2024年11月30日 (土曜日)

プレヴィンの爽快ライヴ盤

ジャズとクラシックの「2足の草鞋を履く男」、アンドレ・プレヴィンのピアノを聴き直している。クラシック・ピアノをベースにした、流麗で端正でダイナミックでドライブ感溢れるスインギーなピアノは、プレヴィンの身上。クラシック出身のピアノでありながら、出てくる音は実に「ジャジー」。聴いていて、スッキリ爽快な気分になれる極上の「米国ウエストコースト・ジャズ」なジャズ・ピアノ。

Andre Previn『Live at the Jazz Standard』(写真左)。2000年10月のライヴ録音。Deccaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), David Finck (b)。ドラムレス、ピアノとベースのデュオ。プレヴィン71歳での録音になる。レジェンドの域に達した「2足の草鞋を履く男」の絶妙で爽快なジャズ・ピアノを聴くことが出来る。

NYでのライヴ録音。タイトル通り、従来のジャズ・スタンダート曲と、ミージシャンズ・チューンなスタンダード曲で固められた、小粋なライヴ録音。プレヴィンのジャズ・ピアノは、トリオ演奏が多いのだが、このライヴ盤では、デヴィッド・フィンクのベースとのデュオ演奏になっている。ドラムがいない分、プレヴィンのピアノがパーカッシヴなリズム楽器を代替していて、プレヴィンのジャズ・ピアノとしての能力の高さがよく判る。
 

Andre-previnlive-at-the-jazz-standard

 
プレヴィン独特の「クラシックとジャズの両性具有」の様なピアノを存分に楽しめる。プレヴィンのピアノは、ジャズをやる場合、あくまで「ジャズ・ピアノ」なフレーズを叩き出すのだが、速い弾き回しで流麗に展開する時、クラシックのタッチ&弾き回しが、ひょっこり顔をだす瞬間がある。これが、意外と「たまらない」のだ。他のジャズ・ピアニストにはない、プレヴィン独特の個性である。

スタンダード曲集とはいえ、全12曲中、超有名なスタンダード曲は「My Funny Valentine」「Chelsea Bridge」「I Got Rhythm」くらいしかない。残りは、どちらかと言えば「玄人好み」のスタンダード曲が選ばれている。が、超有名なスタンダード曲について穂、玄人好みのスタンダード曲についても、アレンジが秀逸で、とにかく全曲、聴いていて、とても楽しい。

とても趣味の良いジャズ・ピアノが主役のライヴ音源。ファンクネスは希薄、オフビートはしっかりジャジーなプレヴィンのピアノが良い方向に作用して、スッキリとした爽快感溢れる弾き回しで、演奏そのもの、楽曲そのものを、リラックスして楽しめる、極上のジャズ・ピアノのライヴ盤に仕上がっている。良い意味で耳あたりが良いので、ながら聴きにも最適。好ライヴ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年11月27日 (水曜日)

ホールの「哀愁のマタドール」

結構、ハードなモダン・ジャズをシビアに聴き続けたらしく、耳がちょっと疲れた。と言うことで「耳休め」に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤を聴くことにする。今年はジャズ・レーベル毎の名盤・好盤を聴きなおすことをしているのだが、今日はその流れで「A&Mレーベル」の名盤・好盤の聴き直しを進めることにした。

Jim Hall『Commitment』(写真左)。邦題「哀愁のマタドール」。1976年6, 7月の録音。A&Mレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Art Farmer (flh), Tommy Flanagan (p), Don Thompson (p, track 2 only), Ron Carter (b), Allan Ganley (ds), Terry Clarke (ds, track 7 only), Eroll Bennett (perc, track 3 only), Jane Hall (vo, track 5), Joan La Barbara (vo, track 3) Don Sebesky (arr, tracks 1, 3 & 8)。

ジム・ホールのギターは、繊細で透明感溢れる、しかし、力感もしっかりあって、奏でるフレーズがくっきり浮かび上がる、従来のジャズ・ギターの奏法を一歩二歩進めた、プログレッシヴなバップ・ギターである。そんなジム・ホールのギターに、アート・ファーマーの柔らかで流麗な、それでいて、しっかり芯の入ったフリューゲルホーンが良く合う。よほど相性が良いのだろう、ジム・ホールのギターとファーマーのフリューゲルホーンのユニゾン&ハーモニーは絶品である。
 

Jim-hallcommitment  

 
このアルバムは、この前年の発表された『Concierto(アランフェス協奏曲)』の大ヒットの後のアルバム。前作の代表的名演「アランフェス協奏曲」の雰囲気をそのまま踏襲した、3曲目の「Lament For A Fallen Matador(哀愁のマタドール)」が聴きもの。ジム・ホールのギターは意外に硬派なので、甘きに流れない。力感溢れるプログレッシヴなバップ・ギターが、こういった耽美的なメロディーを持つクラシックのカヴァーに向いている。「哀愁のマタドール」以外に「When I Fall In Love」「My One And Only Love」等のスタンダード曲もいい感じ。

ジム・ホール自身のお気に入りなミュージシャンを起用しての豪華なアルバムだが、この盤では、特にロン・カーターのベースが良い。当時のロンとしては珍しいことに、ピッチが合っていて、弦を弾くピチカート奏法もブンブン胴鳴りして、切れ味の良いジャジーなグルーヴを撒き散らしている。加えて、1曲目「Walk Soft」、3曲目「Lament For A Fallen Matador」、8曲目の「Indian Summer」におけるセベスキーのアレンジも良好。

A&Mレーベルのクロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤の一枚。イージーリスニング・ジャズ志向な演奏内容ではあるが、ジム・ホールの硬派でプログレッシヴなバップ・ギターや、アート・ファーマーのジェントルで流麗だが、意外とバップなフリューゲルホーンは、ハードバップ時代からの「純ジャズ」なパフォーマンスをしっかり維持していて、聴き応え十分。この盤、硬派でメインストリームな内容のクロスオーバー&フュージョン盤。意外と聴き応えがあって、長年の愛聴盤になってます。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年10月16日 (水曜日)

古澤良治郎 ”キジムナ” を聴く

まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。

古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本コロムビア第1スタジオでの録音。BETTER DAYSレーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、古澤良治郎 (ds), 高橋知己 (ts, ss)、大口純一郎 (p), 廣木光一(g), 望月英明 (b) が、当時のレギュラー・クインテット。ここに、向井滋春 (tb), ペッカー (perc) らがゲスト参加している。

演奏全体の雰囲気は、メインストリーム志向のフュージョン・テイストな純ジャズ。もともと、リーダーでドラマーの古澤が、ジャンルの枠を超えて活動した、幅広い音楽センスの持ち主だったので、あまり、純ジャズとか、フュージョンとかに拘らず、当時、やりたい雰囲気のジャズをレギュラー・クインテットをメインに演奏した、という感じの「古澤印のコンテンポラリー・ジャズ」といったテイストだろうか。
 

Photo_20241016195001

 
冒頭のボッサ・リズムに乗った「エミ(あなたへ)」の洗練された演奏が心地良い。洗練された古澤のリズム&ビートに乗って、高橋のサックスがいい音出して、大口のシンセが官能的フレーズを連発し、廣木のエレギのストロークがボッサなリズム&ビートを増幅する。この冒頭の1曲を聴いただけで、この盤は「隅におけない」と思わず構える。

2曲目のタイトル曲「キジムナ」は、望月の旋律を担う流麗なベース・ソロが素晴らしく、大口のリリカルのアコピが、静的なスピリチュアルな雰囲気を醸し出し、そこに、高橋のテナーとゲストの向井滋春のトロンボーンが、エモーショナルなソロを展開する。そんなフロントのパフォーマンスをガッチリ支える古澤のドラムは見事。

3曲目の「青い種族トゥアレグ」は、タイトでエモーショナルな古澤のドラムが大活躍する、「和製スピリチュアル・ジャズ」な名演。続く「ビーバー」は、和ジャズ独特の「乾いたファンクネス」漂う、ダンサフルでクール&ファンキーなグルーヴ満載のジャズ・ファンク。そして、ラストの「暖かな午後」は、コンテンポラリーで高速&爽快なカリプソ・チューン。

フュージョン全盛期における、我が国のコンテンポラリー・ジャズの名盤だと思います。久しぶりに聴き直したのですが、やっぱり「良い」。リリース当時、カセットにダビングして、折につけ、聴き流していたのを思い出しました。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新
 
