2023年10月30日 (月曜日)

『Miles Davis Vol.2』の聴き直し

マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、麻薬禍のマイルスに、本格的なリーダー作を録音する機会を提供し、彼の生活を助け、彼を支援した。

そして、ライオンがマイルスに提供した録音機会は、全部で1952年3月9日、1953年4月20日、1954年3月6日、の3セッション。1952年は麻薬禍真っ只中、1953年は麻薬禍を克服して間もない頃、1954年はほぼ完全に復調した頃。

この3セッションの音源、10-inch LPバージョン、12-inch LPバージョン、2001年リイシューCDバージョンと3通りの音源収録のパターンがあって注意が必要。ざっと、以下の様な3通りの内容になっている。

10-inch LPが一番判りやすくて、1952年の録音は『Young Man With A Horn』で、1953年の録音は『Miles Davis Vol. 2』、1954年の録音は『Miles Davis Vol. 3』と3枚のアルバムに、ちゃんと分けて収録されている。

が、12-inch LPについては、『Miles Davis Volume 1』には、1952年と1953年の録音が、但し、LPの収録時間の関係上、A面とB面1曲が、1952年録音の曲と1953年録音の曲がテレコで入っている。『Miles Davis Volume 2』には、1954年の録音がメインではあるが、1952年、1953年、1954年の録音が混在。

2001年にリイシューされたCDはスッキリしている。『Miles Davis Volume 1』は、1952年と1954年の録音が、『Miles Davis Volume 2』には1953年の録音が収められていて、『Miles Davis Volume 1』は、9曲目の「Woody 'n' You」と、10曲目「Take Off」では、明らかに演奏の雰囲気が変わるので、1952年と1954年の録音の境目はよく判る。

そこで、今回は『Miles Davis Volume 2』(写真左)の2001年リイシューCDバージョンで、1953年4月20日のセッションを聴く。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。マイルスのトランペット、ジェイジェイのトロンボーン、ジミー・ヒースのテナーの3管フロントのセクテット編成。
 

Miles-davis-vol2

 
1953年4月20日のセッションは、マイルスは麻薬禍を克服して間もない頃。明らかに麻薬禍を克服しているのがよく判る、ハードバップのプロトタイプの様な、当時として「新しい」響きと内容が素晴らしい。ブルーノートでの録音ということもあるだろう。

ブルーノートはリハーサルにもギャラを払って、ジャズマンにしっかりリハを積ませて演奏のレベルを引き上げ、本番でレベルの高い、内容のある演奏をさせて録音する、ということを常にやっていた。この盤でもそうだったんだろう。

特に、マイルス=ジェイジェイ=ヒースの3管フロントのユニゾン&ハーモニーが「キマッて」いる。バンド全体のアンサンブルも整然としていて緩みが無い。それぞれのアドリブ展開は創造性に富む。この盤の演奏が「マイルスによるハードバップの萌芽」と評価される所以である。

この1953年4月20日録音は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。演奏の展開は全く「ビ・バップ」では無い。演奏をしっかり聴かせる、クールでモダンなアレンジが施され、一人一人のアドリブ展開の長さも、そのジャズマンの力量と歌心を推しはかるに十分。いわゆる「ハードバップ」な展開である。

メンバーそれぞれが、この演奏のアレンジとスタイルが「新しいもの」と感じているみたいで、実に神妙にテクニックよろしく、しっかりと楽器を演奏している様が伝わってくる。とりわけ、マイルスのトランペットは素晴らしい。クールでリリカルで訴求力ある展開は、当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスはライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍と戦いながら、素晴らしい録音をブルーノートに残した。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残した。そして、麻薬禍を克服する。
 
 

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2021年7月 1日 (木曜日)

マハヴィシュヌ・オケのライブ盤

もともと自分は「ロック・キッズ」出身。中学時代には、深夜放送を中心に「ロック&ポップス」のシングル曲をせっせと聴いていた。高校時代に入って、本格的に「ロック・キッズ」の仲間入り。高校一年生の頃、プログレッシヴ・ロック(略して「プログレ」)にドップリ填まった。いわゆる「プログレ小僧」化し、あれから50年経った今でも「プログレ盤」は大好きで、ジャズの合間の耳休めにちょくちょく聴いている。

このプログレであるが、英国においてはロックとジャズの境界線が曖昧。クロスオーバー・ジャズの中で、ロックからジャズへ、ジャズからロックへ、双方向からのアプローチがあって混沌としている。判別のポイントは、ロックからジャズへのアプローチは「シンプルでポップで判り易い」、言い換えれば「単純」。ジャズからロックへのアプローチは「テクニカルで複雑」、言い換えれば「判り難い」。

ロックからジャズへのアプローチの代表例が「プログレ」で、ロックにジャズの要素を混ぜ込むことで、ちょっとアカデミックな雰囲気が漂い、その辺のやんちゃなロックとは一線を画すことが出来る。「プログレ」は演奏テクニックが優秀で、ジャズの要素を取り込み事が出来たのだ。

逆に、ジャズにロックの要素を混ぜ込むことで、アコースティック一辺倒だったジャズの「音の表現」に、電気楽器の新たな「音の表現」が加わり、新しいジャズの響きが生まれる。特に「エレ楽器や8ビート」の導入は、それまでに無い、全く新しいジャズの表現方法を生み出した。
 

Between-nothingness-eternity

 
John McLaughlin with Mahavishnu Orchestra『Between Nothingness & Eternity』(写真左)。1973年8月18日、NYのセントラルパークで行われた「Schaefer Music Festival」でのライブ録音。リリース当時の邦題は「虚無からの飛翔」。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Jan Hammer (key), Jerry Goodman (vln), Rick Laird (b), Billy Cobham (ds, perc)。

クロスオーバー・ジャズの代表格、ジャズ畑のエレ・ギターの雄、ジョン・マクラフリンがリーダーのマハヴィシュヌ・オーケストラのライヴ盤。聴けば良く判るが、演奏のベースはジャズである。そこにロックの要素(エレ楽器や8ビート)をタップリ注入し、ジャズの即興演奏の要素を前面に押し出す。

しかしながら、エレ・マイルスとは異なり、このマハヴィシュヌ・オケの音に「ファンクネス」は希薄。ファンクネスを極力抑えることによって、ロックとの融合の印象をより強くする作戦。ライヴ音源だとそれが良く判るし、その作戦は成功している。マハヴィシュヌ・オケの音は、驚異的なハイ・テクニックの下、リズム&ビート、およびアドリブ・フレーズは「捻れていて複雑」かつ「ストイックでアーティスティック」。

恐らく、マハヴィシュヌ・オケは英国をはじめ欧州でウケたのではないか。演奏内容が「テクニカルで複雑」なので米国では、欧州ほどにはウケなかったと思われる。我が国では、当時、エレ・ジャズは異端とされていたので論外(笑)。元「プログレ小僧」だったジャズ者の方々に是非お勧めの「マハヴィシュヌ・オケ」である。
 
 
 

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2019年3月 4日 (月曜日)

ヴィーナス・レコードの粋ジャケ

日本発のジャズ・レーベルに「ヴィーナス・レコード」がある。日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルで、個人が経営する独立系ジャズ・レーベルとしては現在、日本最大級の規模となっている。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

硬派なジャズ者の方々は、このヴィーナス・レコードからリリースされるアルバムのジャケットを揶揄される。殆どのジャケットが「セミヌードか下着姿の女性」があしらわれている。これがすこぶる評判が悪い。確かにちょっと品に欠けるところがある。この「セミヌード」ジャケットがLPサイズだったとして、平然とレコード屋のカウンターに持ち込めるか。否、である(笑)。

しかし、そんなヴィーナス・レコードのアルバムの中にも、小粋なジャケットで、小粋な内容な「隠れ好盤」が何枚かある。例えば、この盤などその一枚。Bill Crow Quartet『Jazz Anecdotes』(写真左)。1996年11月19 & 20日、New JerseyのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Bill Crow (b), Carmen Leggio (ts), Joe Cohn (g), David Jones (ds)。
 

Jazz_anecdotes_bill_crow  

 
リーダーのビル・クロウのベースが効いている。ビル・クロウはリーダー作の当アルバムともう一枚『From Birdland to Broadway』の2枚だけがヴィーナス・レコードからリリースされているだけだが、サイドマンとしてのキャリアは折り紙付き。ジェリー・マリガンとの共演が一番多く、スタン・ゲッツ、ズート・シムズ等々との共演が多数ある。

