デュークには ”困ったちゃん” 盤
レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を、当ブログでは、「この曲一曲」を「これ一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。で、今回のピアニストは「デューク・エリントン」。あの、ビッグバンドの最高峰、エリントン楽団の総帥、ジャズの楽聖。
『Duke Ellington & John Coltrane』(写真左)。1962年9月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), John Coltrane (ts :all but track 3, ss :track 3), Aaron Bell (b :tracks 1, 4–5, 7), Jimmy Garrison (b :tracks 2–3, 6), Elvin Jones (ds :tracks 1–3, 6), Sam Woodyard (ds :tracks 4–5, 7)。
タイトルは、デューク・エリントンとジョン・コルトレーンが並列で並んでいるんで、デュオ演奏かなと思うんだが、コルトレーンのサックスがフロント一管のカルテット編成。しかも、ベースとドラムが微妙に入れ替わる奇妙なパーソネル。プロデューサーは、かの有名なボブ・シールなんだが、一体、何を考えたんだか。
冒頭の「In a Sentimental Mood」が、アルバム全体の雰囲気を決定付けるものなんだが、これがまあ(笑)。フロントのコルトレーンのテナーに、エリントンのピアノ、ベルのベース、そして、エルヴィンのドラム。この演奏では、とにかく、コルトレーンとエルヴィンが「うるさい」。当時のコルトレーン・カルテットの演奏の雰囲気をそのまま、持ち込んでいる。エリントンのピアノを全く聴いていない様に感じる。失礼極まりない2人(笑)。
デューク・エリントンは、ジャズ・ピアニストとしても超一流で、そのピアノは、ジャズ・ピアノの歴史の中でも、とびきり「個性的」。硬質でパーカッシヴなタッチ、バラードでの流麗でリリカルな弾き回し。独特なマイナーでブルージーな響き、そして、心地よく響き左手の低音。デュークの様なジャズ・ピアノは他に無い。ジャズの歴史の中で唯一無二である。
しかし、である。コルトレーンがフロント一管、エルヴィンがドラム、加えて、ベースのギャリソンが加わったセッションでは、このデュークのピアノの個性を、コルトレーン、エルヴィン、ギャリソンが「潰している」もしくは「無視している」様に感じるくらい、デュークのピアノを聴いていない様な演奏になっている。特にコルトレーンとエルヴィンの唯我独尊ぶりにはちょっと驚くくらい。しかし、デュークは悠然と余裕綽々に自分のピアノを弾き進める。凄みを感じる。
さすが、ベースがベル、ドラムがウッドヤードというエリントン楽団出身のリズム隊に変わると、さすがに、デュークのピアノの個性をしっかり理解していて、デュークのピアノの音をよく聴き、その「間」の取り方、独特なマイナーでブルージーなフレーズにしっかり追従し、デュークのピアノを引き立てる。
そこにコルトレーンがフロントに入ると、コルトレーンが戸惑っているのか、唯我独尊な吹きっぷりを修正して、エリントン楽団のリズム隊のトーンに合わせようとするのだが、完全にはいかない。途中でまた唯我独尊な吹きっぷりに戻ったり、エリントン楽団のトーンに戻ったり。意外とコルトレーンは不器用なんだなあ、と微笑ましく思ったり、なんだかなあと呆れたり(笑)。
ずばり言うと、この盤、デュークのピアノの個性を愛でるに不足、コルトレーンの個性を愛でるのにも不足、デュークとコルトレーンのビッグネーム同士のセッションでの「化学反応」を期待すると肩透かしを食らう、困ったチャンなアルバムだと僕は感じている。当然、デューク・エリントンという偉大な「ピアニスト」を愛でる「これ一枚」ではないことは明瞭。デュークのピアノの個性を愛でるには、もっと好適なアルバムが沢山ある。
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