「ファーマーの音色」だけを聴く盤
ジャズの演奏の世界って、アレンジが重要なんだなあ、と思う時がある。アレンジの良し悪しで、リーダーの担当する楽器や、フロント管の旋律やアドリブがくっきり前面に明確に聴こえたり、聴こえなかったり。聴いていて、演奏全体が聴き心地良かったり、悪かったり。アルバム全体を聴き通していて、集中して最後まで聴けたり、途中で飽きがきたり。意外とジャズには「アレンジの重要性」が必須要素としてある、と僕は睨んでいる。
Art Farmer with The Quincy Jones Orchestra 『Last Night When We Were Young』(写真左)。1957年3月28日、4月24 & 29日の録音。ちなみにパーソネルは、メインセットに、Art Farmer (tp), Hank Jones (p), Tommy Kay (g, on March 28, tracks 2, 4, 8), Barry Galbraith (g, on April 24 & 29), Addison Farmer (b), Osie Johnson (ds, on March 28, tracks 2, 4, 8), Sol Gubin (ds, on April 24 & 29), Quincy Jones (arr, cond)。ここに、それぞれの録音日で、それぞれのオーケストラ・メンバーが加わる。
当時の人気アレンジャー、クインシー・ジョーンズ(以降、愛称「Q」)のジャズオケ・アレンジに乗って、アート・ファーマーが心ゆくまでトランペットを吹き上げる、イージーリスニング志向のビッグバンド・ジャズの企画盤。ABC-Paramountレコードからのリリース。さすがに大手レコード会社、ジャズ・ファンのみならず、一般の音楽ファンにも訴求する、聴き心地の良い、それでいて、内容的にしっかりしたイージーリスニング志向のジャズに仕上がっている。
冒頭の「Two Sleepy People」の演奏内容が、この企画盤の雰囲気を決定づけている。Qのムーディーで新鮮な響きでアレンジされたジャズオケの伴奏に乗って、ファーマーのトランペットが唄うように囁くように流れてくる。かなりムーディーな雰囲気だが、決して俗っぽくない。さすが、Qのアレンジである。特に尖ったところがない、流麗でムーディーなアレンジだが、底にしっかりジャズがある。
優れたアレンジの下で、ファーマーのトランペットが映えに映える。「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色が映えに映える。ファーマーのトランペットの個性が、とても良い響きで、いい感じ流れて来る。これが全編に渡って展開される。これが実に良い。
この企画盤は、Qのアレンジの優秀性と、この優れたQのアレンジに乗った、ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色だけを愛でる盤。バリバリ尖ったアドリブよろしくインタープレイを展開するハードバップも良いが、こういう内容の伴った、聴き心地の良いイージーリスニング志向のジャズも良い。特に、ながら聴きのジャズに最適。これも「良い音楽」、これも「良きジャズ」である。
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