2016年10月 2日 (日曜日)

Panta & Halのロック盤

1970年代、日本のロックは、演奏力が弱い、ボーカルが弱い、日本語がロックビートに乗らない、などなど、評論家筋を中心にケチョンケチョンに言われた。しかし、1970年代半ばより、ニューミュージックの波に乗って、日本のロックはダイナミックに充実していった。

もはや1970年代終盤においては、前述の様な「日本ロック批判」を叫び続ける評論家筋はまだまだいるにはいたが、日本のロックのアルバムについては、日進月歩で充実している。僕の大学時代、1970年代終盤から1980年代初頭においては、後世に残る「日本ロックの好盤」が結構リリースされた。

この2枚のアルバムは、そんな中の2枚である。Panta & Hal『マラッカ』(写真左)と『1980X』(写真右)。『マラッカ』は1979年、『1980X』は1980年のリリース。

『マラッカ』は、1977年7月に始動させたバンド「Panta & Hal」名義で発表したファースト・アルバムになる。内容としては、単純なハード・ロックな展開は全く無く、ポリリズミックなレゲエ・ナンバーやマーク・ボランへの哀悼の念を込めたブギーなナンバーなど、音楽的にバリエーションに富んだロック・ナンバーが詰まっている。
 

Panta_hal

 
『1980X』は、PANTA & HAL名義でのセカンド・アルバム。このアルバムの特徴は、キーボードを排除した、シンプルな「ギター・サウンド」がメインであるということ。前作の音楽的にバリエーション豊かな内容とは打って変わって、ソリッドでシャープな「ギター・ロック」で占められている。

この2枚のアルバムの内容は、当時の日本ロックとしてはかなり衝撃的で、ついに日本のロックもここまで来たか、急速に英米のポップロック・シーンに肉薄した、という感を強くした。演奏テクニックは申し分無く、ボーカルも個性と味があり、日本語はロックビートにしっかり乗っている。

Panta(パンタ)は、1970年代に、伝説のロックバンド、頭脳警察を率いて有名を馳せたロック・ヴォーカリスト。頭脳警察時代の過激なパフォーマンスや現在に至る過激な政治的言動については賛同しかねる面が多々あるのだが、ことさら、ロック・ボーカリストとしての実力、ソング・ライティングの能力については全く申し分無い。どころか称賛に値するレベルである。

特に、この1970年代の終焉と1980年代の初頭にリリースされた『マラッカ』と『1980X』については、日本ロックの歴史の記憶に留めるべき好盤であると思う。確かに、僕達の学生時代、行きつけの喫茶店で、はたまた、徹夜麻雀のBGMに大活躍の「日本のロック盤」であった。

 
 

震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

2016年9月19日 (月曜日)

日本語がロックに乗った瞬間

1970年代、日本人の演奏するロック、和製ロックが台頭する中で、評論家を中心に「日本語はロックに乗らない」という変な風潮がトレンドとなった時期がある。1970年代半ばまでの和製ロックについては、無理して英語で歌うところが、とても痛々しかったのを覚えている。

まあ、英語で歌われるロックは何だか格好良く、日本語で歌われるロックは何だかダサイ、ということなんだが、当時、日本語の歌詞自体の言葉使いとか言い回しとかが稚拙だったこともあって、日本語で歌われる楽曲は何だかダサイ、というところが本当のところだろうと思っている。

個人的には「日本語はロックに乗らない」とは全く思っていなくて、評論家って変なこと言うなあ、と言うくらいにしか受け止めていなかった。そして、この「日本語はロックに乗らない」という風潮を打破し始めたのが、1970年代後半、ニューミュージックという音楽ブームに乗って、現れ出でた「歌謡ロック」である。

歌謡曲の哀愁感や情緒感をロックに取り入れた「日本語によるロック」で、その内容によっては「演歌ロック」とも呼ばれた。ニューミュージックのブームに乗って売れに売れたので、ロックの精神性を重んじる、お堅いロック・ファンには評価されづらい存在であった様に思う。しかし、この歌謡ロックの成立によって「日本語はロックに乗った」のである。

そんな歌謡ロック成立の立役者の一人が「世良公則」。ツイストというバンドを伴って、1977年10月、ポプコン本選会で「あんたのバラード」がグランプリを獲得。いきなり50万枚を超える大ヒットを記録して、ロックをメジャーに押し上げた最初のロックバンドとなる。

そして、1978年〜79年にかけて、世良公則&ツイストは「宿無し」「銃爪 (ひきがね)」「性」「燃えろいい女」とヒット曲を連発し、「ザ・ベストテン」などのTVの歌謡番組にも積極的に出演したところも、それまでのロックバンドにないマナーでした。独特のステージ・アクションで歌う世良公則の姿に度肝を抜かれたのを今でも覚えています。
 

Masanori_sera_twist

 
そんな世良公則&ツイストの音を捉えたアルバムが『Twist』(写真左)と『ツイストⅡ』(写真右)です。今の耳で聴いてみると、やはり世良公則のソング・ライティングとボーカルの才が突出しています。バックバンドの音はさほどお上手ではないんですが、それをかき消すほど、世良公則のボーカルが圧巻です。

それまで、和製ロックの弱点は「ボーカル」にあったと思っていて、とにかく和製ロックのボーカルは弱い、というか繊細過ぎる。加えて、苦手な英語で歌わされるものだから更に弱くなる。そんな繊細過ぎる和製ロックのボーカルの印象を一気に払拭したのが、世良公則のパワー溢れるボーカルでした。

世良公則の音楽性は、男臭くセクシュアルな面をちょっと前に押し出しつつ、どこかウェット感、情緒感のある歌謡ロック。世良公則&ツイストの出現は、明らかにロックをメジャーに押し上げた最初の出来事でした。リアルタイムでその瞬間を体験できたことは、今でも貴重な体験として自分の中に残っています。

「日本語によるロック」、今ではその言葉を聞いて「日本語はロックに乗らない」とか「日本語で歌うロックはロックでは無い」と言う人はいないと思います。日本語で歌ってもロックはロック。これはすっかり当たり前のことになりました。

お堅い日本のロック評論やロック・ファンから排斥されようと、俳優業の片手間のお遊びと揶揄されようが、世良公則の歌謡ロックをメジャーにした功績と「歌謡ロック・スピリット」は不変だと思います。

 
 

震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
 

保存

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー