ジャズ喫茶で流したい・317
ライヴ盤としての前作『Footprints Live!』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点であった。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為のライヴ盤だった。
前作のスタジオ録音盤『Alegria』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した『Footprints Live!』の音世界に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっていた。
Wayne Shorter『Beyond the Sound Barrier』(写真左)。北米、ヨーロッパ、アジアを巡るツアー中の、2002年11月から2004年4月にかけてのライヴ録音。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)、以上が「Footprints Quartet」。ツアー中のライヴ録音なので、基本的にゲストは無い。「Footprints Quartet」の4人だけのガチのライヴ・パフォーマンスが記録されている。
で、この『Beyond the Sound Barrier』は、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様に感じる。それまで、時々、顔を出していた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。
今の耳で振り返ると、上質の、当時、最高峰レベルの、現代の「ネオ・ハードバップ」志向の音世界なのが判る、ネオ・モードをベースに、フリーに、アブストラクトに、スピリチュアルに、変化しまくるカルテットのサウンド。明らかに、サウンド全体をリードしているのは、ショーターのサックスなのだが、ショーターの指し示す方向に、クイックにサウンドを変化させる、バックの3人、リズム・セクションのトリオの演奏力が凄まじい。
ショーターがそれまで、音志向として採用してきた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」、「ワールド・ミュージックの音要素」が無い。質実剛健なネオ・ハードバップな、ネオ・モードのサウンドが、真剣勝負なライヴ演奏として展開される。
強いて言えば、ウェザー・リポートのデビュー盤『Weather Report』、セカンド盤の『I Sing The Body Electric』、そして『Live in Japan』あたりの、「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ」を、アコースティックに焼き直したような音世界に、フリー、アブストラクト、スピリチュアルな音要素を加えた「ネオ・ハードバップ」なサウンドである。
ただ、不思議なのは、このライヴ盤で、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様にも関わらず、この後、8年間、この「Footprints Quartet」は、スタジオ盤もライヴ盤もリリースしなかったこと。
2013年に突如「Footprints Quartet」のライヴ盤『Without a Net』をリリースして、我々を驚かせた。この8年間のブランクについては今のところ不明。この佳作盤『Beyond the Sound Barrier』の位置づけが曖昧になってしまったのは残念だった。
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