2025年7月12日 (土曜日)

バートンの”新しい” ジャズロック

ゲイリー・バートン(Gary Burton)は、レッド・ノーヴォが始めた4本マレット奏法をより高度に開拓・確立させた、現代ジャズ・ヴァイブのイノヴェーター。純ジャズやニュー・ジャズ、フリー・ジャズと様々なジャズの演奏トレンドに対応するが、ジャズ、カントリー、ロックをミックスした、クロスオーバー・ジャズ志向のジャズロックなサウンドで最初の人気を確立している。

Gary Burton『Lofty Fake Anagram』(写真左)。1967年8月15–17日の録音。邦題は『サイケデリック・ワールド』。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Larry Coryell (g), Steve Swallow (b), Bob Moses (ds)。ジャズロック路線を確立したアルバム『Duster』から、ドラムが、ロイ・ヘインズからボブ・モーゼスに代わってはいるが、アルバム全体の演奏の雰囲気は「ジャズロック」。

改めて聴き直してみて思うのは、このゲイリー・バートンのジャスロックは「新しい」。それまでのジャズロックへのアプローチは、あくまで、ジャズからロックへの一方通行的アプローチで、フロントにもリズム隊にも「ジャズ臭さ」が残っている。が、この バートンのジャズロックへのアプローチは、ジャズとロック、双方向からのアプローチで「ジャズ臭さ」がほとんど感じられない。

リーダーのバートンのヴァイブは意外と「我が道を行く」。ジャズロックやクロスオーバー、ニュー・ジャズ、はたまた純ジャズと、様々なジャズ演奏のトレンドに対応するが、バートンのヴァイブの音自体はあまり「変わらない」。

この盤を「ジャズロック」たらしめているのは、まずはエレギのコリエルだろう。エレギのコリエルの音が、明らかに「ロック寄り」なのだ。
 
Gary-burtonlofty-fake-anagram  
 
ロック、と言ってしまえば、あまりにギターテクニックが高度すぎるので「違うだろう」と指摘される懸念があるが、明かな「ロック寄りのジャズ・エレギ」とすれば、とても座りが良くなる。

ラストの「General Mojo Cuts Up」のフリーなインプロビゼーションにしても、コリエルのエレギをメインに聴いたら、このまま、プログレッシブ・ロックのジャンルに持っていっても違和感が無い。

フリーなインプロとしても、プログレの雄、フリーなインプロも得意とする「キング・クリムゾン」のそれより、内容は高度で内容があってハイテクニック。やっぱり、この「General Mojo Cuts Up」の演奏は、ジャズをベースに持った優れたミュージシャンだけが成せる技なんだろうな、と感心しながら、耳を傾ける。

従来の「ジャズ臭さ」が希薄なスワローのベースとモーゼスの、ニュー・ジャズ的グルーヴ感溢れるリズム&ビートも貢献度が高い。やはり、この盤が「新しい」ジャズロックの響きを色濃く宿しているのは、コリエル=スワロー=モーゼスのリズム・セクションの個性が故であろう。そこに、普遍的なバートンのヴァイブが乱舞する。

別に、バートンは「サイケデリックなジャズロック」にフォーカスを当てている訳では無いので、邦題の『サイケデリック・ワールド』という表現はちょっと偏っていて誤解を生みやすい。「新しい」響きのジャズロックの音を「サイケデリック」の一言で括ってしまうことに無理がある。

ジャズとロックの融合、クロスオーバー志向の「新しい」響きのジャズロックの出現、と僕は解釈している。僕はこの盤を「新しい」ジャズロックの好盤の1枚と位置づけている。
 
 

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2025年7月 8日 (火曜日)

バートン&カーラのコラボ ”葬送”

とかく、ジャズロックやクロスオーバー・ジャズやニュー・ジャズに走りがちだったゲイリー・バートンが、腰を据えて、カーラの楽曲とアレンジに向き合った、硬派で純ジャズなゲイリー・バートンのヴァイブの飛翔が聴ける、壮大な組曲仕立てのコンセプト・アルバムである。

Gary Burton 『A Genuine Tong Funeral』(写真左)。邦題『葬送』。1967年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Mantler (tp), Jimmy Knepper (tb, b-tb), Howard Johnson (tuba, bs), Steve Lacy (ss), Gato Barbieri (ts), Carla Bley (p, org, cond), Larry Coryell (g), Steve Swallow (b), Bob Moses (ds)。

ゲイリー・バートンが、作編曲家&ピアニストの「鬼才」カーラ・ブレイと組んだ壮大なコンセプト・アルバム。死と葬送をテーマに、副題が「言葉なきダーク・オペラ」とあるように、この時代の米国の重い空気感が漂う。カーラ・ブレイの作品を完全フィーチャーしたアルバムで、収録曲は全て、カーラ・ブレイ作。

カーラ・ブレイのコメントを引用させて頂く。「この作品は、死に向かうエモーションの上に築かれたドラマチックな音楽であり、この死という大きな喪失に対する、もっとも不敬なるものから生まれた作品である。そして舞台の上で、光と衣装を伴って演じられるように意図されたもの」とのこと。

何を言わんとしているのか、良く判らぬが、とにかく「死と葬送をテーマにした」コンセプト・アルバムだということである。
 

Gary-burton-a-genuine-tong-funeral

 
演奏的には、ゲイリー・バートンのカルテットにカーラのバンド仲間6人が加わっているパーソネルで、音的には、トランペット、チューバ、バリトン・サックス、テナー・サックス、ソプラノ・サックス、といった管楽器のユニゾン&ユニゾンに、カーラ固有のユニークな音の重ね方を施し、独特の雰囲気を醸し出している。

それに乗って、あるいは、その管楽器隊の音の「合間」を、バートンのヴァイブが、モーダルに疾走する。バートンとカーラならではの、ジャズの即興バリエーションの拡張とマンネリの回避。そんなバートン&カーラならではのモダン・ジャズの深化がこのコンセプト・アルバムに記録されている。

現代音楽やクラシックの要素をジャズに融合したようなところも、現代音楽やクラシックの要素の選択が、バートン&カーラはユニークで、他のジャズ・ミュージシャンが選択する現代音楽やクラシックの要素とは、明らかに切り口が違う。

コリエルのギターも、怪しげでおどろおどろしい雰囲気を加味して、カーラ独特の雰囲気に拍車をかける。ガトー・バルビエリのフリーキーなテナーが、演奏全体に漂う重い空気感に、不安定な要素を散りばめる。コリエルのギターとバルビエリのテナーは、このコンセプト・アルバム演奏の「要」のひとつである。

フリーに傾くようで傾かない。モードっぽいのだが、従来のモード奏法とは違った決め事で、アドリブ・フレーズの自由度を広げている様だ。管楽器隊のブラスの響きが、様々な形で、様々な響きで提示される。これも、アドリブ・フレーズの自由度を限りなく広げていく、大きな要素になっている。

これもジャズ。内容的には、賛否両論になるだろうが、これもジャズである。僕はこのコンセプト・アルバムの演奏そのものを高く評価している。新しいジャズとしての「即興演奏」の可能性を広げていると聴いた。好盤である。
 
 

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2025年7月 6日 (日曜日)

純ジャズ志向のニュー・ジャズ

ゲイリー・バートン(Gary Burton)。1943年1月、米国生まれ。今年で82歳。レッド・ノーヴォが始めた4本マレット奏法をより高度に開拓・確立させた、現代ジャズ・ヴァイブのイノヴェーター。10代からプロ活動を始め、1960年代後半、ジャズ、カントリー、ロックをミックスした、クロスオーバー・ジャズ志向のサウンドで人気を確立した。

1970年代以降は、クロスオーバー・ジャズ志向のパフォーマンスと並行して、チック・コリア、キース・ジャレットらとの純ジャズ志向のコラボも展開。1971年秋よりバークリー音楽大学で教鞭を取り始め、パット・メセニー、エバーハルト・ウェーバー、ラルフ・タウナー、タイガー大越、小曽根真等当時の有望な新人を数多く世に紹介ししている。

