傑作 Jan Garbarek ”Eventyr”
昨年の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」がある。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。
特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。ということで、久しぶりの「今聴きたいECMアルバム45選」の聴き直し記事、である。
Jan Garbarek『Eventyr』(写真左)。1980年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts,fl), John Abercrombie (g), Naná Vasconcelos (berimbau, talking drum, perc, voice)。ノルウェーのジャズ・サックス奏者で作曲家のヤン・ガルバレクが、ECMからリリースした変則トリオ盤。
この変則トリオには、ヤン・ガルバレクのサックス&フルートに、ギタリストのジョン・アバクロンビーとパーカッショニストのナナ・ヴァスコンセロスが参加している。ピアノ&ベースレス。ピアノとベースがいない、そして、ドラム・セットが無い。
演奏全体の雰囲気は「現代音楽&現代クラシック」。演奏形態は即興演奏。現代音楽&現代クラシック志向の即興演奏に、パーカッションのリズム&ビートを添えて「ジャズ」として捉え、それが、ECMの考えるニュー・ジャズであり、現代の欧州ジャズとした、そんな雰囲気がビンビンに伝わる傑作。
ECMの創立者、マンフレート・アイヒャーの音の美意識、ECMの標榜する音世界を具現化した、その大成功例の一つ。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音、そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」を、このアルバムはしっかりと捉えている。
一曲目「Soria Maria」の冒頭、ガルバレクのソプラノ・サックスが、ピューッと伸びて飛翔するだけで、この盤の音世界は『ECMのニュー・ジャズ」。そして、ガルバレクに寄り添う様に絡む、アバークロンビーのエレギ。演奏が進むにつれ、曲が進むにつれ、その二人の演奏の音志向はどんどん「現代音楽&現代クラシック志向の即興演奏」になっていく。もはやこれはジャズでは無いなあ、と思いきや・・・。
ナナ・ヴァスコンセロスの、トーキング・ドラムをはじめとする、ワールド・ミュージック志向&エスニック志向のリズム&ビートが、ガルバレクとアバークロンビーの「現代音楽&現代クラシック志向の即興演奏」を「ジャズ」の音世界に連れ戻してくれる。欧州ジャズらしからぬ、アフリカン・ネイティヴなリズム&ビートは、ガルバレクとアバークロンビーの「現代音楽&現代クラシック志向の即興演奏」を、モーダルな音世界に瞬間移動させてくれる。
のちのECMレコードが標榜する「ワールド・ミュージック志向のニュー・ジャズ」を、思いっきり先取した、素晴らしいECMレコード志向のニュー・ジャズ盤である。ガルバレクとアバークロンビー、そして、ヴァスコンセロスの途方もない音の「バリエーションと表現力」。欧州ジャズ、ECMジャズの傑作です。
ちなみにタイトルの「Eventyr(イベントュル)」は、ノルウェー語で「冒険」を意味する単語だそうです。
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