2026年3月11日 (水曜日)

ジョンスコ&ホランドのデュオ

最近のジャズもちゃんと聴いている。ジャズの「今」もしっかり把握しておかないと、過去の名盤の現代に与える影響というのが判り難くなる、と感じている。

コロナ禍の折、どっと新盤のリリースが減少して、もう駄目か、なんて悲観したもんだが、コロナ禍が明けて、順調に新盤のリリース数もコロナ禍前に戻って、新人、旧人、それぞれ、内容のある新盤をリリースしてくれているのは心強い限りだ。

John Scofield & Dave Holland『Memories of Home』(写真左)。2024年8月の録音。ECM盤。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Dave Holland (b)。現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人、ギタリストのジョン・スコフィールドとベーシストのデイヴ・ホランドのデュオ演奏である。

まず、マイルス・バンド経験者の、革新的なプレイを信条としてきた二人が、しっぽり耽美的静的なデュオ演奏を、ECMレコードの下で録音しリリースする。しかも、ECMレコードお得意のニュー・ジャズな雰囲気は皆無。至極真っ当な、純ジャズ志向のデュオ演奏である。ECMレコードも懐が深くなったなあ、と感心する。
 

John-scofield-dave-hollandmemories-of-ho

 
さすが、現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人。デュオ演奏の「肝」である「ダイアローグ」「アドリブ」「余白と間」をバッチリ抑えた、味わい深く、耽美的でクール、静謐でセンシティヴな。極上のデュオ演奏が粛々と展開される。楽器の音も凄く良い音出している。ジョンスコのギター、ホランドのベース。極上である。

ジョンスコは、いつものジョンスコらしい音で、ジョンスコらしいフレーズを繰り出し、素晴らしい。ホランドもフレーズを自由に弾き回している様で、基本的に演奏のベースラインは、しっかり押さえているという神業を披露していて見事。長年の付き合いの中で、お互いがお互いの音を熟知しているからこそ出来る至芸。

二人のデュオは意外な感じだが、コロナ禍の頃、2020年に、もともとツアーを予定したが中止、2021年にやっとツアーを敢行、2024年には2度目のツアーを控えており、レコーディングのアイデアが生まれたそうだ。満を持してのデュオ演奏だったみたい。

2人のデュオは、ウォームで切れ味良く革新的で創造的。現時点ですでに「未来のデュオ名盤」のパフォーマンスに、ついつい繰り返し耳を傾ける。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2026年1月14日 (水曜日)

フラナガンとミッチェルのデュオ

端正&典雅でブルージーでダンディズム溢れるバップ・ピアノが個性のフラナガンと、ウエストコースト・ジャズを代表する筋金入り硬派な職人ベーシストのミッチェルとのデュオ・セッションの記録。ピアノとベース、フロントとバックの役割分担がやり易いデュオの組みあわせで、この2人のデュオは、ナチュラルにアレンジに頼ること無く、フロント、バック、ほど良く分担した、絶妙のデュオ演奏が繰り広げられている。

Tommy Flanagan & Red Mitchel『You're Me』(写真左)。1980年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Red Mitchell (b)。燻し銀な筋金入りバップ・ピアニストのトミー・フラナガンと、西海岸の硬派な職人ベーシストのレッド・ミッチェルによる「デュオ」アルバムである。

デュオ演奏なので、2人ともが主役。まず、フラナガンは遠慮無く、端正なタッチ、気品あるダイナミズムとダンディズムを併せ持ったバップ・ピアノをガンガンに弾きまくる。基本、ミッド・テンポからバラードの演奏がメインで、ガンガン弾きまくるとは言っても、うるさくはない。ベースのミッチェルのベースラインをよく聴いた、絶妙なアドリブ・フレーズがニクい。
 

Tommy-flanagan-red-mitchelyoure-me

 
ミッチェルのベースは、胴鳴りは少しライトだが、ピッチが合っていて、小気味の良い弾く様なビートは、聴いていて爽快。さすが、ウエストコースト・ジャズでの第一人者ベーシストである。その小気味良い爽やかベースは、フラナガンのバップ・フレーズに心地良く絡んで、演奏全体のぶるーじーさ、ジャジーさ、を増幅する。テクニックもかなりのレベル。ピアノのデュオで、ピアノのフレーズに負けていない。

演奏に必要なリズム&ビートは、フラナガンのピアノとミッチェルのベースで、しっかりと分担対応している。フロントとしてのフレーズも、フラナガンはピアノなんで当然として、ミッチェルのベースがしっかりとフロントのフレーズも担当している。ピッチの合ったベースだからこそ、なせる技。ミッチェルのはじき出すフロントのフレーズが意外とクリエイティヴでエモーショナルで聴き応えがある。

ミッチェルのベースがしっかりとジャジーなリズム&ビートを積極的に供給しているので、フラナガンのピアノの個性と、ミッチェルのベースの個性との相乗効果、化学反応を堪能するには、ドラムは不要。このデュオ盤は、ピアノとベースのデュオとしては秀逸な出来。実は、僕は5年前まで、このデュオ盤を聴いたことが無かった。そして、聴いてビックリ。こんなに優れて、聴いていて楽しいデュオ盤があったとは。それ以来の愛聴デュオ盤の一枚になっている。
 
 
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2025年11月15日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・307

デンマーク出身のジャズ・ベーシストの名手レジェンドといえば、ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンの名前がいの一番に浮かぶ。惜しくも2005年4月に鬼籍に入ってしまったが、彼のベースは、ソリッドなブンブン唸る重低音ベース。ピッチもバッチリ合ったヴァーチュオーゾであった。

Thomas Fonnesbaek & Justin Kauflin『Synesthesia』(写真左)。2017年6月14-15日の録音。ちなみにパーソネルは、Thomas Fonnesbæk (b), Justin Kauflin (p)。デンマークの現代ジャズ・ベースの名手、トーマス・フォネスベックと、米国の中堅ピアニスト、ジャスティン・カウフリンによるデュオ盤。

トーマス・フォネスベックもデンマーク出身。ペデルセンの跡を継ぐ、中堅ベーシスト。今年48歳。ベース音がペデルセン直系。ソリッドなブンブン唸る重低音ベース。ペデルセンよりややライトで明るい音色。テクニックはペデルセン同様、相当に高い。

ジャスティン・カウフリンは、米国出身のピアニスト。今年39歳。11歳のとき、病により視力を失い、以降は盲目のピアニストとして活躍を続けている。端正で美しく鳴る、耽美的でリリカルな印象派ピアノ。優しい「ミシェル・ペトルチアーニ」なイメージ。米国出身ながら、音の傾向は「欧州」。
 

Thomas-fonnesbaek-justin-kauflinsynesthe

 
冒頭のタイトル曲「Synesthesia」から、デュオの2人は出力全開。ソリッドでブンブン胴鳴りを響かせながら、重低音のベースラインを弾きまくる。ピッチがバッチリ合っていて、聴いていて気持ちが良い。そして、そこに、欧州的響きの耽美的でリリカルな印象派ピアノが絡み追従する。このデュオ、面白いのは、ベースがリードして、ピアノが追従するイメージで、グイグイ引っ張る様なイメージのフォネスベックが恰好良い。

デュオ演奏として、ピアノとベースはもともと相性が良いが、このフェネスベックのベースとカウフリンのピアノの相性は相当に良い。これだけ、速いテンポでインタープレイを続けても、音がぶつかりそうになることも、音が単調になることも無い。

3曲目のスタンダード「It's All Right With Me」は美しいことこの上ない。ベースが前面出る時はカウフリンが、ピアノが前面に出る時にはフォネスベックが、極上の伴奏フレーズを叩き出す。インタープレイは硬軟自在、変幻自在、緩急自在に、心地良い一体感を醸し出す「絡み」は極上の美しさ。

しかし、凄まじいレベルのベースとピアノのデュオ。硬軟自在、変幻自在、緩急自在、テクニックのありったけを尽くして、そして、豊かな歌心を宿して、ベースもピアノも唄う様に、デュオ・パフォーマンスを繰り広げていく。このデュオ盤、現代のベースとピアノのデュオ盤の「名盤」として良い内容を誇っている。素晴らしいデュオ盤である。
 
 

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2025年9月 7日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・294

キース・ジャレットが、ジャズ・ベースの哲人「チャーリー・ヘイデン」を自宅に招いて行った心温まるデュオ・セッション集である。デュオでの共演はなんと31年ぶり。しかし、キースは「ソロの達人」、ヘイデンは「デュオの達人」。ソロの達人とでデュオの達人が組んでの、極上のメインストリーム・ジャズなデュオ演奏に展開されていく。

