2026年6月14日 (日曜日)

CTIのジャジー&メロウ・ソウル

ジャズやポップスのエッセンスを巧みに取り入れた、ソフト&メロウな異色のソウル・アルバムとして、洗練されたサウンドが良好。後のフュージョン・ジャズのソフト&メロウなサウンドの走りで、さしずめ、R&B志向のフュージョン・ボーカルなアルバムとして、聴き心地良好なボーカル好盤である。

Richard Barbary『Soul Machine』(写真左)。1968年の作品。A&M 3000 seriesの3010番。米国のソウルシンガーであるリチャード・バーバリー(Richard Barbary)の唯一のソロ・アルバム。総帥プロデューサーであるクリード・テイラーがプロデュースを手掛け、A&M 3000 seriesの一枚としてリリース。

ちなみにパーソネルは、主要メンバー(リズム・セクション&鍵盤・ギター)として、Richard Barbary (vo), Eric Gale, Hugh McCracken, Sal DiTroia (g), Paul Griffin, George Butcher (p,org), Ernie Hayes (org), Chuck Rainey (b), Bernard Purdie, Gary Chester (ds),Herbie Lovelle, George Devens (ds,perc)。ここにホーン・セクションがバックに入っている。
 

Richard-barbarysoul-machine  

 
リチャード・バーバリーのマイルドなボーカルが一番の「ウリ」。コクがありながらも耳当たりの良い、まったりとしたリチャード・バーバリーの歌声が心地良い。R&B志向のソウルフルな歌唱だが、ソフトでスッキリしている。ファンクネスべたべたのオフビートばりばりのソウル歌唱では無いところがこの盤の特徴。少し高めのまろやかなテナー・ボイスで、感情をじんわりと乗せて歌う「ソフトでエモーショナルな歌声」が映える。

アーティ・バトラーがアレンジを担当。バックの演奏は、バーナード・パーディのファンキーなドラム、チャック・レイニーの極上ベースライン、エリック・ゲイルの職人技ギターなど、1960年代後半のニューヨークで最も脂が乗っていたスタジオ・ミュージシャンによるもの。そのため、ソウルアルバムでありながら、非常に洗練された「ジャズ・グルーヴ」が根底に流れている。

収録曲は、カバー曲を中心に構成されており、名曲をバーバリー独特のスムースなソウル・スタイルで解釈している。本作は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの礎を築いた名門CTIレコードが初期に制作した、数少ないヴォーカル/ソウル作品という歴史的にも極めて珍しい位置づけの1枚。クロスオーバー&フュージョン・ジャズ初期の隠れ好盤です。
 
 

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『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2026年6月13日 (土曜日)

A&M志向のラウンジ・サウンド

邦題「ミス・ジョーンズに会ったかい?」。米国のピアニスト、アレンジャーであるアーティー・バトラー(Artie Butler)が1968年に発表したデビュー・アルバムであり、彼の代表作である。クロスオーバー&フュージョンの老舗レーベルである、A&MレコードとCTIレコード(クリード・テイラー・プロデュース)の共同企画としてリリースされている。

Artie Butler『Have You Met Miss Jones』(写真左)。1968年1,2月、Van Gelder Studiosでの録音。A&M 3000 series (12 inch LP)のSP-3007番。ちなみにパーソネルは、Artie Butler (p, key, arr, cond), Burt Collins (tp,flh), Romeo Penque (ss, fl), Jerome Richardson (fl), Corky Hale (harp), David Carey (vib), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Gary Chester (ds), George Devens (perc)。ここに、弦とブラスのアンサンブルが入る。

極上のラウンジ・ポップ、ボサノヴァ、イージーリスニングが融合した、お洒落なクロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向のサウンドが特徴。ながら聴きのコンテンポラリーなジャズとして、聴いて楽しい、聴いてポップなサウンドである。アーティー・バトラーを始めとして、ハービー・ハンコックやロン・カーターといったビッグネームが名を連ね、イージーリスニング志向なサウンドでありながら、演奏内容はしっかりしている。
 