   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月14日 (月曜日)

阿川の ”フュージョン・ボーカル”

フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。

阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパーソネルは、バック・バンドとして、当時の阿川泰子のレギュラーバンドだった「松木恒秀グループ」、ブラジルから迎えたグループ「カメラータ・カリオカ」、吉田和雄率いる「スピック&スパン」が分担して担当している。

ボーカルはもちろん、阿川泰子。アレンジは野力奏一、吉田和雄、小林修が担当。このアルバムのメイン・コンセプトは「ノスタルジックなボサノバ」をメインとした、ブラジリアン・フュージョン。

バック・バンドの演奏は、フュージョン・ジャズど真ん中な演奏で、完璧フュージョンなバック・バンドのサポートを得て、阿川泰子が気持ちよさそうに、ボサノバ曲を唄い上げていく。

耽美的で流麗なシンセの前奏が、いかにも1980年代半ばの「フュージョン・ジャズ」という雰囲気がとても良い、アコギやベースを従えての、冒頭のイヴァン・リンスの「Velas(September)」が、このアルバム全体の雰囲気を代表している。
 

Lady-september

 
2曲目「When You Smiled At Me」は、8ビートな爽快感溢れるボサノバ&サンバなグルーヴが心地良いアップ系だが、ファンクネスはほとんど感じられない、それでいて、小気味の良いオフビートが、演奏全体の疾走感をさらに増幅させる。典型的な「和フュージョン」な音作りで耳に馴染む。

3曲目の「Voo Doo」は、どこかディスコ・フュージョンっぽいアレンジがユニーク。4曲目「If You Never Come To Me」は、スローなボサノバ曲で、アコギの伴奏が。アコギのソロが沁みる。8曲目の「I’m Waiting」でも、松木恒秀の印象的なアコギ・ソロが聴ける。この盤の伴奏、アコギの音色が実に印象的。

フュージョンど真ん中のバック・バンドの演奏だが、テクニックに優れ、内容は濃い。伴奏だけに耳を傾けても、十分にその伴奏テクニックを堪能できる優れもの。そこに、ライトな正統派ボーカルの阿川泰子がしっとりと力強く唄い上げていく。聴き応え良好。収録されたどの曲でも、阿川のボーカルが映えに映える。アレンジ担当の面々の面目躍如であろう。

阿川のライトなジャズ・ボーカルの質、バックバンドの演奏の質、そして、その二つを効果的に結びつけるアレンジの質。この「3つの質」がバッチリ揃った、フュージョン志向の「ボーカリストの歌を聴かせる」盤として、優秀なアルバムだと僕は評価してます。

バブル全盛時代にリリースされた、美人シンガーの「フュージョン・ボーカル」盤なので、何かと「色眼鏡」で見られるが、内容はしっかりとしている。ながらジャズに最適かな。いやいや、対峙してジックリ聴いても、聴き応えのある好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と、
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月 7日 (月曜日)

60年代後半の「新しいジャズ」

1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。

一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生した難解なフリー・ジャズ、と両極端な深化を遂げつつあった。が、ファンキー&ソウル・ジャズは、ハードバップを基本としている為、8ビートを採用しても、全体のリズム&ビート自体が、ロック&ポップスと比べて「古い」。ましてや、フリー・ジャズは聴き手を選び、その聴き手は少数だった。

ジャズ界の一部は、これではいかん、と「新しいジャズ」の追求を始める。その一つが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合を前提とした「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」である。その牽引役を担ったのが「A&Mレコード」。

Soul Flutes『Trust In Me』(写真左)。1968年の作品。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Herbie Mann, Hubert Laws (fl), ”Soul Flutes Ensemble & Piccolo” George Marge, Joel Kaye, Romeo Penque, Stan Webb (fl), Herbie Hancock (p, org,harpsichord), Paul Griffin (org), Bucky Pizzarelli, Eric Gale (g), Henry Watts (vib, marimba), Eric Gale, Herbie Hancock (kalimba), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto (perc), Don Sebesky (arr), Creed Taylor (prod)。プロデュースは「クリード・テイラー」。
 
Soul-flutestrust-in-me

 
おそらく、ジャズ・フルートの名手であるハービー・マンが、当時アトランティックと契約していた為、プロデューサーのクリード・テイラーは、ジャケットとライナーからマンの名前を完全に省き、ハービー・マンとヒューバート・ロウズ、この二人のフルートの名手と「Soul Flutes Ensemble & Piccolo」の4人を「Soul Flutes」という名義で、この『Trust In Me』をリリースしている。つまり、実質上のリーダーは「ハービー・マン」。

内容はグループ名の通り、フルートがメインの「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。シンプルでファンキーなフルートのアンサンブルが心地良い響き。マンとロウズのソウルフルなフルートの流麗な吹き回しが印象的。ドン・セベスキーのアレンジが実に効果的。ユルユルの心地良い響きが満載の、分かり易く聴き心地の良い、どこか官能的な「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。

哀愁感溢れるメロウなボサノバ曲「Bachianas Brasileiras」、マンとロウズが絶妙なユニゾン&ハーモニーを奏でる「Cigarettes & Coffee」など、南国を想起させる、流麗で官能的なアレンジ。S&Gのフォーク・ポップス「Scarborough Fair」、ハリー・ベラフォンテの「Day-O(バナナ・ボート)」など、当時流行のポップス曲も、優れたアレンジで、洒落て趣味の良いカヴァー演奏に仕立て上げられている。

旧来のハードバップ・ジャズとは、完全に一線を画した「新しいジャズ」の響き。こうやって、振り返って聴き直すと、このクリード・テイラーが目指した、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」は、それまでのジャズとは全く異なるものであることが判る。ジャズのマナーに則ったインストがメインの「新しいジャズ」。

聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合。それがこの「新しいジャズ」。これが、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの興隆に繋がっていく。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月28日 (土曜日)

仲村裕美『’Swonderful』を再聴

1970年代後半から1980年代前半の、フュージョン・ブームの10年間の「和フュージョン」の好盤を発掘しては聴き直している。

「発掘」とは言っても、未発表音源を探し当てて聴くなんていう「マイケル・カスクーナ」ばりの、未発表音源発掘のインディー・ジョーンズでは無く、1970年代後半から、1980年代前半の当時、聴き親しんでいたアルバムで、しばらくの間、忘れ去っていた盤を、所有のライブラリーから再度、引き摺り出して聴き直す、という、「温故知新」的な作業である。

Hiromi Nakamura(仲村裕美)『'S Wonderful』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Masanori Sasaji (key, syn), Naoki Kitajima, (key, p), Hirotaka Izumi, Masao Nakajima (key), Kazumasa Akiyama, Masahiro Ando, Kiyotsugu Amano (g), Mike Dunn, Romy Kinoshita, Tatsuhiko Hizawa, Toyoyuki Tanaka (b), Tohru Hasebe, Masaki Hiyama, Kenji Kishida (ds), Takeshi Ito, Kazuo Suzuki (sax), Kenji Nakazawa (tp), Michio Kagiwada (tb), Yasushi Kozuka (vln)。

それぞれの楽器で複数のミュージシャンが分担して、セッションに臨んでいる。パーソネルの名前を見渡してみて、馴染みのある名前があまり見当たらない。当時のテクニック優秀のスタジオ・ミュージシャン大集合といった雰囲気である。

じっくり見ると、マライアの笹路正徳がキーボードで、初期SHOGUNメンバーでパラシュートのマイク・ダンがベースで参加しているのが判る。他の多くは馴染みの無いメンバーだが、演奏内容は水準以上。なかなか充実したフュージョン・ジャズなサウンドを供給していて立派。
 

Hiromi-nakamuras-wonderful

 
美人ジャズシンガーの誉高い「仲村裕美」の1983年のセカンド盤。収録された曲を見渡せば、この盤は、フュージョン・ジャズなテイストの「ジャズ・スタンダード曲集」。なかなか良い選曲で、仲村裕美が、またまた素性の良いストレートな歌唱で、フュージョンなノリのジャズ・スタンダード曲を唄い上げていく。今回、聴き直してみて、彼女のボーカルってなかなかのもので、ついつい引き込まれてしまった。

