2018年6月17日 (日曜日)

サザンロック系のAORなエレギ

「ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事」という単行本を読みつつ、ポーカロのお仕事を追体験している。ジェフ・ポーカロは、ロックバンド、TOTOの元ドラマー。セッション・ミュージシャンとしても数多くのレコーディングに参加しており、AORからフュージョン・ロックまで、幅広いジャンルで活躍した。プロとしてのキャリアは20年余りにも拘らず参加作品は200作を超えているが、1992年8月5日、38歳の若さで早逝している。

そんなポーカロのお仕事を追うと、こんなアルバムあったんや、とか、ああ懐かしいアルバムやなあ、とか、とても興味深いアルバムに沢山出会う。ポーカルって、AORやフュージョン・ロックにおいて、重要なアルバムやヒットアルバムに結構、名を連ねている。このアルバムもポーカルのドラムなんや、と改めてビックリするアルバムの何と多いことか。

『Les Dudek』(写真左)。1976年のリリース。当時の日本盤のキャッチコピーは「デュアン・オールマンの生まれ変わり」。確かに、サザンロック風のエレギで、デュアンより、スッキリ明るい音色で、ブルース・ギターの香りは残ってはいるが、アーバンで端正なAOR系のエレギという雰囲気。伸びやかで良く唄うギターで、フュージョン・ジャズの耳にしっかりとフィットします。
 

Les_dudek

 
Les Dudek=レス・デューデックとは、米国の東海岸ロード・アイランド出身のギタリスト。オールマンズのアルバム『Brothers & Sisters』に参加、「Ramblin' Man」ではディッキー・ベッツと共にギターを弾き、「Jessica」ではアコギを担当。ああ、あのアコギ、デューデックだったのね、とビックリ。その後、ボズ・スキャッグスのバックバンドやスティーヴ・ミラー・バンドでギターを担当、僕は、ボズの『Silk Degrees』のパーソネルでその名を知りました。

さて、アルバム『Les Dudek』に戻ると、スライド・ギターも心地良く、ライトなサザン・ロック風のテイストがなんとも粋である。1970年代のサザン・ロック者からすると、このギターは「アリ」ですね。ドラムのポーカロも得意のシャッフル・ビートを叩きつつ、サザン・ロック風のリズミカルで躍動感のあるパーカッシヴなドラミングも織り交ぜて、かなり高度なお仕事をこなしていて素晴らしいです。

このアルバムの存在、「ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事」という単行本で再発見するまで、すっかり忘れていました。聴き直してみて、ああ懐かしい、1970年代後半のサザン・ロック系のAORな雰囲気がとても芳しい。そして、思い出した。ジャケットのゴールドのレスポールのネックの先にとまるオウムの存在を(笑)。不思議なジャケットですが、AORからフュージョン・ロックの好盤です。ジャズの合間の耳休めにピッタリ。

 
 

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2018年6月 9日 (土曜日)

ブルースとジャズの融合の好盤

ジャズのアルバムを続けざまに聴いていると、ちょっと「耳休め」に他のジャンルの音楽を聴きたくなる瞬間がある。もともと50年ほど前にはクラシック音楽に親しみ、45年ほど前にはロック小僧だった訳で、特に最近、歳をとったのであろう、70年代ロックやソウル、ブルースが無性に聴きたくなる時がある。

そういう時は無理せず「ジャズの合間の耳休め」盤として、そちらの好盤に耳を傾ける様にしている。ただし、ジャズの合間の耳休めなので、あまりジャズからかけ離れた音楽を聴くのは、ちょっと憚られる。この4〜5年、ジャズの合間の耳休めに聴く盤としては、米国ルーツ・ミュージック系のアルバムをチョイスするようにしている。

T-Bone Walker『Very Rare』(写真左)。モダン・ブルース・ギターの父と呼ばれる T-ボーン・ウォーカー。 彼が亡くなる直前(1975年3月没)が亡くなる前、1974年にリリースした好盤である。ちなみにパーソネルを見渡すと、Larry Carlton, David T. Walker, Dizzy Gillespie, Gerry Mulligan, Herbie Mann, Zoot Sims, Joe Farrell, Al Cohn, Wilton Felderなど、ジャズ界の一流どころを目一杯起用。
 

Very_rare_1

 
前述のパーソネルから、この盤は「ジャジーでソウルフルなブルースの好盤」に仕上がっている。特に、この盤は、T-ボーン・ウォーカーのボーカルをフィーチャーしており、聴けばお判り頂けるかと思うが、ライトでフュージョンなジャズ・ボーカルの秀作としても聴くことが出来る内容なのだ。渋くてブルージーなT-ボーン・ウォーカーのボーカルとジャジーなバック演奏とが、とても相性が良いようだ。

あのジャズ・ギタリストの祖、チャーリー・クリスチャンがジャズに採用したよりも早く、エレギをブルースの採用したと言われる、モダン・ブルース・ギターの父、T-ボーン・ウォーカーの弾くエレギはあまり出てこないのですが、ところどころに出てくる「一発芸」的なアドリブ・フレーズはやはり、相当にブルージー。流れればハッとし、聴き惚れて「ええ雰囲気やな〜」と、思わず感嘆の声が出てしまう。

ブルース、ジャズ、ソウル、R&Bなどが融合した、フュージョン・ミュージックな内容に惚れ惚れする。参加ミュージシャンの顔ぶれはブルース・アルバムとしては異色の面々ではあるが、こってこてファンキーなブルース・フィーリングは、このバック・ミュージシャンの面々がしっかりと担っています。ジャズの合間の耳休みとして、好適な盤だと思います。
 
 
 
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2018年6月 3日 (日曜日)

正統ブルース・ロックがてんこ盛り

ジャズの合間の耳休めのアルバムには色々あるが、やはり、ジャズに近い「米国ルーツ・ミュージック」を踏襲したものが一番フィットする。ロックであれば、米国ルーツ・ロック。ブルースやゴスペル、カントリー、ソウル・ミュージックをベースにしたロックが、ジャズの合間の耳休め盤に一番適している。

ロックであれば、ブルースを基調としたものが良い。ブルースを基調としたロックといえば、1960年代後半、英国で流行始めてから、現在に至るまで、綿々とコンスタントに好盤をリリースしている。レジェンドの域に達した大ベテランについては、エレック・クラプトンの名が「いの一番」に挙げられる。

それでも、1980年代のクラプトンについては、まずは売れることが求められ、それに応えようとした時代の流行の音に迎合したアルバムが多く、あまり触手の伸びるアルバムをリリースすることは無かった。しかし、1992年にリリースされたライブ盤『Unplugged』により、渋いブルースを歌うクラプトンが評価され、人気の裾野が広がり、セールスが伸びた。渋いブルースをクールにロックして歌うスタイルが受ける。クラプトンは確信した。
 

From_the_cradle_1  

 
その確信をもとにレコーディングされたアルバムが、Eric Clapton『From the Cradle』(写真左)である。1994年のリリース。コッテコテのブルース集である。オリジナルを忠実に再現しながら、あくまでもコピーではない個性と拘りで、クラプトン・オリジナルなブルース・ロックがてんこ盛り。クラプトン流の「ホワイト・ブルース」を堪能出来る。

加えて、この盤、録音が良い。ブルース演奏らしく、シンプルで躍動感のあるもの。それもそのはず。ほぼ全曲とも一発録り。何らかのオーバーダブがなされているのは「ハウ・ロング・ブルース」と「マザーレス・チャイルド」の2曲のみらしい。躍動感溢れる、程良い緊張感を伴ったブルース・ロックは聴き応え十分。クラプトンの「原点回帰」というか、ロックに求められる「革新性」に別れを告げた「潔さ」が感じられる秀作である。

専門家からの評価も高く、グラミー賞のベスト・トラディショナル・ブルース・アルバム部門を受賞している。音の太さ、迫力と共に、ブルース・ロックの最高峰の演奏がこの盤に詰まっている。コマーシャルに流されない、純粋な音楽家としてのクラプトンが実に潔い。ちなみに、この盤、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ジャズの合間の耳休め盤に良く選盤されています。

 
 

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2018年5月19日 (土曜日)

米国ルーツ・ロックのデッド

ジャズの合間の耳休めには「米国ルーツ・ロック」が良い。1960年代終盤から1970年代、様々な米国ルーツ・ロックの好盤がリリースされた。米国ルーツ・ロックは、その名の通り、米国ルーツ・ミュージックの要素を取り込んだロックのこと。もちろん、ジャズも「米国ルーツ・ミュージック」のひとつ。

そういう面から、米国ルーツ・ミュージックは、ジャズの合間の耳休めにピッタリなのだ。このアルバムは、今を去ること約40年前、大学時代に聴いて「これは」と感心した、米国ルーツ・ロックなアルバムである。Grateful Dead『American Beauty』(写真左)。1970年のリリースになる。