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アレンジが洗練されていて、ハーブ・アルパートのティファナ・ブラスを彷彿とさせるマリアッチ風のエッセンスや、軽快なブラジリアン・ボサノヴァのリズムが散りばめられていて、とにかく聴いていて楽しい。収録曲については、リチャード・ロジャースによるジャズ・スタンダードの表題曲をはじめ、当時のポップスや映画音楽のカバーが中心となっていて、これまたポップで楽しい。

A&M / CTIならではの「最高峰のイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ」の一枚。そのグルーヴは、「A&Mレーベルを象徴する、太陽の光を浴びた、心地よいグルーヴ」と評価されているくらい、明るくポップで、洗練されてお洒落なサウンドに仕上げられている。アルバム全体に「サイケデリックで気怠いエネルギー」を与えている、電子楽器オンドリオンの音色も個性的。

このアルバムが持つ「レトロフューチャーなお洒落さ」や「1968年という時代の空気感」は、今聴いても、どこか新鮮に響く。このアルバムには、普遍的な、A&M / CTIならではの「最高峰のイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズ」の音がぎっしり詰まっている。イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズのアルバムとして、とても良く出来た内容である。
 
 
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2026年6月 2日 (火曜日)

極上ソウル・ジャズ・パーティー

米国のジャズ・オルガン奏者ルーベン・ウィルソン(Reuben Wilson)の、ソウルフルでファンキーなジャズ・ファンク盤である。全体の音的には、ソウル・ジャズというよりも、軽くアーシーなリズム&ビートをメインにしたジャズ・ロック&ジャス・ファンクという雰囲気で、1960年代のソウル・ジャズとは、グルーヴが縦ノリなのが特徴。

Reuben Wilson『A Groovy Situation』(写真左)。1970年9月18 & 25日、Van Gelder Studioでの録音。ブルーノートの4365番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Earl Turbinton (as), Eddie Diehl (g), Harold White (ds)。滑らかでファンキーなグルーヴを湛えた、楽しいクロスオーバー・ファンキーなアルバムである。

ルーベン・ウィルソン自身、前作『Blue Mode』(1969年)の硬派な路線から、本作では意図的にポップで親しみやすい「コマーシャル・ルート」へと舵を切った、ということだろう。ジャズ者(ジャズ・マニア)に対してだけでは無く、幅広いリスナー層にアプローチを試みた、キャッチーな作品として評価できる。
 

Reuben-wilsona-groovy-situation  

 
ポップス&ソウルのカバーが中心で、当時のヒット曲に対して、大胆にジャズ・ファンクなアレンジを充てている。乾いた明るい粘り気のあるソウルフルな、そしてR&Bな音色と、タイトなリズム・セクションが融合して、このアレンジに乗って、滑らかでファンキーなグルーヴを醸し出している。ジャズ者御用達の濃厚なグルーヴではない、軽快で明るい傾向のグルーヴである。

4曲目「A Groovy Situation」は、メル&ティムの有名なシカゴ・ソウル名曲をカバーしたタイトル曲。5曲目「Happy Together」は、ポップロックなバンド、ザ・タートルズの代表曲をソウルフルなジャズ・ファンクへ大胆カバー。6曲目「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」は、スティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲をジャズ・ファンクにアレンジ。

レーベル全体がジャズ・ファンクやソウル・ジャズ、そして商業的でキャッチーな路線へシフトしていく過渡期を象徴する、ファンクやR&B、ロックの要素を取り入れたサウンドが全盛の中での、ブルーノートの「コマーシャル路線」への挑戦の音である。難しいことを考えずに、純粋に、滑らかでファンキーなグルーヴを楽しむ盤だろう。ながら聴きに最適な好盤である。
 
 

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2026年5月30日 (土曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク好盤

