ジョンアバとジョンスコの共演
ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie、以降「ジョンアバ」と略)。基本、ECMレーベルのハウス・ギタリスト的位置付け。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。
ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降「ジョンスコ」と略)。不思議に「ねじれた」というか、ちょっと外れた、というか、とにかく一聴するだけで「ジョンスコ」と判る、とても個性的なギター。時には「変態ギター」とも言われる。でも悪い意味での「変態」では無い。良い意味での「変態」である。
John Abercrombie & John Scofield『Solar』(写真)。1982年5月と1983年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g, el-mandolin (track: 3, 5)). John Scofield (g), George Mraz (b (track: 3, 5, 7)), Peter Donald (ds (track: 3, 5, 7))。ジョンアバとジョンスコのデュオと、ジョンアバ・ジョンスコの2フロント・ギターの変則カルテット編成の2パターンを収録している。
ジョンアバとジョンスコ、どちらも米国出身のギタリストだが、ジョンアバは欧州的な抒情的なギターが個性、ジョンスコは個性的な、良い意味での「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。恐らく、現代のジャズ界の中での、コンテンポラリーな「エレクトリック・ジャズ・ギター」の最高峰の二人だと思う。
そんな二人がデュオをやり、フロント2ギターを二人で張って、ドラムとベースを従えたカルテット演奏をやる。これが絶品。ジョンアバとジョンスコ、二人のエレギが、こんなに相性が良いとは思わなかった。
まず、ジョンスコが「ねじれた」ギターを控えた形でジョンアバと相対しているのが、良い効果を生んでいる。ジョンアバの抒情的なギターは基本は「バップ」。ジョンスコは、このジョンアバの基本である「バップ」に適合して、素晴らしい二人のパフォーマンスを生み出している、と僕は思っている。
ジョンスコがバップに適合すると、そのギターの雰囲気はジョンアバに近しいものになる。近しいものになると、二人のデュオは「極上」なものに昇華する。どちらかのギタリストが他方のギタリストに合わせると、音色も似通ったものになって、デュオとしては失敗に近い形にあるのだが、この二人はそうはならない。
ジョンアバの「バップ」は、抒情的でダンディズム溢れるギターで、ジョンスコの「バップ」は、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なフレーズが見え隠れするワールド・ワイドなギター。この二人のギター、雰囲気は似ているが、そのパフォーマンスは「似て非なるもの」。この二人のデュオの共演が大成功している。
演奏されるそれぞれの曲については、哀愁があってメロディアスに展開していくもの、フォーキーで爽快感のある米国の広大なプレーリーを想起するようなもの、ウェス風の流麗でファンキーでハードバップなもの、お得意の浮遊感が素敵な静かなバラード、ロック・ビートを活かしたシンプルでクールな感覚、落ち着いたメロディアスなエレギを弾き上げていく様な素敵な展開など、バラエティーに富んでいる。
コンテンポラリーなエレクトリックなジャズ・ギター好き、ひいてはジャズ・ギターを弾きたい人まで、広く「ジャズ・ギターの必聴盤」の一枚だと思います。そうそう、この盤、ジャケットのバージョンが複数あるので、気をつけてくださいね。
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