Keith Jarrett & Charlie Haden『Jasmine』(写真左)。2007年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Charlie Haden (b)。1976年、チャーリー・ヘイデンの『Closeness』の冒頭「Ellen David」以来のヘイデンとキースのデュエット。キースの自宅スタジオでの気軽なセッションを収めたデュオ盤である。

キース自身「事前に準備を整えて録音したものではなく、本当にそのとき偶然に出来た音楽で、二人にしかできえなかったもの」と語るように、とても自然で淡々とした、色彩豊かなピアノとベースのデュオ演奏が展開されいます。いずれの曲にも「作為とプロデュース」が全く感じられなくて、キースとヘイデンが心のままに、デュオ演奏を繰り広げていったのがよく判る。
 

Keith-jarrett-charlie-hadenjasmine

 
キースの他のソロ演奏のように、ダイナミックで幅広な展開で弾き回すのでは無く、ヘイデンのベースの音とフレーズを良く聴き、それに応じるような、ピアノとベースとが「会話」を重ねるような、シンプルでナチュアルなデュオ演奏が続く。収録曲のどれが突出するでもない、皆、同じ流れと雰囲気の中で、淡々と極上の内容を湛えたデュオ演奏を繰り広げていく。

キースのピアノを久し振りに聴いたのだが、これだけリラックスして、プライベートな雰囲気を湛えた、躍動感溢れるパフォーマンスはこの盤の他に無いだろう。また、ヘイデンのベースは、アコースティック・ベースの良いところを前面に出しつつ、キースのピアノに寄り添うようにベースラインを弾き進めていく。もはやこれは名人芸の上を行く極上のレジェンド・パフォーマンスである。それほどまでに、ヘイデンのベースは充実している。

キースは、ライナーノーツで「Call your wife or husband or lover in late at night and sit down listen.(夜遅く、妻、夫、そして恋人、そんな二人でゆっくり腰掛けて聴いてほしい)」と言う言葉で締めくくっている。プライベートな響きと雰囲気を宿した極上のピアノとベースのデュオ。名盤です。
 
 

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2025年7月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・289

生前、ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンは自らを「An Adagio Guy」と呼んでいたそうだ。「Adagio」=ゆっくりと歩く速さ」だから、バラード曲の様な、ゆっくりと歩く速さでのデュオ演奏が好みだったと思われる。

そういう観点から、このライヴ・アルバムは、そんな「An Adagio Guy」が八面六臂の大活躍を見せる、秀逸なベースとピアノのデュオ・パーマンスの記録である。

Charlie Haden & Gonzalo Rubalcaba『Tokyo Adagio』(写真左)。2005年3月16–19日、「ブルーノート東京」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Haden (b), Gonzalo Rubalcaba (p)。ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンと、彼が見出したキューバ出身の天才ピアニスト、ゴンザロ・ルバルカバのデュオ・アルバム。

ヘイデンは2014年7月、惜しくも鬼籍に入ってしまったが、「ベースの哲人」として、リーダー作は数知れず、他のセッションにも多々参加して、しっかりと成果を残している。そんな成果の中で、意外と取りあげられていないのが、彼は「デュオ・セッション」の名手である、ということ。

この『Tokyo Adagio』は、そんな「アダージョ」なテンポの耽美的でリリカルな演奏をメインに置いて、先陣を切って、ルバルカバが、どっぷり耽美的なリリカルな、情感溢れるバップ・ピアノを「アダージョ」に弾き進める。
 

Charlie-haden-gonzalo-rubalcabatokyo-ada

 
そして、そんなピアノに、ヘイデンの重厚でソリッドで哲学的なベースがそっと寄り添う。ヘイデンのベースが効果的に寄り添うことで、更に、ルバルカバの耽美的でリリカルなピアノが映えに映える。これぞ「ヘイデン・マジック」。

ヘイデンのベースは、決して自らが走り出すことはない。いつでもどこでも、ルバルカバの耽美でリリカルで情感溢れるピアノに寄り添うように、ベースラインを「アダージョ」に弾き進める。

そして、ヘイデンのソロが前面に出ると、ルバルカバは効果的なバッキングに徹し、ヘイデンは、思索的で哲学的、静的で耽美的でリリカルなベース・ソロを披露する。これが「堪らない」。語りかける様な、悟りを開くような、祈りにも似たヘイデンのベース。そして、ヘイデンのベース独特のグルーヴ。

