2024年12月 4日 (水曜日)

アヴィシャイの新作 ”Brightlight”

2024年もあと残すところ一ヶ月。2024年はコロナ禍も下火になって、ジャズについても、新規アルバムのリリースも順調になり、ライヴ演奏の頻度も回復基調になった。演奏の編成も、コロナ禍での少人数の演奏(ソロ&デュオ)から、トリオ以上のグループ・サウンドに回復し、コロナ禍以前の「深化」と「裾野の広がり」度合いに戻ったイメージがある。

Avishai Cohen『Brightlight』(写真左)。2024年11月のリリース。スウェーデンとテルアビブでの録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b, vo), Guy Moskovich, Eden Giat (p), Roni Kaspi, Noam David (ds), Yuval Drabkin (sax), Lars Nilsson (tp), Hilel Salem (flh), Jakob Sollerman (tb), Yosi Ben Tovim (g), Ilan Salem (fl), Jenny Nilsson (vo)。

イスラエルを代表する当代最高のベーシスト、アヴィシャイ・コーエンの新作。クラシック〜ジャズにおける伝統の音世界に、イスラエルに根付いている個性的なメロディ、リズム&ビートが融合、21世紀の現代のジャズのトレンドである、ネオ・ハードバップ、ネオ・モードな、コンテンポラリー・ジャズをさらに「深化」させた、コーエンが考える「イスラエル・ジャズ」がこの盤の中に溢れている。
 

Avishai-cohenbrightlight

 
リーダーのアヴィシャイ・コーエンはベーシスト。当然、アヴィシャイのアコベが要所要所でフィーチャーされる。これがまた絶品なベースのパフォーマンス。躍動感溢れるソリッドで骨太なアコベの響きが官能的。時にストレートに旋律を奏で、時にフロントをリード&鼓舞し、時に演奏全体のリズム&ビートをコントロールする。この盤でのアヴィシャイのベースは、アルバム全体を掌握しコントロールする「リーダーのベース」である。

アヴィシャイの周りを固めるサイドマン達も素晴らしいパフォーマンス。ロニ・カスピのドラミングは躍動的で迫力満点、ポリリズミックで変拍子を交えたドラミングは個性抜群。ガイ・モスコビッチとエデン・ギアットのピアノは、ハーモニー・センス抜群、きめ細やかなタッチ、高いテクニックは聴き応え十分。アヴィシャイの「リーダーのベース」と合わせて、「現代のリズム・セクション」の最高レベルのバッキング・パフォーマンスを聴かせてくれる。

リズム・セクションのパフォーマンスだけでも十分に楽しめるが、そんな最高レベルのリズム・セクションをバックに、フロントのトランペット、サックス、ギター、トロンボーン、フルートが、クールに端正に静的スピリチュアルにモーダルに吹きまくるのだから、このフロント管入りのトータルなグループ・サウンドも魅力満載。2024年のメインストリームな純ジャズの優秀盤だと思います。
 
 

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2024年5月28日 (火曜日)

”TRIO GRANDE” ver.2.0 の音

コロナ禍をやり過ごし、現代のジャズについては、順調にニューリリースを継続している。安堵である。この5年ほどの傾向として、今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」の好盤リリースが目につく。

そんな「遅れてきた」ニューフェースなジャズマン達は、20歳代後半から30歳台にも、コンスタントにリーダー作をリリースしたりと、ジャズの第一線で活動していた。が、その情報が何故か埋もれていたみたいで、最近、やっとサブスク・サイト等で積極的に紹介されるようになって、やっと陽の当たるところに出てきた格好である。

Will Vinson, Gilad Hekselman & Nate Wood『Trio Grande: Urban Myth』(写真左)。2023年1月27-28日、NYブルックリンの「Figure Eight Recording」での録音。ちなみにパーソネルは、Will Vinson (as), Gilad Hekselman (g), Nate Wood (ds)。イギリス生まれのサックス奏者、ウィル・ビンソン、イスラエル出身のギタリスト、ギラド・ヘクセルマン、米国出身のドラマー&マルチ・インストゥルメンタリスト、ネイト・ウッドの「TRIO GRANDE」の新作。