タイトルが言い得て妙で、米国ルーツ・ミュージックの要素をふんだんに取り入れた「米国ルーツ・ロック」の好盤である。もともと「米国ルーツ・ロック」は大好きな私である。この盤に出会った時は、これはもう心はウキウキ、これは楽しい「米国ルーツ・ロック」の好盤。フォーク、カントリー、ブルース、そしてジャズ。米国ルーツ・ミュージックのおおよそがこの盤に詰め込まれている。
 

American_beauty

 
加えて、とってもリラックスしたロックである。後の「レイドバック」を先取りした様な、良い具合にリラックスしたロックである。決してダラダラはしていない。適度なテンションを張りつつも、どこか余裕のある演奏がとても素敵である。米国ルーツ・ミュージックの要素を大々的に取り入れたロックなので、これまでのデッドの音の個性であった「サイケ色」はほぼ前面的に払拭されている。

デッドのドラマー、ミッキー・ハート曰く「宇宙旅行から地上に帰って来て、土を耕して自分たちの足で踏ん張ったんだ」。言い得て妙ですね。この盤の底に漂っている「アーシー」な雰囲気を的確に言い当てています。そう、この盤のリズム&ビートはそこはかとなくアーシー。これが実に良い。聴いている耳に、このアーシーさが心地良く響く。

我が国では全くと言って良いほど、人気の無いグレイトフル・デッドですが、この『American Beauty』をメインとする「米国ルーツ・ロック」志向のアルバムは、聴きどころ満載、聴き応え満点の好盤揃いです。そうそう、「米国ルーツ・ロック」の好盤ですが、この盤ではアコースティック楽器の音がとても良いところが、隠れた「聴きどころ」です。お楽しみあれ。

 
 

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2018年5月13日 (日曜日)

ジャズの合間にゴスペル・ロック

ジャズの合間の耳休めには、米国ルーツ・ミュージックを融合したロックやR&Bが良い。というのは、私、松和のマスターの主観。実際、ハードな純ジャズやフリー・ジャズを聴き続けて、ちょっとジャズに耳がもたれた時、米国ルーツ・ミュージックを融合したロックやR&Bが耳に優しい。

ジャズと違和感の無い米国ルーツ・ミュージックのジャンルに「ゴスペル」がある。ゴスペルとは簡単に言うと、米国の黒人教会文化が生んだ「魂の歌」。神のことばや神から受けた恵みを感謝したり、伝えたいという思いが歌となったものが「ゴスペル」。ジャズでは、このゴスペルの特徴である「コール・アンド・レスポンス」や音の重ね方について、特にファンキー・ジャズのジャンルで取り込んで活用している。

ロックの世界でも、ゴスペルの要素はよく取り込まれている。特に、1960年代末から1970年代前半のトレンドでもあった「スワンプ・ロック」にとりわけ活用され、同時期に流行ったソウル・ミュージックにも、しっかりと取り込まれている。いわゆる、アフリカン・アメリカンの「魂のフレーズ」なのだ。
 

Right_on_be_free  

 
The Voices of East Harlem『Right On Be Free』(写真)。1970年の作品。ロックをベースにしたゴスペル・ミュージックである。イーストハーレムのゴスペル・グループが、1970年にリリースした1st.アルバムになる。リロイ・ハットソン、カーティス・メイフィールドが絡む前のストレートでパワフルな「ゴスペル・ロック」。ゴスペルの良いところをロックで強調した様な音世界。

ゴスペルのパワフルな歌唱をそのままに、ロックのビートに乗って、さらにその高揚感が高まっている。ロックの伴奏自体が切れ味が良く、曲の要所要所で「決め」の部分がバッチリと決まっていて、爽快感すら漂ってくる。重厚なコーラスが音の厚みに貢献し、しっかりと聴き応えのある音に仕上がっている。

すっきりとしたファンクネスが良い感じ。レアグルーヴ的な要素も随所に聴かれ、1970年の作品とは言え、音の古さをあまり感じ無い。レアグルーヴ〜ニュー・ソウル好きには必聴の好盤。ジャズの合間の耳休めにもピッタリのゴスペル・ロック盤です。聴いていて、思わず体が動き始め、クラップ・ハンドしてしまう。ゴスペルの魅力満載ですね。

 
 

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2018年5月12日 (土曜日)

ハサウェイの傑作ライブ盤

1970年代、ジャズは多様化が進む。純粋なジャズだけの音もあるにはあるが、ロックの要素を取り入れたクロスオーバー・ジャズが幅を利かせ、その後、大ブームとなったフュージョン・ジャズが席巻する。ジャズの音の要素は他のジャンルにも広がっていく。ソウル・ミュージック、その後のR&Bにジャズのテイストは浸透していった。

ジャズを聴いていて、耳が少々、ジャズに疲れた時は「ジャズの合間の耳休め」の盤を選盤して耳を傾ける。しかし、それがあまりにジャズからかけ離れていては駄目だ。ジャズ周辺のフュージョン周辺の音が良い。その演奏のテイスト、その演奏の雰囲気。ジャズに通じるノリと演奏テクニック。芳しきファンクネス、そして、ソウル。

Donny Hathaway『Live』(写真左)。1972年の作品。全米18位。早逝したR&Bの天才歌手、ダニー・ハサウェイの傑作ライブ盤である。ちなみにパーソネルは、Phil Upchurch, Cornell Dupree, Mike Howard (g), Willie Weeks (b), Fred White (ds), Earl DeRouen (conga, ds)。フィル・アップチャーチ、コーネル・デュプリーなど、後のフュージョンの名うてミュージシャンが参加している。
 

Donny_hathaway_live  

 
アルバムの前半(1〜4曲目)には、1971年8月にハリウッドのトルバドールで行われた公演からの抜粋が収録され、後半(5〜8曲目)には10月にニューヨークのビター・エンドで行われた公演から抜粋されている。これが、とっても良い雰囲気のライブ・パフォーマンスなのだ。バックのシンプルな演奏もさることながら、聴衆のレスポンス、パフォーマンスが見事。

ファンクネス溢れ、米国ルーツ・ミュージック、とりわけ、ブルース、ソウル・ミュージック、ゴスペルの要素を取り入れつつ、ジャズをベースとした演奏をバックに、ハサウェイはソウルフルにそれぞれの曲を唄い上げていく。従来のジャズ・ボーカルよりも、ポップでソウルフルでスピリチュアルな歌唱。

特にカバー曲が秀逸。冒頭の「What's Going On」、4曲目の「You've Got a Friend」、7曲目の「Jealous Guy」など、思わず惚れ惚れして聴き込むほどの出来の良さ。一分の遅れも隙もなくプレーヤーと一体化した観客、一緒になって大声で歌う瞬間。このライブ盤は、その場で自分も聴いていると錯覚させてくれるほどの「ライブ感」に満ちあふれている。

 
 

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2018年4月23日 (月曜日)

ロックとジャズとR&Bと

ジャズの合間の耳休めには、あんまりジャズからかけ離れない様にしている。70年代ロックを本格的に聴く時は、初めにジャズは聴かない。いきなり70年代ロックで入る。ジャズを聴いている合間の耳休めは、ジャズからあんまり離れない。クロスオーバー系のロックや、フュージョン系のロックを聴く。

1960年代終わり頃から1970年代にかけて、ブラス・ロックなるジャンルがあった。フロント楽器が金管楽器。3〜4管編成で、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニーが特徴。バックのリズム・セクションがロック系のエレギ、エレベ、そしてドラム。このブラス・ロックをベースにジャズとR&Bの要素を織り交ぜた、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックがあった。Blood, Sweat & Tears(以降、BS&Tと略)である。

Blood, Sweat & Tears『Child Is Father to the Man』(写真)。邦題『子供は人類の父である』。1968年のリリース。ちなみに、当時のBS&Tのメンバーを並べてみると、Randy Brecker (tp, flh), Bobby Colomby (ds, perc), Jim Fielder (b), Dick Halligan (tb), Steve Katz (g), Al Kooper (key), Fred Lipsius (as), Jerry Weiss (tp, flh)。ランディー・ブレッカーがおる。アル・クーパーがおる。フロントのブラスが4管。いわゆる「ブラス・ロック」の編成である。
 

Child_is_father_to_the_man  

 
音の味付けは「R&Bとジャズ」。ブラス・ロックの音の傾向は「クロスオーバー・ジャズ」。しかし、リズム&ビートはロック。このBS&Tの音世界はシカゴと並んで、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックの創始であった。ロック基調な分、ファンクネスは控えめだが、ブルージーな雰囲気は色濃く、フレーズはシンプルで判り易い。ボーカルもクセの無いストレートな歌唱で、これまた判り易い。

1968年のリリースという背景もあって、当時のミュージック・シーンの混沌とした感じやサイケデリックな音が、ところどころ顔を出す。この辺が純粋なジャズと全く異なるところで、ヒッピー・ムーブメントの影響をダイレクトに感じるのだ。アルバム・ジャケットを見てもそれを強く感じる。

アル・クーパーのボーカルが魅力的。明らかにロックのボーカルで、ジャズの様にこってこてファンキーでウェットな歌唱にはならない。しかし、このアルバム、聴くべきは「ブラス・ロック」の真髄の部分。洒落たホーンアレンジ、ジャジーなアドリブ展開、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニー。「ブラス・ロック」は、ジャズの合間の耳休めに最適な音楽ジャンルのひとつである。

 
 

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2017年12月25日 (月曜日)

ソウルのクリスマス・ソング集

音楽についてはちょっと変わった子供だった気がする。時は1970年、小学6年生の時だと記憶している。親父のラジオをくすねて、こっそり聴き始めた音楽放送。NHKだったと思う。夜の10時過ぎだったか、洋楽・軽音楽を中心に様々な音楽を流していた。これを聴くのが、ほんと楽しくてねえ。歌謡曲には無いビートと旋律。ラジオを通じて米国を感じていた。

そんな色々な西洋音楽の中で、妙に心に響く音楽があった。まずは、フランク・シナトラやナット・キング・コールなどの男性ジャズ・ボーカル。ダンディズム溢れる彼らの歌声はむっちゃ格好良かった。そして、ソウル・ミュージックである。このオフ・ビートの「ノリ」、心地良いファンクネス。日本の歌謡曲より、格好良く心地良い音世界がそこにあった。

ソウル・ミュージック。米国においてアフリカ系アメリカ人のゴスペルとブルースから発展、1960年代を頂点とする,アメリカ黒人の現代的な大衆音楽。以前よりR&Bと呼ばれ、後にブラコンと呼ばれる。ゴスペル由来のコード進行、たたみかけるような覚えやすいリズム、コール・アンド・レスポンス、即興の多用、ジャズにも通じる黒人の感性を洗練されたサウンドで表現する音楽形態である。ソウル・ミュージック好きが切っ掛けとなって、ジャズも好きになり、短い間だがジャズ・ピアノも教えて貰った。
 

Soul_christmas_2

 
中学に入って、ブラスバンドでアルト・サックスも吹けるようになった。どうにも黒人系の音楽が大好きで堪らない。自分でも変わった子供だ、と思った(笑)。オフビート、ゴスペル、コール・アンド・レスポンス、そして、ファンクネス溢れるボーカル。どれもが心に響くソウル・ミュージックの要素。

そんなソウル・ミュージックをベースとしたクリスマス盤が『Soul Christmas』(写真左)。ジャケット違いで曲数も多い「ソウル・クリスマス」盤もあるが、「ジ・オリジナル」と付くのはこの盤。1968年当時のジャケットもレトロっぽくて懐かしい。スタックスと袂を分かつ前のアトランティック配給の数々のアーティストを集め、クリスマスの曲を実に楽しそうに演奏している。

レイ・チャールズ、クラレンス・カーターやジョー・テックス、ソロモン・バーク等々、ソウル・ミュージックを彩るスターの数々。そうそう、キング・カーティス、オーティス・レディング、カーラ・トーマス、ウィリアム・ベル、ブッカー・T&MGズの曲ももちろん入っています。

ジャズの合間の耳休め。とっても楽しいソウル・ミュージックのクリスマス・ソング集。今年はこの盤で「メリー・クリスマス」。

 
 

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2017年8月27日 (日曜日)

ブルー・アイド・ソウル系のAOR

昨日、我がバーチャル音楽喫茶『松和』はジャズ専門では無い。70年代ロック、70年代Jポップ」が裏専門。以前は、土日は「70年代ロック、70年代Jポップ」の記事にしていたなあ、ということで、そのルールを復活である。と宣言したので、今日もジャズの話題から離れて「70年代ロック、70年代Jポップ」に関する話題を。

70年代ロック&ポップスの範疇であるが、僕はAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)というジャンルのアルバムが好きである。特にR&B寄りのAORはたまらない。特に1970年代後半から1980年代前半、大学時代〜社会人なりたての頃、ジャズの合間の耳休めに、このAORの世界にドップリ浸かっていた。

John Valenti『Anything You Want』(写真左)。1976年の作品。R&Bの範疇、ブルー・アイド・ソウル系のAORになる。ジョン・ヴァレンティは、当時、巷では「白いスティーヴィー・ワンダー」と呼ばれたが、どうして、聴けば判る。決して、単なるスティーヴィーのフォロワーでは無い。独特の爽快感と切れ味が備わった、実に魅力的なブルー・アイド・ソウル系のAOR盤である。
 

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確かに1曲目のタイトル曲「Anyting You Want」を聴けば、確かに「スティーヴィー・ワンダーのフォロワー」と呼ばれても仕方が無いよな、と思われる位の徹底ぶりである。でも、内容的には実に充実していて、よくよく聴けば、ブルー・アイド・ソウル系なので、ファンクネスが軽い。確かにファンクネスが漂うのだが爽やかなのだ。これが「個性」で、僕はこの雰囲気に填まった。

曲作りも基本的にはギターがベースで、キーボードやブラスは脇役に回っているところが、他のコッテコテR&B〜ブラコン系のAORとは異なる。アコギの多用、メロディアスなエレギのソロ。これはこの盤独特の個性で、この部分だけでも「白いスティーヴィー・ワンダー」とは呼べない。似て非なるもの、と解釈して良いだろう。

AORってどんな音楽なの、って聴かれたら、結構、このヴァレンティの『Anything You Want』をかけることが多い。演奏の基本部分は「R&B」であり、ギター中心のアレンジは「フュージョン・ジャズ」の雰囲気を踏襲していて、とにかくAORの代表的名盤の一枚であることは間違い無い。そうそう、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「ジャズの合間の耳休め盤」として活躍している。

 
 

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2017年4月17日 (月曜日)

米国ルーツ・ロックの実力派

1975年の晩秋のことである。当時、僕は高校2年生。エリック・クラプトン率いる、デレク・アンド・ドミノスの『レイラ』に出会って、スワンプ・ロックを知った。ほどなく、オールマンズを知り、サザン・ロックを知った。それ以来である。当時、プログレ小僧だった僕は、180度方向転換して、米国ルーツ・ロックに走ることになった。

米国ルーツ・ロックの中でも、ブルースが基調の泥臭くワイルドなサザン・ロック、米国南西部の雰囲気が色濃いカントリー・ロックが大好きで、そんな中、ゴスペルなど教会音楽の要素を織り込んだものも良い。当然、ジャズの要素やフュージョンの要素を取り込んだお洒落なルーツ・ロックも良い。

The Marshall Tucker Band(マーシャル・タッカー・バンド、略してMTB)というバンドがある。彼らはアメリカ南部のサウスカロライナで1971年にバンドを結成、彼らが練習に使っていた部屋のオーナーの名前をとって、マーシャル・タッカー・バンドと名付けた。

このバンドの音楽性は非常に多様で、カントリー・ロックをはじめとして、野太いギターのロック・サウンドを下地にしたブルースものもいける、ファンク、ソウル風味の取り込みも巧みで、シャレた味わいのソウル、ジャズのフレーズを用いた即興演奏をやったり、米国ルーツ・ロックのデパートの様なバンドです。そんなMTBをストレートに味わえるのがこのLP2枚組だろう。
 

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The Marshall Tucker Band『Where We All Belong』(写真)。邦題「アメリカン・ロックの鼓動」。この邦題の意味するところは理解に苦しむ。1974年のMTBのサード・アルバム。スタジオ録音とライブ録音の構成で当時はLP2枚組。

スタジオ録音では、ブルーグラスの父チャーリー・ダニエルズを迎え、カントリー・ロックをメインに、ジャジーなインスト中心の演奏があったり、爽やかで軽やかな米国ルーツ・ロックが展開されます。1曲目「This Ol' Cowboy」から「.Low Down Ways」そして「In My Own Way」の流れが魅力。最高のカントリー・ロックです。

加えて、スタジオ録音だけでも聴きものなんですが、ライブ録音がこれまた素晴らしい。とりわけ「24 Hours At A Time」の14分に及ぶ熱演が素晴らしい。このインスト中心の演奏、そこはかとなく、ジャズ・フュージョンの香りもして、実に充実した演奏です。米国ルーツ・ロックの、米国南部のサザン・ロックの面目躍如ですね。

僕はオールマンズと併せて、このMTBも大好きで、高校時代から大学時代、はたまた今に至るまで、ジャズの合間の耳休めに時々、思い出した様に聴きます。MTBの持つバラエティー溢れる米国ルーツ・ロックが、ジャズの合間の耳休めにピッタリ。ジャズも米国ルーツ・ミュージックのひとつ。米国ルーツ・ロックとジャズとの相性はバッチリです。

 
 

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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