Gary Burton『The Time Machine』(写真左)。1966年4月5–6日の録音。RCAからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib, p, marimba), Steve Swallow (b), Larry Bunker (ds)。リーダーのゲイリー・バートンのヴァイブがフロントのトリオ編成。バートンがピアノも担当しており、多重録音にて、ピアノ入りのカルテット演奏の表現が面白い。

まだ、バートンが、クロスオーバー・ジャズ志向のサウンドに手を染める前の、ライトでモーダルな純ジャズ志向の演奏が清々しい。1966年という録音年でありながら、かなり硬派なモード・ジャズな演奏がメイン。時々、アブストラクトに、スピリチュアルにブレイクするところなど、当時の「時代の音」を感じる。
 

Gary-burtonthe-time-machine

 
ところどころ、例えば、4曲目、ジョビン作「Chega De Saudade (No More Blues)」のボサノバ・ジャズで、ポップ性を確保して、ちょっと和ませ、再び、ライトで硬派なモード・ジャズに立ち返る。

7曲目のレノン=マッカートニーの「Norwegian Wood」で、再びポップ性を確保、再度和ませ、次の2曲で再びライトで硬派なモード・ジャズに展開、ラストは超スタンダード曲「My Funny Valentine」のベタなカヴァーで締める。なかなか考えた収録順で、曲毎のアレンジもふるっている。

バートンのヴァイブはもともとファンクネスは極薄なので、演奏全体の印象は純ジャズ志向の「ニュー・ジャズ」。スインギーな面は全く無くて、このアルバムは、バートンの知的で幻想的なヴァイブの乱舞を聴くべきアルバムだろう。

バートンの様々なマレット捌きとフレーズの展開が堪能出来る。スワローのベース、バンカーのドラムも、バートンの知的で幻想的なヴァイブに呼応するように、新しい響きを宿した、純ジャズ志向の「ニュー・ジャズ」的なリズム&ビートを叩きだしていて良好。好盤です。
 
 

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2024年6月10日 (月曜日)

セクステットのための抒情組曲

チック・コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブは凄く相性が良い。ジャズ特有のファンキー色を限りなく押さえ、ブルージーでマイナーな展開を限りなく押さえ、硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し、現代音楽の様なアブストラクトな面を覗かせながら、メロディアスで流麗なフレーズを展開する。楽器は違えど、音の性質は同類の二人。

Chick Corea & Gary Burton『Lyric Suite For Sextet』(写真左)。1982年9月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Gary Burton (vib), ここに「弦楽四重奏団」がバックにつく。ECMレーベルらしい、即興演奏をベースにした、欧州ジャズらしい、透明度の高いリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のデュオ演奏。

邦題が「セクステットのための抒情組曲」。これがいけない。バックに「弦楽四重奏団」がついているので、余計にクラシック音楽の匂いがプンプンする。僕も最初、このアルバムがリリースされた時には、コリア&バートンのデュオはクラシックに手を染めたのか、と思った。よって、リリース当時はこのアルバムを聴くことは無かった。

が、リリース後10年。やっと聴いたら、あらまあ、しっかりと、コリア&バートンの「ニュー・ジャズ」志向のデュオ演奏が展開されている。
 

Chick-corea-gary-burtonlyric-suite-for-s

 
「弦楽四重奏団」は、コリア&バートンのデュオ演奏をさらに引き立てる、優れたアレンジによるサポートの役割を担っている。この「弦楽四重奏団」のサポートが非常に優れていて、コリア&バートンのデュオ・パフォーマンスを更なる高みに誘っている。

パート1〜7まで、7つのパートに分かれた「組曲」風の収録曲も、クラシック音楽を想起させて、これもいけない。しかし、何か確固たるテーマを持った、一連の曲の連続という風でも無い。

チックの手になる、バートンとのデュオを前提とした秀曲の数々。どう聴いても、クラシックの「組曲」を想起するものではないだろう。透明度の高いリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のデュオ演奏を引き立てる秀曲揃い。

ECMレーベルだからこそ成し得た、即興演奏をベースにした、欧州ジャズらしい、透明度の高いリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のコリア&バートンの優れたデュオ演奏。

欧州ジャズらしい、というところに、「クラシック」っぽい響きを感じるかもしれないが、このデュオ演奏は、ECMレーベルの「ニュー・ジャズ」のジャンル内の優れたパフォーマンスの記録。意外と好盤です。
 
 

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2024年1月24日 (水曜日)

デュオ盤『Crystal Silence』再び

『Return To Forever』と『Light As A Feather』の名盤2枚で、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」を表現したチック・コリア。

しかし、音楽性のバリエーションが豊かなチックは、その傍らで、メインストリーム系の純ジャズにも、しっかりと手を染めている。ただし、チックは旧来のハードバップをなぞることは無い。必ず、新しい「何か」にチャレンジする。この時点で、チックが手がけたのは「デュオ」。あの名デュオ、コリア&バートンの誕生である。

この名デュオの結成の経緯については以下の通り。1972年、ミュンヘンで開催されたジャズ・フェスで、コリアとバートンはデュオによるジャム・セッションを披露する。それを聴いていたECMの総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが、コリアとバートンに「デュオ盤」の制作を持ちかけた。つまりは、この名デュオは、アイヒャーの提案によって結成されたらしい。

Chick Corea & Gary Burton 『Crystal Silence』(写真左)。1972年11月6日、オスロ、タレント・スタジオで録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Gary Burton (vib)。ECMレコードからのリリース。プロデューサーは当然、マンフレート・アイヒャー。以降、チックが亡くなるまで、不定期にアルバムをリリースしライヴを敢行した「名デュオ」のファースト盤である。

透明な響きとロマンティシズム。チックとバートンの「共通の音の質と志向」が、この盤で出会った。デュオというフォーマットは、簡単そうに見えて難しい。まず「音の質と志向」が同質のものでないと苦しい。また、お互いの音が重なったり被ったりしてはいけないし、フロントに出るタイミングとバッキングに回るタイミングが一致していなければ、バラバラな演奏になる。
 

Crystal_silence_1  

 
片方が目立ちすぎてもいけないし、引っ込み思案でもいけない。その辺の「あうん」の呼吸と、相手の音を聴きながらの、機微を心得た、臨機応変なインプロが重要になる。それって、双方に高度なテクニックと音楽性が備わっていないと出来ない仕業。このチックとバートンのデュオは、その「デュオ」に関する必要な事柄が、奇跡的に全て双方に揃った、稀有なデュオ・ユニットである。

チックとバートンは、いとも簡単に、この難度の高い「デュオ」のフォーマットを征服する。この盤を聴けば、恐らくたいていの人は「デュオって意外と簡単やん」と感じるに違いない。それほど、チックとバートンは、自然にシンプルに、ポジティヴに柔軟に、ピアノとヴァイヴのデュオ演奏を紡ぎ上げていく。

さて、チックとバートンのデュオ盤と言えば、この1972年の『Crystal Silence』にとどめを刺す、と言って良い位の素晴らしい出来、奇跡的に充実した内容となっていて、収録されたどの曲も素晴らしい出来。

とりわけ、冒頭の「Senor Mouse」、5曲目の表題曲「Crystal Silence」、そしてラストの「 What Game Shall We Play Today」の出来が際立っている。適度な緊張感に包まれた、とてもスリリングでリリカルな、躍動感溢れるデュオ演奏。即興の妙が芳しく、ロマン溢れるフレーズがとても美しい。

聴けば判る。素晴らしい不滅のデュオ盤。両人フロントに立ってのユニゾン&ハーモニーは絶妙。フロントに立ったチックのソロもバートンのソロも素晴らしい。バックに回ったチックもバートンも、絶妙に機微を心得た、ハイ・テクニックで切れ味の良いバッキングを聴かせてくれる。

ちなみに、このデュオという演奏フォーマットについては、特にバートンは当初、「リズム・セクション無しで、ヴァイブとピアノだけの演奏を1時間も聴きたがるオーディエンスなんているのだろうか」と猜疑心を抱いていたという。しかし、そのパフォーマンスは歴史に残るほどの素晴らしさで「大当たり」。ECMという欧州ジャズのレーベルだからこそ出来た盤であり、アイヒャーの慧眼の成せる技であった。
 
 

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2023年6月30日 (金曜日)

クラシック・オケとジャズロック

ECMレコードのアルバムがお気に入り。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、ニュー・ジャズ&欧州ジャズの担い手として、我が国でもECMブームが沸き起こっていた。

といっても、ECMのアルバムについては、明らかに「好き嫌い」が分かれる。米国ジャズ、特に東海岸ジャズが絶対とする「東海岸ジャズ者」の方々からは「ECMはジャズでは無い」と毛嫌いされていた。まあ、大凡、硬派なジャズ喫茶ではECMのレコードをリクエストするのには相当な勇気がいった。米国が本場のジャズについては、米国ジャズが絶対で、欧州ジャズはジャズでは無い、とされていた。

しかし、である。僕はECMレコードのアルバムがお気に入り。もともとクラシック音楽もいろいろ聴いていて、クラシック音楽の雰囲気が漂う、端正な欧州ジャズについては違和感が無い。ロックではプログレ小僧だったので、ニュー・ジャズの類については、プログレっぽくて違和感を感じない。そういうところから、ECMレコードのアルバムに違和感が無く、良いものは良い、の精神で、ECMのアルバムについては、延々と50年弱、聴き続けていることになる。

そんなECMのアルバムをカタログ番号順に聴き始めて、早5年。ECM1001〜1100番までの「ECM1000番台」のアルバムについては、明らかに現代音楽な内容のアルバムを除いて、ほぼ聴き終えた。ほぼ、というのは、3枚ほど入手出来ないでいたアルバムがあった。が最近、やっとのことで音源を確保することが出来た。あと3枚、しっかりと聴いた。3枚とも初聴きである。

Gary Burton Quartet『Seven Songs for Quartet and Chamber Orchestra』(写真左)。1973年12月、ハンブルグでの録音。ECMの1040番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Mick Goodrick (g), Steve Swallow (b), Ted Seibs (ds), NDR Symphony Orchestra conducted by Michael Gibbs。
 

Gary-burton-quartetseven-songs-for-quart

 
当時のゲイリー・バートンのカルテットに、NDRのオーケストラがバックに就く布陣。クラシック・オーケストラの演奏を伴奏に、ゲイリー・バートンのヴァイブをメインとするジャズ・カルテットの演奏が展開される、如何にもニュー・ジャズっぽい、クラシックにも精通するECMレーベルのアルバムらしい内容。

クラシック・オーケストラの伴奏も、なかなかのもので、ありがちな米国ジャズの取って付けたような、チープなクラシック・オーケストラでは決して無い。オーケストラだけでも十分に聴ける。

そんな充実したクラシック・オケをバックに、まずは、ゲイリー・バートンのヴァイブがソロで乱舞する。バートンのヴァイブは、いかにもECMのニュー・ジャズっぽい雰囲気満載。バックのオケの伴奏に乗って、映えに映える。良い雰囲気、いかにも欧州ジャズ。

曲が進むにつれて、バートンのソロから、バートンのカルテットの演奏に展開していく。これがなかなかのもので、当時のバートン・カルテットの個性である、アーシーでジャズロック風のフレーズ、ゴスペルっぽい米国ルーツ・ミュージック風のフレーズが漂ってきて、クラシックな雰囲気が強かった出だしからすると、一気にニュー・ジャズっぽい、バートンお得意のアーシーなジャズロック風のフレーズが実に格好良い。

