでいて、懐古趣味的雰囲気は全く無い。どちらかといえば、1967年という録音年の先、1970年代のハードバップを志向している様な雰囲気で、古さは全く感じ無い。
 

Art-farmer-quintetthe-time-and-the-place

 
ジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」と、さすが、ハードバップの多様化を経ての1960年代後半の録音。バラエティーに富んだ曲想、演奏志向で、聴き手として、とても良い変化を付けた演奏の数々が「イケてます」。

フロントの相棒のヒースのテナーも趣味良く快調、ピアノのウォルトンが率いる、ブッカーのベース、ローカーのドラムの1960年代ハードバップ志向のリズム・セクションも、シャープで小粋なリズム&ビートを供給する。このリズム・セクションの叩き出すリズム&ビートも懐古趣味のかけらもない。1960年代後半のトレンドど真ん中のリズム&ビートが洒落てます。

ジャズ盤紹介には、まず上がって来ないアルバムで、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさが、このアルバムの評価を下げているようですが、アート・ファーマー・カルテット自体の演奏としては良好なもので、ジャズ者初心者からベテランまで、どのレベルのジャズ者の方々も、それぞれの感覚で楽しめる好盤だと思います。
 
 

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2025年12月28日 (日曜日)

ナットの極上のソウル・ジャズ

ナット・アダレイはトランペッター。コルネットも得意とする。アルト・サックスの雄、キャノンボール・アダレイの実弟。その音楽性は、兄のキャノンボールとのバンドの音楽性を踏襲、ファンキー・ジャズ〜ソウル・ジャズを得意とする。その中で、ソウル・ジャズに手を染めることから、コルネット使用の度合いが増え、コルネットが、ジャズに適応することを証明した、ジャズ・コルネットの第一人者でもある。

Nat Adderley『Sayin' Somethin'』(写真左)。1966年2月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Joe Henderson (ts), Ernie Royal (tp), Artie Kaplan, Seldon Powell (sax), J.J. Johnson (tb), Al Gorgoni, Billy Suyker (g), Herbie Hancock, John Asbury, Paul Griffin (p), Bob Cranshaw, George Duvivier (b), Herb Lovelle, Roy McCurdy (ds), George Devens (perc)。

ナット・アダレイのコルネットに、テナー、トランペット、サックス、トロンボーン、の5管のフロントに、ギター入りのピアノ・トリオのリズム隊の4人が加わった、最大ノネット編成の、バリバリの「ソウル・ジャズ」。リズム&ビート、そして、フレーズの展開が、モータウンを始めとしたR&Bを志向していて、演奏全体の雰囲気は、完璧な「ソウル・ジャズ」。
 

Nat-adderleysayin-somethin  

 
ナット・アダレイは、1960年代のソウル・ジャズの発展と確立に大きく貢献したジャズマンのひとり。その成果の一つがこの『Sayin' Somethin'』。この盤では、コルネットが、豊かで土臭い音色を奏でることができ、それが彼の特徴的な音色の個性となっているが、その一端をこの盤で明確に確認することが出来る。

バックの演奏も、完璧にソウル・ジャズしている。その中で、モーダルなうねうねテナーのジョーヘンが、モーダルうねうねなソウル・ジャズなフレーズを吹いていてるのが実にユニーク。逆に、ハンコックのピアノは、完璧にナットのファンキー〜ソウル・ジャズを理解して、彼のソウル・ジャズがさらに映えるピアノを展開している。バックの楽器のユニゾン&ハーモニーもしっかりソウル・ジャズしている。アレンジが優れているのだろう。

ソウル・ジャズの発展と確立に大きく貢献したナット・アダレイが、当時、ブルーノートから、若手売出し中の、ジョー・ヘン、 ハンコックを含むスペシャルなパーソネルで録音した、ソウル・ジャズの秀作。聴いていて、知らず知らずのうちに、足踏みでリズムを取り、ソウルフル濃厚な演奏では、思わず腰が動く。お手本の様なソウル・ジャズが展開されるナットの好盤。ポジティヴに明るくジャズを聴くに適したアルバムです。
 
 

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2025年11月 5日 (水曜日)

ハレルの現代の ”ポストバップ”

不思議な雰囲気のコンテンポラリーなネオ・ハードバップな作品。ハードバップ時代の流麗なテーマに、エレクトリックピアノで活気づけられたより現代的なグルーヴが融合した、ジャズの伝統と現代性を見事に融合した現代のコンテンポラリー・ジャズの秀作である。

Tom Harrell『Alternate Summer』(写真左)。2022年11月28日、12月27日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp), Dayna Stephens (ts), Mark Turner (ts), Charles Altura (ac-g, el-g), Luis Perdomo (p, rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。

リーダーはトランペットのトム・ハレル。デイナ・スティーブンス、マーク・ターナーのテナー、チャールズ・アルトゥラのギター、ベネズエラ生まれのルイス・ペルドモのピアノ、ローズ、ドイツ系ナイジェリア人のウゴナ・オケグウォのベース、アダム・クルーズのドラム のセプテット編成。

アルバムの中、トム・ハレルのトランペットは、いつもながら、素晴らしい表現力と深みのある音色で、楽曲全体のサウンドを統一し、一本の筋をグッと通している。
 今回のハレルは、伝統的なバップ・トランペットに終始しているが、出てくるその柔軟でどこか哀愁感漂う、耽美的でリリカルなトランペットは懐古趣味のそれではない。現代のネオ・ハードバップど真ん中の、現代のバップ・トランペットの音色であり、パフォーマンスである。
 

Tom-harrellalternate-summer

 
冒頭「Miramar」は、スタッカートを基調としたメロディーと、独創的な即興演奏を彩るブルージーでグルーヴィーなフレーズがユニーク。ハレルのトランペットの洗練された表現が見事、サックス奏者のターナーとキーボード奏者のペルドモが豊かでメロディアスな旋律を紡ぎ上げる。

2曲目の「Peanut」は、ファンクネスを心地良く漂わせるポスト・バップなチューン。3曲目のタイトル曲「Alternate Summer」は、温かみのあるさわやかなバラード。

以降、「Intermetzo」は、オケグウォの素晴らしいベースソロと官能的な響きが彩る、上品な3/4拍子の楽曲。「UV」は、アルトゥラのしなやかなエレギが飛翔する変則ブルース。「Chalcedon」は、魅惑的なメロディとペルドモのグルーヴ感溢れるキーボード・ワークが光るポストバップの秀曲。

そして、「Plateau」は、脈打つリズムのベースが大活躍。「Wind」は、躍動感あふれるインタープレイが見事、そして、陶酔感あふれる「Radius」で大団円。

ウォームな各楽器の音色、各楽器のバランスの良さ、録音も良く、聴いていて気持ちが良い。現代のネオ・ハードバップど真ん中、現代のコンテンポラリーなポストバップな音世界は、温故知新な音に満ちていて、飽きが来ない。良いアルバム、トム・ハレルの秀作です。
 
 

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2024年12月13日 (金曜日)

聴いて楽しい「カーソン盤」

テッド・カーソン(Ted Curson)。米国フィラデルフィア出身のトランペッター。1956年に、マイルス・デイヴィスの勧めで、ニューヨークに移住。1950年代後半から1960年代前半にかけて、セシル・テイラーと共演。1960年代前半には、チャールズ・ミンガスと共演。その後はソロとして活動。20枚ほどのリーダー作をリリース。2012年11月、享年77歳で鬼籍に入っている。

Ted Curson『Fire Down Below』(写真左)。1962年12月10日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ted Curson (tp), Gildo Mahones (p), George Tucker (b), Roy Haynes (ds), Montego Joe (congas)。

