サウンドで空間や風景を描くこと
ガルバレクの音で静謐な風景を描き出す独自のスタイルが明快に出たリーダー作。内省的で広大なサウンド・スペースが、いかにもECMジャズらしい。ガルバレクはノルウェーの出身。ガルバレクのサックスの音は明らかに「北欧」的。しかし、ユニークなのは、北欧ジャズお決まりの「音程と節回し」が希薄。音の質は明らかに「北欧」なのだが、音程と節回しは、明らかに「ガルバレクのオリジナル」。
Jan Garbarek『Places』(写真左)。1977年12月、オスロの「Talent Studio」にての録音。ECMの1118番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss, as), John Taylor (p, org), Bill Connors (g), Jack DeJohnette (ds)。ECMレーベルのハウス・サックス奏者、ヤン・ガルバレクのリーダー作。ベースレスという特異なカルテット編成。
ジョン・テイラーのオルガンの扱いがこれまたユニーク。米国ジャズでは聴いたことがない、教会音楽を思わせるオルガンのドローン(持続音)。これは確実に教会のオルガン・サウンドが基であろう、ファンクネスが希薄で、敬虔でリリジョン的な音は、独特で北欧的なサウンド効果を生む。
このジョン・テイラーのオルガンのドローン(持続音)をバックに、静謐でリリカルでクリスタルな、力感溢れ切れ味抜群のガルバレクのサックスが飛翔する。そして、ファンクネス皆無なクラッシック的な響きが個性のビル・コナーズのアコースティック・ギターが耽美的で躍動的なサウンドを展開する。
そんなフロントの3人を支え、鼓舞し、リードするのは、ジャック・ディジョネットのドラミング。ディジョネットのドランミングは、ファンクネスをそぎ落とした、パルシヴで躍動感溢れ、繊細でダイナミックな、途方もなくポリリズミック名ドラミング。緩急自在、硬軟自在、変幻自在なドラミングは、ガルバレクの静謐でリリカルでクリスタルな、力感溢れ切れ味抜群のガルバレクのサックスとの相性抜群。
ビル・コナーズのアコーティック・ギターも神妙に、ディジョネットのポリリズムに追従する。パルシヴなドラミングと、教会音楽を思わせるオルガンのドローン(持続音)の好対照なリズム&ビートの融合が、ベースレスと相まって、この盤に独特の浮遊感をもたらしている。そして、その浮遊感が、ガルバレクの「音で空間や風景を描くこと」というサウンド・ウメージの実現に多大な貢献をしている。
2曲目の「Entering」の欧州フォーキーな音世界は完全にECMオリジナル。ファンクネス皆無なクリスタルで凛とした欧州フォーキーな音世界に、ガルバレクのサックスとコナーズのギターの音色が良く似合う。まるで、北欧の「森と大地」を想起する、その透明度の高いフォーキーな音世界は、他のジャズ・レーベルの音には無い響き。コナーズのアコギの音が、そのフォーキーさをより濃厚なものにしている。
ジャケットもECMらしいジャケットでとても良好。ガルバレクの音楽性をそのまま視覚化したような、北欧の荒涼とした、しかし息をのむほど美しい自然の風景写真が使われているのが印象的。これほど、アルバムの中の音世界と合致したイメージのジャケットのアートワークも珍しい。
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