1960年代後半からドナルドソンが精力的に取り組んでいた、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク路線のアルバムの中で、最もポップでイージーリスニング志向なアルバム。

後のフュージョン・ジャズのイージーリスニング志向盤と比べても、引けを取らない内容である。あまりに、ポップでイージーリスニング志向なので、硬派な純ジャズ者の方々からは毛嫌いされる傾向にあるが、後年のレア・グルーヴやヒップホップのサンプリング・ソースとしても非常に高く評価されている。

Lou Donaldson『Pretty Things』(写真左)。1970年1月9日、6月12日の録音。ブルーノートの4359番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (varitone-as, vo), Blue Mitchell (tp), Lonnie Smith (org, track 1), Leon Spencer (org, tracks 2–6), Melvin Sparks (g, track 1), Ted Dunbar (g, tracks 2–6), Jimmy Lewis (el-b, track 1), Idris Muhammad (ds)。

冒頭、パティ・ペイジなどの歌唱で有名な往年の名曲「Tennessee Waltz」を、ゆるゆるのブルース・ロック調のキャッチーなビートでのカバーが出てくるので面食らう。あまりに俗っぽくて、あまりにイージーなカバーなので、これはなあ、と思うんだが、じっくり聴いていると、演奏するメンバーが、ハードバップ後期から活躍する一流どころなので、意外と演奏自体は充実している。なので、演奏途中で飽きることは無い。
 

Lou-donaldsonpretty-things

 
逆に、こんなにポピュラーで俗っぽい曲をテーマに据えても、アドリブ部に入ると、上質な純ジャズ調のアドリブが展開されるからたまらない。この「上質な純ジャズ調のアドリブ展開」が、後のフュージョン・ジャズに欠けていくところなので、このルーさんの「テネシー・ワルツ」のカバー演奏は隅に置けない。

5曲目の「Pot Belly」の8分に渡る、イージーリスニング志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな演奏が象徴的。イドリス・ムハマッドによる、タイトで重いドラム・ブレイクから始まり、ヴァリトーン・サックスのソウルフルな音色、ファンキーでパーカッシヴなオルガン、重低音溢れるジャズ・ファンクなエレベのライン。その独特な、ちょっとダルでサイケな部分が見え隠れする音世界は、ジャズ・ファンクの名演のひとつだろう。
 
ラストの「Love」は、ナット・キング・コールなどの歌唱で世界的に大ヒットしたポップ・ナンバー「L-O-V-E」のカバー。ハッピーで爽快なグルーヴ、メインストリーム志向のアドリブ展開、ブルー・ミッチェルのトランペットもブラスの響きがブリブリ輝いている。テッド・ダンバーの「ヘタウマ」ファンキーなエレギが、演奏全体のグルーヴ感を煽っている。

ルーさんのアルト・サックスは全編に渡って絶好調。当時流行していた電子エフェクターを通した「ヴァリトーン(Varitone)」サックスも演奏しており、よりディープで太いファンク・サウンドを響かせていて良好。ポップでイージーリスニング志向なアルバムだが、意外とメインストリームしていて、聴き応えがある。好盤。
 
 

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2026年5月29日 (金曜日)

サイケなジャズ・ファンク盤です

マクダフが1969年から1971年にかけてブルーノートに残した4枚のアルバムのうち、最後の作品。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、そしてサイケデリック・ジャズな要素がほどよく融合した、実験的な演奏内容がユニーク。そして、更にユニークなのが、楽曲提供とアレンジを、ハードバップ時代の変わり種ジャズマンの一人、チューバ奏者のレイ・ドレイパーが担当している。

Brother Jack McDuff『Who Knows What Tomorrow's Gonna Bring』(写真左)。1970年12月1–3日、ブルーノートの4358番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Randy Brecker, Olu Dara (tp), Dick Griffin, John Pierson (tb), Paul Griffin (p), Joe Beck (g), Tony Levin (el-b), Donald McDonald (ds), Mike Mainieri (perc), Ray Draper (perc, vo, tuba, arr)。

全編に渡って、ポップ色豊かな、ライトで明るいジャズ・ファンクが展開され、その中で、怪しげなサイケデリック・ジャズな要素が忍ばされていたり、オルガンの弾きっぷりは、ジャズというよりは、ロックな響きと乾いた音色が大半を占めていたり、一風変わったファンクネスを伴いながら、スペーシーなポップ・ロックな音世界がユニーク。
 

Brother-jack-mcduffwho-knows-what-tomorr
 
ジョー・ベックのエレギは、R&B志向+サイケデリック色なエレギで、ジャズ・ファンクというよりは、ファンク・ロック風の乾いたオフビートの粘らないファンクネスを前提としたエレギで、これはこれで、やっぱりユニーク。後にピーター・ガブリエル・バンドやキング・クリムゾン等で活動するトニー・レヴィンが、ジャズ・ファンクなベース・フレーズを弾きまくっているのもユニーク。

楽器の定位が浮遊するような不思議な音響ミックスがユニークで、従来のコッテコテなソウル・ジャズ(コテコテのオルガン+サックス+ギター)とは一線を画する。この浮遊感がサイケデリックな雰囲気に直結している。バックのサウンドには、サックスなどの木管楽器を一切排除し、トランペット、トロンボーン、チューバという金管楽器(ブラス)のみを配置して、アルバム全体に独特の「泥臭さ」と「重量感」を与えている。

なんか聴いていて、どこか「隅に置けない」好盤。従来のコッテコテなソウル・ジャズではない、サイケデリックな、ポップでロックで、どこか明るいジャズ・ファンクという雰囲気がとにかくユニーク。特にラストの「Wank's Thang」は、そんな雰囲気の代表的演奏だと感じていて、どこかディスコ調が漂う、マイルドでメロウなグルーヴが芳しい、マクダフのどこか哀愁あるオルガン・プレイが心地良い。
 
 

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2026年5月28日 (木曜日)

レア・グルーヴなキャンディド

キューバのジャズパーカッショニスト、カンディド・カメロのリーダー作。“千の指を持つ男(Thousand Finger Man)”と称された彼が、アフロ・キューバンの強烈なリズムと、当時のアメリカのソウル・ジャズ、ファンクの要素をスタイリッシュに融合させたレア・グルーヴの、後のフュージョン・ファンクを先取りした名盤である。

Candido『Beautiful』(写真左)。1970年10月20 & 27日の録音。ブルーノートの4357番。ちなみにパーソネルは、Candido Camero (conga, bongos), Bernie Glow, Pat Russo (tp), Alan Raph (tb), Joe Grimm (ss, bs), Frank Anderson (p, org), David Spinozza (g), Jerry Jemmott, Richard Davis (el-b), Herbie Lovelle (ds), Joe Cain (arr)。

ファンク系のフュージョン・ジャズの音作りと同傾向の「ジャズの即興演奏よりもダンスやグルーヴに重きを置く」音作りで、ファンキーなオルガン、エレキベース、そしてキャンディドの躍動感あふれるコンガが絡み合うソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のエレ・ジャズ。後のフュージョン・ジャズの要素満載である。

キャンディドのパーカッションは勿論のこと、アフロ・キューバン・リズムの重鎮であるキャンディドを支える、ニューヨークのトップクラスのスタジオ・ミュージシャンたちによるタイトでハイレベルな演奏が素晴らしい。ファンキーなカッティングギター、うねるエレベのグルーヴなライン、パーカッションと完璧にシンクロする重厚なドラムが、キャンディドのパーカッションを逆に映えに映えさせている。
 

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ジョー・ケインのプロデュース&アレンジが抜群。ソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のフュージョン・ファンクな音作りを小粋にお洒落にグルーヴにやっている。オリジナル曲だけでなく当時流行していたポップスやR&Bのカバーも含まれていて、このアレンジも優秀。

2曲目「Tic Tac Toe」は、Booker T. & the M.G.'sの名曲をカバーした、タイトなリズムのファンキーナンバー。初めて聴くと、この演奏は、1970年代後半のフュージョン全盛時代の優れたフュージョン・ファンクな演奏と錯覚するくらいの充実した、グルーヴィーなジャズ・ファンク・チューン。

3曲目の「Hey, Western Union Man」は、ジェリー・バトラーのR&Bヒット曲のカバー。洗練されたフィラデルフィア・ソウルと、アフロ・キューバンの熱いダイナミズムが見事にクロスオーバーした、アルバム随一のファンキー・トラック。分厚いホーン・アンサンブルとコンガの掛け合い、スピノザのカッティングギター、ジェモットによる重厚な「イカした低音」のエレベ。

キャンディドが主役でありながら、ソロで目立つのでは無く、「強力なニューヨークのバックバンドのキーマン」として、アンサンブルのグルーヴを、パーカッションで増幅させる役割に徹している。これが、このアルバムを「レア・グルーヴの名盤」化しているのだ。
 
 

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2026年5月22日 (金曜日)

アーバンなファンクネスとソウル

ジェームス・ブラウン風の泥臭いファンク、ストリート感溢れるジャズ、そしてアフリカ的なリズムを、彼の代名詞であるハモンドオルガン(B-3型)のカラフルな音色で包み込んだ、アーバンなファンクネスとソウルに満ちた内容である。

Lonnie Smith『Drives』(写真左)。1970年1月2日の録音。Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jerseyでの録音。ブルーノートの4351番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Dave Hubbard (ts), Ronnie Cuber (bs), Larry McGee (g), Joe Dukes (ds)。

ジャズ・オルガン奏者ロニー・スミス(Dr. Lonnie Smith)のソウル・ジャズ/ファンク・ジャズの佳作。アーバンでウォーム、ソウルフルかつエモーショナルなグルーヴが蔓延している。オリジナル盤は全5曲で構成されており、ジャズのスタンダードから当時のR&B/ポップスのカバーまで幅広く収録されている。

1.Twenty-Five Miles(エドウィン・スターのファンク・ナンバー)
2.Spinning Wheel(ブラッド・スウェット&ティアーズの大ヒット曲)
3.Seven Steps to Heaven(マイルス・デイヴィスの名演曲をアレンジ)
4.Psychedelic Pi(ロニー・スミス自身のオリジナル楽曲)
5.Who's Afraid of Virginia Woolf?(ジミー・スミスの名演で知られる佳曲)
 

Lonnie-smithdrives

 
ロニー・スミスのオルガンをメインに、デイヴ・ハバードのテナーとロニー・キューバ―のバリサクの2管に加えてラリー・マギーのギター、ノリの良いタイトなドラムはマクダフ・バンドのジョー・デュークス。ジャズ・シーンを見渡した時、ロニー・スミス以外、あまり名の通ったメンバーでは無いが、出てくるグルーヴ感は一流。

ロニー・キューバーが奏でるバリトンサックスの太い低音ラインが、ロニーの操るフットペダル(足鍵盤)によるベースラインと効果的に絡み合い、ロック曲やファンク曲にも引けを取らない、小粋でヘビーなグルーヴを生み出している。

晴れ渡る青空のもと、当時の最新型高級車(1970年型リンカーン・コンチネンタル)のサンルーフから美女と共に顔を出すロニーの姿を捉えたジャケットは、「車の中で窓全開で聴くのに最高の音楽」というアルバムのコンセプトとのこと。

そういう意味では、このアルバムも商業主義に傾いた、売らんが為のイージーリスニング志向のオルガン・ジャズということになる。ただし、そこはブルーノート。演奏内容は及第点以上、アレンジもポップでファンキーで良好。アルバムの演奏自体のクオリティは高いと言える。
 
 

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2026年5月20日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・323

マクグリフのオルガンの個性満載。洗練されたブルース感覚、ゴスペルなど教会音楽の取り込み、抜群のタイム感が生み出す泥臭いグルーヴがマクグリフのオルガンの個性。彼独特のアーシー名音色、左手と足鍵盤による強烈なウォーキング・ベース、独特の「間」とパーカッシブな打鍵、そして、ドローバー(音色調整レバー)の見事なコントロール。マクグリフのオルガンは、その響き、音色、弾き回し、どれをとっても独特の個性。

Jimmy McGriff『Electric Funk』(写真左)。1969年9月、NYでの録音。ブルーノートの4350番。ちなみにパーソネルは、Jimmy McGriff (el-org), Blue Mitchell (tp), Stanley Turrentine (ts), Horace Ott (el-p, arr), Unknown (g), Chuck Rainey (el-b), Bernard Purdie (ds)。ギターが誰だか判らないセプテット編成。

ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクな演奏ではあるが、こってこてファンキーなグルーヴに乗って疾走するマクグリフのオルガンは、それまでの4ビート中心のハードバップではない、ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックそのものである。なので、それまでのブルーノート4300番台のオルガン・ジャズ盤が陥り易かった、イージーリスニング志向のラウンジ風のオルガン・ジャズからは脱却している。
 

Jimmy-mcgriffelectric-funk

 
従来のメンストリーム系のモダン・ジャズとは全く異なるリズム&ビートを底に忍ばせている。ドラムの**バーナード・パーディーとベースのチャック・レイニーという、R&B/ソウル界屈指の黄金コンビがリズム&ビートを支えているところが、この盤の、8ビートのジャズ志向のアレンジによる、「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックな雰囲気、を確実なものにしている。特にエレベの弾き出すベースラインはエグい。

ホレス・オットがアレンジするエネルギッシュなホーン・セクションの存在も大きい。「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックの音世界を、より濃いものにしている。凄まじいファンク・グルーヴでカヴァーした、当時の大ヒットロックバンド、ブラッド・スウェット&ティアーズのヒット曲「Spinning Wheel」も、オットのアレンジに負うところが大きい。

このアルバムは、従来の4ビート&スインギーな純ジャズとは、一線を画すものではあるが、当時のソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの最大の成果の一つ。マクグリフのディスコグラフィーの中でも最高傑作の1つとして良いだろう。コッテコテでスマートで泥臭い、オルガン・グルーヴが全編にわたって炸裂している。ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックとして聴けば違和感は全く無い。
 
 

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2026年5月15日 (金曜日)

ジャズ・ファンク3部作の最終盤

この盤の雰囲気、リズム&ビートからして、純粋なジャズとは言い難い。しかし、エレクトリック楽器やファンクのリズムを導入しつつも、ジャズの即興演奏に重きをおいたアレンジは、クロスオーバー・ジャズとしてのジャズ・ファンクとして聴けば違和感は無い。「ダンサフル、ファンクネス満載、グルーヴ感満載」で、後のレア・グルーヴ御用達盤である。

Joe Farrell『Canned Funk』(写真左)。1974年11-12月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, bs, fl), Herb Bushler (b), Joe Beck (g), Jimmy Madison (ds), Ray Mantilla (conga, perc)。ジョー・ファレルのCTIレーベルでの最後のリーダー作。ジャケットのぶっ飛んだデザインも強烈なインパクト。ファレルの考えるジャズ・ファンクの完成形。

冒頭のタイトル曲「Canned Funk」から、ファレルの考えるジャズ・ファンク全開。ファレルのサックスは、メインストリーム・ジャズ志向の正当派な吹きっぷりなんだが、バックのリズム&ビーとがエグい。ファンク度満点。そして、ベックのエレギがこれまたエグい。ベックの弾き出すファンクネスは半端無い。そして、ファレルとベックのユニゾン&ハーモニーから滴り落ちるファンクネスがこれまたエグい。
 

Joe-farrellcanned-funk

 
また、この盤でのグルーヴ感は特別で、当時CTIレーベルに多かった「スタジオで上品に作り込まれたフュージョン」とは一線を画した、当時のファレルのレギュラー・バンドによるライヴさながらの一発録りが、生々しいグルーヴ感を醸し出している。ファレルの正統派サックスとフルートが映えに映える録音は見事なもの。

この盤でも、ジョー・ベックのエレギの存在が大きく、ファンキーなカッティングから、ロック調の激しい歪み系ソロまで縦横無尽に弾きまくっている。そして、ベースのハーブ・バシュラーも、エフェクターを駆使したエレクトリック・ベースで強烈なうねりを創り出している。ジミー・マディソンのドラム、レイ・マンティーリャのパーカッションの「太鼓隊」の叩き出すグルーヴも半端ない。

3曲目の「Suite Martinique」などは、プログレッシブ・ロックやラテンジャズにアプローチした複雑な構成で、クロスオーバー・ジャズとしての面目躍如的な演奏。1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の「ファレルの考えるジャズ・ファンク」シリーズの最終作。クロスオーバー・ジャズ志向のジャズ・ファンク盤としての佳作である。
 
 

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2026年5月10日 (日曜日)

ジャズ・ファンクを走るファレル

CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたジョー・ファレル。よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目が『Penny Arcade』。そして、CTI第5作目である。より骨太でロック色の強いフュージョン・サウンドへの傾倒が色濃い、ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクの好盤である。

Joe Farrell『Upon This Rock』(写真左)。1973年10月, 1974年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl), Joe Beck (g), Herb Bushler (b), Jimmy Madison (ds)。ゲストに、Steve Gadd (ds, on "I Won't Be Back"), Herbie Hancock (p, on "I Won't Be Back"), Don Alias (conga, on "I Won't Be Back")。全4曲で構成され、ジャズの即興性とロックのダイナミズムが高度に融合したクロスオーバー・ジャズである。

1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の三作品は、ギターにジョー・ベックを入れてかなりファンク色の強い演奏をしている。その2作目である。この作品の実質的な「共同リーダー」とも称されるギタリスト、ジョー・ベックの存在感が非常に大きいのが特徴。ジョー・ベックのファンキー・エレギを抜きにして、この盤は語れない。
 

Joe-farrellupon-this-rock

 
1曲目「Weathervane」は、挨拶代わりの1曲。ファレルとジョー・ベックによる高速のユニゾン・フレーズが印象的な、マハヴィシュヌ・オーケストラを彷彿とさせる緊張感あふれるジャズ・ロック。3曲目のタイトル曲「Upon This Rock」が、強烈な、このアルバムのハイライト。強靱なドラム・ブレイクで幕が開き、ファレルの力強いテナー・サックスとジョー・ベックの歪んだギターのユニゾン&インタープレイが凄まじい。

2曲目の「I Won't Be Back」だけが、他の3曲と雰囲気、音が違う。それもそのはず、この曲については、前作『Penny Arcade』と同じセッションで録音された曲。ハービー・ハンコックとスティーヴ・ガッドが参加しており、ラテン調の軽快なリズムに乗せた優雅なファレルのフルート・ソロが楽しめる。後のフュージョン・サウンドを先取りした様な、アーバンでメロウでファンキーなサウンドは意外と癖になる。

ラストの「Seven Seas」は、ジャズ・ファンク・チューン。ファレルのテナーもベックのエレギも、どっぷりジャズ・ファンク。ファンキーな路線へと舵を切ったファレルの最終到達点の様な演奏。全4曲を聴いて、ファレルの目指したもの、それは、ジャズとロックの融合によるクロスーオーバーなジャズ・ファンク。これはこれで、ちゃんとした成果を上げていると僕は思う。
 
 

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