これまでの「TRIO GRANDE」のドラムはアントニオ・サンチェスだったけど、本作ではドラムとベースを同時演奏しながらシンセまで操作できるネイト・ウッドに代わっている。このウッドの存在が、「TRIO GRANDE」の音を大きく変化させている。
 

Will-vinson-gilad-hekselman-nate-woodtri

 
「TRIO GRANDE」の音は、創造的で柔軟で情緒豊かなコンテンポラリー・ジャズ。サウンド的には、ギラッド・ヘクセルマンのギターがリードしている感が強い。サウンドの基本は「イスラエル・ジャズ」。クールで躍動感溢れる、ちょっとくすんで捻れたヘクセルマンのギターが演奏全体をリードしていく。この「TRIO GRANDE」の音の基本は変わらない。

しかし、冒頭の「Urban Myth」で、ガツンとやられる。ベースの重低音とシンセの太いプログレッシヴな音色のアンサンブルが、独特なグルーヴ感を生み出し、ヘクセルマンのくすんで捻れたエレギの音と混じり合う。従来の「TRIO GRANDE」のイスラエル・ジャズ風であり欧州ジャズ風な従来の音世界に、最先端のコンンテンポラリーなエレ・ジャズ、そして、プログレッシヴ・ロックに至るまでの、新しい音世界との融合を実現、バンド独自のゴージャズな音世界を創造している。

2曲目「Ministry of Love」以降の音世界も、そんな現代の最先端のコンテンポラリーなエレ・ジャズ志向は変わらない。特にネイト・ウッドの参加、特に、ベースとシンセの音は、「TRIO GRANDE」のオーケストレーションを大きく進化させている。しっかりと地に足のついたスローな演奏から、弾けるダンサフルな演奏まで、幅広でバリエーション溢れる音世界は前作を上回る。

アントニオ・サンチェスがネイト・ウッドに代わった「TRIO GRANDE」。「TRIO GRANDE」の音世界は確実に進化していて、「TRIO GRANDE」ver. 2.0 と呼んで良い、そのバージョン・アップした、現代の最先端のコンテンポラリーなエレ・ジャズは、迫力満点、創造的で柔軟、情緒豊かでボーダーレス。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテ盤になっている。好盤です。
 
 

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2023年2月17日 (金曜日)

定着するイスラエル・ジャズ

21世紀に入って「イスラエル・ジャズ」が認知される様になった。それまで、ジャズの本場と言えば「米国」、その米国のジャズが欧州に飛んで、英・独・仏・伊などの「欧州ジャズ」、そして、スカンジナビアに飛んで「北欧ジャズ」が定着した訳だが、21世紀には入って、ジャズのグローバル化が進み、この「イスラエル・ジャズ」、そして、旧共産圏の「東欧ジャズ」が台頭してきた。

イスラエル・ジャズは、その名の通り、ジャズの中心地が「イスラエル(テルアビブを含む)」。従来のメインストリームなジャズのスタイルをベースに、中東地域の伝統音楽の要素を融合して、明確にエスニックな雰囲気が漂う独特の音世界が特徴。イスラエル・ジャズは、その音の特徴を活かした「静的なスピリチュアル・ジャズ」に長けている。4ビートのジャズというよりは、1970年代のECMの様な「ニュー・ジャズ」の範疇の音世界が多数を占めている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。テルアビブ出身のトランペッター、アヴィシャイ・コーエンのECMレーベルからの5作目になる。コーエンのトランペットのみがフロントの「ワンホーン・カルテット」である。
 

Avishai-cohennaked-truth_20230217201701

 
曲名と曲順を見ると、ジャズ即興による組曲のような形を取っている。冒頭「Naked Truth Part 1」から始まり、コーエンの吹き上げるテーマを基に、即興演奏として、その瞬間瞬間に音の意味を解釈〜理解し、音世界を刻々と変化させ、フレーズをバリエーション良く発展させていく。Naked Truth Part 1から、Naked Truth Part 8まで、そして、ラストの「Naked Truth: Departure」まで、静的なスピリチュアル・ジャズ志向の即興演奏が粛々と展開されていく。

音の基本は「耽美的でリリカル」。リズム&ビートは曲想に合わせて柔軟に変化するので、ネオ・ハードバップの様な雰囲気は全く無い。ECMレーベルお得意の「ニュー・ジャズ」の範疇である。この盤の音世界は「精神性」を追求している様に感じるので、やはり、この盤の音は「静的なスピリチュアル・ジャズ」だろう。アルバムの終演で、イスラエルの詩人、ゼルダ・シュナーソン・ミシュコフスキーのヘブライ語の詩「Departure」をコーエンが朗読しているところからも、「静的なスピリチュアル・ジャズ」な雰囲気を濃厚にしている。

フレーズはどこかエスニックな雰囲気が漂い、イスラエル・ジャズの面目躍如的な演奏が素晴らしい。米国ジャズにも欧州ジャズにも無い、21世紀ならではの、ジャズの「第三極」的な音志向である「イスラエル・ジャズ」。一時の流行で終わるなどと揶揄された時期もあったが、2023年の今、イスラエル・ジャズは、ジャズの「1ジャンル」として、しっかりとその「範疇」を確立している。
 
 
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2022年10月19日 (水曜日)

アヴィシャイのピアノ・トリオ盤

ベースやドラムは「リーダーの担当楽器」として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。特にベーシストがリーダー作はかなり数が限られる。

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースが一番多い。自らはその音世界の創造を支える側に回って、自らのベースはあまり前面に出ることは無い。それでも、その音世界の表現が素晴らしい、つまり、ベーシストのセルフ・プロデュースの能力が優れていると、ジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

Avishai Cohen『Shifting Sands』(写真左)。2021年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b), Elchin Shirinov (p), Roni Kaspi (ds)。イスラエル出身天才ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのリーダー作。前作はオーケストラを率いた重厚な盤だったが、今回は、シンプルにピアノ・トリオな編成でまとめている。収録されている曲は、パンデミック中にエルサレム近郊の自宅でアヴィシャイ・コーエンがピアノで作曲したもの、とのこと。

内容的には、いわゆる「イスラエル・ジャズなピアノ・トリオ」である。フレーズの中に、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」が、そこかしこに感じられる。全体の音志向は「哀愁を帯びたイスラエルな独特の響きと多様性を感じるクールなビート」を核とした、現代のネオ・モーダルなジャズである。
 

Avishai-cohenshifting-sands

 
まず、アゼルバイジャン出身のピアニスト、エルチン・シリノフの独特なタッチに耳を奪われる。「誰だ、これ」と思わず思うくらい、独特なタッチ。恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう、シリノフのフレージングも独特。欧州ジャズにも米国ジャズにも無いピアノ。独特の哀愁感が豊かなエコーによって増幅されて、固くて幽玄な音世界がこれまた独特。

新加入の若手の女性ドラマー、ロニ・カスピのドラミングも個性的。伸び伸び元気よく小気味良いドラミングを披露する。そう小気味が良いのだ。力感溢れるドドドンな迫力満点なドラミングでは無い。切れ味良く、ピッチが正確で、とにかく小気味の良いドラミング。これが、哀愁感溢れる固くて幽玄なシリノフのピアノと対照的で、双方の相乗効果で、唯一無二のインタープレイを展開する。

アヴィシャイのベースは、そんな2人のパフォーマンスの底をガッチリと支え、リードする。アビシャイの弾き出すフレーズも独特なもので、これも、恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう。しかも、アヴィシャイのベースは硬質で切れ味良く、胴鳴りが良い。良い意味で、もっと騒がれても良い、優れた現代ジャズ・ベースである。

現代イスラエル・ジャズをベースとしたピアノ・トリオ演奏の代表盤の1枚として、もはや無視出来るレベルでは無い。しっかりと認知して、しっかり聴き込んで頂きたいアヴィシャイのピアノ・トリオ盤である。
 
 

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2022年6月11日 (土曜日)

イスラエル・ジャズらしい新盤

イスラエル・ジャズの特徴はと言えば、ネットを紐解くと「イスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが特徴」とある。

そんな「イスラエル・ジャズ」。もともと若い頃から、米国以外の、エスニックもしくはアフリカンな「ワールド・ミュージック系」のジャズが好きで、イスラエル・ジャズが流行始めた1990年代後半頃から、機会があるにつけ、イスラエル・ジャズの盤を聴いてきた。特に、ECMレーベルからリリースされるイスラエル・ジャズの盤は、レーベル独特の深いエコーと相まって、その特徴が増幅され、聴き応えのあるものになっている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。2021年9月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。アヴィシャイ・コーエンは同姓同名で2人のジャズマンがいるが、この盤のリーダーは、トランペッターのアヴィシャイ・コーエン。全員イスラエル&テルアビブ出身のワンホーン・カルテットである。
 

Avishai-cohennaked-truth

 
全編、曲のタイトルに「Naked Truth」が振られていて、組曲風のアルバム構成になっている。演奏全体の雰囲気は、全曲、幽玄で哀愁感漲る、浮遊感と音の「間」が芳しい、ゆったりとした曲調。耽美的でリリカルなコーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットが、そんな哀愁感や音の陰りを的確に表現していく。このマイナー調の哀愁感とエスニック感が、全く以てイスラエル・ジャズそのものに感じる。

リズム隊のリズム&ビートは、ほとんどフリー・インプロヴィゼーションに近い、スインギーなビートとは全く無縁の自由度の高いもの。これが、コーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットに絡んで、少し憂いを帯びた薄暗い、空間の広がりと奥行きを感じさせる、独特な音世界を創り出している。これがこの盤の最大の個性。この盤はリズム&ビートでさえ幽玄であり、深遠であり、独特の浮遊感がある。

不思議な音の魅力が詰まったイスラエル・ジャズ盤である。浮遊感溢れる旋律の哀愁感、音の重なりは明らかにイスラエル・ジャズの雰囲気濃厚。アルバム全体の音の統一感も素晴らしい。スインギーなビートの効いたジャズとは全く対極にある、ほとんどフリーに近い、自由度の高いインプロビゼーション。実にイスラエル・ジャズらしい逸品であり、実にECMレーベルの盤らしい逸品である。
 
 

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2022年6月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・237

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Gilad Hekselman『Far Star』(写真左)。2020年3月〜12月にテルアビブ、2020年12月〜2021年6月にNY、2020年9月にフランス、3ヶ所での録音。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman(g, key, b, whistle, tambourine, body percussion, voice), Eric Harland (ds), Shai Maestro (key), Ziv Ravitz (ds), Amir Bresler (do-production, ds, perc), Nomok (do-production & key), Nathan Schram (viola, violin), Alon Benjamini (ds, perc), Oren Hardy (b)。

ギラッド・ヘクセルマンの新盤になる。冒頭、口笛で始まる「Long Way From Home」から、哀愁感&寂寞感溢れる、マイナー調のリリカルで情緒豊か、エキゾチックな響き濃厚なサウンドに思わず耳を奪われる。今回の新盤では、ネイチャーな響きは薄れ、エキゾチック&エスニックなマイナー調の、不思議な浮遊感が際立つ哀愁フレーズがメインになっている。
 

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演奏の大本は、エキゾチック&エスニックなマイナー調の哀愁フレーズをベースにしたニュー・ジャズ風の展開だが、ところどころにフリーに傾いたり、アバンギャルドに走ったりと、意外と硬派でシビアな純ジャズ。過去のジャズの遺産の継承はあまり感じられない、プログレッシヴな、今まで聴いたことの無いフレーズがてんこ盛り。イスラエル・ジャズの個性である「音の広がりと間を活かした耽美的でリリカルな音世界」はしっかりと押さえられている。