1曲目のタイトル曲「'S Wonderful」は有名スタンダード曲。しかし、アレンジが優秀で、「どこかで聴いたことがある」感が無い。結構、新鮮なアレンジが施されていて、なかなか粋な「'S Wonderful」に仕上がっている。仲村裕美のボーカルの素性の良さがダイレクトに伝わってくる。

3曲目の「On The Sunny Side Of The Street」も有名スタンダード曲。4ビートのスインギーな名曲を、8ビートのフュージョン・ジャズにアレンジして、ポップなボーカルで、仲村裕美が明るくポジティヴに唄う。こんな「On The Sunny Side Of The Street」も良い感じだ。

6曲目の「Laughter In The Rain」は、二ール・セダカの「雨に微笑んで」のカバー。やはり、フュージョン風のアレンジがバッチリ効いている。

続く7曲目の「Unchained melody」は、ライチャス・ブラザーズのヴァージョンが、1990年に公開された映画「ゴースト/ニューヨークの幻」で起用された馴染みの曲。やはり、アレンジが良い。原曲のイメージを損なわず、原曲の甘さに流されない、意外と硬派なフュージョン・ジャズに仕立て上げている。

このLP盤の帯紙のキャッチが「太陽の匂いがするジャズ・ギャル、ナウなスタンダー集セカンド・アルバム」。思わず「赤面」もののキャッチに思わず苦笑い。まだ、そんな表現がまかり通る時代だったんですね。「ギャル」「ナウな」など、ほとんど死語ですが、このアルバムの内容は、今の耳にも十分に鑑賞に耐える、上質のフュージョン・ボーカル盤です。意外と「掘り出し物」でした。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月 5日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・26

ほんと、久しぶりにボサノバ・ジャズの元祖的アルバム『Getz / Gilberto』を、メインのステレオ装置で、しっかりとスピーカーに対峙して聴いた。僕なりのジャズ超名盤研究の第26回目である。

前にこの『Getz / Gilberto』を記事にしたのが、2006年7月。あれから、18年が経過した。それまでに、ボサノバ・ジャズのアルバムは、沢山、新規にリリースされたし、リイシューについても、今まで、ほとんど再発されなかった盤が、結構な数、リリースされた。そんなアルバムについては、標準以上のレベルのものが多く、ボサノバ&サンバ・ジャズは、ほぼ、ジャズの一ジャンルとして定着した感がある。

『Getz / Gilberto』(写真左)。1963年3月の録音。パーソネルは、Stan Getz (ts)、João Gilberto (g, vo)、Antonio Carlos Jobim (p)、Tommy Wiliams (b)、Milton Banana (ds)、Astrud Gilberto (vo)。今から振り返ると、なんとも言えない、このパーソネルで「ジャズ」をやったのか、と感心する。

ジョアン・ジルベルトは、ボサノヴァというジャンルを創成した功労者、生みの親。ジョアンを「ボサノバの神」などと呼ぶ人もいる位。この「ボサノヴァの神」がギターとボーカルを担当して、ジャズのリズム&ビートに乗って、ボサノバをやるのだ。かなり無理があったと思う。逆に、ジョアンの音楽性の柔軟度の高さに敬意を表したい。ジョアンの懐の深さがあったからこそ、このボサノバ・ジャズの元祖的アルバムが世に出たと僕は思う。
 

Getz-gilberto_1

 
アントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノバを代表するピアニスト。この人も、ボサノバでは「神」の様な存在であり、そんなジョビンが、よく、ボサノバ調のジャジーなリズム&ビートを捻り出しているなあ、と感心する。このジョビンのピアノが、以降のボサノバ・ジャズにおける良き「お手本」となっている。ボサノバ・ジャズのリズム&ビートは、ジョビンのピアノから派生したと言っても過言ではない。

アストラット・ジルベルトは、当時、ジョアンの妻君。ボーカリストとして全くの素人。ゲッツは、このアストラットの「英語による唄声」に大いなる魅力を感じて、大プッシュしたらしいが、ジョアンはかなり難色を示したらしい。それはそうで、ボサノバは英語では唄わない。しかし、英語で唄うボサノバ・ジャズのボーカルについては、このアストラットの「イパネマの娘」の素人ボーカルが「お手本」になったのは事実だろう。しかし、素人なので、やっぱり上手くはない。

