2017年8月26日 (土曜日)

ポール・サイモンの新作ライブ盤

我がバーチャル音楽喫茶『松和』はジャズ専門では無い。実は「70年代ロック、70年代Jポップ」を裏専門にしており、まずまずのマニアぶりであると自負している。が、松和のお客さんから、最近、ブログで「70年代ロック、70年代Jポップ」についての話が全く無いではないか、とのクレームを受けている。そう言えばそうで、以前は、土日は「70年代ロック、70年代Jポップ」の記事にしていたなあ。ということで、そのルールを復活である。

1970年代前半、英米のロック&ポップス界では「シンガー・ソングライター(略してSSW)」のブームが訪れる。自ら詩を書き、自らが作曲し、自らが唄う。それが「SSW」。僕は男性SSWでは、ポール・サイモンがお気に入りである。ポール・サイモンと言えば、1960年代後半、米国ポップス界を席巻したデュオ「Simon & Garfunkel(S&G)」の一人。

そのS&G、ガーファンクル(愛称アーティ)の歌声があまりに素晴らしく、ほとんど全曲に渡ってリードボーカルを取った為、アーティのデュオと印象が一般的。サイモンは付け足しみたいな位置付けだったが、S&Gの楽曲はほとんどがサイモンの作であり、僕はこのサイモンのSSWとしての才能に感じ入っていた。ソロになってから、その才能は全面開花し、それはそれは素晴らしい活躍。昨年の最新作『Stranger to Stranger』まで、素晴らしい内容のアルバムばかりである。

そんなポール・サイモンの、2012年7月にロンドンのハイドパークで行われたフェスティバル「Hard Rock Calling Festival」でのパフォーマンスは素晴らしかった、という噂はネットのあちこちで見ていた。サイモン健在ということは喜ばしいことやねえ、と思っていたら、そのライブ音源がCD化されるという話が今年の5月の持ち上がった。あれほど評判の良かったライブである。聴きたいなあ、ということで、リリース早々に「ポチッ」とな、である。
 

The_concert_in_hyde_park

 
Paul Simon『The Concert in Hyde Park』(写真左)。収録された曲を見渡すと、サイモンのS&G時代から現在までの、キャリア全般から良曲を偏り無くセレクトしていて、サイモンのキャリアと才能の全貌を掴むのに格好のライブ盤となっている。サイモン自身、そしてバックバンドであるグレイスバンド共にまずまず好調で、CD2枚組ではあるが、全く緩んだところの無い、濃密な心地良いテンションの演奏がギッシリと詰まっている。

もともと、アルバム『Graceland』の発売25周年を記念して行われたこの公演では、同作収録曲をほぼ全曲演奏されているところが聴き所。米国ルーツ・ミュージックの要素、アフリカン・ネイティブな音の要素、ワールド・ミュージック的な響き、単なるロック&ポップスに留まらない、様々な音の要素を取り入れ、ポール・サイモン独自の個性ある音世界を確立している。

またサイモンの人気ソロ曲「Kodachrome」「Mother and Child Reunion」「Still Crazy After All These Years」「50 Ways to Leave Your Lover」、サイモン&ガーファンクルの「The Sound of Silence」「The Boxer」「Slip Slidin’ Away」なども聴いていて懐かしく、そして楽しい。この昔の名曲の演奏も充実していて素晴らしい出来だ。

このライブ盤を聴いていて、S&Gの諸作が一気聴きしたくなった。最新リマスターを施されたボックス盤も手に入れて、ファースト盤『Wednesday Morning, 3 A.M. 』から聴き直しにかかっている。これがまた良い。またの機会にこのブログで語りたいと思います。とにかく、今回のサイモンのライブ盤、意外と良い出来に満足。ポール・サイモン、まだまだ健在ですね。

 
 

東日本大震災から6年5ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年6月12日 (日曜日)

ポール・サイモンの先取性に脱帽

つい最近のことなんだが、このブログを振り返っていて、ビリー・ジョエルとポール・サイモンに関して、まともにコメントしていないことに気がついた。これは「不徳の致すところ」である。土日を基本的に70年代ロックの日に充てて、ビリー・ジョエルとポール・サイモンに関して、語っていきたい。

ということで、今日はポール・サイモン。アート・ガーファンクルとのユニット「サイモン&ガーファンクル」は、1960年代後半のフォーク・ロックの伝説的デュオとして、今や「伝説」である。1970年、志向する音楽の違いなどからサイモン&ガーファンクルは解散状態となり、サイモンはソロ活動に入る。その第1作が、この『Paul Simon』(写真左)である。

1972年のリリース。米ビルボードチャートで最高位4位。サイモン&ガーファンクルの音楽性とは全く異なる内容ではあったが、その「全く異なる内容」が素晴らしい。今から42年前、高校一年生の時、このアルバムを初めて聴いた時の感想が「こりゃなんじゃ、面白いなあ」。今まで聴いたことの無いリズムとメロディーが詰まっていた。
 

Paul_simon

 
特にこのアルバムの冒頭「Mother and Child Reunion(母と子の絆)」は興味深かった。この裏打ちの2拍子のリズムはなんなんだ。僕が生まれて初めて聴いた「レゲエ」である。そう、この「母と子の絆」は有名白人ミュージシャンとして初めてのレゲエ・ヒットとなった楽曲である。他にも「僕とフリオと校庭で」や「ダンカンの歌」などの佳曲が収録されている。

加えて、このアルバムを聴いて思うのは「ポール・サイモンはギターが素晴らしく上手い」ということ。とにかく「キメている」。ギタリスト、ポール・サイモンの凄さを一番感じさせてくれるのが、このファースト盤『Paul Simon』だろう。このアルバムでは、全編に渡って、サイモンのギターがメイン。ほとんどサイモンのギターだけで歌伴をキメている。

このアルバムは今の耳で振り返って、更にその価値を再認識する。1972年の時代に、サイモンは既にレゲエを始めとした「ワールド・ミュージック」の音楽要素を取り入れていたのだ。この「先取性」には脱帽である。サイモンは硬派だ。アルバムが売れる売れないと考える以前に、自分のやりたいことに信念を持って取り組んでいる。フォーク・ロックの不滅の名盤の一枚である。

 
 

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