3曲目の「I Didn’t Know」ではアコースティックギターを弾いているが、どこかノスタルジックでネーチャーな音世界が実に良い。この音の雰囲気は今までに聴いたことが無い。5曲目「Magic Chord」は奇妙なヴォイシングのコードの連続だが、耽美的で哀愁感溢れる雰囲気が独特。ラストの「Rebirth」は変拍子に乗って、耽美的でポジティヴな響きのエレギが芳しい。逆回転風の効果音も散りばめられ、実にミステリアスでプログレッシヴな音世界だ。

ギラッド・ヘクセルマンいわく「パンデミックに見舞われ、突然、この音楽を実現するために残されたのは、楽器とマイクとコンピューターだけだった」。コロナ禍によって、自室に閉じ込められたヘクセルマンが、先行きが見通せないまま、作り続けてきた音楽。様々な想いが交錯し、様々な想いが込められた楽曲。どこか敬虔でスピリチュアルな響きがするのは、そういう背景があったからなのだろう。現代ジャズの秀作の一枚である。
 
 

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2022年4月21日 (木曜日)

シャイ・マエストロの最新盤

ジャズ・ピアノについては、長年、実力、人気共にトップの座に君臨していた、キース・ジャレット、チック・コリア、ハービー・ハンコックの3人のうち、チックは鬼籍に入り、キースは脳溢血により再起不能状態、ハービーは隠遁状態。次世代を担う存在、ブラッド・メルドーは元気だが、マーカス・ロバーツは目立たなくなり、ジェリ・アレンなどの女性ピアニスト達もちょっと地味な存在になりつつある。

しかし、最近の新盤を聴いていると、ブラッド・メルドーの世代を飛び越えて、20歳代〜30歳代の若手中心に、キース、チック、ハービーの世代の次々世代を担うジャズ・ピアニストが多く出てきている様だ。そんな有望株の中に、キースやチック、メルドーのフォロワーがいたりして、時代の移り変わりを感じる。僕等が若い頃は「(バド・)パウエル派」か「(ビル・)エヴァンス派」が主流だったなあ。

Shai Maestro『Human』(写真左)。2020年2月「Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines」での録音。2021年1月、ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shai Maestro (p), Philip Dizack (tp), Jorge Roeder (b), Ofri Nehemya (ds)。現在のイスラエルを代表するジャズ・ピアニストのシャイ・マエストロの、2年ぶりのリーダー作。シャイ・マエストロは、1987年、イスラエル生まれ。今年で35歳。キース・ジャレットからも賞賛される若手有望なピアニストである。
 

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キースが賞賛するのも何となく判る。シャイ・マエストロのピアノは、どこかキースのピアノの雰囲気を持っている。耽美的でリリカルで端正な弾き回しなど、キースのフォロワーと言っても良いくらい。しかし、キースほどどっぷり入り込んだ様な流麗さでは無く、サッパリとした切れ味の良いタッチで、シンプルなリリカルさはシャイ・マエストロ独特の個性だろう。

シャイ・マエストロと、ドラムのオフリ・ネヘミヤはイスラエル出身。ベースのホルヘ・ローダーはペルー、トランペットのフィリップ・ディザックは米国と、多国籍なカルテット編成。叙情的で穏やかなメロディー、流麗で透明感溢れるタッチ、シャイ・マエストロのピアノに、語りかける様に、肉声の様なトランペットが絡む。ベース&ドラムのリズム隊も柔軟にフロントを支え、鼓舞する。現代の先端を行く、自由度とイマージネーションに溢れるインタープレイの数々。

イスラエル出身シャイ・マエストロだが、この盤での音はイスラエル色は薄い。それでも、この盤に詰まっているのは、現代のコンテンポラリーな純ジャズであり、伝統的なメインストリーム系のジャズを踏襲しつつ、新しい響きと要素を盛り込んだ、洗練された神秘的なサウンド。カルテットの一体感が素晴らしく、雑誌Jazz Lifeの「2021年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」に、この盤のタイトルが挙がるのも頷ける。
 