テクニック優秀で、バリバリの弾きまくりが個性のルバルカバのバップ・ピアノであるが、このデュオ盤では、ヘイデンの好みに従って、耽美的でリリカルで「アダージョ」に弾き進める。「アダージョ」で情感豊かに。緩急抑揚を付けながらの展開することの難しさ。

ルバルカバの優れたピアノと、ベースの哲人、ヘイデンのアコースティック・ベースが、そんな「難しさ」をいとも容易くクリアしている。「アダージョ」演奏の難しさを軽々とクリアした、極上のベースとピアノのデュオ・パフォーマンス。

ジャケットも秀逸。収録されたデュオ・パフォーマンスも秀逸。ゴンサロの紡ぎ出す、耽美的でリリカルなバップ・ピアノと、ヘイデンが紡ぎ出す、思索的哲学的な、耽美的でリリカルなソリッドなベース。双方が東京で再会し,極上のデュオ演奏を繰り広げる。ルバルカバとヘイデンの「歌心とグルーヴ」の新鮮さと確かさを体感して下さい。
 
 

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2025年7月 4日 (金曜日)

モラーツとブルフォードのデュオ

英国の音楽シーンの面白いところは、ジャズとロックの境界が曖昧なところ。ロックのミュージシャンがジャズをやったと思ったら、クロスオーバー&フュージョン志向のミュージシャンがロックをやったりする。

Moraz & Bruford『Music for Piano and Drums』(写真左)。1983年10月の録音。 E.G. Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Patrick Moraz (ac-p), Bill Bruford (ac-ds)。当時、ムーディー・ブルースに在籍していた、スイス出身のパトリック・モラーツのキーボードと、当時、キング・クリムゾンに在籍していた、英国出身のビル・ブルフォードのドラムのデュオ演奏になる。

ここまでのアルバム情報を見ると、プログレッシヴ・ロックの範疇のデュオ盤かとも思うんだが、聴いてみると判るが、このデュオ盤、立派にクロスオーバー&フュージョン・ジャズしているんで、ちょっとビックリする。 E.G. Records(英)からのリリースと言うことで、ここでも英国におけるジャズとロックの境界線が曖昧なところが顕著に表れていると見た。

演奏の基本は「即興演奏」をメインとしていて、演奏される内容としては、叙情的なフュージョン・ジャズ志向の楽曲もあれば、ちょっとアブストラクトにフリーに展開する即興ジャズ志向の楽曲もあれば、クラシック風に展開する楽曲あれば、現代音楽風にブレイクする楽曲もあり。
 

Moraz-brufordmusic-for-piano-and-drums

 
で、これらの演奏をアコースティック・ピアノと、アコースティック・ドラムをメインにデュオ演奏しているのだから堪らない。印象からすると、クロスオーバー&フュージョンなデュオ演奏と評して良いだろう。決して、プログレッシヴ・ロックでは無い。

まず、パトリック・モラーツのアコピがとても良い。多重録音を駆使して、ピアノ音の広がりを印象的なものにしているところも良い。そして、モラーツのピアノのフレーズの「間」を埋めるように、即興的にドラムを重ねていく。このブルフォードの職人芸的ドラミングが見事。ポリリズムあり、変則拍子あり、持てる技術の全てを注ぎ込んだ様な神業ドラミングは聴きもの。

二人はそれぞれ異なる時期にイエスのメンバーで(ブルフォードは1968年から1972年、モラーツは1974年から1977年)、1975年にはイエスのベーシスト、クリス・スクワイアのソロ・アルバム『フィッシュ・アウト・オブ・ウォーター』で共演を果たしている。

二人ともバリバリなプログレッシヴ・ロックの住人だったが、その8年後、こんなに素敵なクロスオーバー&フュージョン志向の「ピアノとドラムのデュオ演奏」を残すのだから、ジャズとロックの境界が曖昧な英国の音楽シーンは隅に置けない、とつくづく思う。
 
 

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2024年11月30日 (土曜日)

プレヴィンの爽快ライヴ盤

ジャズとクラシックの「2足の草鞋を履く男」、アンドレ・プレヴィンのピアノを聴き直している。クラシック・ピアノをベースにした、流麗で端正でダイナミックでドライブ感溢れるスインギーなピアノは、プレヴィンの身上。クラシック出身のピアノでありながら、出てくる音は実に「ジャジー」。聴いていて、スッキリ爽快な気分になれる極上の「米国ウエストコースト・ジャズ」なジャズ・ピアノ。

Andre Previn『Live at the Jazz Standard』(写真左)。2000年10月のライヴ録音。Deccaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), David Finck (b)。ドラムレス、ピアノとベースのデュオ。プレヴィン71歳での録音になる。レジェンドの域に達した「2足の草鞋を履く男」の絶妙で爽快なジャズ・ピアノを聴くことが出来る。

NYでのライヴ録音。タイトル通り、従来のジャズ・スタンダート曲と、ミージシャンズ・チューンなスタンダード曲で固められた、小粋なライヴ録音。プレヴィンのジャズ・ピアノは、トリオ演奏が多いのだが、このライヴ盤では、デヴィッド・フィンクのベースとのデュオ演奏になっている。ドラムがいない分、プレヴィンのピアノがパーカッシヴなリズム楽器を代替していて、プレヴィンのジャズ・ピアノとしての能力の高さがよく判る。
 

Andre-previnlive-at-the-jazz-standard

 
プレヴィン独特の「クラシックとジャズの両性具有」の様なピアノを存分に楽しめる。プレヴィンのピアノは、ジャズをやる場合、あくまで「ジャズ・ピアノ」なフレーズを叩き出すのだが、速い弾き回しで流麗に展開する時、クラシックのタッチ&弾き回しが、ひょっこり顔をだす瞬間がある。これが、意外と「たまらない」のだ。他のジャズ・ピアニストにはない、プレヴィン独特の個性である。

スタンダード曲集とはいえ、全12曲中、超有名なスタンダード曲は「My Funny Valentine」「Chelsea Bridge」「I Got Rhythm」くらいしかない。残りは、どちらかと言えば「玄人好み」のスタンダード曲が選ばれている。が、超有名なスタンダード曲について穂、玄人好みのスタンダード曲についても、アレンジが秀逸で、とにかく全曲、聴いていて、とても楽しい。

とても趣味の良いジャズ・ピアノが主役のライヴ音源。ファンクネスは希薄、オフビートはしっかりジャジーなプレヴィンのピアノが良い方向に作用して、スッキリとした爽快感溢れる弾き回しで、演奏そのもの、楽曲そのものを、リラックスして楽しめる、極上のジャズ・ピアノのライヴ盤に仕上がっている。良い意味で耳あたりが良いので、ながら聴きにも最適。好ライヴ盤です。
 
 

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 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

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2024年11月18日 (月曜日)

ジャズ・ベース2本のデュオ名盤

技巧派ジャズ・ベーシストがよくやる裏技に「ボウイング」がある。「ボウイング」とは、弦楽器で弓を弦に当てて上げ下げして音を出す演奏技法。旋律楽器として、旋律を取りにくいベースという楽器で、滑らかな旋律を取る方法の一つ「ボウイング」。

しかし、この「ボウイング」が曲者で、かなり高度なテクニックと音感を要する。つまり、技巧派ジャズ・ベーシストのボウイングについては、押し並べて「良くない」。クラシックのチェロやコントラバスのボウイングの旋律は、ピッチが合っていて、ボウイングのテンポが合っている。これが「ボウイング」なのだが、ジャズ・ベーシストのボウイングは、ピッチが合っていなくて、ボウイングのテンポが外れている。

それなのに、技巧派ジャズ・ベーシストは「ボウイング」をやりたがる。思いついただけでも、ポール・チェンバース、ロン・カーター、この二人のボウイングは酷い。レイ・ブラウンについては可もなく不可もなく。ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン、ジョージ・ムラーツなど、欧州系のジャズ・ベーシストは、クラシックの影響もあるのだろう、ボウイングはまずまず良好。

とはいえ、総じて、ジャズ・ベーシストのボウイング、どう聴いても、クラシックのそれと比べて、あまりにも見劣りがする。

Christian McBride & Edgar Meyer『But Who's Gonna Play The Melody?』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Christian Mcbride, Edgar Meyer (b, p)。クリスチャン・マクブライドとエドガー・メイヤー、2 人のグラミー受賞ベーシストによる、ベーシストだけのジャズ演奏。

タイトルが良い。「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」。ベーシスト2人だけのデュオ・パフォーマンス。ベーシスト二人、それぞれがピアノを弾くが、それも全15曲中、それぞれ2曲だけ。残り11曲は、純粋にベース2本だけのパフォーマンス。
 

Christian-mcbride-edgar-meyerbut-whos-go
 

ベース2本だけのパフォーマンスとしては、Niels-Henning Ørsted Pedersen & Sam Jones『Double Bass』(2012年7月11日のブログ記事・左をクリック)が浮かぶが、かなり珍しいデュオ・フォーマットであることは間違いない。

しかし、である。これが絶品なのだ。恐らく、ジャズ・ベーシストがメインのパフォーマンスの極上のもの。タイトル「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」の問いに応える様に、マクブライドとメイヤーの2人が、ピッチ奏法でリズム&ビートを弾き出し、アルコ奏法(ボウイング)で旋律を奏でる。

二人とも、とりわけ優れたベーシストであり、ピッチ奏法は極上なのは当たり前。しかし、この盤で素晴らしいのは、二人のベーシストのボウイング。ピッチはバッチリ合っていて、ボウイングのテンポもバッチリ合っている。その上、弾き出されるリズム&ビートは躍動感溢れ、グイグイと推進力抜群。そして、ボウイングの旋律は歌心溢れ流麗至極。クラシックのボウイングと比べても全く遜色無い。

これだけ、優れた内容のジャズ・ベースのボウイングは聴いたことが無い。今回のこのアルバムが、ジャズ・ベーシストのパフォーマンスの中で、ピカイチの内容のボウイングだろう。いわんや、ピチカートによる旋律のつまびきについても絶品極まりない。バックに回ったウォーキング・ベースも素晴らしい推進力。

いやはや、素晴らしいベース2本のデュオ。両者ともテクニック、歌心、イマージネーション、いずれをとっても遜色ない。現代のジャズ・ベースのバーチュオーゾ二人の極上のパフォーマンス。ジャズ・ベースがリーダーの名盤として、上位にランクしても良い傑作だと思う。

タイトルの問い「But Who's Gonna Play The Melody?」=「だれがメロディを弾くんだい?」。その答えは、このデュオ盤そのものの中にある。
 
 

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2024年9月20日 (金曜日)

ジョンアバとジョンスコの共演

ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie、以降「ジョンアバ」と略)。基本、ECMレーベルのハウス・ギタリスト的位置付け。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降「ジョンスコ」と略)。不思議に「ねじれた」というか、ちょっと外れた、というか、とにかく一聴するだけで「ジョンスコ」と判る、とても個性的なギター。時には「変態ギター」とも言われる。でも悪い意味での「変態」では無い。良い意味での「変態」である。

John Abercrombie & John Scofield『Solar』(写真)。1982年5月と1983年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g, el-mandolin (track: 3, 5)). John Scofield (g), George Mraz (b (track: 3, 5, 7)), Peter Donald (ds (track: 3, 5, 7))。ジョンアバとジョンスコのデュオと、ジョンアバ・ジョンスコの2フロント・ギターの変則カルテット編成の2パターンを収録している。

ジョンアバとジョンスコ、どちらも米国出身のギタリストだが、ジョンアバは欧州的な抒情的なギターが個性、ジョンスコは個性的な、良い意味での「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。恐らく、現代のジャズ界の中での、コンテンポラリーな「エレクトリック・ジャズ・ギター」の最高峰の二人だと思う。

そんな二人がデュオをやり、フロント2ギターを二人で張って、ドラムとベースを従えたカルテット演奏をやる。これが絶品。ジョンアバとジョンスコ、二人のエレギが、こんなに相性が良いとは思わなかった。
 

John-abercrombie-john-scofieldsolar

 
まず、ジョンスコが「ねじれた」ギターを控えた形でジョンアバと相対しているのが、良い効果を生んでいる。ジョンアバの抒情的なギターは基本は「バップ」。ジョンスコは、このジョンアバの基本である「バップ」に適合して、素晴らしい二人のパフォーマンスを生み出している、と僕は思っている。

ジョンスコがバップに適合すると、そのギターの雰囲気はジョンアバに近しいものになる。近しいものになると、二人のデュオは「極上」なものに昇華する。どちらかのギタリストが他方のギタリストに合わせると、音色も似通ったものになって、デュオとしては失敗に近い形にあるのだが、この二人はそうはならない。

ジョンアバの「バップ」は、抒情的でダンディズム溢れるギターで、ジョンスコの「バップ」は、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なフレーズが見え隠れするワールド・ワイドなギター。この二人のギター、雰囲気は似ているが、そのパフォーマンスは「似て非なるもの」。この二人のデュオの共演が大成功している。

演奏されるそれぞれの曲については、哀愁があってメロディアスに展開していくもの、フォーキーで爽快感のある米国の広大なプレーリーを想起するようなもの、ウェス風の流麗でファンキーでハードバップなもの、お得意の浮遊感が素敵な静かなバラード、ロック・ビートを活かしたシンプルでクールな感覚、落ち着いたメロディアスなエレギを弾き上げていく様な素敵な展開など、バラエティーに富んでいる。

コンテンポラリーなエレクトリックなジャズ・ギター好き、ひいてはジャズ・ギターを弾きたい人まで、広く「ジャズ・ギターの必聴盤」の一枚だと思います。そうそう、この盤、ジャケットのバージョンが複数あるので、気をつけてくださいね。
 
 

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2024年6月27日 (木曜日)

スポルディングとハーシュの邂逅

「2023年度 Jazz Life グランプリ」も貴重な情報源。この月刊誌 Jazz Life のグランプリ記事も、雑誌ジャズ批評の「オーディオ・ディスク大賞」と並んで、昨年度のジャズの新盤の振り返りになり、落穂拾いにもなる。Jazz Life のグランプリも、ジャズ批評のディスク大賞も、コマーシャルな裏の事情など関係なく、評論家の方々やショップの店員さんが、忌憚ないところでアルバムを選出しているようなので、本当に参考になる。

Fred Hersch & Esperanza Spalding 『Alive at the Village Vanguard』(写真左)。2018年10月19–21日、NYの老舗ライヴハウス「Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Fred Hersch (p), Esperanza Spalding (vo)。

その独特の奏法と創造のアイデアのユニークさで「ピアノの詩人」などと評され、1980年代以降のピアニストの中で、最もエヴァンスイズムを受け継いだと言われる。耽美的でリリカルなピアノの最右翼の一人「フレッド・ハーシュ」と、稀有な、唯一無二な若手女性ベーシスト&ボーカリストの「エスペランザ・スポルディング」のデュオ演奏。

ハーシュにとってビレバガでのライヴ録音は今回で6度目らしい。そして、ベーシスト&ボーカリストのスポルディングは、潔くヴォーカルのみの参加。女性ベーシストとして、かなりユニークな個性の持ち主なので、スポルディングのベースが聞けないのは残念だが、ボーカルに専念出来る分、このデュオ・ライブ盤でのスポルディングのボーカルは、さらに迫力と捻じ曲がり度合いが増しており、現代の新しい、最新の女性ボーカルというか、ジャズ・ボーカルの新しい響きが実に芳しい。
 

Fred-hersch-esperanza-spalding-alive-at-

 
スポルディングのボーカルはこれまでに無かったユニークなもの。その雰囲気は「枠に囚われない」「野趣溢れる」「アフリカン・ネイティヴな」ワールド・ミュージック志向のボーカル。その表現の自由度は高く、伝統的な女性ボーカルをこよなく愛する方々からすると、これは「由々しき」女性ボーカルなんやろうな、なんて思ったりする。とにかく「自由」、そして、時折、織り交ぜられる「小粋なワード」が、スポルディングのエンタテインメント性を引き立てる。

そんなスポルディングのボーカルに、寄り添うが如く、絡むが如く、ハーシュのピアノが疾走する。現代のジャズ・ピアニストの中でも「耽美的でリリカルなピアノの最右翼」とされるハーシュのピアノであるが、耽美的どころか、アグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノで、スポルディングのボーカルの伴奏をガンガンやっている。恐らく、スポルディングの自由闊達なボーカルに合わせた、ハーシュの職人肌的パフォーマンスなんだろう。

しかし、スポルディングのボーカルとハーシュのピアノが、こんなに相性が良いと思わなかった。最初は「水と油」かなあ、と思ったのだが、聴いてみて、あらビックリ。スポルディングのボーカルは従来からの個性的なものなんだが、その伴奏に回ったハーシュのピアノが半端ない。抒情的にしっとり展開したりするところあるが、基本的にはアグレッシヴで躍動感溢れるバップなピアノ。ハーシュの今までとは違った側面を聴くこと出来て、感心することしきり、である。

スポルディングの唯一無二の「今までにない」新しいボーカルと、ハーシュの「新しい引き出し」を聴くかの如き、スインギーでアグレッシヴなバップな弾き回し。一期一会の、奇跡のようなデュオのライヴ音源。現代の、今のジャズのトピック的アルバムの成果として、高く評価されるべき好盤である。
 
 

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