ゲッツのテナーについては、ジョアンはうるさくてしかたがなかったらしいが、それもそのはず、ゲッツのテナーの音がやけに「大きい」。目立ちたい、前へ出たい、という意図が丸見え。これがジョアンの癇に障ったのだろう。確かに、ボサノバのアンニュイで気怠い雰囲気に合っていない。前に出たがらない、奥ゆかしい吹奏であれば、ボサノバ・ジャズにおける管楽器の「お手本」になったのだろうが、これだけ、テナーが大きい音で前へ出ているのは、どう聴いても、後の「お手本」なり損ねている。

いろいろ、良い点、課題点が山積した、初めての本場ボサノバと本場ジャズとの邂逅。初めての試みなので仕方がない。絶対的名盤とは言い難いが、後のボサノバ・ジャズの「基本・基準」となったことは確か。そんなボサノバ・ジャズの「超名盤」である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月21日 (水曜日)

ボサノバ&サンバ・ジャズの好盤

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)。1941年2月、ブラジル生まれのピアニスト、今年で83歳。作曲家、編曲家、バンドマスター。ボサノバを語る上で、欠かせないレジェンド。

1950年代後半にはジャズで活躍、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの影響を受け、ボサノバに転身。ブラジル国内外でボサノバを演奏。1960年代の世界的なボサノバ・ブームの牽引役となった。

Sergio Mendes『The Swinger From Rio』(写真左)。1964年12月7–9日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p), Art Farmer (flh), Phil Woods (as), Hubert Laws (fl), Antônio Carlos Jobim (g), Tiao Neto (b), Chico de Souza (ds)。米国ジャズのメンバーと、ブラジル・ミュージックのメンバーの混成編成。

米国ジャズから、アート・ファーマー、フィル・ウッズ、ヒューバート・ロウズが参加。メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションはブラジリアン・ミュージックからの参加。セルジオ・メンデス初期のボサノバ&サンバ・ジャズの名盤である。

セルジオ・メンデスは、1950年代はジャズ畑で活躍していたので、ジャズについては造詣が深い。そこに、ジョビンやジルベルトのボサノバ・ミュージックとの邂逅があって、メンデスは、ブラジル側からの、ボサノバ&サンバ・ジャズの担い手となった。
 

Sergio-mendesthe-swinger-from-rio

 
この『The Swinger From Rio』を聴いていて、ボサノバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、演奏全体の志向は「ジャズ」。メンデスのピアノだって、バップなピアノでボサノバ&サンバのフレーズを上手く弾いている。

メンデスのピアノは、ブラジル側からの米国ジャズに向けてのジャズ・ピアノなので、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを踏まえて、ボサノバ&サンバなフレーズをジャジーに弾き進めるのに違和感がない。ボサノバ&サンバのリズム&ビート、フレーズをしっかりと踏まえながら、正統派でバップでジャジーな演奏を繰り広げている。

米国ジャズからの参加、アート・ファーマーのトランペット、フィル・ウッズのアルト・サックス、ヒューバート・ロウズのフルートが、あくまで米国ジャズ基調で、ボサノバ&サンバのフレーズを吹きまくる。これが、この盤の「ジャズ」の要素をより色濃いものにしている。

逆に、ブラジル・ミュージックからの参加、メンデスのピアノ、ジョビンのギターを含めたリズム・セクションのリズム&ビートの底に、ボサノバ&サンバの本場のニュアンスがしっかり横たわっていて、米国ジャズがやるボサノバ&サンバのリズム&ビートよりもブラジル色が濃い。この「濃さ」が、この盤を「ボサノバ&サンバを基調とした純ジャズ」に帰結させている。

米国ジャズとブラジリアン・ミュージックとの素敵な融合。ブラジル側から見た「ボサノバ&サンバ・ジャズ」がこの盤にある。ブラジリアンでありながらジャジー。そんな融合の音志向が、この盤の最大の個性である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月19日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その36

チャーリー・バード(Charlie Byrd)は、ブラジリアン・ミュージックに傾倒した米国ギタリスト。 1925年9月16日、米国バージニア州サフォークにて生まれ、1999年12月2日に74歳で鬼籍に入っている。ゲッツと組んでリリースしたボサノバ・ジャズの名盤『Jazz Samba』はつとに有名。