 

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2020年5月26日 (火曜日)

超クールなイスラエル・ジャズ

いつの頃からか、イスラエル出身のジャズマンが台頭してきた。かなりの数、20〜30人くらいは知っている名前があるかなあ。これだけいれば、イスラエル・ジャズというサブ・ジャンルが出来ても良いくらいだ。確かに、イスラエル出身のジャズマンには音の面で共通点が多い。ファンクネスはほぼ無く、耽美的でクール、高テクニックでモーダル。どちらかと言えば「欧州的」である。

Avishai Cohen & Big Vicious『Big Vicious』(写真左)。南フランスのLa Buissonneスタジオにて、2019年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp, effects, syn), Uzi Ramirez (g), Yonathan Albalak (g, b), Aviv Cohen (ds), Ziv Ravitz (ds, live sampling)。6年前から始めた、イスラエルで育った仲間のバンド「Big Vicious」のデビュー盤。

イスラエル・テルアビブ出身のカリスマ・トランぺッター、アヴィシャイ・コーエン。1978年生まれだから、今年で42歳。心身共に充実した中堅のジャズマンになる。そんな彼の新作は実にクールな内容。現代のコンテンポラリーな純ジャズの最先鋒とも言える内容に思わずビックリ。

テンションの高い幽玄的なパフォーマンス。耽美的でクールなアドリブフレーズ。妖艶でダークでアーバンなモード展開。どれをとっても「イスラエル・ジャズ」の音である。トランペット、ギター2本(ベースギターを兼ねる)、ドラムス2台という変則的なクインテットでの演奏であり、サウンドにもロックバンド的なイメージが漂う。
 
 
Big-vicious_1  
 
 
この盤の内容を振り返ると、ジャズの枠に留まらない、エレクトロニカ、アンビエント・ミュージック、サイケデリアも音の要素になり、ロックやポップスのグルーヴ、ビートも濃厚。ジャズの王道である「他の音楽ジャンルの取り込みと融合」をしっかりと踏まえている。そして、それがどの曲でも効果的に作用している。

まるで、プログレッシブ・ロックの様な雰囲気の演奏もあるが、底にはしっかりとジャズの要素が横たわっている。例えば、4曲目の「Moonlight Sonata」は、ベートーベンの月光をロック的にアレンジしている。まるでプログレ。6曲目「Teardrop」は、マッシヴ・アタックのカヴァー。クールだ。アルバム全体に「アンビエント・ミュージック」の雰囲気が濃厚に漂い、現代のスピリチュアル・ジャズの印象も見え隠れする。

このバンドの音をECMレーベルがリリースするとは異色といえば異色。この盤の音は「欧州的」では無い。どっかで聴いた事のあるテンションとビートとクールなトランペット。そう、思わず「エレクトリック・マイルス」を思い出した。

エレクトリック・マイルスからファンクネスをそぎ落として、エスニックな雰囲気を注入する。そんな明らかに「イスラエル・ジャズ」の音がここにある。この盤の音を従来の米国ジャズ、欧州ジャズとして捉えると「しんどい」。フラットな耳で聴いていただきたい。
 
 
 
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  ・『Another Page』 1983

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2019年9月28日 (土曜日)

ECMの「イスラエル・ジャズ」盤

欧州ジャズの老舗レーベルと言えば「ECMレーベル」。1969年にマンフレート・アイヒャーが創立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。僕はジャズを聴き始めた学生時代、大変にお世話になったレーベルである。

Avishai Cohen & Yonathan Avishai『Playing The Room』(写真左)。ECMより、つい先日リリースの新盤。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p)。ベーシストではない、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンとピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイとのデュオ盤。デュオを構成する奏法のラスト・ネームを見ると、これは「イスラエル・ジャズ」であると期待する。

ECMらしい静的でクールな、即興ベースのデュオ。限りなく静謐で豊かなエコーがそのクールさを増幅する。このジャズは「ニュー・ジャズ」と呼んで良いだろう。スイング感は皆無、ファンクネスは皆無。しかし、測距句演奏をベースとしたデュオ演奏は明らかに「ジャズ」。底を流れるリズム&ビートは堅実なオフビート。自由であるが「フリー」では無い。限りなく自由度の高い「モーダル」なデュオ演奏。
 
 
Playing-the-room
 
 
全編に渡って、典型的な「イスラエル・ジャズ」の音が詰まっている。出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティックな響き。そこはかとない中近東の哀愁感を帯びたトーンが見え隠れする。今までのジャズには全く無い響き。特に、この番ではそんな「イスラエル・ジャズ」の個性をシンプルなデュオ演奏が際立たせる。

このデュオを構成する二人は同じ中学に通っていたそうだ。ティーンエイジャーの頃からテル・アヴィヴでともにジャズを探求してきて、音楽的にも30年以上ずっと長い交友関係を築いてきた、そんな濃いリレーションシップが、これだけの「あうん」の呼吸を生み出し、適度な緊張感溢れる演奏を実現し、僕達を最後まで飽きさせないのだろう。

ちなみに、このアルバムの演奏については、ほとんど一発録音だったそう。そういう面でも「イスラエル・ジャズ」のレベルは高い。最近、イスラエル・ジャズに遭遇する機会が多い。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
 
 
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2019年7月22日 (月曜日)

ヤロン・ヘルマンのトリオ盤

この週末からとにかく湿度が高い。今日などは朝からもう霧雨が軽く振っている状態で体感湿度は100%。もともと湿度の高いのは大の苦手である。もうこの3日間、体は怠いし機嫌は麗しくなく、いろいろやる気が起きない。それでも音楽は聴くんだから、やっぱり音楽が好きなんでしょうね。なんて、つまらないことを考えたりする。この湿気、なんとかならんか(笑)。

Yaron Herman Trio『Songs of the Degrees』(写真左)。今年2月のリリースの新盤である。イスラエル出身のピアニスト、ヤロン・ヘルマンの通算8作目、ブルーノート3作目。ピアノの音が凄く美しい。タッチも硬質ではあるが耳に付かない。ちなみにパーソネルは、Yaron Herman (p), Sam Minaie (b), Ziv Ravitz (ds)。

リーダーのピアニスト、ヤロン・ヘルマンは、在フランス在住のフランス系イスラエルのジャズ・ピアニスト。1981年生まれだから、今年で38歳になる。若手から中堅に差し掛かる、テクニック的にも精神的にも充実してくる年頃。ヘルマンのピアノは、端正で耽美的で自由度が高い。キース・ジャレットやブラッド・メルドーらの流れを汲んだスタイルである。
 
 
Songs-of-the-degrees-1
 
 
しかし、出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティック・ピアノの響きは、まるで「ECMレーベル」のようでもある。とはいえ、さすがイスラエル・ジャズ、決してコピーでは無く、今までのジャズの中でありそうで無い「個性的なピアノ」である。
 
このアルバムは「コンセプト・アルバム」。ヤロン・ヘルマンいわく、この盤って「リスナーに全11トラックを通して聴いてもらって、ヤロンのこれまでの人生を感じてほしいというオートバイオグラフィー的作品」だそうだ。まあ作者がそう言っているのだから、そうなんだろう。しかし、そんなことは関係無しに、このピアノ・トリオ盤は楽しめる。

最初、この盤を聴いた時は、ジャケット・デザインとも相まって、北欧ジャズかと思った。が、北欧ジャズは伝統的に響きの基本は同じなのだが、この盤は少し北欧ジャズの音とは違うなあ、と思いたち、エスニックでどこか中東風な響きに出会って、どこのジャズなのか、全く判らなくなった。解説を読んでみると、イスラエル出身のヤロン・ヘルマンのリーダー作の由、至極納得である。

 
 
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