硬軟自在で縦横無尽、表現力豊かなトランペットが個性、そのトーンも美しい、知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッター、テッド・カーソンの2枚目のリーダー作。

初リーダー作では、モードをベースにした、自由度が高く、独創的で印象深いアドリブ展開で「ポスト・バップ」なトランペットを披露した。しかし、この2作目のリーダー作では「原点回帰」的な、ハードバップからファンキー・ジャズの雰囲気を色濃く反映した、温故知新なトランペットを披露している。
 

Ted-cursonfire-down-below

 
カーソンのトランペットは、硬軟自在で縦横無尽、表現力豊か、トーンも美しく、明るく端正で誠実なトランペット。大向こうを唸らせる様な、派手なテクニックや吹き回しは無いが、フレーズの展開は明快で誠実。虚勢を張ったり、こけ脅し的なハイノートも無い。とにかく、誠実で分かりやすくウォームでポジティヴなトランペット。

物足りないとか、中庸とか、揶揄されることもあるが、カーソンってクラシックのトランペッターを目指したこともあって、クラシックの整然とした洗練された要素が見え隠れするほど、カーソンのトランペットは、端正で流麗で素性は確か。自己流叩き上げのトランペッターの様な変な癖や偏りが無い。それを捉えて、物足りないとか、中庸とか言うのは、あまりに偏った聴き方かと思う。
 
冒頭、ラテン・テイストが楽しい、コンガ入りで軽快軽妙な「Fire Down Below」から始まり、艶やかなトランペットが芳しい「The Very Young」、小気味良いアレンジが印象的な「Show Me」など、渋い、玄人好みのスタンダード曲の演奏がズラリと並ぶ。明るく端正で誠実なカーソンのトランペットが、ウォームにポジティヴにライトに、スタンダード曲の持つ美しい旋律を唄うかの如く吹き上げ、印象的なアドリブを展開する。

音楽の原点を再確認する様な、聴いて楽しい、聴いてリラックス出来る、カーソンの『Fire Down Below』。何かしながらの「ながら聴き」にも最適。カーソンのトランペッターとしての表現の幅の広さが実感できる佳作だと思います。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

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2021年7月 5日 (月曜日)

レッド・ロドニーの「隠れ名盤」

サヴォイ・レーベルのハードバップらしい音世界は、一度聴き出すとしばらく聴き続けてしまうくらい、魅力的なもの。ブルーノート盤などの「尖った先進的なハードバップ」な音とは全く異なる、ややリラックスした正統でハードバップな演奏なのだが、これが意外と癖になる。

Red Rodney『Fiery』(写真左)。1957年11月、New JerseyのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Red Rodney (tp), Ira Sullivan (ts), Tommy Flanagan (p), Oscar Pettiford (b), Philly Joe Jones (ds : 1to 3 ), Elvin Jones (ds : 4 to 6)。

リーダーのレッド・ロドニーのトランペットと、アイラ・サリヴァンのテナー・サックスの2管フロントのクインテット編成。ドラムはフィリージョーとエルヴィン・ジョーンズを使い分けている。

リーダーのレッド・ロドニーは「1949年〜50年の短い期間であったが、パーカーのもとで、相棒として活躍していた白人トランペッター」として紹介されている。かなり素性の良い、魅力的なトランペットなんだが、ドラッグの悪癖のためにチャンスを逃し、ロドニーのリーダー作やサイドマンとしての参加作品はかなり少ない。
 

Fiery-red-dodney

 
バッパーらしい切れ味の良いブリリアントな音色で、しっかりと気持ちの入った「入魂トランペット」だが、そのフレーズにはどこかクールな雰囲気が流れていて、全体的に「硬軟のバランスが良い演奏」を聴かせてくれる。テクニックも良好、オリジナリティー豊かで、当時の誰のトランペットにも似ていない。独特の個性を持ったトランペットだけに寡作なのが惜しまれる。

そんなロドニーのトランペットを心ゆくまで楽しむことが出来る。難解なところとか、変に癖のあるところは全く無い、ストレートの素性の良いトランペット。スタンダード曲も自作曲も、どちらも良い感じで吹き上げている。

バックのリズム隊が好調で、トミー・フラナガンのピアノの参加が効いている。トミフラのピアノは相変わらず「小粋でバップ」で、好調なバッキングを繰り広げる。「2人のジョーンズ」のドラムは切れ味良く、骨太なペティフォードのウォーキング・ベースが心地良く響く。この良い感じのリズム隊、聴きものです。

シグナル・レーベルの『Rodney 1957』(写真右)が原盤で、後にサヴォイ・レーベルからリリースされた盤だが、音的には「サヴォイの音」としてまとまっていて、サヴォイ・レーベルのオリジナル盤としても違和感が無い。レッド・ロドニーの代表作として一聴に値する「隠れた名盤」である。
 
 
 

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2021年7月 4日 (日曜日)

サヴォイのトランペット愛聴盤

ビ・バップ〜ハードバップ期を中心に好盤を量産した、古参ジャズ・レーベルであるサヴォイ(SAVOY)レーベル。1942年、ルビンスキーとカデーナの2人により、ニューアークにて設立。テディ・リーグをプロデューサーに迎え、ビバップを中心としたレコーディングにシフトし、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなどのセッションをどんどん録音していった。

1950年代半ばには、名プロデューサーとして知られるオジー・カデナが迎えられ、レーべルはここから大躍進、次々と傑作を発表してゆく。1974年には創設者のルビンスキーが死去し、レーベルはその後、アリスタ等、様々なレーベルへと権利は転々とするが、2017年、アメリカのコンコードに買収され、現在はコンコード・ミュージック・グループ傘下に収まっている。

Joe Wilder『Wilder 'N' Wilder』(写真)。1956年1月19日、Van Gelder Studioでの録音。プロデューサーは「オジー・カデナ」。ちなみにパーソネルは、Joe Wilder (tp), Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。ジョー・ワイルダーのトランペットがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」である。
 

Wilder-n-wilder

 
良い音で優しく鳴るトランペットである。テクニックは優秀、ブリリアントで切れ味の良いトランペット。決してハイノートはやらない。堅実な音で穏やかにフレーズを紡ぎ上げていく。ビ・バップ〜ハードバップ期のジャズ・ジャイアンツ達のトランペットの音とはちょっと響きが違う。ジャズっぽく無いかもしれないが、リラックスした正統派のトランペットという趣で、聴いていてとても心地良い。

バックのリズム隊も、そんな優しく穏やかでブリリアントなトランペットを「小粋に渋〜く」サポートする。特に、ピアノのハンク・ジョーンズの典雅で流麗なピアノは聴いていて惚れ惚れする。ウェンデル・マーシャルのベースは堅実に演奏のベースラインをガッチリ支え、ケニー・クラークのドラミングは機微を捉えて硬軟自在。このリズム隊のサポートもこの盤の「聴きどころ」。

ジャケ・デザインは実にサヴォイ・レーベルらしいもの。音はルディ・ヴァン・ゲルダーの手なる録音で良好。ブルーノート盤などの「尖った先進的なハードバップ」な音とは全く異なる、ややリラックスした正統でハードバップな演奏が、この盤にてんこ盛り。いかにもサヴォイ・ジャズのハードバップらしい音世界である。
 
 
 

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2021年6月17日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・208『Soundin' Off』

一日の終わり、寝る前に聴くジャズ盤を「今日のラスト」と称して、ほぼ毎日、Twitterで呟いている。最近のテーマは「初心にかえってブルーノート4000番台の聴き直し」。

ブルーノートの4000番台のアルバムをカタログ番号順に聴き直しているのだが、ブルーノート・レーベルには、このレーベルに録音を残していなければ、恐らく、ジャズの歴史の中に埋没して、忘れ去られただろうと思われる、玄人好みの「渋いジャズマン」が幾人かいる。

ディジー・リース(Dizzy Reece)も、そんなジャズマンの1人だろう。もともとはジャマイカ出身の英国のジャズマン。リースのマネージャーがマイルスにアルバムを送ったところ、マイルスが感激し一言「英国には俺と同じくらい上手いトランペッターがいる」。それがブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの耳に入り、録音に至ったとのこと。初リーダー作は、録音エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーが海を渡っての録音。かなりの力の入れようだったようだ。

Dizzy Reece『Soundin' Off』(写真左)。1960年5月12日、NYの「Van Gelder Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Reece (tp), Walter Bishop Jr. (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時、ブルーノートで売り出し中だったピアノのビショップ、早逝の職人ベーシストのワトキンス、当時のファースト・コール・ドラマーのテイラーの「ブルーノート」らしいリズム隊をバックに、リースのトランペットがワンホーンのカルテット編成。
 

Soundin-off

 
この盤が一番、リースの個性を掴みやすい。テクニックはまずまず、当時、最先端のモード奏法をやる訳でも無く、いわんやフリーなんてとんでもない。僕は何故、マイルスが「英国には俺と同じくらい上手いトランペッターがいる」と評価したのか、よく判らないでいたのだが、この盤で合点がいった。

リースのトランペットの音がとても心地良いのだ。リースのアドリブ・フレーズが流麗なのだ。つまりマイルスのいう「クール」なトランペットであり、女性を口説けるトランペットなのだ。テクニックの凄さやジャズの進化の音には全く意に介さず、「音楽」としての、「音を楽しむもの」としての「ジャズ」がこの盤に記録されている。

リースのトランペットで奏でられるスタンダード曲がとても心地良い。バックのリズム隊、ビショップJr.の明るくスインギーなピアノ、ワトキンスの骨太ウォーキング・ベース、そして、テイラーの職人芸ドラミングも実に聴いて心地良いバッキング。この盤には、聴いて心地良い「ハードバップ」な音が充満している。

ジャケットがブルーノートらしくないところが面白い。ブルーノートの「メインのジャズ」とはちょっと雰囲気が違う、そんな差別化をジャケットでも表現したかったのかもしれない。
 
 
 

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2021年3月 4日 (木曜日)

ブルーノート色満載のバップ好盤

ブルーノート・レーベルには、他のレーベルにはいない、ブルーノート・レーベルのカラーに合った独特のジャズマンがいたりする。中にはブルーノートから他のレーベルに移ったジャズマンもいるが、ブルーノートに残したリーダー作が一番輝いていたりするのだ。

Louis Smith『Smithville』(写真左)。1958年3月30日の録音。ブルーノートの1594番。ちなみにパーソネルは、Louis Smith (tp), Charlie Rouse (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。演奏全体の雰囲気は明らかに「ハードバップ」。ハードバップの美味しいところが全てこの盤に詰まっているような盤である。

リーダーのトランペッターのルイ・スミス、そして、渋い玄人好みのテナーマンのチャーリー・ラウズの2管フロント。バックに、哀愁のピアニストのソニー・クラーク、ファースト・コールなベーシストのポルチェン、職人ドラマーのテイラーの鉄壁のリズム・セクション。

まず、演奏全体の「音」がブルーノート一直線。ルディ・バン・ゲルダーの手による「ブルーノート・サウンド」が明確にこの盤に反映されている。音の響き、空間の拡がりと奥行き、楽器の存在感、どれもが明確な「ブルーノート・サウンド」。特に、ルイ・スミスのトランペットの音が凄く良い。
 
Smithville  
 
ブルーノートで最初に出されたリーダー作『Here Comes Louis Smith』は、厳密にはブルーノートで制作された作品では無い(トランジション・レーベルでの録音音源を買い取ってのリリース)。実はルイ・スミスのとって、この盤がブルーノート・レーベルでの初リーダー作になる。

ブルーノートの総帥でプロデューサーのアルフレッド・ライオンはルイ・スミスのバップな資質を見抜いていたのだろう。そう言えば、演奏メンバー全員、バップが基本のジャズマンで、演奏のすべてに「バップな雰囲気」が蔓延している。特に、ルイ・スミスのトランペットが「唄うが如く」のバップなパフォーマンスで魅了する。

バックのリズム・セクションも明らかに「バップ」。特に、ソニー・クラークのピアノが絶好調。個性である哀愁感あふれるマイナーな響きを宿しつつ、躍動感溢れる「バップなピアノ」でフロント2管を鼓舞する。職人ドラマー、アート・テイラーのバップ調のドラミングも見事である。

シンプルではあるが、とても渋いジャケット・デザインもブルーノートならではのもの。意外とこの盤、ジャズ盤紹介本などで採り上げられることが少ない盤だが、中身は圧倒的にハードバップしていて、ブルーノートしている。ジャズ者全ての方々にお勧めの「ブルーノート好盤」の一枚である。
 
 
 

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2020年11月25日 (水曜日)

ショウは単純に「格好良い」

ウッディ・ショウのトランペットが良い。この2〜3ヶ月前からショウのリーダー作を聴き直しているんだが、やっぱり、ショウのトランペットは良い。歴代のジャズ・トランペッターの序列にしっかり入るべきトランペッターなのだが、何故か我が国では人気が無い。というか、評論家やジャズ雑誌からの人気が無い、と言った方が良いかな。一般のジャズ者の方々の中には「ショウ者」が結構いる、のが最近判ってきた。

Woody Shaw Quintet『At Onkel PÖ's Carnegie Hall Hamburg, 1979』(写真左)。1979年7月7日、独ハンブルグのOnkel Po's Carnegie Hall でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Carter Jefferson (ss, ts), Onaje Allan Gumbs (p), Stafford James (b), Victor Lewis (ds)。フロント2管のクインテット構成。

1979年夏に行ったヨーロッパ・ツアー中、7月にハンブルクのクラブ「Onkel Pö’s Carnegie Hall」で演奏した模様を収めたCD2枚組。一部に音の乱れはあるものの、発掘音源にしては全体的に音は良い。ヴァイタルで、切れ味良く、ブリリアントなショウのトランペットが心ゆくまで楽しめる貴重なライヴ盤。とにかく、全編に渡って、ショウのトランペットがキレッキレである。
 
 
At-onkel-pos-carnegie-hall  
 
 
ライヴ録音なので、ショウのトランペットの個性がとても良く判るのだが、当時、我が国のジャズ雑誌とかで評論家の方々から言われていた「フレディ・ハバードと似ている」については、全くそうでは無いことが、このライヴ盤を聴いて良く判る。ハバードよりヴァイタルでタフで、メインストリーム志向。アドリブ・フレーズのモーダル度とバリエーションはショウに軍配が上がる。そして、ショウのトランペットは単純に「格好良い」。

サイドマンの面々も良い。1977年にショウのグループへ加わったサックスのジェファーソンは充実のサックスを聴かせてくれる。ショウとの相性はバッチリだ。1976年春からショウと行動を共にしているベース奏者ジェームスは堅実なベース・ラインでフロントのパフォーマンスをしっかりと支えている。ピアニストのガムズも一生懸命で大健闘、ドラムのルイスが、ライヴが故、拡散気味のバンド全体のビートをしっかりと押さえ込んでいる。

1979年のライヴなので、時代はフュージョン・ジャズの流行のピーク。そんな時代にこんなバリバリ、メインストリーム志向の純ジャズなトランペットはウケなかったのだろうか。お蔵入りする内容では無いライヴ音源で、今回のリリースについては「拍手喝采」。ショウのトランペットの優れた個性を再認識できる内容で、ショウ者のみならず、ジャズ・トランペットのファンの方々には必聴盤でしょう。好盤です。
 
 
 

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