欧州っぽいクラシック・オケと米国ルーツ・ミュージックとジャズロックの融合音楽。いかにもECMらしい取り合わせ。聴く前は、クラシック・オケをバックにしたバートン・カルテットってなあ、と敬遠気味だったのだが、聴いてみると意外と良い。やはり「聴かず嫌い」は良く無いなあ、と改めて思った次第。意外性のあるECM好盤です。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年4月18日 (火曜日)

アーマッド・ジャマルを追悼する

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立った。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳。また1人、レジェンド級のジャズマンがあの世に旅立ったことになる。

ん〜、辛いなあ。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代以降、50余年、ジャマルはリアルタイムでそのパフォーマンスを聴くことの出来るピアニストだった。同じ時代を生きたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのは、やはり辛い。

Ahmad Jamal & Gary Burton『Live At Midem』(写真左)。1981年1月26日、フランス、カンヌで開かれた国際音楽産業見本市の中のパーム・ビーチでのミデムフェアにおけるライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Gary Burton (vib), Sabu Adeyola (b), Payton Crossley (ds)。Ahmad Jamal名義で『In Concert』(写真右)というタイトルでリリースされていたり、はたまた、ジャケ・デザインも様々ある不思議なライヴ盤。

当時のジャマル、バートンの活動の経緯を見ていると、このクインテットは、ジャマルのトリオにバートンが客演した形のようだ。見本市のフェアにおけるライヴなので、そういう一期一会のブッキングが可能となったのだろう。

冒頭、恐らくジャマルであろうMCから始まり、1曲目は「Morning of the Carnival」。のっけから、ジャマルがぶっ飛ばす。ファンキーでグルーヴ感満載、速弾きパッセージてグイグイ攻めて、硬質なタッチでガンガン叩きまくる。華のなる流麗なアドリブ・フレーズとコーラスがソウルフルで、1970年代のジャマルのトレンドが継続されている。

ジャマルってピアニストは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

Ahmad-jamal-gary-burtonlive-at-midem

 
1960年代の終わり〜1970年代の作品は、ファンキー&アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化している。この1970年代のジャマルを継続しているのが良く判る。

それにしても強烈なグルーヴ感。「Morning of the Carnival」が全く別の曲に聴こえる。途中、「My Favorite Things」の引用が出まくって、この引用などは1950年代の古き良き中間派の影を引き摺っている。バートンのヴァイブは、そんなグルーヴ感溢れるファンキーな8ビート・ピアノに乗っかって、これまたグルーヴィーに8ビートに弾きまくる。

サブ・アデヨラのベースは、アタッチメントを付けたアコベなのか、エレベなのか、ちょっと判別がつかないが、エレクトリックなベースをブヨンブヨンと響かせる。これがまた良い方向に作用して、ジャマル&バートンのグルーヴ感を思い切り増幅している。ペイトン・クロスリーのドラムは、グルーヴ感豊かな、うねるような8ビートを叩き出し、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支えている。

演奏曲もユニークで、ジャマルの78年のヒット曲「One」や、ラテン風の「Bogota」、チック・コリアのモーダルな「Tones for Joan’s Bones」と、なかなか他のバンドでは演奏しないぞ、と思われる佳曲を8ビートでぶっちぎっている。そして、有名スタンダードの「Autumn Leaves」。最後の「Autumn Leaves」だけが4ビートの演奏となっていて、これはこれで聴き応えがある。

実はこのライヴ盤、今回、小粋なジャズ盤を探索する中で出会った「初見」のライヴ盤で、ジャマルとバートン、それも、1981年という時代背景の中で、どんな演奏をしているのか、と興味津々で聴き始めた盤。ジャマルの訃報に触れた時、聴いていたのがこのライヴ盤で、不思議な縁にちょっと驚いている。
 
 

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2022年4月 7日 (木曜日)

最近出会った小粋なジャズ盤・6

ゲイリー・バートンの音楽が好きである。1960年代後半のサイケデリックなジャズも良いし、クロスオーバーなバートンも良い。1970年代以降のニュー・ジャズなバートンも良い。チックとのデュエットなどは至高の音だ。ゲイリー・バートンの参加作品はできる限り全部聴くことにしている。今でも、たまに「こんなバートン盤ってあったっけ」という盤に出くわすことがある。

このジャケットを見た時は、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムかと思った。逆に、こなアルバムあったっけ、という疑問が頭をよぎる。ジャケットを見ると、メンバーの名前が印刷されているが、どう考えても1960年代後半の面子では無い。とにかく聴いてみることにした。

Gary Burton『Cool Nights』(写真左)。1991年のリリース。GRPレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Will Lee (b, perc), Peter Erskine (ds, perc), Wolfgang Muthspiel (g), Bob James (key), Bob Berg (ts)。錚々たるメンバーである。この面子から、フュージョン・ジャズ指向の盤だと察しが付く。
 

Cool-nights_gary-burton

 
GRPレコードのロゴがジャケットに無いジャケ写を見たので、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズ時代のゲイリー・バートンのアルバムと勘違いしたが、この面子を見れば、これは1980年代後半以降のフュージョン・ジャズ指向の音作りだ、と思いつつ聴くと、やはり、上質のフュージョン・ジャズの音が満載。いずれも百戦錬磨の強者ばかりなので、詳細は割愛するが、とにかく上手い。但し、決して上手いだけでは無い。

しっかりとそれぞれの個性をそこはかとなく出しつつ、バートンのヴァイブとフレーズにあったバッキングをガッチリとやってのける。ベースのリー、キーボードのジェームス、ギターのムースピールなど、少し聴けば直ぐに判る強烈な個性を持ちながら、バートンのバッキングでは、バートンのヴァイブを引き立て、鼓舞する役割に徹している。ううん、これは真の「職人技」やなあ。

純ジャズっぽい8ビートを叩き出すアースキンのドラムが肝。この盤の音を「コンテンポラリーな純ジャズ志向」のフュージョン・ジャズな音に仕立て上げている。決して、ソフト&メロウなフュージョンの音ではない。意外と硬派で純ジャズ志向の演奏は聴いていて爽快。アーバンなグルーヴ感や趣味の良いブルージーな感覚も見え隠れして、聴き応え十分。1990年代のフュージョン・ジャズの優秀盤として、フュージョン者の方々は必聴でしょう。
 
 

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2020年9月20日 (日曜日)

バートンとブレイのデュオ盤 『Right Time Right Place』

面白いアルバムを再発掘した。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートン(写真右)のリーダー作を整理していたら、こんなデュオ盤が出てきた。ゲイリー・バートンとピアノ奏者とのデュオと言えば、相当に有名なのが、チック・コリアとのデュオ。コリア&バートンのデュオ盤には外れが無い。素晴らしい内容ばかりのデュオ盤の嵐なのだが、このデュオ盤の相手はチックでは無い。

Gary Burton『Right Time Right Place』(写真左)。1990年3月29日、Copenhagenの Denmarks Radio「Studio 3」での録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Paul Bley (p)。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートンとピアノの哲学者(と僕が勝手に付けた)ポール・ブレイとのデュオ盤である。

両名ともECMレーベルに在籍していたり、バートンは、比較的頻繁にカーラ・ブレイの作品を演奏しており、ポール・ブレイはカーラの夫という間柄でもある。この二人、以前にもデュオ盤を録音してそうなものだが、この盤が初めて。恐らく、ゲイリー・バートンとのデュオをやるピアニストとしては、チック・コリア、という強烈な先入観があったからでは、と思っている。
 
 
Right-time-right-place  
 
 
という背景もあって、この盤を聴いていると、どうしても「チック&バートン」とのデュオと比較してしまう。が、比較は意味が無いことが直ぐに判る。さすがはゲイリー・バートン、ポール・ブレイに対しては、ポール・ブレイのピアノの個性と音色に応じたヴァイブを繰り出している。チックの時とは全く異なるヴァイブの音色。デュオ演奏の醍醐味である。

面白いのはピアノ側(ブレイもチックも)は、その個性とスタイルをほとんど変えていない、ということ。バートンのヴァイブがデュオ相手のピアノの個性と音色に応じて、その個性と音色にあったヴァイブを奏でる、という展開。それでいて、バートンのヴァイブの個性と音色は全く損なわれておらず、しっかりとバートンのヴァイブの個性と音色が全面に押し出されているところが、これまた凄い。

穏やかで透明感のあるデュオ演奏が繰り広げられているが、その演奏のテンションは高く、相互のインタープレイは丁々発止として見事な反応。ライナーノーツには、欧州で偶然顔を合わせたので、せっかくだから急遽録音したそうだが、それで、この高度な内容、見事なパフォーマンス。いやはや、レジェンド級のジャズマンはやることが違う。次元が違う。
 
 
 

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2020年7月14日 (火曜日)

久し振りのタイガー大越です。

ネットの音楽系サブスク・サイトを徘徊していて、懐かしい名前を見つけて喜んでいる。「タイガー大越」。1981年にメジャー・デビュー。フュージョン・ジャズの大ブーム後期に、ちょっと遅れて出てきた印象があった。でも、デビュー盤の『Tiger's Baku』は、良質のフュージョン・ジャズ盤で、当時、結構ヘビロテだった。
 
Gary Burton『Times Square』(写真)。1978年1月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Steve Swallow (b), Roy Haynes (ds), Tiger Okoshi (tp)。バートンのリーダー作については、ホーンが参入した盤は珍しい。この盤については、師匠格のヴァイブ奏者、ゲイリー・バートンがレギュラー・メンバーに抜擢して、日本人トランペッター、タイガー大越がレコーディング・デビューしている。

1983年以降、タイガー大越の名前を見なくなったが、この10年ほど前から、バークリー音楽院で教鞭を執っている話から、彼の情報が再び入る様になった。タイガー大越は、1950年芦屋生まれ。バークリー音楽院に進み、首席で卒業している。ゲイリー・バートンは、タイガー大越のバークリー音楽院時代の先生だったわけですね。

この盤のリーダー、ゲイリー・バートンは1970年代初めより、バークリー音楽大学で教鞭を取っており、このタイガー大越をはじめ、パット・メセニー、エバーハルト・ウェーバー、ラルフ・タウナー、小曽根真 等、有望な新人を数多く世に紹介している。
 
 
Times-square   
 
   
ゲイリー・バートンのリーダー作としては、珍しくトランペットが入ったコンボでの演奏なので、何故が耳新しく響く。トランペットならでは、の音の流れ、吹きやすいフレーズがあって、それに合わせて、タイガー大越のトランペットを引き立たせる様なバートンのヴァイブのフレーズが耳新しく響くのだろう。それにしても、バートンのフロントのトランペットに対するサポートは見事。さすが、タイガー大越の「お師匠様」である。
 
そのタイガー大越のトランペットも見事である。柔らかくて暖かい音。テクニックは優秀だが、それをひけらかすことは無い。嫌味の無い「流麗さ」。フレディ・ハバードを温和に柔らかにした様な感じ。日本人トランペッターであるが故、ファンクネスは希薄。アドリブ・フレーズは、どこまでも「メロディアス」。当時、ありそうで無い、個性的なトランペットである。
 
ベースのスワローは、バートンの片腕みたいな存在で、曲毎に適正な「リズム&ビート」を供給する。そして、バートンにとっては珍しい客演、ドラマーのロイ・ヘインズがご機嫌なドラミングを披露している。
 
良質のメインストリーム系のジャズ演奏に思わずニンマリ。とりわけバートンのヴァイブが絶品。優れた教え子をフロントに迎えてのリーダー・セッションである。気合いが入っていたんだろうなあ。この盤の「バートン先生」のパフォーマンスには脱帽です。
 
 
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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