アルバム・タイトルの「ジャズ・アネクドーツ」 とは、ビル・クロウが書いたジャズ・マン達に知られざる逸話を集めたジャズ・ブックの名前。タイトルの由来からして「粋」。このアルバムの内容も、しっかりとしたハードバップな演奏で、音の作りは決してレトロでは無く現代的。演奏される曲はスタンダード曲がメイン。味のあるアレンジが施されていて飽きない。

ジャケットも「粋」。タイポグラフィーも良好、あしらわれている写真も良い雰囲気。このジャケットだけを見たら「ヴィーナス・レコード」からのリリースだとは思わないだろう。これなら、硬派なジャズ者の皆さんもヴィーナス・レコードを少しは見直してくれるかも、である。

 
 
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2018年3月17日 (土曜日)

久し振り「天文ジャケ」ジャズ盤

ネットのダウンロード・サイトを徘徊していると、とても素敵なジャズ盤に出会うことがある。それも、全く出会ったことの無い、全くその存在すら知らないジャズ盤である。ダウンロード・サイトの試聴とジャケットの様子を見て、思い切って全編聴いてみる。こういうやり方で「失敗盤」に出会うことは殆ど無い。

つい先日、出会ったジャズ盤がこれ。Maxime Bender『Universal Sky』(写真左)。2018年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Maxime Bender (ts, ss), Manu Codjia (g), Jean-Yves Jung (org), Jérôme Klein (ds)。としたり顔でご説明しているが、実はこの盤のことは全く知らなかった。ほんと、たまたまネットのダウンロードサイトでジャケットを見て、「これは」と思ってゲットした。

というのも、僕の趣味の1つに「天文」がある。もう50年近くになるかなあ。かなり息の長い趣味である。そういうこともあって、ジャズ盤にしろ、ロック盤にしろ、天文に関するジャケットは即ゲット状態に近い。この盤のジャケットは「星」。試聴をして、これはいいなあ、と思いつつ、ついついゲットしてしまいました(笑)。
 

Universal_sky  

 
Maxime Bender=マキシム・ベンダー。1982年生まれルクセンブルク出身の若手サックス奏者。サックスの腕前だけで無く、作曲の能力も高く評価されているようだ。自身のビッグバンドでの作品もあり、マルチなタレントの持ち主である。2015年には来日経験もあるらしい。知らなかったなあ。

さて、本作はこのベンダーがリーダーのバンド「Maxime Bender Universal Sky」によるもの。サックス、ギター、ハモンド・オルガン、ドラムのカルテット構成。アルバム全体の雰囲気はスムース・ジャズっぽいが、意外と硬派な「今」の米国コンテンポラリーな純ジャズ。拍子の変化やユニゾン&ハーモニーの雰囲気が実にクール。ギタリスト、マヌ・コジャの音色や空間的エフェクトも「粋」。

米国のコンテンポラリーな純ジャズではあるが、どこか冷たい熱気を帯び、ファンクネスが極めて希薄な面もあって、どこか欧州ジャズ的雰囲気が漂うところが実にニクい。まことに趣味の良いコンテンポラリーな純ジャズで、演奏もなかなかに奥が深く飽きが来ない。我が国では全く知られていない盤だとは思うが好盤です。我がバーチャル音楽喫茶でのローテ盤になってます。

 
 

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2017年9月12日 (火曜日)

ながら聴きのジャズも良い・25

久し振りに「天文関係」のジャケットに出会った。この3年ほど「天文関係」のジャケットを持ったジャズ盤を探しているのだが、見つかる時は、結構、立て続けに見つかるんだが、見つからない時は、とんと見つからない(笑)。もしかしたら、ジャズの世界では「天文関係」のジャケットは意外と少ないのかもしれへんなあ。

松本圭司『STARGAZER』(写真左)。STARGAZER=星を見つめる者(天文学者、占星術者)の意味。これは珍しい。タイトルからして「天文関係」ではないか。ジャケットはどこの星雲だろうか。明らかに「天文関係」。タイトルもジャケットも「天文関係」。今年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、松本圭司 (p), 則竹裕之 (ds), 須藤満 (b)。

松本圭司とは誰か。彼のオフィシャルHPのプロフィールを見ると、「1992年、高校卒業後上京し、キーボーディスト、ピアニストとして活動を始める。1998年末よりT-SQUAREに参加。アルバム「T-SQUARE」に自作曲4曲提供。2003年に1stソロ盤「Life」をリリース」とある。おお、どっかで聞いた名前やと思った。
 

Stargazer

 
収録された曲名を見渡すと、何と無く「星」を連想させるタイトルばかり。アルバムの解説には「12星座をイメージして構成した通算6枚目のオリジナル・アルバム」とある。なるほど、曲名まで「天文関係」である。演奏全体の雰囲気は、最初、聴いていると、1980年代に一世を風靡した「ウィンダムヒル」みたいやなあ、とも思うし、いやいや「デイヴィッド・ベノワ」のフォロワーかとも思う。

そう、演奏全体の雰囲気は「スムース・ジャズ」。しかし、演奏全体に粘りが無く、サラッとシンプル。ファンクネスも希薄。いわゆる日本人独特のあっさりした、小粋な「スムース・ジャズ」である。スムース・ジャズではあるが、実にキャッチャーなフレーズがてんこ盛りで、聴いていて凄く心地良い。スムース・ジャズとはかくあるべし、という感じで、ほどよくアレンジされ、ほどよく気合いの入ったパフォーマンスで魅了する。

とにかく聴いていて心地良い。これぞ「ながら聴き」に最適なスムース・ジャズ。これだけ洗練され、ハイテクニックで優れたアレンジのスムース・ジャズが、日本人の手によって創作される時代が来るとはなあ。この松本圭司『STARGAZER』を聴きながら、何故か万感な想いがこみ上げてきて、ちょっと目頭が熱くなった。

 
 

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2016年10月11日 (火曜日)

天文関連のジャズ盤ジャケ・1

私、松和のマスターについては、ジャズや70年代ロック、70年代Jポップのアルバム蒐集という趣味の他に「天文」という趣味がある。天文の趣味は小学4年生の秋からだから、もう48年もの長きに渡って天文の趣味を続けている。

ということで、ジャズのジャケットを見ていて、天文に関するジャケットがあったら、ついつい手にしてしまう。ジャズのジャケットって、理由はよく判らないが、天文に関するジャケットが時々あって、どうして、そのアルバムに天文写真のジャケットがあしらわれるかは皆目見当がつきかねるが、天文ファンの自分にとっては、なかなかの楽しみではある。

Bill Stewart『Space Squid』(写真左)。今年のリリース。現代ジャズのファースト・コール・ドラマーの一人、ビル・スチュアートのリーダー作である。ちなみにパーソネルは、Bill Stewart (ds), Seamus Blake (ts,ss), Bill Carrothers (p), Ben Street (b)。不勉強ではあるが、ビル・スチュアート以外のメンバーについては「ピン」とこない。

しかし、内容は充実している。スリリングな展開を保ちつつ、演奏全体の個性は整然とした規律あるもの。ジャズ演奏の傾向としては「モーダル」な演奏であり、演奏全体の自由度は高い。それぞれの楽器については、テクニック、切れ味、申し分無く、現代のコンテンポラリーなジャズの良いところをガッツリ表現してくれていて、ついつい聴き耳を立ててしまう内容。
 

Bill_stewart_space_squid

 
全11曲中、10曲がビル・スチュアートの自作。といって、マンネリ感は無い。バラエティーに富んでいて、ビル・スチュアートの作曲の才能に感心する。ラストにとって付けたように、スタンダード曲の「Dancing in the Dark」が演奏される。自作曲の演奏内容が良いだけに、この最後のスタンダード曲は無くてもよかったのでは、と勘ぐったりする。

さすがリーダーだけあって、このアルバムでのビル・スチュアートのドラミングは素晴らしい。どの演奏でも演奏のリズム&ビートをしっかりと支え、コントロールし、フロントのサックスを鼓舞する。このビル・スチュアートのドラミングのお陰で、このアルバム全体に渡って「統一感」がしっかりと存在している。

と、ジャケットを見れば、なんと「オリオン座大星雲」のM43ではないか。M43 (NGC 1982) はオリオン座の三ツ星の南にあるオリオン大星雲のすぐ北側に広がる小さく暗い円形の散光星雲。このM43の大写しの写真が、このビル・スチュアートの新作にジャケットにドーンと鎮座ましましている。いや〜、天文ファン+ジャズ者の我々にとっては、文句無しに「ゲット」である(笑)。

限りなく自由度の高い、現代のコンテンポラリーな純ジャズな演奏がギッシリ詰まった、このビル・スチュアートの新作のジャケットが、何故M43の大写しなのかは判りませんが、内容的に、この『Space Squid』という新作はなかなか「いける」、ジャケ買いOKの好盤だと思います。

 
 

震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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