Charlie Byrd『Brazilian Byrd』(写真左)。1964年12月, 1965年1,2月、NYにての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Byrd (g, arr), Tom Newsom (arr), Joe Grimm (sax), 演奏者不明だが、弦楽器+木管楽器+管楽器のオーケストラに、ピアノ、マリンバが加わる。プロデューサーはテオ・マセロが担当。

チャーリー・バードの、1964-65年の録音のアントニオ・カルロス・ジョビン特集。バードはラテン音楽やブラジル音楽、特にボサノバに精通していて、チャーリー・バードのリーダー作では、ボサノバ・ジャズでの好盤が多い。この『Brazilian Byrd』は、そんなチャーリー・バードの、優れたボサノバ・ジャズ盤の中の一枚。
 

Charlie-byrdbrazilian-byrd

 
ボサノバ・ジャズは「アレンジが命」と常々思っているが、この盤では、チャーリー・バード自身とトム・ニューサムによるアレンジが効いている。全体に格調高く流麗な、イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズが印象的。良好な「ボサノバ・ジャズ」なアレンジに乗って、チャーリー・バードは、耽美的で切れ味の良いギターを弾きまくっている。

「Corcovado」「Jazz 'n' Samba (So Danco Samba)」「The Girl From Ipanema」「Dindi」等々、ジョビンお馴染みのナンバーを、ジャジーで素敵なアレンジとジャジーで印象的なリズム&ビートに乗って、チャーリー・バードが唄う様にギターを弾き進める。特に、オーケストレーションをバックにした、ロマンティックなギターは聴きもの。

ボサノバ・ジャズにはギターの音色がよく似合う。ボサノバ曲の旋律を奏でる時も、ボサノバ風のジャジーなリズム&ビートを刻む時も、チャーリー・バードのギターは、ボサノバの特質と個性をよく理解して、印象的に流麗に弾き進める。イージーリスニング志向のボサノバ・ジャズの名盤の一枚。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年6月12日 (水曜日)

チックの異色盤『Septet』です

僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。

よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。

Chick Corea『Septet』(写真左)。1984年10月、L.A.の「Mad Hatter Studios」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Steve Kujala (fl), Peter Gordon (french horn), Ida Kavafian, Theodore Arm (violin), Steven Tenenbom (viola), Fred Sherry (cello)。

チックのピアノ、クジャラのフルート、ゴードンのフレンチ・ホルンに加えて、弦楽四重奏が入った七重奏団=「Septet」。ECMレーベルらしいコンセプト盤だが、この盤のプロデューサーは、ECMの総帥マンフレート・アイヒャーでは無く、チック・コリア自身。録音スタジオは、チックの「マッド・ハッター・スタジオ」。

アルバムのコンセプトはECMの理念に沿う、しかし、その音作りはチック自身に任せる。アイヒャーとしては思い切ったことをした。
 

Chick-coreaseptet

 
しかし、この盤に詰まっている音は、明らかに「ECMミュージック」であり、アイヒャーイズムの音作りである。逆に、チックの自己プロデュース能力の高さを再認識する。

さて、その内容であるが、弦楽四重奏が入っているので、雰囲気は明らかにクラシック。しかし、それぞれの曲には、チック独特のフレーズ、チックらしい硬質でメロディアスなタッチが随所に聴くことが出来て、伝統的なクラシックの七重奏という雰囲気では無い。

とにかく、チックのピアノが映えに映えていて、この盤の七重奏は、チックのソロ・ピアノに、フルートとフレンチ・ホルンと弦楽四重奏がクラシックなバッキングをすることにより、よりチックのソロ・ピアノが引き立つ、そんな感じの音作り。クラシック風ではあるが、純粋なクラシックでは無い。

チックの個性を反映した、チックの優れた「作曲&編曲」の才能の成果がこの『Septet』。クラシック寄りの即興のピアノ・ソロに一捻り加えた、チックの考える「ECMミュージック」がこの盤に詰まっている。

ECMレーベルだからこそ成し得た、チックの考える「ECMミュージック」。アイヒャーの期待に応えたチックの「作曲&編曲」の才能。一期一会、唯一無二な音世界。チック者にとっては、外すことの出来ない「異色盤」です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー